世界に勝った男   作:ジークフリード

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 クラス対抗戦は特に何事もなく一夏の優勝で終わり、■■は一夏とIS学園の外に出ていた。

 

「お待ちしておりました」

「お、おお…………メイドだ! バッキーって結構金持ちなのか?」

「昔から無償で働いてくれる奴が多いだけだ」

 

 IS学園を出ると車の前で待っていた少女に狼狽える一夏。銀髪の背が小さい女の子。でもなんで着物メイド?

 

「え? 今の使用人ってメイドが一般的じゃないの?」

「え?」

「え?」

 

 お互い不思議そうな顔をする一夏と■■。が、お互い特に細かいことを気にしないのでまあ良いかとそれ以上は何も言わなかった。

 

「まあ■■様が世俗とズレているのは何時ものことですし、私も■■様から頂いたこの姿を気に入っていますので」

 

 そう言って微笑む少女。

 

「ちなみに愛称はクロちゃんだ。俺がつけた」

「クロ?」

「お腹の中が真っ黒なのさ」

「お腹の中!? まずいじゃねえか、なんかの病気!? ………あ、腹黒って意味か…………腹黒なの?」

「はい、そうですよ」

 

 そうなのか。真面目そうなのに。

 ちなみに見た目はちっこいのに車の運転もできるらしい。メイドってすげえ。

 

 

 

「あ、お土産にアイスでも買ってきたいからコンビニ寄ってもらえるか?」

「かしこまりました………」

 

 一夏の要望でコンビニに止まる車。中が暑かったのか日でも浴びたかったのか、外に出る■■。携帯を取り出し漫画かゲームか動画の画面を開く。つまり、彼の視界はスマホ画面。故に気付かない。

 

 

 

 

「な、なんだぁ!?」

 

 ガシャァァァン! と車がコンビニに突っ込んだ。突然の出来事に狼狽する一夏は先程まで■■が立っていた場所であることに気付く。

 車が勢いよくバックし逃げ出すが、一夏は倒れた商品棚に駆け寄る。

 

「バッキー」

「よんだか〜い?」

「あれ!?」

 

 一夏が友の愛称を叫ぶとコンビニのトイレからバッキーが姿を表す。

 

「どうしたどうした? まるでケースに入れてた猫が冷蔵庫の中で飯でも食ってるのを見たような顔をして」

「………どんな顔だよ。ていうか、何時の間にトイレに入ってたんだ?」

「俺がそこに行くと決めた時、すでに行動は終わっている」

「ジョジョかよ……」

 

 何でトイレ入っただけのことをそんな格好つけて言うんだと呆れつつも、無事な姿を見て安堵する一夏。

 

「にしても轢き逃げなんて許せねえ! あ、いや。この場合轢き逃げなのか?」

「さあ? それよりだだんだん君とやらに事情聴取で遅れると連絡したらどうだ?」

「え? あ、そうか!」

 

 一夏は携帯を取りだし五反田弾に連絡を入れた。

 

 

 

 

 第二の男性操縦者が全世界指名手配されたニュースを見て姉はこれだから男は生きている価値がないと呟いていた。本当にそうだ、ろくに稼ぎもせず家族に贅沢もさせられない父を見ながら育った彼女は姉の言葉に同じ意見だった。

 自分が同じ働きをすればもっと稼げると、姉の上司が男でなくまともな評価の出来る女だったらもっと稼げると根拠もなく確信していた。根拠の必要のないほどに。

 姉はいった。女の権利を侵害する男性操縦者はさっさとどちらも殺してしまうべきだと。

 ある日姉の手足と内臓がペースト状になるまで磨り潰されて空っぽの腹に詰め込まれた死体になってベッドに放置されていた。

 彼奴の仕業に違いない。寝込みを襲う卑劣な男仲間に命じたに違いない。だというのに証拠もないと指名手配が解除され、自分の訴えも無視された。だから自分の手で捌きを下してやったのだ。

 

「ざまあみろ! ざまあみろくずめ!」

 

 高架下のトンネルを通る。速く、速く逃げなくては。あんなやつを、男を殺しただけで人生が台無しになるなど最悪だ。

 

「──!?」

 

 数メートルのトンネルの出口に人影が見える。道の端に佇む人影に不思議に思いながらも通り抜け…………

 

「──え?」

 

 ()()()()()()()()()()()()

 確かに出たはずなのに、中に居る。

 

「──!!」

 

 何が起きたか解らないが今度こそ出ようとまた高架下に入っていた。

 スピードを出して、入口。

 ゆっくり進んで、入口。

 バックして、出口。

 進んでも出れず、進んだぶんだけ戻っても出られない。

 車から出て出て走る。

 また入り口。車はそのまま。

 

「なんで!? 何が起きてるって言うのよ!?」

 

 幻覚? 催眠?

 とにかく、普通ではないことが起きている。出られない。このまま出られなければ、どうなる?

 

「────!?」

 

 最悪の想像が頭をよぎる。苦しい死に方だと聞いたことがある。そんな死に方、したくない。どうにか、どうにか逃げなくては!?

 と、高架下出口に人影を見つける。この不可思議な現象が始まった時にも見た人影。

 

「お、お前かぁ!!」

 

 原因に違いないと、車に乗り込みアクセルを勢いよく踏む。ガァン! と音を立て人影を壁と車で挟み潰した。

 

「あ、あは……は。こ、これで…………」

 

 割れたフロントガラスと飛び出したエアバッグ越しにぐったりした人影……銀髪の少女を見ながら安堵する。これで逃げられると扉を開け高架下から抜け出そうとした時、腕を掴まれる。

 

「痛■…………あ、痛いですね」

 

 車を片手で押しのけ少女が女の腕を掴む手に力を込める。

 

「ひ、ひぃ!?」

「!!」

 

 懐に忍ばせていたカッターを振るい少女の顔に切り傷をつける。頬が裂け、もう一発と振り上げ固まる。

 ドロリと溢れ出したのは、血ではなかった。黒いスライムのようななにか。

 肉も骨も血もなく、人の皮を何かが被り人のふりをしているかのよう………。

 

「あの御方がくれた皮を………中身を殺さないよう、余計な傷がつかないよう丁寧に剥いだのに…………」

「な、あ………ば、ばけも────」

 

 ゴポッと生々しい音を立て少女の口から溢れ出す黒い粘液。ギョロリと大量の目で女を睨み、包み込むように形を変え内側に突如として生えた大量の牙。

 アイアンメイデンさながら女を串刺しにした。

 

 

 

「やっぱり白人の肌とはあわない……でも強請るのも恐れ多いですし…………暫くは隠すしかありませんね」

 

 頬に大きなガーゼを貼った少女はそろそろ事情聴取も終わったであろう主の元へと戻った。




テキリ・リ!
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