怪力残念美少女とアホ(天才)美少女発明家に挟まれた男の話   作:不知火勇翔

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11話 予定外だぞコレ

「灯香さん。トイレ行きましょう」

 今日も今日とて学校だ。2限目を終えた所で優奈が灯香に声をかけた。俗に言う連れションの誘いだ。すると灯香はチラッと蓮を見た。蓮は黙って頷くと、3人でトイレへ向かった。

 この行動を見ていたクラスメイトは少しざわめいた(特にキズナ)が追うことはなく、そのまま見送った。

 ・・・単純に蓮は灯香の護衛として半径数メートルから出たくないだけなのだが、それを知っているのはこの学校で4人だけだ。

 トイレに到着した一行。灯香と優奈が女子トイレに入ると、蓮は外の壁に寄りかかり2人が出るのを待った。

 なんだかんだで2人のトイレ時間を把握している(変態ではない)蓮は気楽に構えていると、自分の隣に何かが存在することに気がついた。それも、普通じゃない気配だった。

 言うなれば英雄を越えた、神話級の気配。

 蓮は恐る恐る隣を見ると、隣の壁に一振りの剣が立てかけてあった。

「・・・・・」

 ここは何の変哲も無いトイレ前の廊下。蓮は2人がトイレへ行く前に、近くに何も無いか確認していた。その時に剣は無かった。つまり、2人がトイレへ行った一瞬の内にソコに現れたことになる。

 蓮は二度見した。

「・・・忘れ物か?」

 黒々としていて、所々に金があしらわれた剣が剥き出しの(鞘が無い)状態で放置されている状況。蓮は何気なく剣のツカに手を伸ばすと、突然放たれた大声が蓮の手を静止させた。

「触らないで!!!」

 声の発信源の方に蓮が振り返ると、そこには雪街セスナがいた。肩で息をしていて、走ってここまで来たことが伺えた。

「あー、セスナさん、でしたっけ」

 先輩に対してだいぶ失礼な物言いだったがセスナにそれを指摘する余裕は無く、単刀直入に言い放った。

「それは私の剣なの。返してくれるかしら?」

 物言わせぬセスナの気迫は、鬼気迫るものがあった。

「あ、うっす」と言った蓮は剣を掴んで渡そうと手を伸ばすが、再びセスナは大声を出して止めさせた。

「だから触らないで!!!!」

 蓮は再び硬直してセスナを見る。

「優奈ちゃん・・・」

「よいではないかよいではないかー」

 そのタイミングで灯香に抱きつく優奈と、それを引き摺る灯香がトイレから出てきたため、場が凍った。

 蓮と灯香は理解していないが、優奈とセスナは知っている。蓮の隣にある剣がどういうモノであるかを。

 2人にとってこの状況は完全に予想外だった。

 この黒々とした剣は、蓮がしかるべき(精神的な)覚醒をした時に出現するものだ。物語の終盤で魔王となった蓮が死ぬ思いをしながら勝ち取ったものであり、蓮を英雄級から神獣級へと押し上げるものであり、原作ファンからは『コレがあれば灯香は死ななかった』と言われるチートアイテム。それが序盤も序盤に出現するというイレギュラーに、優奈とセスナは固まってしまった。

 しかし、2人とも好きな男のために覚悟を決めていた2人だった。

「蓮さん!その剣掴んでください!」

 最初に動いたのは優奈だった。そして力一杯に叫んだ優奈とは対照的に、セスナは静かに告げた。

「剣と灯香に別れて」

 端的に放たれ命令とともに、物陰からジゼルとカンナが飛び出した。そして瞬きすら置いていくような一瞬でジゼルはワケが分からず固まっている灯香を殺しにかかり、カンナは剣に向かった。

「あ?」

 その瞬間、蓮のスイッチが入った。

 蓮は灯香を襲ったジゼルのナイフを腕ごと斬り飛ばすと、そのままジゼルの首を跳ね飛ばした。

「ごめんな」

 蓮が小さく呟いたが、それを気にする余裕のある人間はこの場にいなかった。

「ジゼルッ!」

 カンナが足を止めた一瞬。優奈が飛び出して剣に近寄った。しかし今度はセスナが突っ込んできて優奈と剣の間に割り込んだ。優奈は『未来視』の能力でセスナの攻撃をかわし、セスナに攻撃を仕掛けようとした所で背後から蓮に腕を回され、引き戻された。

「何してるんですか!」

「突っ込みすぎだ。多分優奈より相手の方が速い」

「だから何だって言うんですか!あの剣は、」

 優奈が蓮に食ってかかるが、蓮は知らない剣より優奈の命の方が大切なので取り合わなかった。

「あらあら。仲間思いだこと」

 地べたに転がるジゼルの頭部には見向きもせず、セスナは蓮を笑った。すでにカンナの手元には黒塗りの剣があり、一旦はセスナの勝利が確定したための、余裕たっぷりな笑いだった。

「うらやましい。私もソコが良かったですわ」

 本心から話すセスナに、カンナを含めて蓮達は押し黙った。

「あぁ。何故神は産まれる場所をルイン王国にしてくれなかったのかしら」

 残念そうに語るセスナは、未だに蓮に片腕を回されて動けないでいる優奈に目を向けた。

「優奈さん。ハーレム主人公様の唇はどうだった?」

「アナタには関係ないことです」

「あら、つれないわね。少しくらい話してくれても良いじゃない」

 優奈はセスナを睨みつけ、冷ややかに言った。

「・・・帝国はいつか駆除しなければいけないと思っていましたが、だいぶ予定が早まりそうですね」

 駆除、と表現した優奈をセスナは笑った。

「私達は害虫とでも言いたいのかしら?」

「酷く陰湿なウジ虫では?」

「・・・」

 セスナの笑顔に影がさした。

「教団?」

 蓮が聞くと、優奈は説明を始めた。

「世界の破壊者『魔王』を信奉する輩が一定数いるんですよ。そういう人達が集まった組織のことです。まぁ雑に言えば悪役ですね」

「それも『お告げ』か?」

「・・・はい」

「『お告げ』?ははっ、ハッキリ言ったらどうかしら?私はアナタの読者でしたって。私は転生者で前世がありますーって」

「は?」

「・・・」

「あら?隠すってことは、もしかして前世は彼氏がいたとか?もしかしたら杉木蓮は『替え』だった、とか?」

「そんなワケないじゃないですか」

「でも証明できないでしょう?あぁ、ベッドの上なら上手さで分かるかしら」

「いい加減にしてください」

 優奈の目は、灯香が刃を向けられた時の蓮と同じ顔をしていた。

「狙いは灯香さんですか?確かにその剣があったら灯香さんの暗殺は絶望的でしょうね」

 優奈はセスナに指を突きつけると、言い放った。

「その剣は、返してもらいますよ」

 カッコ良く宣言したが、蓮に拘束されたままだったのでカッコ良さは半減していた。

「・・・あの、離してくれますか?」

「灯香、パス」

「はいはい」

「ちょっ、怪力ごり「ん?」、・・・はい。申し訳ありませんでした」

「分かればよろしい」

 身内のイチャイチャを見せつけられて、セスナは怒りを通り越して逆に冷静になってしまった。

「・・・カンナ。退くわよ」

「だが姉様。ジゼルの死体は・・・」

「捨て置きなさい」

「しかし・・・」

「なら残って最強と戦いなさい。あと、情報を漏らす前に自決すること。分かった?」

「・・・はい」

 剣を渡したカンナが一歩前に出ると、セスナは一歩下がった。

「順当な判断ですね」

 背中を見せたセスナに優奈が追い討ちの言葉を浴びせる。

「どうしてソッチ側に残っているのですか?うらやましいなら手を「できるわけがないわ」・・・」

「・・・アナタの考えているほど帝国は甘くなかった。それが残る理由。アナタもせいぜい覚悟しておくことね」

 それだけ言ったセスナは剣を持って曲がり角を曲がり、廊下にはカンナだけが残った。

「・・・ジゼルの死体を持ち帰りたいのだが、当然ダメだよな?」

 カンナが声をかけた。あまり期待していない顔だった。

「・・・まぁ、当然捕まえれるなら捕まえるぞ」

 蓮が返すと、カンナは「そうか・・・」と言って腰にある剣を抜いた。

「・・・姉様から色々と聞いている。英雄級というその腕前を見せてもらおうか」

 蓮も粒子能力で『無効化』できる粒子を固めて作った剣を構え、灯香と優奈が距離を離した。

 勝負は一瞬。カンナの額から汗が零れ落ち、地面に落ちた瞬間に第三者が介入した。

「馬鹿者が!何をしているのだ!」

 声の主は、3人の担任教師の『胡桃千佳』だった。

「校内での戦闘は禁止だ!それを、」

 胡桃はそこで、転がっているジゼルの死体に気づいた。ジゼルは雪街なのでカンナの親族。そのカンナが蓮と刃を向け合っている状況から蓮が悪いと判断した胡桃は蓮に詰め寄った。

「貴様、状況を・・・」

 詰め寄った胡桃はスイッチの入った蓮と目を合わせてしまい、言葉を失った。

「ここだ!」

 カンナが叫んだと同時に一瞬で煙幕がまかれた。蓮は廊下中に粒子を散布して感知できているため追おうとしたが、「何をしている!」と胡桃に腕を掴まれて急ブレーキをかけられたため、そのままカンナを逃がしてしまった。

 

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