ショッピングモールで時間を潰して何時間か経った頃、ガンデフォンにカズキからの連絡が来た
「もしもし、カズキか?」
『おう、今仕事終わって帰ってきたんだけど……車何処に持ってけばいい?』
「いや、俺がそっち行くよ」
『そうか?』
「あぁ、とりあえず待っててくれ」
『了解』
少し離れた場所ではあるものの、歩いていくのがそこまで苦でもない。ショッピングモールで軽く土産を物色してからカズキの家に足を向けた
「よっ、久しぶり」
「おう」
俺がインターホンを押すと、中から出てきたのはスーツ姿の男──嵐山カズキ。軽い挨拶をした後に目の前にいる男に手土産を渡す
「これ、土産」
「サンキュー、中身は?」
「ちょっとした惣菜と菓子だな」
「惣菜は有り難い、今日晩飯なんにするか決めてなかったし」
適当に選んできたが正解だったらしい。俺はカズキから鍵を受け取り二人で車まで向かう、カズキの使っている車はコンパクトカーであるためそこまで幅も取らないから今回借りにきた次第だ
「なぁヒロト、張り込みって言っても具体的に何をするんだ?」
「具体的にか……普通に相手の動向を観察するだけだから何をするってのはないぞ? やるにしても相手が動いてからが本番だし」
「そう言うもんなのか?」
「そう言うもんなんだよ」
張り込みとかそう言うのに関しても他の仕事ならいざ知らず怪人関連だと相手方が動いてくれなければ何をするにしても動けないのが現状、そもそも相手がスタンプを持ってるかどうかを特定する所から始めないといけないわけだし
「とりあえずコレ、車の鍵な」
「サンキュなカズキ」
「いいって、それじゃあ仕事頑張れよ」
「おう」
車を運転するのも久しぶりだし、少し不安だがまぁ問題ないだろ……とりあえず安全運転で俺は教えてもらった住所まで向かう、それにしても……やっは冷房ってホント良いな、文明の利器さまさまだ
場所は代わり烏野フタバ先輩の家、着替えとか必要なものを持って集まった私たちは改めてこれからの流れをおさらいすることにする
「えーっと、それでこれからの流れは確か……」
「私たちは普通に過ごして幽霊が出るまで待機、それで門原くんが外に不審者居た場合の事を考えて待機」
「じゃあ私たちは基本的に普通にお泊り会で問題ないってことですか?」
「概ねその認識で問題なし」
フタバ先輩はそう言うと私と狩谷先輩の分も持ってきてくれたココアに口を付けた……さてと、フタバ先輩のお墨付きをもらったお泊り会だけど──
「それじゃあ、ボードゲームでもします?」
「……ただ待ってるだけなのもアレだしね、フタバ先輩。大丈夫ですか?」
「大丈夫、折角だしやろう」
そう言うとフタバ先輩が取り出したのはいつの間に買っていたのかもわからない人生ゲーム──もしかして、フタバ先輩結構今の状況楽しんでる?
張り込みを始めてから数時間、時刻は大体夜の九時を過ぎた頃……こっちは特に進展もないまま車の中で完全リラックスの体勢を取っていた。今回に関しては絶対に暇になる事を見越してタブレットやら充電器やらを持ち込んどいてよかった
「……カズキに車返す時ガソリン満タンにしとかないとな」
車を借りちまったし今はエンジンを切っているけどとりあえず借りてるわけだし返す時にはガソリン満タンにして返さないと友人としての面目が立たない……というかホントにやることなさ過ぎて暇だ
「やべぇ、暇すぎて眠くなってきた────って、ん?」
フタバ先輩の家に目を向けてみると何やら部屋の中の電気がやたらチカチカしている……っと、八乙女から電話?
「もしも──『ひ、ひひひヒロト先輩ですか!?』うっさ、なに?」
『で、ででででました……幽霊出ました!』
「ホントか?」
「は、はい。部屋の中がチカチカしてて──息遣いも聞こえるし!?」
身体を起こしてフタバ先輩の部屋の方を見てみるが不審者の姿は見えないが
『おい』
「ベイル、どうかしたのか?」
『悪魔の匂いだ』
「それ、どこだ?」
『あの女の居る部屋の中だ』
フタバ先輩の部屋の中って事は、もしかして幽霊の正体は本物じゃなくて悪魔だったって事か? それなら──
「八乙女」
『な、なななななんですか?』
「少しフタバ先輩に代わってくれ」
『わ、わかりました』
なにやら八乙女さんから電話を渡される、さっきまでの話から考えると相手は門原君だろう
「門原くんか?」
『フタバ先輩、もしかしたら幽霊の正体がわかったかも知れないです』
「本当か?」
『はい、ベイルが先輩の部屋から悪魔の匂いがするって言ってるんです』
「悪魔の……ということはもしかして」
『はい、先輩の部屋にいるのは幽霊じゃなくて──』
成る程、ベルトの中に封じられているとは言え悪魔であるベイルが言うのであればかなりの信憑性がある
『先輩、一番気配が気になるところに悪魔が居る可能性が高いです』
「……わかった、こっちでも確認してみる」
『俺もすぐそっちに向かいます』
それだけ言うと通話が切れる、成る程……この部屋に存在するのは幽霊ではなく悪魔だったか、そうかそうか
──おい、フタバ……なんか感情が荒ぶってるんだが
「気にするな……それより八乙女さん、これを返す」
「は、はい」
今までは暑さもあって中々元気が出なかったが、今ではそんなのが気にならないぐらい力に満ちている……そうかそうか、私の最近のストレスは全部悪魔の所為だったわけだ
──フタバ、暑い……精神がバカみたいに暑いんだが
私の中でクロハが何か言っているが何を言おうが今の私には関係ない……この苛立ちを、犯人を見つけて懺悔させるまではな
「狩谷さん、八乙女さん……犯人の正体がわかった、ガンデフォンを構えて部屋の隅によっておいてくれ」
「えっ? えぇっ?」
「あの……フタバ先輩?」
「い い な ?」
「「は、はい……」」
二人を部屋の隅に退避させたんだ……それじゃあこの部屋の中にいるゴミをしっかり掃除しないとなぁ
先輩の部屋に悪魔がいる、ベイルがそう言ってから俺はベルトを巻いて先輩の部屋まで向かう、何かあった時すぐに逃げられるように先輩の部屋の鍵は閉めておかないという話になっているし到着して大急ぎで部屋の扉を開ける──と、そこには想像を絶する光景が広がっていた
「どこだ? どこにいる?」
「あ、あの……先輩?」
「あぁ門原くんか……済まないが少し待っていてくれ、すぐに悪魔を見つけ出して討滅して見せるからなァ」
「ヒ、ヒロトせんぱぁいッ!」
「門原くん!」
「狩谷、それに八乙女も……大丈夫だったか?」
「私たちは大丈夫だけど──」
「う、宇野先輩がおかしくなっちゃって」
「あぁ……多分それは、幽霊の正体がわかったからかも」
とりあえずベイルの言っていたことを二人に伝えるとフタバ先輩のぶっ壊れ具合に納得したかのような表情になった
「と、とりあえず後の事は俺に任せて。ベイル、悪魔の場所は」
『目を瞑れ、俺が案内してやる』
ベイルの言う通り目を瞑ると、心臓の音がソナーのようになって部屋全体に広がっていく、壁をすり抜け場所は……寝室、そこに騒めきを感じた
「フタバ先輩、寝室です!」
「……!」
眼の色を変えたフタバ先輩は一直線で寝室に向かうと、そこにはサイのような見た目の悪魔が居た
「見つけたぞ悪魔!」
少しテンションが荒ぶっている先輩は怪人を見つけて早々にガンデフォンを放つと悪魔は地面に食い込むように避け、姿を消す
「待てぇッ!」
『外だ、このままだと逃げられるぞ』
「わかった、先輩! 窓開けますよ!」
「好きにしろッ!」
少しだけ高いが問題はない、外を見ると逃げようとしている悪魔の姿があった、姿が見えるならここから飛び降りればすぐに追いつける
『スパイダー』
「変身!」
そのまま飛び降りながらドライバーに押印すると蜘蛛の糸が俺の身体を包み込む
『仮面ライダーデモンズ』
デモンズの姿になった俺は飛び蹴りの体勢に入り悪魔の背中に思いっきり蹴りを入れる
『~~~~ッ!? 』
「速攻で決めるぞ、なんか先輩の精神衛生上よくない気がするからなッ!」
着地と同時にオウインバスターを呼び出すためのスタンプを地面に押して召喚してそのままガンモードで一撃をぶっ放しながら接敵する
「はぁッ!」
『~~ッ!? 』
「もう一発!」
『ァアッ!? 』
まずは拳を一発で続けざまに蹴り、何となくわかったがこの悪魔そこまで強くないな……この調子なら速攻で決めきれる
【スタンプバイ!】
【オーイングストライク!】
スタンプを押印して銃口にエネルギーをチャージしてなおも逃げようとする悪魔に向けて放つ、逃げることに集中しすぎていたのか悪魔はその一撃をもろに受けて爆散した
「門原くん! 悪魔は!?」
「倒したよ」
「そっか、倒せたんだ」
「これで一見解決ですね!」
「……いや、まだだぞ。みんな」
一息ついたタイミングで未だ身体から熱気を放っているフタバ先輩が俺達の前に立つ
「契約者を見つけなければ悪魔は現れる……ならば契約者を見つけ、懺悔させねばなるまい! 依頼は継続だ、悪魔の契約者探しをするぞ!」
……フタバ先輩は今回の件がよっぽど頭に来ているらしい、どうやらまだまだ、仕事は終わらないようだ