世界に勝った男 作:ジークフリード
クラス対抗戦。
専用機持ちは一組だけ。他のクラスは………専用機を渡されるような国家代表候補生は国家代表の行方不明により繰り上げとなり国に帰ったからいない。
唯一最初から国家代表の生徒会長は残っているが。
「頑張れよサマー」
「おう! って、練習に付き合えよ!」
同じ専用機持ちで、同じクラス。しかも自分の補佐であるバッキーの投げやりな態度に思わず突っ込む一夏。
「やれやれ、仕方ないなぁ。こんど外出する時サマーのおすすめの美味い飯屋に連れて行ってくれるなら手伝ってやろう」
「それぐらいなら任せろ。俺の友達の実家が食堂やってんだ」
「大丈夫? 身内贔屓してない?」
「ちゃんと美味いぜ」
「じゃあ良いよ。で、何番アリーナの使用許可を貰ったんだ?」
「え?」
「…………え?」
どうやら頭から抜け落ちてたらしい。仕方がないので今日は座学をやることにした。と………
「それなら私が見る」
「箒………」
「しののののさん?」
篠ノ之箒。一夏の幼馴染にして、一夏とバッキーの接近を良く思わない人間の一人。
「
「え? うん、知ってるけど。でも姉とは関係ないって初日で言ってたじゃん。それに、別にISにも詳しくないんだろ?」
「っ! そういう、お前は…………」
「それが凄いんだ箒! 山田先生にテスト問題作ってもらったりしたんだけど、バッキーの奴全問正解なんだ!」
と、友達を自慢する一夏。ぐっと言葉に詰まる箒。
結局一夏を説得すること叶わず、一夏はバッキーと勉強することに。
「てかしのさんもくれば?」
そう言われたが、箒の方から断った。
「………………」
専用機でも持っていれば違うのだろうか?
と、姉に連絡しようとしてみるも、繋がらない。そもそも最近連絡をしていないが、前までは連絡を入れてすぐ出たのに。肝心な時に………
「しのののの………しの………しのの?」
「篠ノ之な………し・の・の・の」
「どっかで聞いた気がするんだよなぁ。ここ最近…………」
「そりゃ、ISの勉強してたら聞くだろ」
「おお、それもそうか。流石サマー」
世界に二人目のISの男性操縦者が現れ暫く経った頃。
篠ノ之束は操縦者について調べていた。
「全く誰だよコイツ! いっくんならまだ解るけど、なんでこんなどうでもいいやつが束さんのかわいいかわいいISを使えるかな〜?」
これは由々しき事態だ。我が妹と一夏の感動の再会が、この男のせいで同性という友達に一夏の関心が取られるかもしれない。
「まあちょ〜っとだけ興味はあるかなぁ。ていうか此奴学校行ってない?」
身体測定の結果とか知能とか調べようと思ったのに何の情報も出てこない。
「はぁ〜、これだから田舎はやだねえ。戸籍制度が出来た頃から居ることになってんじゃん」
神社の神主の一族らしいし、襲名でもしているのだろうか? その結果同一人物扱いって。
「ま、なら自分で調べればいいだけだけどねぇ」
既に超小型ドローンを放っている。
小型でありながらバッテリーは数日持ち鮮明な映像を送り、詳細な成分分析も行えるドローンを作れるなど世界広しといえど束だけだろう。
まもなく村がある山に…………
「………は?」
ドローンの通信が途切れた。何の反応もしない。虫や鳥に壊されるようなやわな造りではないはず。
もう一度新たなドローンを放つ。やはり途切れる。今度は複数送り、外から観察する。
霧に触れた途端、機能を停止したようだ。
何だこの霧?
音波、赤外線、未だ人類には発明できていない技術も使い成分分析を行うが、まるで飲み込まれたかのように何の反応も返ってこない。詳細が分からなければ調べようがない。
調べに行く? いや、確か近々取材を受けるはず。その時村から出るから、調べれば………。
「………はぁ?」
血液型調べたら海水で、体を構築する元素の殆どが鉱物で細胞の形が植物?
何だこの結果。バグ? もう一度調べる。
今度は石油の血液に気体の体。細胞は魚と猫科動物が混じってる。後体重が56トンで身長が2ミリになってる。
そんな訳無いだろうが。
「まさか、ジャミング?」
適当なデータを送られているか、或いは正しいデータを送れなくなってる?
と、画面の向こうで男が『鋼の錬●術師』を読み始めた。途端に、身長や体重、密度の数値が安定する。
「水35L、炭素20kg、アンモニア4L、石灰1.5kg、リン800g、塩分250g、硝石100g、イオウ80g、フッ素7.5g、鉄5g、ケイ素3g、少量の15の元素………んん〜? なんか、妙。骨太でマッチョで貧血気味? ていうか体重に対して可笑しいでしょこれ………」
「そうなの? ちゃんとこれに書かれてる通りにしたのに」
「ま〜、人間を作れなくもないかなぁ…………あれ?」
「ん?」
いま自分は、誰と話した?
くーちゃん? いや、今のは男の声だった。
「どうした、さっきまでわちゃわちゃ五月蠅かったのに」
「…………は?」
「は?」
「いきなり人を調べようとするなよえっち。で、誰?」
「……束さんは、篠ノ之束だよ。お前、何?」
「何と言われても
やはり会話が成立している。盗聴されてる? 直ぐに部屋を調べるが、何も出てこない。自分でも発見できない盗聴器や監視カメラ?
信じがたいが、画面越しに話しかけるなんて非現実よりは現実味がある。
「あ、その格好あれだ。不思議な国のアリス」
「そうだけど…………何なの君、本当に。ちょっと興味湧いてきたよ。束さんが人に興味持つなんて久しぶりなんだ〜」
束を超える技術。興味がある。彼が作ったものだとしたら、ちょっと頭開いて脳を……………
「……………あれ?」
自分は、何してたんだっけ?
ここはどこだっけ? ていうか自分って誰だっけ?
「さあアリス、お茶会の時間だよ」「今日も君の素敵なお話を聞かせて遅れ」「僕だって話したいことがあるんだ! 今日は何もなかったんだぞ!」「それは素敵だ、なんでもない日乾杯!」
お茶会? そうだ、お茶会だ。
皆といっ緒におちゃをのむ。
「おや? 皆、みてくれ! 白い薔薇だ!」「女王様に殺されてしまう!」「色を塗ろう!」「ペンキは何処だ?」「この前城を赤く塗るのに使ってしまった」「じゃあ君の血を使わせておくれ」「よおし、使ってくれ!」
ぼうしやさんのくびがとぶ。しろいばらはまっかにそまる。
これでじょおうさまにおこられない。
あんしんしておちゃかいのつづき。
へいたいさんはもんをまもって、ねずみさんはよくねむる。いもむしさんはすこしいじわる、うさぎさんはあわててかえる。ぼうしやさんがわらってる。
たのしいおちゃかい。わたしもわらう。
なんでもないひをわらってる。
「あ、思い出した」
「どうしたいきなり?」
「サマーこれしのののののさんに渡しといて」
「篠ノ之な………兎のぬいぐるみ? これは、アリス?」
エプロンドレスを着て時計を持った白ウサギのぬいぐるみ。不思議な国のアリスがモデルだろうか? 兎がアリスの服を着ているけど。
「何でこれを箒に?」
「お姉さんだから」
「束さん