世界に勝った男 作:ジークフリード
「え、バッキー泳げないのか?」
「泳げるよ。でも海には入れないんだ。約束だからね」
転校生が来ることもなく、平和に時が過ぎたIS学園。臨海学校が近づく中、同じ男として水着を買いに行こうと言い出した一夏は竜木の海で泳げないという言葉に驚いた。
男子も開放された大浴場で泳ぎまくっていたのに。と疑問を口にすれば竜木は何やら約束で海に入れないらしい。
「どんな約束なんだよ」
「う〜ん。別に破ってもいいけど、その後の漁獲量とかなあ…………」
相手は漁師とかだろうか?
「あ、ちょっと待って」
「どうした?」
「大丈夫、もう終わった」
アルベール・デュノアという男がいる。
彼は娘のシャルロットを守る為にIS学園に通わせようとしていたが、とある事件のせいで国家代表になんとか嵌め込むことしか出来なかった。
勿論、相応の立場だ。デュノア・グループでも早々に手は出せない。それでも、不安がある。
そんな時、ふと思い出したのは父から受け継いだ家宝。その昔、日本で見つけたらしい何かの神を象ったらしい木彫りのお守り。
神など信じないが、つい最近超常的な現象が世界各地で起きていた。神頼み………少しは確率が上がればいい。その程度の軽い気持ちだった。
次の日からシャルロットの暗殺を企んでいた者から、シャルロットの存在を知らないはずの者まで……何なら妻までシャルロットに優しくなった。
いや、妻が優しいのは当たり前だった。何せ、シャルロットの実母なのだから。
はて、実母? どうしてそんな当たり前の事を気にするのだろうか……。
そういえば自分は、どうして彼女と結婚出来たのだったか。確か家の方針で決められた許嫁が居た筈だが…………ああ、彼女が病気で死んだから、自由恋愛が出来るようになったのだった。
「いいことしたぜ」
「? よく解んねえけど、いいことするのはいいことだ」
「だろ、イッチーわかってる〜!」
へーいと手を叩く一夏と竜木。
「とりあえずバッキーは日焼けしないようラッシュパーカーでも………」
と、その時だった。
「ちょっと」
「ん?」
「これ、戻しておいて」
女の客が水着を渡してきた。指さした方向は遠いし、一夏達のいる場所は更衣室から逆方向。嫌がらせだ。わざわざ良くやる。
「それぐらい自分でやれよ」
「へえ、そういう事言うんだ?」
と、女は勝ち誇った顔で店員に視線を向ける。女性優遇のこの社会、女は声を上げただけで男の人生を終わらせられる。
「すいま……………」
「?」
「どうしたイッチー」
「このマネキン、変なポーズだと思って」
「不思議だねえ。あ、帰ったらポケモンやろうぜイッチー」
「良いなそれ。臨海学校にも持ってけねえかな」
「……………カードならワンチャンあるかも」
「でも残念だな。竜木と泳いで競争とかしてみたかったんだけど」
「う〜ん。まあ俺の方が上だけど、だからといって旧知の仲に迷惑をかけるのも…………」
「客は俺達だけなんだぜ? バレねえよ」
「そこが海である限りバレるんだよね。まあ、海行った時相談してみるか」
海には古い支配者がいるからね。簡単に殺せるけど、竜木は本物の支配者には住まわせてもらってる例として区分けはしっかりしてる。