「あっぢぃ──」
この前の依頼から大体二、三週間が過ぎたころ。少し早めの猛暑にみまわれている睦葉島、少し前に空調がぶっ壊れてから別にもう少ししてから直せばいいかと放置していたらこの有様である
現在事務所の窓を開けっぱなしにして扇風機を付けても暑さは全然しのげない
「せんぱーい……空調、どうして直しておかなかったんですか?」
「夏もうちょい先だから別に良いかって……というかこういうの大体所長の仕事なんだけど」
「えーっと、実は──」
空調を直さなかった理由はあっさりと狩谷から語られた
「──空調の修理に使う予定だったお金、スタンプとかアイテムの開発費に使っちゃった」
「……それって、会社のお金です?」
「流石にそれは違うよ、自分のポケットマネーから出してるよ……ただ、最近色んなものを作り過ぎてお金が──」
洒落にならないくらい心当たりがある……直近で使ったスタンプにあからさまに時間がかかっただろうオーインバスター……それと絶賛狩谷が開発中のO.V.E.R.にもう一台のデモンズドライバー、確かに出費だけなら軽くうん十万はいってる気がする
「……そこに関しては俺も申し訳ないとしか言えない」
「気にしないで、私も一人で戦わせちゃってて申し訳ないと思ってるし」
「それで、結局空調は──」
「今月末まで待ってもらえると助かるかなぁ……」
結局しばらくはこの暑さで耐えないといけないっぽいなぁ──っと、お客さんか
「はいはーい、今行きまーす……って、先輩?」
「少し前ぶりだね、門原くん。それにみんなも」
扉の先にいたのは護衛事件の時に事務所に共同依頼を持ちかけてきたD.D.C.Uの隊長。烏野フタバ先輩。彼女がウチに来るのは基本的に共同依頼の話をしに来るかだけど、今日は一体何の用だ?
「今日は……また共同依頼とかですか?」
「依頼は依頼だけど、今日は個人的な依頼」
「珍しいですね……とりあえずずっと立ち話もアレですから中にどうぞ」
流石にお客さんを立ちっぱなしにさせる訳にはいかない……ということで俺は先輩をソファーまで案内することにした
「「「幽霊を見つけて欲しい?」」」
ソファーに案内をした俺たちが先輩から聞いた依頼内容はビックリするくらい普段のそれとはかけ離れた内容だった。幽霊を見つけて欲しいとは眉唾な依頼と言うか……冗談にしてもビックリするくらい洒落にしかならない内容だが──
「えーっと、先輩。とりあえずどういう事なのか説明して貰っていいですか?」
「わかった。事の発端は今から二、三週間前──」
──職場から家に帰る途中だった私の耳に、変な声が聞こえてきたんだ。うめき声みたいなので、疲れてたのもあって私としては幻聴かなくらいにしか考えてなかったんだけどそれが毎日続いて……それが外だけじゃなくて部屋の中でも聞こえるようになって
「それで幽霊だと?」
「えぇ、極めつけは窓に人影まで見えるようになっちゃって……」
成る程、確かにそれは幽霊を疑っても仕方ない。
「──つーわけで、オレたちの依頼を受けて欲しいわけだ。頼めるか?」
「えっ?」
「わかった。依頼の件了解……と言っても、俺は何もできないけど」
「んなこたぁわかってるよ、フタバは女でお前は男だからな……ある程度わきまえるのは当たり前って奴だ」
「そこら辺は私たちでフォローするから問題ないよ」
「えっ……いや、え?」
「……オイ、そこのヤツさっきから固まってるが良いのか?」
当たり前のように表に出てきたのはフタバ先輩の悪魔である──クロハ、フタバ先輩との付き合いがだいぶ長くなってきたって事はコイツとの付き合いも長くなると言うこともありかれこれ高校時代からの付き合いだ
「とりあえず八乙女、今目の前にいるのはフタバ先輩の悪魔のクロハだ」
「えっ? 悪魔って……ぱっと見フタバさんなんですけど」
「そりゃそうだ、なんせ今のオレはフタバの中に存在する悪魔だからな」
「フタバさんの……中に?」
「あぁ、フタバの家庭事情は少し複雑だから──ってこれはオレが話す事じゃねぇな、簡単に言うとオレはフタバの悪魔であり防衛人格って訳だ」
「防衛人格……」
「まぁ見ての通りの性格だし、普段あんま表に出てくることもないからそこら辺は気にしなくていい」
逆に、今クロハが出てきたって事はコイツが前に出てこないといけない状況って訳なのだが──
「──もしかして、フタバ先輩今回の一件で相当憔悴してる?」
「いや、ただ単に暑さで参っちまっただけだ。ウチのオフィスと違ってここはクソ暑いからな」
それに関しては、本当に申し訳ないとしか言えない
さて、というわけでクロハがフタバ先輩と切り替わるまで待ってから改めて幽霊捕獲の作戦を立てることにする……全員で熱さしのぎのアイテムとして買ってきたアイスを片手に
「それで、幽霊って具体的にどう捕まえるんですか? あっ、ヒロト先輩そのアイス一口ください」
「はいよ持ってけ……正直見えないモノを捕まえるなんてのは完全に専門外だからな、そこら辺を解決しないと正直どうしようもない」
「だねぇ、本当の方だとそう言う不可解な事件をメインに扱ってるお寺があるとか聞いたことはあるけど……わざわざ呼ぶ時間はないしね」
「そうですね。流石にこれ以上は仕事にも支障が出そうですし……こちらとしても早急に対処したいですね」
完全専門外だからマジでどうすることもできないってのがキツいんだよなぁ
「私がフタバ先輩の家に泊まるっていうのはどう?」
「狩谷が?」
「うん、幽霊が行動するってなると私がいても関係なしなのかそれともフタバ先輩だけをターゲットにしてるのかはわかると思うし」
「だそうですけど、フタバ先輩は大丈夫ですか?」
「私は問題ないよ。むしろ一緒にいてくれた方が助かるかも」
じゃあ今日は狩谷がフタバ先輩の家に泊まる方向で決まりか、それなら俺はとりあえず家の外で張り込んでみるか
「じゃあ俺は家の外で張り込みでもしてます。もしかしたら人為的なモノかもしれないので……そんで八乙女だが」
「私も参加しますよ?」
「いやお前はダメだろ」
「何でですか!?」
なんでって、今日一応平日だぞ? マジでわかってないのかコイツ
「お前、普通に学校だろうが……っていうか最近事務所に入り浸ってるけど学業は大丈夫なのかよ?」
「流石にだいじょーぶですよ。これでも学校では秀才で通ってるので、後これでも学校では人気者なので」
学業の方は問題なさそうだが……自称秀才の言葉を俺は信じていいのか少々不安になってくるが──
「後お前一応寮生活だろ」
「ふっふっふ、心配無用ですよ先輩。ついさっき外泊届けを手に入れたんで」
「最近って外泊届けネットで出来んのかよ」
「はい、ガンデフォンで申請は出来ますよ。それでOK出ました」
手が早いことこの上ないな、って目の前にいる八乙女とのやり取りに気を取られていたがフタバ先輩と狩谷の二人はこちらをジッと見ていた
「なんですか?」
「いや、仲いいなと思ってさ」
「そうですか?」
「うん、なんなら付き合い長い私よりも仲良さそうだよ?」
狩谷からそう言われたが正直いまいち実感がない……というか、何だかんだ言って八乙女との付き合いも最初の依頼で出会ってから数か月だもんな、時間の流れは長いようで短い気もする。まぁ俺からしたら八乙女は──
「まぁ、手のかかる妹みたいなもんですし」
「妹……ですか」
「なんだよ、不満か?」
「いえ別に……よし! それじゃあフタバさん! 所長! 買い出しに行きましょう!」
「「買い出し?」」
「はい! お泊り会には何かと入り用なものが多いですから! 早速行きましょう!」
なんかやたらテンションの高くなった八乙女に連れられ、事務所から出て行った……一人残されてしまったが、どうしたものか
「……俺もとりあえず、張り込みの準備だけするか」
夜は涼しくなると思うが流石にバイクで外に一人はキツそうだし、車……借りにいくか。そんなことを考えながら立ち上がった俺はガンデフォンを使って中学時代からの友達である嵐山カズキに連絡を取ると、2コールで電話は繋がった
「ようカズキ、今大丈夫か?」
『普通に休憩時間だから……まぁ大丈夫だな』
「よかった、突然で悪いんだが車貸してくれね?」
『車? どうして急に──』
「仕事で張り込みすることになったから」
『──成る程、まぁぶっ壊さないならいいよ』
「助かる」
『そんじゃ仕事終わったら鍵渡しにいくからそれまでどっかで時間潰しといてくれ』
「了解」
──とりあえずショッピングモール行くか。店多いし
ガンデフォンの通話を切った俺はショッピングモールに向かう方向で思考を纏めると、目的地の方に向かって歩き出した
7話、8話は少し明るめの回になる予定です
今回から登場した新しい悪魔、クロハについては用語まとめに追加しておきます
それと、そろそろ登場人物も多くなってきたのでキャラクターまとめ的なものも後ほど用語まとめの下に作っておきます