ハリネズミデッドマンの襲撃にあった俺たちは、花菱タクトの務めている会社まで向かった。会社自体はそこそこの大きさであった為俺たちは受付に座っていた女性に声をかける
「すみません、狩谷相談所の者なのですが」
「はい、ご用件は何でしょうか?」
「実は花菱タクトさんという方からストーカー調査の依頼を受けていまして。よろしければ彼の同僚から少々お話をお伺いしたいのですが」
「……少々お待ちください」
一応用意していた名刺を渡しながら受付の女性にそう言うと、少々お待ちください。という言葉を伝えられた後、どこかに連絡をした。数分だけ待たされた後受話器を置いた女性は改めて俺たちの所まで戻ってくる
「担当の者を及びしましたので少々お待ちください」
女性はそれだけ言うと元の業務に戻っていった。流石にずっと受付の前で待つわけにはいかないのでロビーの隅の方で担当が来るのを待つことにする
「……なんか、先輩メッチャ怪しかったですね」
「やっぱ、そうだよなぁ」
正直言っててめちゃめちゃ怪しいよな今の俺とは思った。だって急に会社に来て話を聞かせてくださいは真面目に不審者でしかないからな……警察呼ばれたらどうしよう。等と考えていたのだがそんな心配は不要だったようで、俺たちの前に現れたのはスーツ姿の男性。彼は俺たちに軽く頭を下げる
「えっと、貴方たちが花菱の話を訊きたいって言う?」
「はい、狩谷相談所の門原です」
「同じく八乙女です」
「花菱の同僚をしている村上です……ここでお話しをするわけにもいきませんし、とりあえずこちらに」
流石にこの場で話をするわけにはいかなかったのか、村上さんは俺たちを会社の中の応接室まで案内してくれた
「それで、お二人は花菱から依頼を受けているとのことですが──」
「えぇ。現在彼からストーカー調査の依頼を受けていまして……最近彼の周りで何か不審なことが起きていたりしていませんか?」
「そう言ったことは特に……彼、本当に真面目なので」
「それじゃあ、仕事終わりとか、一緒にご飯行ったときに花菱さんが誰かに話しかけられたりは──」
「そう言ったことも特には……」
やっぱり簡単に尻尾を見せないか、正直ストーカー被害となると浮気調査とかと違って明確に犯人側の情報がないってのが厄介……だからこそ、ストーキングの対象になってる人に張り付いて尻尾を掴むのが常套手段
「……やっぱ見張るしかないか」
「ですかねぇ」
正直当たりを付けるのが難しいとは思っていたがやっぱ案の定か……それにあんま長く時間を取らせる訳にはいかないからここら辺で切り上げるか
「村上さん、最後に一つだけいいですか?」
「はい、何でしょうか?」
「覚えてる範囲で構わないんですけど、花菱さんに関して何か噂とか、会社の中で流れたりしませんでしたか?」
「噂……というと?」
「主に女性関係とか、それ以外にも身近で問題が起きてたとか」
「あまりそう言ったことは聞かなかった……でも、そういえば──」
「そう言えば、何ですか?」
「少し前に、恋人が事故にあったって──」
「それって、いつ頃とかわかりますか?」
「確か半年くらい前だったような」
半年前に恋人が事故って事は……その事故がきっかけで知り合ったってことか。まぁそれにしたって何とも言えない感じだな、人の縁ってのは何処で結ばれるかわからないもんだけどそんな切っ掛けがあるとは
流石にこれ以上は時間を取らせる訳にもいかない以上ここで切り上げて俺と八乙女は会社の外に出る
「半年くらい前に事故が原因で知り合ったって……世の中わからないですねぇ」
「そうだな……」
「どうかしたんですか?」
「……いや、なんというか、事故にあった恋人って本当にアスカさんなのかね」
「そうじゃないんですか?」
何というか、こういうときにある違和感は案外宛てになるというか……とにかくなんか違う気がするんだよな
「とにかく、次はアスカさんの勤めてる会社に行ってみよう」
「そうですね、まずは情報収集!」
「八乙女も段々板についてきたな」
「そりゃあ、短いながらに濃い経験をしてますからねぇ」
そう言えば、最近悪魔関係の事件が立て続けに起こってる気がする。今更ではあるが流石にこの頻度だと何か作為的な物を感じざる得ない──
「──っと、すいません! 大丈夫ですか!?」
流石にボーっとしすぎてた、ぶつかってしまった人に対して謝りながら手を差しだす
「いえ、こっちこそすみません。少しボーっとしていて」
ぶつかってしまった人の手を取って立ち上がらせると、相手もその言葉と共に軽く頭を下げてくる
「気にしないでください、ホントにすみませんでした」
「もー、何やってるんですか先輩」
「いや、ボーっとしてた」
ぶつかってしまった人に頭を下げて八乙女と一緒にアスカさんの勤めている会社に向かった
「ふーん、アレが門原ヒロト……仮面ライダーデモンズか」
門原ヒロトとぶつかった人物は立ち去っていく二人の事を見つめながら呟く。八乙女リサとさして変わらない年齢の少女は踵を返し二人とは正反対の方に向けて歩き始める──その手には、通常のバイスタンプとは異なる未知のスタンプが握られていた
アスカさんの勤めている会社に向かった俺たちだったが、花菱さんの勤めている会社と同様にこれと言った情報を手に入れることはできなかった
「骨折り損……って訳でもないけど、殆ど収穫はなしか」
「ですねぇ……スタンプのすの字もありませんねぇ」
「あったらあったで問題なんだけどなぁ」
結局の所何をするでもないからなぁ、公にはスタンプを持つこと自体が違法な訳だし職場の同僚にスタンプを買いましたー! なんて喚いたら通報されかねない。けどここまでスタンプを買うきっかけになるような出来事もないとなると……気になるのはやっぱり事故の事か
「八乙女、今から少し警察行くぞ」
「えっ? 警察ですか? なんで……」
「半年くらい前の事故なら警察に記録が残ってるんじゃないかと思ってな……一応知り合いいるし聞いてみようと思ってさ」
「その知り合いって、もしかして」
「そう言うこと」
ガンデフォンを取り出して目的の人物──新見真人に連絡を取り、警察署へとやってきた
警察署内で待つこと数分、ダンボールを一箱持ってきた新見さんが俺たちの前に現れた
「門原くん、八乙女さん、久しぶり……っと、ふぅー重かった」
「お疲れ様です、新見さん……これが頼んでた?」
「そ、半年前の事故の記録。流石に全部見せるわけにはいかないけどね」
流石に事件の記録されてる資料を丸々見せるわけにはいかないというのは当たり前か
「あのー、それで、見つかったんですか?」
「確か……花菱タクトって人の恋人が事故にあった記録ですよね。確かここに──」
そう言った新見さんはダンボール一番上に積まれていた資料を取り出しパラパラとめくる
「あった、この人の事じゃないかな」
そう言って新見さんが見せてくれたのは資料の中の一ページ、確かに事件の記録は半年前。被害者の名前は佐伯ヒロコ、事故にあった時刻は午後八時頃……通報者は彼女を車で轢いた張本人か
「この事件って、どうなったんですか?」
「加害者本人が通報後反省の意思を見せた事で、示談が成立しています……ですが被害者の方が──」
「被害者がどうにかしたんですか?」
「事故にあった被害女性は現在植物状態なんです……」
被害にあった女性が、植物状態?
「どういうことですか?」
「事故に遭った際、打ちどころが悪く脳が損傷した……と、担当したお医者さんは言っていました」
事故に遭った女性は植物状態なのに、恋人と思わしき男性──花菱タクトは新しい恋人を作ったのか……いや、何時目覚めるかわからない植物状態の恋人に対して縛り付ける訳にはいかないって事で親御さんが気をつかった可能性もあるが
「でも、ありがとうございます。おかげで事件の事は分かりました」
「気にしないでください。こちらも悪魔関係の事件で門原さん達にはお世話になっていますから」
「……えっ?」
とりあえず事件の事は分かったから警察署からお暇しようとしたところで、資料を読んでいた八乙女から困惑の声が聞こえてきた
「どうかしたのか?」
「先輩、この部分、見てください」
そう言って八乙女の見せてきたのは被害にあった佐伯ヒロコさんのプロフィール……その勤務先の部分、俺もそこに目をやると思考が一気に冷え込み、纏まっていく……でも、そうだとしたらあの悪魔と契約しているのは──
「先輩、この会社って……そうですよね」
「あぁ……この会社、アスカさんの勤めてる会社で間違いないと思う」
事故の被害にあった花菱タクトの恋人と同じ職場であり、彼女が事故に遭った半年前に恋人になった女性。音無アスカが──悪魔の契約者……なのだろう