怪力残念美少女とアホ(天才)美少女発明家に挟まれた男の話   作:不知火勇翔

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日本の一部が元々ムー大陸だったって話を知ってますか?そういうワケなので、宇喜多直家さんが『しりとり』に出てきます。今後は日本人も出す予定です。多分。


3話 決着

 海から先が存在しないとされ、今いる大陸が世界の全てとされる世界。渡河の問題などから大帝国時代に作られた『大陸鉄道』が流通の中心的存在となっていて、大帝国が滅亡した後も『大陸鉄道』は今も走り続けている。

 そんな『大陸鉄道』だが、『ルイン王国』から外に出ることを許されなかった3人にとっては一切関わりの無いものだった。強いて言うなら、蓮や優奈が暗殺の場所として利用したぐらい。在るのは知っているが鉄道に乗ったことは無い3人にとって、駅舎とSLは初体験の塊だった。

「・・・デケェ」

 駅舎の天井を見上げた蓮は、呟いた。

 SLも駅舎も大帝国時代のものなので、まずSLはマンション3階分くらいの高さがあり横幅も学校の校舎くらい広く、駅舎はSLに見合う大きさに作られるため更に大きくなっている。電車がマンションくらい大きいと考えてもらったら問題ない。

「大きいね・・・」

 空や山など、自分が矮小に思えるくらい大きなものを見ると人間言葉を失うものだが、今の蓮と灯香がまさにソレだった。対して優奈は宇宙船を設計から手がける発明家のため、「まぁ作られた用途を考えれば順当な大きさだと思いますよ」と特に何かを思うことはなかった。

 キャリーバックを引いて巨大SLに乗り込んだ3人は乗車券に書いてある座席を探したが、乗車券に書いてある場所は個室だった。

「個室みたいですね」

「みたいだな」

「個室に押し込まれる男女3人、何も無いハズもなく・・・ハッ!」

「無いから」

「流石に汽車の個室ではね・・・」

「てか、もう何も無いまま10年だぞ。今更だろ」

 優奈は色々言っているが、蓮と灯香の間に肉体関係は無い。友達以上家族以上、恋人以上で夫婦未満という謎の関係。長く関わりすぎて、獣欲を見せることを忌避しているというのが2人の関係だ。優奈はその均衡を崩そうと奮闘しているが、上手くいっていない。

 座り方は蓮と灯香が窓側、優奈が灯香の隣に座った。荷物を起いて一段落すると、灯香が窓から見える『ルイン王国』を眺め、言った。

「最初の方はこんな国出たいって思ってたけど、この歳まで生きていざ出るとなると、なんだか寂しいね。寂しくない?」

 灯香の言葉に、蓮が微笑んだ。

「・・・そうだな」

 寂しい、ということは少なからず良い思い出が残っているということ。蓮は笑顔が零れそうなのを必死に抑えた。

「まーたイチャイチャしてますよ」

 優奈は灯香の隣から蓮の隣に移動すると、蓮の腕に自分の腕を絡ませた。蓮が何事かと優奈を見ると、優奈は上目づかいで言った。

「前の貸しがまだ残ってましたよね。今使います」

 そのままギュッと蓮の腕を抱き締める優奈。わざと胸を当てるテクニックを見せる優奈だったが、胸がほぼ無いに等しいので蓮に対しては無駄だった。

 これにムッとした優奈は耳元に顔を寄せると、「キスぐらいは許してくれますか?」と甘々なボイスを放った。これには蓮だけでなく灯香も顔を真っ赤にして優奈を見た。

「ちょっ、優奈ちゃん!」

「良いじゃないですか。別に減るものでもないですし」

「そういう問題じゃ・・・」

「蓮さんはどうなんですか?OK出しちゃいます?」

「いや勘弁して。おじさんに殺されるから」

「またその言い訳ですか・・・」

 優奈が何かを言おうとした所で、アナウンスがそれを遮った。

<えー、『帝都スフィリア』行き、発車いたします。ご注意ください>

 プシューッという音とともに、ゆっくりと汽車が走り始めた。ガタンゴトンと一定のリズムとともに車内が揺れる体験は蓮と灯香には新鮮で、流れていく景色は旅立ちの気分を助長させた。

 

 

☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆

 

 

「ケール」

「る、ルー」

「瑠璃色」

「蝋燭」

「空気」

「金貨」

「関羽」

「宇喜多直家」

「ねぇ人名ってアリなの?」

「え、アリじゃねぇの?」

「だって宇喜多さんだけで結構あるよ?」

「あ、そっか。ナシだな」

 修学旅行には修学旅行のテンションがある。今の3人はまさにソレで、ゲームをしない3人にとって汽車の個室という場所は退屈でしかなく、手漉きなので仕方なく『しりとり』を始めて他愛の無い会話を続けていた。

 窓の外は平野が広がっていて特筆するべきものは何も無く、10分で3人が飽きてしまったため今の状況となっている。

「ってか『しりとり』も飽きたな」

「ですねー。他のゲームしましょう」

「トランプも無いけど、本当に何する?」

「粒子で作ったら分かるんでしたっけ」

「トランプを?うん。100分かるよ」

 蓮と灯香の『粒子能力』(超能力みたいなもの)は外皮から特殊な粒子を撒き、その粒子を固めたり広げたりする能力だ。撒いた粒子がどこにあるかは本人の感覚で分かっていてある程度の操作も可能、その撒いた粒子をトランプにするという優奈の案だが、作ったトランプに何が印字されているか2人には感覚的に分かってしまうためゲームにならないのだ。

「じゃあジェンガでもします?」

「秒で崩れるだろうな。汽車の中だし」

「お弁当もさっき食べたもんね」

「やっぱ『しりとり』か?」

「どうせ蓮の負けだけどね」

「結託して『プ』縛りは反則だろ」

「戦略の内ですー」

 本当に他愛の無い会話をしていると、突然金属が擦れ合う爆音を出しながら、汽車が急ブレーキをかけて止まった。

 つんのめって蓮が灯香にダイブしかけたが、蓮は窓枠にしがみついて耐えきった。

「灯香さんウェルカムしてましたよ」

「無茶言うなって」

「ごほん。それで?汽車が止まったってことは、何かあったのかな?」

 灯香の咳払いでさっきまでの笑顔を消した3人は、窓から外を見た。しかし外は変わらず何も無い平原だけ。

「待ってたら動き出す、かな?」

「灯香さん、蓮さん。『お告げ』いいですか?」

 優奈の粒子能力は『未来視』。未来を視る能力だ。そして『お告げ』というのは、優奈が知る未来の説明タイムのことだ。

「え、この未来も見たの?言ってよ」

「言ったらつまらないじゃないですか」

「つまらないって・・・」

「それで?原因は?」

「旧王国軍残党の仕業です」

「うっわ」

「ここは線路があるだけの平野で退路は無し。助けも呼べない。まさに絶好の機会じゃないですか」

「だな」

「狙いは、もう分かりますよね」

「俺達3人だろ?マジ面倒だな」

「まぁ普段通りに門出を祝福してくれてると思ったら良いんじゃないですかね」

「祝福じゃないだろ・・・」

 げんなりしながら蓮が席から立ち上がると、灯香と優奈も立った。

「先頭車両にいるのか?」

「ここより後方の車両にも数人。挟撃するつもりですよ」

「なら2人はソッチを頼む」

「うん。分かった」

「雑巾を捻じ切る怪力の出番ですね」

「そういう言われ方されると複雑だね・・・」

 なんだかんだ3人とも慣れているため、テキパキと決めて行動に移したのだった。

 

 

☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆

 

 

 車掌さんがアナウンスで、トラブルで停車したから席を立たないで欲しいと呼びかけている。そんな中で車内を逆走する女の子が2人。灯香と優奈だ。

 優奈は何食わぬ顔で座っている客に近づき、いきなりスタンガンをくらわせた。

「何をしてるんだ君達!」

 見ていた乗客が騒ぎ立てると、優奈は眠らせた男のコートをめくり、隠されていた拳銃を乗客に見せた。

「こういうワケですので、座っててください。あと5秒で終わります」

 優奈が乗客を言葉で宥めていると、突然優奈の背後の席に座っていた男が拳銃を構えた。しかし発砲することはできず、目ざとく気づいた灯香によって拳骨をくらって昏倒した。

「ナイスです灯香さん」

「ん。あと何人?」

「あとは6号車の3人だけですね」

「結構少ないね」

「まぁ残党ですから」

 優奈は目を細め、蓮がいるであろう先頭車両の方向に目を向けた。

「問題はアッチです」

 

 

☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆

 

 

 『願いや思いの塊』と聞いて、何を思うだろうか。

 腐敗、汚臭、はたまた煌びやかな黄金。まぁ大抵が現実を歪めるものだと思う。人間の欲を強引に叶えるということは、そういうことだ。

「見えるかぁああ!?この!この輝きが!」

 舌を出すぐらいの絶叫を放つ、薄汚れた成人男性。彼が今回の賊だった。汽車の運転手の首もとに紫色の光を放つ禍々しい剣を突きつけ、ノコノコとやって来た僕に彼は虚ろな目を向けた。

「これ、これがこれがオレ達の恨みだ!」

「恨み?」

「オレの粒子能力は『思いの集積』!オレのこの剣は幻じゃない!これが、これがこれがこれがオレ、達の輝きだ!」

 街中を歩いていたら一発で連行されそうなぐらい狂った言動をする賊は運転手から剣を離し、今度は蓮に向けた。

「輝きに、消えろぉ!」

 素人の踏み込み。素人臭い、脇を締めていない大きな振り。蓮は自分の粒子能力で『粒子の剣』を作ると、向かってくる剣に自分の剣をぶつけた。結果スパッと紫色の剣が斬れ、蓮が持つ剣は傷1つ付くことはなかった。

 自分の剣が折れたのを悟った賊は目を見開くと、その場で膝から崩れ落ちた。

「・・・」

 賊にとって、それは残酷な結末だった。

 賊の言った通り、紫色の光はまさに『思い』そのものだった。前に進めない者達の思いは歪んでいたが、それでも正真正銘『思い』であり『願い』だった。それがこうもアッサリと切り裂かれたという現実は、彼にとって受け入れがたいものだった。

「優奈の話だと、お前『旧王国軍の残党』なんだってな」

 せめて辛いことを聞くぐらいはしようと思い、語りかける蓮。賊は失意の捌け口を見つけたことで息を吹き返し、再びがなりたてた。

「お前は!お前は王国を転覆させた大罪人だ!その自覚はあるのか!?」

「無い。」

 蓮は突き放すように断言した。

「俺は言われるまま戦っただけだ」

「お前は、」

「俺の話はいいんだよ。お前はどういう奴でどういう経験をしたかって聞いてんだ」

「オレの、オレの話?」

「それぐらいは聞く。それで?そんなに成った経緯は?」

「オレ、の?オレは両親を殺されて、それで、」

「誰に殺されたんだ?」

「誰、お前達だ。黒服の奴らだって聞いた」

「又聞きかよ。しっかり確認したか?ワンチャン旧王国軍が仕組んだ可能性は?」

「・・・」

「『思いの集積』。都合のいい能力だなって思ったけどやっぱりか。ココに来ての登場ってのも、もう不要になったってことだろ?」

 『旧王国軍残党』とは文字通り、蓮が反乱軍時代に戦った正規軍の残党だ。彼らは支柱となる戦士を失って瓦解していった。なので死に物狂いで英雄を探していたハズだ。しかし現在は裏切り者が出るくらい勢力が弱まっているため、この時期になって秘蔵の宝物を蔵出ししたと蓮は推測していた。

「それで?それだけ、って言うのは違うか。ソレがキッカケでこう成ったのか?」

 蓮は地面に胡座をかいて座ると、座ったままの賊と目を合わせて話を続けた。

 蓮も才能を見込まれて強制的に参戦させられた身だ。同情した蓮は、彼と友達には成れなくとも事情を把握するぐらいはしようと思ったのだ。

「・・・お前」

 

 

☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆

 

 

「私を置いて別の国へ行くなど、あってはならない!終わらそんぞ、絶対に私が『ルイン王国最強』を打ち倒すのだ!」

「いいや、お前はココで終わりだ」

 宗教めいた装いをしている男の叫びを、臥煙は冷ややかな目で見ていた。

「杉木蓮!奴は!奴だけはワシの手で・・・」

「まぁ気持ちは分かるがな、お前のやり方は『悪の道』だ。拘束させてもらう」

 他国にまで勇名を轟かせた蓮は、若く勇ましく強い英雄としてルイン国内で絶大の人気を得ていた。男なら一度は蓮に憧れ、スーパーヒーローと変わらない認知をされていると言えば、その熱量が伝わるだろう。それぐらいに蓮は強かった。

 今回の主犯のように、眩しさで目を焼かれた人間も少なくはない。

「不干渉の取り決めを破ったんだ。お前達は『解散』だ」

 臥煙が告げると、臥煙の背後から黒服の男達がゾロゾロと現れ、主犯を含めて拘束していった。

「・・・ようやく、決着か」

 それは長きに渡る旧王国軍との争いが、決着した瞬間だった。

 

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