第13話, 邂逅記録M-懐かしの母校へ-(A)
クリスパーが本格的に動き出したことを実感してから数日、あの事件で重傷を負った門原君は未だ目を覚ますことはなく私たちの事務所も閑古鳥が鳴いていた
「所長、今日も先輩のお見舞い行くんですよね?」
「うん、いつ目を覚ますかわからないから──っと、これで今日中に纏めないといけない書類は終了」
「お疲れ様です」
今日の分の書類整理も終わったし、そろそろ病院に行こうと思った所で事務所の扉が叩かれる
「お客さんでしょうか?」
「そうだと思う、八乙女さん。悪いんだけど対応してもらえる?」
「わかりました」
とりあえずお客さん対応の方は八乙女さんに任せて、私は誓約書や注意事項の書かれた書類を取り出してファイリングしていく。依頼を一つの仕事として締結させるためにはこういう書類を使う必要がある
「所長、お客様をお連れしました」
「ありがとう、八乙女さん」
ファイリングした書類を手にお客さんの方まで向かうと、ソファに座っていたお客さんは立ち上がり頭を下げてきた
「狩谷相談所の狩谷です」
「
「はい、そう言った依頼も受けています」
「それなら、お願いします! 息子を助けてください!」
今回の依頼人、小桐秋子さんはこの島に住む五十代の主婦らしい。現在は島の住宅の並ぶ場所で夫、現在大学生の娘と高校生の息子と暮らしている四人家族。家族仲は良好で、生活も困窮している訳ではない、話を聞いた限りだと何処にでもいる一般家庭と言った感じだ
そして今回依頼されたのは彼女の息子さんである、
「それで、今回は私の事務所に依頼を……」
「はい、得体の知れない怪物を呼び出すスタンプを使うなんて……警察が信用してくれるはずもないですし」
確かに、スタンプを用いて悪魔と契約し事件を起こす、私たちが当たり前のように受け入れてしまっている事件の多くも、普通の人から見たら一つ一つが異常な物であり、恐怖を抱くには十分な事件なのだ……それに加えて、現状仮面ライダーの力を使う以外悪魔に対応する手立てはない
「わかりました、その依頼お引き受けします」
「っありがとうございます!」
そこから小桐さんには誓約書や注意事項などに同意をしてもらい、正式にこの依頼を受けることになった
「小桐さん。息子さんの通っている高校の名前を教えていただけますか? 調べるにしても情報がないことには何もできませんので」
「分かりました、息子が通っている高校は──
彼女の息子さんが通っている学校、それは私と門原君が通っていた学校であり、私たちが初めて出会った場所でもある
小桐さんが帰った後、私と八乙女さんの二人は病院まで向かいながら今回の依頼で調査に向かう高校について八乙女さんに伝えておく
「へぇ、それじゃあその六葉高校って言うのが先輩と所長の通ってた学校なんですね」
「うん、だから今回は卒業生としてお世話になった先生へ挨拶に来たって体で中に入れるのがありがたいかな」
「……けど、それじゃあ私はどうしましょう。まだ高校生ですから入る卒業生扱いで入るって訳にもいかないですし」
「そこも大丈夫、私たちがスタンプを使った事件を追ってることを知ってて、色々手助けしてくれてた人が今そこで教師をしてるの、それに高校時代お世話になった先生もいるし」
スタンプを使った悪魔はいつ出現するかわからなかった。当然途中で授業を抜けないといけないことも多かったし最悪の場合は仮病を使って休むなんてこともざらにあった。そんな私たちをサポートしてくれたのが当時の友人たちであり、高校時代の恩師だ……それだけじゃなくて当時から色んな人にお世話になってる
「だから大丈夫、心配しないで
「それなら安心しますけど……っと、着きましたね」
病院に着いた私たちがいつも通り受付で門原君のお見舞いに来た旨を伝えて病室に向かう途中で、彼の病室から出てくる一人の少女とすれ違う、光の当たり具合によって紫にも見える黒髪を持った彼女は私たちの方に少しだけ視線を向けたが、特に何を言うでもなく立ち去ってしまった
「今の人、先輩の知り合いでしょうか」
「どうなんだろ、少なくとも私は見たことないかも……妹さんがいるとか聞いた記憶もないし」
「じゃ、じゃあ……恋人、とか?」
「それもないと思うよ、高校の時は興味ないみたいだったし」
今がどうかはわからないけど、少なくとも当時はその手の話題になった時も興味なさげだった、もっと言うと恋人作らないのか友達と話してた時もいらないの一点張りだったし……というか、一瞬だけ目が合ったさっきのあの子、変な感じがした
「所長?」
「え? あっ、何?」
「病室、着きましたよ?」
「あっ、ホントだ」
流石に思考の意識を割き過ぎたのか病室の前を通り過ぎそうになっていた。一回思考を始めると他の事が見えなくなる悪癖は、最近収まりを見せていたが完治はしていなかったようだった。気を付けないと
そんなことを考えながら、今日も意識を取り戻さない門原君のお見舞いにやってきた