高梨警備保障──D.D.C.Uとの共同依頼が終わってから数日後、普段とは非にならない程の報奨金が入った我ら狩谷相談所は久々の定休日……久々に俺は狩谷の家までやって来ていた。正確には狩谷の家ではなく家の地下にある研究室なのだが
だが、決して遊びに来たわけではなくわざわざここに来たのは狩谷の研究に付き合うためだ
「それじゃあ門原くん、お願い」
「おう」
今回やるのはデモンズドライバーの持ってる機能の一つ、デモンズに変身した状態で複数のスタンプの能力を行使するシステム──ゲノミクスの検証だ
「狩谷、ゲノミクスってのは最大でスタンプの力を何個まで使えるんだ?」
「システムの説明によると最大で4つ、その状態をフルゲノミクスって言うみたい」
「フルゲノミクスか」
この前の契約者が使っていたI型悪魔、ただでさえイレギュラーな形態であって毎回あのタイプの敵が現れる可能性もなくはない……もしかしたらもっと強い存在が現れる可能性も高い可能性が捨てきれない以上こっちも使える機能は全部使えるようにしていた方がいい
「それじゃあ一つずつ検証していこう」
「わかった、まずは一つ目だな。何を使えばいい?」
「まずはこれからお願い」
そう言って狩谷が渡してきたのはモグラのレリーフが彫られているバイスタンプ──モグラバイスタンプか。軽く渡されたスタンプを確認した後にいつも通り天蓋のボタンを押す
『モグラ』
【Add】
【Decide up】
【モグラゲノミクス】
スパイダーバイスタンプを使う時とは違う動きでモグラバイスタンプを読み込ませると、右腕に緑と赤、そして若干のオレンジの意匠が入った少し毒々しいドリルのようなアイテムが武器が装備される
「まず一つ目は問題なしで使えるっぽいな」
「そうだね、それじゃあ二つ目使って見よう」
「次は……バッタか?」
「うん、お願い」
続いて渡されたバッタバイスタンプをさっきのモグラと同じ手順を使う、これも問題なく使用することが出来た。足は普通の脚ではなくバッタ特有の脚へと変化した。しかし単独使用に比べると身体にかかる負担は相当だから長時間の使用は無理っぽいな
「門原くん、次は……って大丈夫?」
「あ、あぁ……大丈夫だ、頼む」
「わ、わかった。次はこのスタンプを使ってみて」
そう言って渡してきたのはサソリのレリーフが書かれているバイスタンプ、それを使おうとしたが台座に一度押印し液晶パネルにもう一度押印しようとしたが、エネルギーが反発し押印することが出来ない。それでも無理に押印しようとしたがスタンプそのものが反発しその際に発生したエネルギーによって変身が強制で解除された
「門原くん! 大丈夫!?」
「あ、あぁ……大丈夫……」
『今の貴様では二つ使うのが限界だ』
腰に巻かれていたベルトの液晶に目のようなドットが出現し、言葉を発しはじめた。言葉を発した主はベルトの中に潜み、今の俺と”仮契約”をしている悪魔──ベイルだ
「久々に声を聞いたと思ったら、わざわざ小言でも言いに来たのか?」
『俺が貴様に小言を言う必要はない、俺たちは利害の一致で契約をしているだけだからな』
「そりゃそうだ……でも、それじゃあわざわざ今の俺が二つで限界なんて言いに来るのはどういう要件だ」
「あっ、門原くん。ベルト貸して」
狩谷の言葉を聞いた俺はベルトを渡すと、彼女はデモンズドライバーとパソコンのケーブルを接続して解析を始めた……のだがベイルはそれを気にした様子はなく言葉を続ける
『貴様に無謀な真似をされたらこっちの目的が達成できなくなるからな。忠告をしておく──”今の”貴様では二つのスタンプを使うのが精一杯……いや、一つのスタンプの能力を引き出すのが関の山だろうな』
「つまり、二つ使うのは危険ってことか?」
『その通りだ、無駄に自分の寿命を削りたくなかったら精々使うスタンプは制限する事だ』
それだけ言い残すと液晶の中へと消えていった。狩谷もそれを見た後に軽く息を吐いて俺の方に目を向けてくる
「ごめんね、ベイルがあんな言い方して」
「別に、口が悪いだけで案外俺の身を案じてくれてるみたいだし、コッチに関しては完全に俺の問題だからな……コーヒーでも入れてくるよ」
ベイルの発言を謝罪してくる狩谷に対してそう返事をすると、コーヒーを入れる為に研究室を出て地下から1階に上がる……その途中で、俺はスパイダーバイスタンプを自身の身体に押印した
「…………」
しっかりとスタンプは押印している筈なのに、他の契約者と同じように悪魔が出てくる気配はなかった。これがベイルの言っていた”今の”俺という言葉の正体
──今の俺には、悪魔が存在しない
翌日の狩谷相談所、土曜と言うこともあり学校が休みな八乙女も含めて俺たち三人、書類仕事に従事しながら新しい依頼を待っていた……と言っても、依頼が来る方が稀ではあるのだが──
「そう言えば、ずっと気になってることがあったんですけど」
「気になってること?」
「はい、何だかんだ私もこの事務所で働き始めて数週間。並大抵の事には慣れてきましたけどまだまだ聞いてない事多いんですよね、特に悪魔の事とかまだまだ分からないこと尽くしですから」
そう言えば、確かに悪魔の事については八乙女に対してしっかり話したことはなかったな
「悪魔の種類については話したんだっけか
「はい、えーっと確か兵士型、生物型、それとこの前の異常型ってのがいるんでしたっけ?」
「そうだな、書類とかでの表記はSoldier、creature、Irregularの頭文字を取って表記されてたりするな……まぁ現場だと生物型とか兵士型って呼ぶことの方が多いけど」
この二つ、基本的な扱いは一緒でどっちで書いても問題はないっぽいんだけど、いざ報告書とかで書くとなるとS型とかで書いてるのが当たり前になってるから結構面倒なんだよな
「まぁそこは聞きましたけど、そもそも悪魔って何なんですか?」
「……そうだな、とりあえず悪魔についても説明しておくか」
良い機会ではある、ということもあって八乙女に対して悪魔についてを説明しておくことにする
「そんじゃ、悪魔についての説明を始めるぞ」
──悪魔、人間の内面に存在するエネルギー生命体。普通に生活するだけであれば人間の持つ負の感情を食糧にしている無害な存在だがバイスタンプを用いて契約をすることで現実世界に出現する
「エネルギー生命体って、どういうことですか?」
「あぁ、人って必ず物心つく時期があるだろ」
「ありますね」
「人間は物心つくときに自分の中に入ってくる情報の濁流を無意識のうちに精査して不要だと思った部分を切り離す。その切り離した部分が悪魔になるんだ」
まぁここら辺の話は所長の受け売りなんだが説明をするだけならまぁ問題はない
「でも、それってなんか怖いですね……小さいときからずっと化け物と一緒なんて……」
「化物って呼び方は、少しだけ違う」
「違うんですか?」
「あぁ、悪魔が化物の姿で現れるのは基本的にスタンプが原因なんだ──」
──悪魔は本来固有の形を持たない、でもバイスタンプを使って契約するとスタンプを通路にして現実世界に現れる。そんで現実世界に現れるときにスタンプの中にデータとして保存されてる生物の遺伝子が混入するから現実での姿が人型の化け物って訳だ
「一応説明したけど……わかったか?」
「正直さっぱりです」
「あはは、まぁ正直難しいことだからね、そこら辺は」
言葉を挟んできた所長は俺と八乙女にココアの入ったマグカップを渡してきた。まぁ俺も最初に聞いた時はこんがらがってたから仕方ないっちゃ仕方ないけど
「でもね八乙女さん、悪魔って必ずしも怖い存在じゃないんだ」
「そうなんですか?」
「うん、二重人格ってあるでしょ」
「虐待とか受けたら自分の中にもう一つの人格が生まれるっていうアレですよね?」
「そう、私思うんだ……アレは悪魔が守ってくれてるんじゃないかって」
「悪魔が……守る?」
「うん、悪魔ってみんな人間以上の力を持ってるけどそれ以上に不安定な存在なんだ……大抵の人は大人になると同時にその存在を知できなくなる」
そう、人間の中に存在する悪魔は力以上に存在が不安定。小さい頃にイマジナリーフレンドとかそういう形でその姿を認識することが出来ても成長していくうちにその存在を認知できなくなっていく……そして、大抵の悪魔は心の片隅でひっそりとその存在に幕を閉じる
「そうは言っても、現実に現れた悪魔はスタンプの影響で凶暴化してる、内側にいるときは無害でも外に出て凶暴化しちまったら倒すしかない……端的に言うと暴走した悪魔は危険だから倒してるって感じだな」
「成る程……でもやっぱり、難しすぎてピンとこないですねぇ」
「結局の所、俺たちが言いたいのはもし自分の悪魔と向き合う機会があったらしっかりとその話を聞いてやってくれって事だ……自分を惑わす悪魔の囁きに聞こえるかも知れないが、付き合い方間違えなければきっと助けになってくれるからな」
と、ここまで話したところで事務所の扉が叩かれる……どうやら新しい依頼人がやってきたらしい
【お詫び】
前回の用語解説の際に、C型悪魔をB型悪魔と表記していたことをお詫び申し上げます
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今回は説明だけになってしまったのですが、Bパートから依頼に移行します
追記.一番上にデモンズReの用語まとめのようなものを作成しておきました