仮面ライダーデモンズ Re:Make   作:SoDate

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第1話, 事件記録D-仮・面・戦・士-(B)

「いいよ、理沙ちゃん。それじゃあ次のポーズもお願い!」

「はいっ!」

 

 八乙女さんの身辺警護で撮影所まで付いてきて撮影風景を見学させてもらっている訳だが……成る程、これが雑誌撮影か。初めて見た

 

「あの……」

「はい? えっと……」

 

 などと見学していると見知らぬ男性から声をかけられる。ぱっと見た感じ頼りなさげな雰囲気だがこの場にいてスーツということは……芸能関係の人間か

 

「あっ、私は八乙女リサのマネージャーをしている草尾と申します」

「草尾さん、俺……私は門原ヒロトって言います」

「はぁ……あの、それで門原さんはウチの八乙女とはどういう関係なんですか?」

 

 どういう関係……か、一応依頼人とそれを受けた探偵……何でも屋? って感じだけど一体全体なんて説明するか、怪物に襲われるって依頼を受けて怪物から護衛するためにいますって言ったところで変な目で見られるってのは予想できる

 

「えっと……」

「あっ、すいません。私は八乙女さんから依頼を受けて身辺警護をすることになったんです」

「身辺警護?」

 

 流石に怪物の所は隠しておくか

 

「はい、どうにもストーカー被害を受けてるらしくて」

「そ、そうなんですか!?」

「え、えぇ。でもあまり大事にしたくないみたいで……とりあえず今の所はご内密にお願いします」

「わ、わかりました」

 

 適当に誤魔化している間に八乙女さんの撮影が終わったらしくこっちに向かってきた

 

「マネージャー、それに門原さん」

「あぁ、リサちゃん。お疲れ様」

「お疲れ」

 

 マネージャーから手渡された水を一口飲み終えたタイミングでこちらに話しかけてきた

 

「そういえば、私の仕事中に何か変わった事とかありました?」

「いや……ぱっと見特に変わったことはなかったな」

 

 特に視線を感じるとか不審な動きをしている奴もいなかった……というか撮影所内に不審者が入ってくるとも思えないしここで気にする必要はない気もする

 

 

 それから特に変な事もなく、八乙女さんの仕事が終わり学生寮まで送っていく。明るかった繁華街から離れていくにつれ人通りや明かりが少なくなっていく

 

「八乙女さん、なんか変な視線とか感じるか?」

「いえ、今は特に……それにいつも変な影を見るのはもっと先なので」

 

 もっと先って事は襲ってくるとしたら人通りのなくなった所って訳か

 

「いつも帰るのは大体この時間になるのか?」

「はい、大体この時間に」

「それを知ってる人は?」

「ルームメイトとか友達には話してます」

 

 となると学園関係者の中でもかなり人数が絞れる……が、彼女の友達が彼女を狙っていると言うのは流石に酷な話だな。などと考えていると彼女の足が止まる

 

「どうした?」

「…………」

 

 足を止めた彼女の顔色は少し悪く、小さく震えている。そんな彼女はゆっくりと目の前に指をさすとそこに立っていたのは一人の人間。ぱっと見の背格好から男だと仮定しながら八乙女さんの前に立つ

 そのまま目の前にいる男から視線を外さずにいると男はゆっくりとこちらに歩いてきた。背格好から男だと考えていたがそれは当たりだったようで光に照らされハッキリと見えたのは八乙女さんと同じ校章の制服、そして手に持っているスタンプ

 

「動物レリーフはなしって事は量産型か……」

「えっ?」

「いや、何でもない。それよりあの男子生徒知り合いか?」

「えっと、同じクラスの牧瀬君……だったと思います」

「思う?」

「実際に話したことはないので……顔見知りってだけです」

 

 てことは正体はアイツが彼女を狙ってるストーカーってことか

 

「八乙女くん、一人で危ないじゃないか」

「え?」

「何か危ない目に遭ってるんだろう? 僕が助けてあげよう」

 

 少しずつこっちに近づいてくるが、顔がハッキリ見えるようになって気付いたが。あの牧瀬とか言う生徒正気じゃない

 

「逃げるぞ」

「えっ?」

「今のあいつは正気じゃない、だから……ここは逃げる」

「待てぇッ!!」

 

 八乙女さんの手を取って急いでその場から離れると怒号と共に牧瀬もこちらを追ってくる、流石に今回は急を要するので目くらましの為にガンデフォンをガンモードに変えて地面を乱射して土煙を発生させる

 

「うぉっ!?」

「隠れるぞ」

「は、はい」

 

 木の影に隠れていると男子生徒は自分たちがまっすぐ行ったのだと考えてその場から離れて行った……やっぱスタンプの所為で判断力も下がってるみたいだな

 

「あの……どういう事なんですか?」

「あーっと、そうだな。とりあえず八乙女さんを狙ってる怪物のこととか色々話しておくか──と言いたいところだけど少しだけ待っててくれ。あの男子生徒と少し話つけてくる」

「えっ? でも危ないんじゃ──」

「大丈夫、慣れてっから」

 

 こっちに戻ってきた男子生徒の前に出ると、ビックリするほどの敵意を向けてくる……初対面の人間にここまで敵意を向けられるのはスタンプの影響もあるんだろうが一周回って凄い、尊敬すら覚えるほどだ

 

「お前ぇ……ッ!」

「それしか言えねぇの……ってそりゃそうか」

 

 まともに話すのは無理だって思っていたが何というか案の定って感じだな

 

「お前、彼女の何なんだっ!」

「彼女の何って……彼女は俺の依頼人だよ。それ以上でもそれ以下でもない」

「嘘だっ! お前も彼女の子と狙ってるんだろ!」

「狙ってねぇよ」

 

 目の前にいる奴は八乙女さんに好意でも持ってたんだろうな、そんであのスタンプ使っちまったからその好意が暴走してるって感じか

 

「彼女に纏わりつく悪い虫は……僕が消してやるっ!」

 

 目の前にいる今回の犯人(仮)がスタンプを押印すると契約書のようなものが周囲に散らばり一体の怪人の姿を形作る、目の前に現れた怪人は俺らの所属している界隈で”S型悪魔”って呼ばれてるタイプ。因みにS型のSは兵隊(Soldier)のSである

 

「やれ!」

『……ッ!』

 

 S型は手に持ったナイフみたいな武器でこっちに攻撃を仕掛けてくるが早々簡単には当たらない。伊達にこっちも色んな怪人被害に対処してない訳じゃないからな

 

「そこっ!」

 

 S型の隙をついて手に持ったガンデフォンで射撃をする、S型は他に比べても耐久力は低い……つまるところこっち側の切り札を使わなくても十分対処可能であるとされている

 

「……とは言え、やっぱ倒しきるのはスタンプ使わないと駄目か」

 

 正直あんまりスタンプ関連を依頼人の前で使いたくないんだが流石に仕方ないか、S型の攻撃を避けつつ懐からスタンプを取り出して天蓋のボタンを押してガンデフォンに背面を押し当てる

 

『スパイダー』

『CHARGE』

 

 独特な電子音声と共にガンデフォンの銃口にエネルギーがチャージされていく。その後すぐにギリギリまでS型に接近する、振りかぶられるナイフを避けてS型の腹に銃口を押し当てると、そのまま引き金を引く

 

スパイダー CHARGE BLAST! 

 

 その電子音声と共に放たれた紫色のエネルギー弾がS型悪魔を貫く、すぐにS型から距離を取ると貫かれた箇所から火花が飛び散り爆散する。男子生徒は悪魔が爆散してすぐに意識を失って倒れ、それを見たからか物陰に隠れていた八乙女さんが出てくる

 

「門原さんっ!」

「八乙女さん、もうだいじょう──」

「上ッ!」

 

 大丈夫、と言おうとしたところで八乙女さんからそう言われ上を見ると、俺に向かって何かが降ってくる。それを見た上でギリギリ反応することのできた俺は急いでその場から退くと地面が陥没して土煙を巻き起こした

 

ウ゛ゥゥゥ……

 

 現れたのはゴリラのような見た目の怪物、二連戦ってのも流石にキツいがまだ何とかなる。それよりもキツいのは目の前の怪物はさっきのS型じゃないって事だ

 

「門原さん、大丈夫ですかっ!?」

「あ、あぁ……大丈夫。それよりもちょっとマズいことになった」

「さっきから何なんですか、牧瀬君の持ってたスタンプとか目の前の怪物とか」

「詳しい話は事務所に戻ってから──」

 

 八乙女さんにそう言っている間に、ゴリラの悪魔はこちらに向かって火球を放ってきた

 

「この場は仕方なしかっ!」

 

『スパイダー』

 

 火球がこちらに着弾する直前、俺は懐からベルトを取り出しそこにスタンプを押印する

 

【Decide up】

 

 

 

 

 悪魔の放った火球は二人に着弾し、爆発する。それで二人を始末したと思いその場から去ろうとした瞬間、悪魔の身体に衝撃が走りそのまま近くにあった木に身体を叩きつけられた

 

ウ゛ゥ゛ッ!? 

「間一髪、ギリギリセーフ」

 

 悪魔が目を向けた先には、八乙女リサを庇うように立つ一人の戦士がいた。人間の筋肉を思わせるアンダースーツに、蜘蛛の巣を思わせる鎧と仮面を身に纏った戦士

 

「えっ──?」

「八乙女さん、さっきも言ったけど説明は後。今はこの場を片付ける」

 

 背後で困惑する八乙女リサに対しそう言った戦士は、青の複眼を輝かせゴリラの悪魔に接敵する。戦士から繰り出される技を防ごうと腕をクロスした悪魔だったが戦士は蹴り上げ無理矢理ガードを崩すと思い切り踏み込み、八極拳の貼山靠(てんざんこう)のような技で悪魔にダメージを与える

 

……ッ!! 

 

 ここで悪魔の取った行動は逃走、眼前にいる未知の敵に対して初撃の不意打ちで失敗しその後手も足も出ずにダメージを受け続ける。このままでは自身を滅ぼされると本能で感じその場から逃げだした

 

 

 

 

「逃げたか……」

 

 悪魔が逃げたのを見送った俺はベルトを腰から外す、身に纏っていた鎧やアンダースーツは紫の粒子となって霧散する

 

「あの……」

「今日の所はとりあえず寮まで送る……何度も言ってるけど詳しい話はまた明日事務所で」

 

 その後、少し不安そうな表情の八乙女さんを見送った俺はガンデフォンを取り出してとある人に連絡を取る

 

「もしもし、はい。実がスタンプ使った生徒の保護を……えぇ、場所は──」

 

 さっきの男子生徒の事を話し終えた俺は、事務所への帰り道を進んでいく




-怪人解説ラボ-

・S型悪魔
本話にて登場した怪人
 八乙女リサのクラスメイト”牧瀬”が量産型スタンプを用いて契約した怪人
 見た目はギフジュニアと同じで基本的には素手だが、今回のようにナイフ形の武器を 持って召喚される場合もある
 どの個体も戦闘力は高く防御力は低い、個体差はなく性能は据え置き

-本日の用語解説-

・睦葉島
本作の舞台となっている人工島
 政府が新しい才能の発掘、将来有望な人材の育成を目的に作った場所であり人口の4割が学生
 島内に住んでいる人たちは身分証明用端末端末として”ガンデフォン”が支給される
 島の管理は中央にそびえる”セントラルタワー”で行われており島の代表も基本は本島にいるが月に一回定期監査で来訪する

・量産型スタンプ
 今回の生徒は使用したスタンプ、見た目はブランクバイスタンプと同様だが色は白で押印スタンプはギフジュニアバイスタンプと同様のものになっている
 ドライバーやガンデフォンで使用することは出来ず、機能は悪魔の召喚だけに絞られている

・ガンデフォン
島の住人に支給されているスマートフォン型の連絡用端末であり身分証明書
 住民全員に支給されるものであり基本カラーは固定だがカラーカスタマイズは可能であり自分の好みのカラーにカスタムが出来る
 警察や警備会社にはガンモードに切り替え可能な端末が与えられているが、上層部の許可が無ければガンモードへの切り替えは出来ず。個人や私怨での使用は出来ない

-ガンデフォン カラーリング公開-
・基本    → メインカラー:シアン  差し色→マゼンタ

・門原ヒロト → メインカラー:レッド 差し色→シルバー
・狩谷ミサキ → メインカラー:シルバー 差し色→ブロンズ
・八乙女リサ → メインカラー:ライトレモン 差し色→ホワイト

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