お姉ちゃんが残していった資料は大まかに分けて二つあった、一つは門原くんの使っているデモンズの設計図と、お姉ちゃんが変身していた仮面ライダ──―ベイルの基礎設計と戦闘データ。私がオーバーデモンズの完成まで辿り着けたのはこの二つがかなり大きい。そしてもう一つはバイスタンプの研究データ
「今回の事件の鍵はきっとこの資料の中にある筈」
バイスタンプの研究データの中にはスタンプを使うことによって召喚される悪魔の事も記載されていた。今回の相手はバイスタンプを製造し販売している組織、それならお姉ちゃんの行っていた研究と同じかそれ以上の情報を握ってる可能性が高い
「あった、バイスタンプと悪魔の関係の項目」
研究資料の中にある項目に目を通していく
──悪魔とは人間の心の中に潜むエネルギー生命体である。通常であれば現実世界に出現することは無いが。人間の中に潜むエネルギーを抽出し、生物のDNAと結合させることで実態を持った存在として現実世界に召喚することが出来る
「ただし悪魔を召喚する際には、使役するための対価を支払う行為──契約をしなければならない……うん、ここまでは知ってる」
悪魔を召喚する時に、必ずの契約者となった人間は必ず何かしらの対価を悪魔に支払わなければならない。悪魔に支払う対価もタイミングも人によっては違うけど大体の人は自分の寿命を対価として支払ってる
「けど、今重要なのはここじゃない」
次に私が読み始めたのはバイスタンプに関する研究資料だけど……ここも違う、記載されてるのは古代生物のDNAを使用したスタンプ作成に関する考察が書いてあるだけで敵の狙いに繋がりそうな情報は載ってない……そうなってくると残りは姉さんなりに悪魔の事を考察した資料だけ
──ここからは、悪魔と契約者を関係をこれまで私が戦ってきた経験をもとに考察していきたいと思う。まず悪魔と契約者はバイスタンプというある種の契約書によって結ばれている。私とベイルのように単純な契約関係ではなく、人間と協力関係のようなものを結んでいる悪魔も存在するけど。基本的にはバイスタンプを用いた契約というのが基本
「……ここじゃない」
──悪魔と人間の関係は、大まかに分けて三種類あると私は考えてる、一つ目は最も多いバイスタンプを用いた悪魔との契約関係。二つ目は私とベイルのようにバイスタンプを使用しない悪魔との共生関係、そして最後の一つは悪魔か人間、どちらかがもう片方を食いつくしその力を奪い取った関係
「……片方を食いつくす?」
片方を食いつくすって、どういうこと?
──私の見たものが本当にそうだったのかわからないけど、一度だけ似たような状況に遭遇したことがあるから一応書いておいただけ
似たような状況に遭遇したことがあるって……もしかして人間か悪魔がもう片方を食いつくしたってこと?
──私が見たのはとある事件で悪魔災害を解決しようとした時、イレギュラータイプになってしまった契約者が急に苦しみ出して見た目が怪獣みたいなのから特撮番組に出てきた怪人みたいな見た目に変わった。その時は辛うじて意識が残ってたみたいだけどその時のライダーシステムは未完成だから助けることが出来なかった
そこまでで一度資料を読む手を止めて、天井を見上げる……お姉ちゃんでも助けられなかった人が居た事が衝撃で、少しだけ動揺してしまったけど間違いない──
「──これだ、敵の狙いは」
実際にここまで敵が辿り着いてるのもわからないけど、前提条件としてI型の悪魔からさらに進化した例がお姉ちゃんの前で起こってる……というよりも実際に経験している、それに加えて敵は今回の契約者である日暮くんに今まで以上の力を求めるか聞こうとしてたんだと思う
「だと、したら……敵はまた日暮くんを狙ってくる可能性が高い」
資料を探し始めてからどれくらいの時間が経ったのかを確認するためにガンデフォンの電源ボタンを押すと、二時間くらいは時間が経っていた。とりあえず、八乙女さんに連絡して新見さん達がそこにいるか確認しないと
『はい、八乙女です』
「もしもし、八乙女さん?」
『あっ、所長! 何か分かりましたか?』
「うん、敵の狙いは大体……それより、日暮くんがまだ病院にいるか確認できる?」
『日暮くんって、今回の事件の契約者ですよね?』
「うん、確認できる?」
『えっと、ちょっと待ってくださいね』
そう言うと八乙女さんとの通話が少しの間ミュートになってから少し経ってもう一度八乙女さんの声が聞こえてくる
『病院のロビーにはいませんね』
「そっか、ありがと……それと、門原くん大丈夫?」
『とりあえず峠は越えたみたいです、面会も許可されてますけど……まだ目は覚まさないです』
「そっか……ありがとうね」
そこまで言って電話を切ると、今度は新見さんに連絡をした
「もしもし、新見さんですか?」
『あぁ、狩谷さん、どうかしました?』
「日暮くんって今一緒ですか?」
『えぇ、彼はバイスタンプ犯罪を犯してしまったので今、署の留置所まで向かってる所ですけど』
「新見さん、敵の狙いは日暮君です……なので今すぐ安全な所に──」
そこまで言ったタイミングで、通話越しに急ブレーキをかけた音と何かが爆発する音が聞こえてくる
「新見さん!? 大丈夫ですか!?」
『……すいません、襲撃みたいです』
「分かりました、今すぐ向かうので場所を教えてください!」
『あ、あぁ……場所は────』
新見さんから場所を教えて貰うとデモンズドライバーが入ったカバンと車の鍵を手に取って急いで新見さん達の元に向かう。今新見さん達がいるのは警察署近くの繁華街、人が多い中で仕掛けてきたって事は敵はこちらを監視していた可能性だって少なくない……逃げたと思って油断してたこっちのミスだ
車を走らせて繁華街が近づいてくると、少しずつではあるが爆発音のようなものが聞こえてくる、車を降りてこちらに向かって逃げてくる人たちとは反対方向に進んでいくと日暮君の腕を掴んでいる蝶の化け物とガンデフォンを構える新見さんの姿が見えた
「新見さん!」
「……狩谷さん、すみません。迂闊でした」
「いえ、こうなることを考えてなかったこっちにも非がありますから、それよりも今は──」
「えぇ、日暮君を離せ!」
「離せって言われて素直にはいそうですかっていう人は居ないと思うなぁ……それに、この子を抑えられた以上もう目的の半分以上は達成してるしね?」
日暮くんを掴んだまま化け物はスタンプを取り出した、多分あのスタンプは日暮君の使ってたスタンプ
『バッファロー』
そのスタンプを起動した化け物は、それを日暮くんに押すと、押した部分から溢れ出した契約書のような紙の束がバッファローデッドマンの形になってこっちに向かって来た
「よしっと、ねぇキミ。一つだけ聞かせて?」
「な、何ですか?」
「君さ……まだ有名になりたいって気持ちある?」
「それは……」
「うん、その目を見てわかった……少し弱いけど、使えなくはなさそう」
デッドマンに気を取られている間に、日暮君にあの化け物は何かを確認する……一体何を──
「悪魔くん……見せて、君の本当の力」
『バッファロー』
困惑したのも束の間、あの化け物がもう一度スタンプを起動させるとデッドマンにスタンプを押した、瞬間──日暮くんの身体は光の粒子になって悪魔に吸収される始める
「日暮くんッ!」
「もう無駄だよ、あぁなったら後は二択……悪魔を食うか食われるか」
日暮くんの事を完全に吸収した悪魔はまるで脱皮をするように真っ二つに割れ、新たな姿へと変化した……あれってI型? でも、見た目が普通のI型じゃない──
「──けど、助けなきゃ」
どうして動かなかったんだろうと、今になって思う……もう少し早く動けばああなる必要もなかったはず──でも反省は後!
『クワガタ』
【Deal】
「はぁ……また邪魔しないでよ!」
こっちに攻撃を仕掛けてきた化け物だけど、私の周りをまわっていたクワガタが攻撃を防御してくれた
「変身ッ!」
【Delete up】
【Unknown】〘未知なる〙
【Unlest】〘混沌が〙
【Unlimited】〘超える〙
『仮面ライダー
展開された電子空間の中で私の身体にオーバーデモンズのアーマーが装着され、電子空間がはじけ飛ぶと同時に黄色の複眼が光るのと同時に蝶の化け物に向かっていく
「はぁ!」
「意味ないよ!」
まず放った拳は光の粉を使った障壁のようなもので守られた
「それならッ」
相手が障壁を展開している所以外なら攻撃は通る、そう考えて脇腹に向かって蹴りを入れると確かな感触が足に伝わってくる
「ちっ! 生意気ッ!」
けどその攻撃が悪かったのか化け物は右手に風を収縮させて私との間で爆発させる。ダメージこそあまりなかったけど距離は離されてしまった……それだけじゃない、動きを止めたI型──I型だと元のと被るから今はフェーズ2とかそれっぽい呼び方にしておこう
「二対一だね、どうする? 諦める?」
「諦める訳ないでしょ……」
「そっか、なら潔く──あの世に逝っちゃえば?」
その言葉が切っ掛けになったのか、私に向かって襲い掛かってくるフェーズ2のデッドマンと蝶の化け物。バッファローのスタンプを使っているからか、フェーズ2のデッドマンには両腕に巨大な角が付いてる……って悠長に言ったけどデッドマンの振り下ろしてくる角に加えて大ぶりな攻撃の隙を埋めるように蝶の化け物が攻撃を仕掛けてくる
「どうしたの? 諦める訳ないとか言っといて押されっぱなしじゃんッ!」
「くっ──」
デッドマンを攻撃しようにもあの状態で攻撃をしたら一体化しちゃってる日暮君にどんな影響が出るかわからない
「戦いの最中に油断は禁物だよッ!」
「しまっ──きゃあぁぁぁッ!?」
腹部に放たれた一撃で宙に浮いた私の身体は追撃してきたフェーズ2デッドマンの角に弾かれて火花を放ちながら地面に落下する。昨日は敵の動揺があったし一対一だから何とかなった……けど今は二対一だし、対策も考えないといけない
「──うっ……」
必死に身体を起こそうとするけど身体に力が入らない
「あーあ、案外呆気ない幕引きだなぁ。でもまぁいいか、それじゃあ──って、嘘」
私の近くまでやってきた蝶の化け物が何かを言おうとしたところで、言葉が止めて……何かに驚いている
「よぉ、クリスパー……地獄から戻ってきたぞ……」
聞こえてきた声は、私にとってとても聞きなれたものだけど……今は絶対に聞くことのできない筈の声
「門原……くん?」
「遅れちまったな、所長……門原ヒロト、戦線復帰だ」
「何バカなこと言ってるんですか? 起きて早々ボロボロの身体引き摺って病院抜け出すとか……私居なきゃ絶対失敗でしたよ」
「……それは言うな」
少しだけ力が入るようになったから少し同様している蝶の化け物に蹴りを入れて後退させると彼女と距離を取って声の聞こえた方向を見る。確かにそこには身体の色んな所に包帯巻いてて右腕に至っては動かせるのかわからないくらい重傷な門原くんが居た──八乙女さんの肩を借りた状態で
「……なんか締まらないね」
「それも言うな……口は動くが身体は結構ギリギリだ」
「そっか……ならここは私に──」
「いや、そう言うわけにはいかない……ここに来た時新見さんから現状は聞いた。助けるんだろ? あの悪魔と契約してる少年のこと」
「……うん」
「なら、足止めは任せろ……呼びかけて、手を伸ばしてやれ──そうすりゃ救える気がする」
根拠のない言葉だけど、門原くんの言った言葉は今まで悪魔と戦ってきたから出た言葉──それなら、私は門原くんの言葉と……彼自身を信じてみよう
「門原くん、あの化け物の相手……お願いしていい?」
「任された、俺は大丈夫だから八乙女は新見さんのとこ行ってろ」
その言葉を聞いた八乙女さんは頷くと少し後ろでどこかに連絡をしている新見さんの所まで向かっていった
「全く、片腕ボロボロにされたのに足止め出来る気でいるとか……無鉄砲通り越して愚か者だよね?」
「愚か者上等だ、むしろ愚か位じゃねぇと仮面ライダー務まんねぇんだよ!」
『スパイダー』
【Deal】
「俺の命を懸けて……お前の足止めをさせて貰う、変身ッ!!」
【Decide up】
【Deep】〘深く〙
【Drop】〘落ちる〙
【Danger】〘危機〙
『仮面ライダーデモンズ』
力強いその言葉と共に、蜘蛛の糸が身体を身に纏い、彼は仮面ライダーデモンズに変身した