怪力残念美少女とアホ(天才)美少女発明家に挟まれた男の話 作:不知火勇翔
色々あったが、結局夕食はファミレスに落ち着いた。蓮と向かい合うようにして灯香と優奈が座り、何にしようかとメニューを選んでいると、突然蓮の隣に長身の男が座った。
金髪で目つきは鋭く、ついでに眉毛も鋭い。自信に満ち溢れたいかにも主人公な男は驚きすぎて固まっている3人に対して自己紹介を始めた。
「オレの名前は『雪街ジゼル』だ。よろしくな」
「ちょっっっと待って。一応私たちの席なんだけど」
「空いてんだから座っていいだろ?なぁ?『東の大英雄』様」
しっかりと蓮を見て言うジゼル。こういう趣向(のふっかけ)もあるのかと関心しながら、蓮は言葉を返した。
「今すぐ去るか、死ぬか。どっちか選べ」
「おーこわっ」
肩をすくめたジゼルは、しかし席から立ち上がらなかった。
「別に殺し合いをするために来たんじゃねぇんだ。名高い『東の大英雄』様のお考えをちょっくらご教授いただきたくてな」
「はぁ?」
「雪街の名前に聞き覚えはあるか?まぁ、この帝国の皇族の名前なんだけどよ、」
蓮の返答も聞かず、ジゼルは話し始めた。
「まぁ権力がらみの策謀が多いワケだよ。暗殺、脅迫、クスリやその他もろもろ。だからまぁ、オレは生きるために実のアニキを二回殺した」
生きるためだけに、だ。と言ったジゼルは少し寂しそうにした。
「疑心暗鬼になった弟を殺した辺りで、オレは考えるようになった。『意味』ってやつをな」
「命に意味を求めても仕方ないですよ」
優奈が口を挟んだ。
「手榴弾1つで人は死ぬんです。私の両親のように」
「あー違う違う。オレが考えてたのは、オレの力の『意味』のことだ」
ジゼルは優奈を放置して続けた。
「俺の粒子能力は『超再生』。漫画みたいに傷が治る能力だ。だからまぁ、オレは不死身と遜色ないスペックを有している。しかしだ」
ジゼルは天井を見上げた。
「オレの粒子能力じゃあ肉壁には成れても、手を伸ばして誰かを守るには不向きだ。しかも自分の傷しか治せないときた。
・・・なぁ『東の大英雄』様よ。アンタは自分の力の『意味』とか、『使い方』についてどう考えてるんだ?」
ちゃんと聞いていた蓮は、少し驚いた顔をして言った。
「・・・力の使い方、か。考えたこともなかったな」
「は?」
「俺は灯香と、あと優奈か。あとおじさん含めて数人かな?それ以外はどうでもいいからな。すっぱり諦めるぞ」
あっけらかんとして、指を折って数える蓮。ジゼルにとって蓮の言葉は、一番有り得ない道だった。
「・・・ジゼル、だっけ?お前は人質をとられたことはあるか?」
「・・・ある。何度もな」
「どうした?」
「・・・どうもできなかった」
「だろ?それは人質をとった側に返す気が無いからだ」
「だから諦めるのか?救える命は多くないとか奇麗事を並べて・・・」
「いや。どうでもいいから見捨てる。それだけだ」
「おい!それは、」
「ちょちょちょっっっと待って!待って!」
今にも立ち上がりそうなジゼルを言葉で制した灯香は、蓮の言葉を補足した。
「別に人質をとられて、何の策も打たずに諦めるワケじゃないよ?ただ、蓮は諦め慣れてるって話をしたかったんじゃないかな?」
「諦め慣れてるだと?」
「まーな。人質しかり、嘆く民しかり。気に病むくらいなら今すぐボランティアしてこい。本当にそういうのは、気持ちの整理ができてないだけだ。大人になれば分かる」
「アンタ、オレより年下だろ・・・」
「身の丈に合った住まいで生きろ。俺からはそれだけだ」
「・・・」
今になってようやく、蓮とジゼルの目が合った。ジゼルから見て蓮の目に諦観の色は無く、あるのは年相応の輝きだけだった。