第1話, 事件記録D-仮・面・戦・士-(A)
新たな才能の発掘という目的のために建造された人工島”睦葉島”
そこに住む多くの人が日々自分の才能を活性化させるために日々努力をしている……なんてことは一切なく、日本本島と変わらない日常が続いている
そんな睦葉島には悪魔を崇拝する組織が裏で暗躍しており、その組織と戦う戦士を──
「──島の住人は仮面ライダーと呼んだ……だってよ」
「そんな事どうでもいいから仕事しなよ、ただでさえ今月は収入少ないんだから」
「世知辛いこと言わないでくれ……」
ここは狩谷相談所、住人のちょっとした相談事を受けたりする簡単に言うと何でも屋よりの探偵事務所みたいなところ。元々はここの現所長である”狩谷ミサキ”の姉さんが作った事務所だったんだけど二、三年前に消息不明になっちまったから現在は妹の現所長が運営しているらしい
「世知辛いって言うかそもそも依頼取りに言ってないよね? 宣伝とかしないと来るものも来ないし入ってくるものも入ってこないよね?」
「……ごもっともです」
と、そんな感じで書類整理で若干イラついている所長のお小言爆撃を喰らっている俺はこの相談所の唯一の職員でもある”門原ヒロト”、薄給で日々極貧生活を送っている……という訳ではなくしっかりと給料貰って仕事が殆ど入らないこの事務所で殆どお茶入れ係と化している探偵役
「というかさっきから何やってるの? 遊んでるの?」
「いや、どうせならウチの現状を記したボイスメモリーでも作ろうかと──」
「そんなことする暇あったら普通に仕事取りに行くなりホームページ作るなりしてよ」
駄目だ、ウチの所長様は書類整理で心が荒み切ってる、というか心なしか目の下に隈が出来てる気がする……これは更に祟られる前に外に出て──などと思ったところで事務所のチャイムが鳴る
「──お客さん?」
「みたいだな」
一瞬の静寂……そして動き出す、とっ散らかった机を片す方向に
「門原君机早く片付けて!」
「片付けるからちょっと待ってっていうか何で普段から片付けておかないかなぁ!」
「仕方ないでしょ最近書類仕事で手いっぱいだったんだから! というかビン用のゴミ箱どれだっけ!?」
「えーっと左から燃えるゴミ、燃えないゴミ、ペットボトル、缶、ビンだから一番右!」
「了解! それとコレお願い!」
「ちょ、この書類何処に戻せば──」
ガチャリ、と事務所の扉が開き制服姿の少女と俺たちの視線が交差する……両手に書類を抱えた俺と栄養ドリンクのビンをゴミ箱に捨てていた所長、言葉を失った俺たち三人の耳に届くのは現在進行形でゴミ箱に捨てられているビン同士のぶつかる音だけだった
「間違えました」
「「まってまって!!」」
それから数分の問答の後、どうにか制服姿の少女──今回の依頼人と話を聞けることになったのだが
「……」
すっごい疑いの目で見られている
「えーっと、それで今回はウチにどういう──」
「……ここって、怪物関係の依頼も請け負ってくれるって聞いたんですけど」
”怪物関係”という言葉を聞いた俺たち二人は姿勢を正し、改めて依頼人の話を聞く
「はい、怪物関係の依頼と言うのは?」
「……実は──」
依頼人の名前は”八乙女リサ”、依頼内容は自分を狙う怪物をどうにかして欲しい……簡単に言えばそんな感じだ
「八乙女さん、制服って事は学生だよな……どっかしらで誰かの恨み買ったりしたか?」
「……わからないです」
「わからない……か」
一般の学生が怪物関係に手を出せるほどの恨みを買う事なんてあるのだろうか
「確かに、何処で恨みを買っててもおかしくないかもね」
「どういうことだ?」
「これ見て」
狩谷からガンデフォンの画面を見せられると、そこに映っていたのは雑誌の表紙を堂々と飾っている八乙女さんの姿
「八乙女さんって、芸能人?」
「芸能人って言うか、モデルです」
「モデル……」
依頼人はモデル……確かにそう考えると何処で恨みを買ってるかわからないな、どんな規模で仕事してるのかわからないが不特定多数の人間と触れ合う仕事柄明確に誰と特定するのは難しいか
「現状だと俺たちが出来るのは限られそうだな……とりあえず出来る範囲での身辺警護と情報収集か」
「そうだね、とりあえず身辺警護は私が……って言いたいところだけど怪物関係なら門原くんの方が適任か……八乙女さんは、大丈夫?」
「えっと……はい、大丈夫です」
そう言うわけで身辺警護は俺が行うことになったので八乙女さんと一緒に事務所を出る……最初にやる事は予定確認か
「八乙女さん、これからの予定は?」
「えっと、雑誌の撮影が一件と取材が二件ですね」
「時間は?」
「ある程度余裕はあります」
「それなら、歩きながらで良いからちょっと話を聞かせてくれ。具体的に言うと初めて怪物に襲われた時の事を」
「はい」
そこから仕事現場に向かうまで、俺は八乙女さんから初めて怪物に襲われた時の話を聞いた
彼女が初めて怪物に襲われたのは雑誌の撮影で遅くなってしまった時らしい、早めに家……というか寮に帰るために近道をしたらその道中で襲われた
「成る程、因みにその近道を知ってる人って八乙女さん以外に居るか?」
「同じ学校の人なら大体は、バイトで遅くなった時とかに使ってる子もかなりいるので」
「多少絞れても学校関係者か、生徒総数どれ位かわかるか?」
「大体200人くらいですかね」
「それって生徒教師合わせてか?」
「いえ、生徒だけで」
生徒だけでも容疑者200人は洒落にならないな、だが──
「相手が尻尾を見せるの待つしかないか」
「何か言いました」
「いや、別に……それより時間、大丈夫か?」
「あっ、いけない」
どうにも話し込みすぎたらしい俺たちは、早足で現場まで向かった