怪力残念美少女とアホ(天才)美少女発明家に挟まれた男の話 作:不知火勇翔
近くにいることが当たり前だった。
少なくとも昼までには3人が揃っていた。寝直した3人が揃ったら卓を囲って遅めの朝食を食べる。他愛の無い会話をして全員が生き残っていることを心の中で祝う。それが臥煙のルーティーンだった。
しかし今日は、どんなに待っても3人が揃うことはない。
中城臥煙は誰もいなくなった部屋を眺めて、感慨に浸っていた。
学園への編入を3人に話した時、臥煙の心は盛大に揺れていた。遠国に送り出すと決めた日はもっと酷かった。
臥煙にとって3人は命より大切な宝物なのだ。それを目の届かない所へ送るなど、少なくとも反乱軍時代には絶対に無かった発想だ。
しかし王国を倒した後。役目を失った3人がただ強いだけの世間知らずに落ち着いたのを見て、臥煙は親としての責任感が湧いてしまった。
『このまま日常が続けば良い』。蓮の言葉は臥煙の脳神経を破壊した。ルイン王国の闇しか知らない子供にしたのは自分。親としての責任感が暴走した臥煙は、しかし蓮の社会的立場からルイン王国での社会勉強を諦めた。あまりにも有名すぎるのだ。恐らく店先に立てば、四六時中戦いと関わる生活を続けてしまうだろう。それでは『普通』を学べない。
熟慮に熟慮を重ね不都合を洗い出した臥煙は、『編入』の話に飛びついた。
国家が生徒を出し合う学校。普通の学校とはほど遠い環境だが、世紀末なルイン王国よりは幾分かマシだと臥煙は判断した。
「良かったのか悪かったのか・・・」
ふと部屋の中で写真立てを見つけた臥煙は、写っている小さい頃の3人を眺め、微笑んだ。
「・・・最初は小さかったのに、大きくなったよな、アイツら」
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闇夜の灯火。夜道で切望するものから転じて、本当に欲しいもののたとえである。
『中城 灯香』という名前の『灯(とも(す))』とはここから来ていて、名前を付けた中城臥煙は「誰かに灯りを渡せる子になって欲しい」という願いを込めた。しかし現実は非情であって、誰かに何かを与えられるのは余裕のある人間だけだ。
幼少期、臥煙と各地を転々としていた『中城 灯香』にそんな余裕は無く、自分のためだけに生き、奪い、殺してきた。過程や事情がどうであったにせよ、幼少期の灯香は自分が酷く醜い存在だと感じるようになっていった。
そんな時、ある男に臥煙と共に拾われて、蓮と出会った。
『杉木 蓮』は元々泣き虫だった。
泣けば飛んでくる優しい親に育てられたためだ。甘えん坊に育った蓮だったが、彼は早くに両親を失った。事故、とされている。あまりにもソレが突然だったため、蓮は『替え』を求めた。当時6歳だったため、それは仕方ないことだった。
そんな『替え』を求めた『杉木 蓮』と、罪悪感を感じていた『中城 灯香』。需要と供給が一致した彼らは、臥煙が驚くほど仲良くなった。そして泣き虫な蓮の灯火となった灯香は、人の温かさを知った。
・・・というのが蓮と灯香の関係だ。あの時期臥煙は余裕が無くて半ば2人を放置していたため、仲良く話す2人を見て安心したものだ。・・・まぁ仲が良すぎるのは玉に瑕だが。
一方、スルッと収まった蓮と違って優奈との出会いは鮮烈だった。
まず優奈は反乱軍のアジトに正面から、しかも単身で入って来た。
反乱軍の兵士は能力者かと勘ぐったが、蓮に一目惚れしたから仲間に入れて欲しい、と大声で宣言した優奈の迫力は兵士たちの疑心を一瞬で吹き飛ばしていた。
あまりにもあんまりなファーストコンタクト。・・・優奈の奇想天外さがよく現れていた。
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写真には、ダブルピースの優奈。隣には、恥ずかしがりながら小さくピースする灯香。隅の方に蓮が写っていた。