依頼を受けた翌日、私と八乙女さんの二人は青春を過ごした母校”国立六葉高等学校”の校門前にいた……というか最近八乙女さん、平日も学校に行ってる様子がないけど大丈夫なのだろうか
「八乙女さん、そう言えば学校大丈夫なの?」
「え? あぁ、まぁ、元々モデルの仕事とかで休みがちでしたし……何もない日に補習を受けてるので大丈夫です」
「……本当?」
「本当ですよ、流石に高校は卒業したいですし」
まぁ本人がそう言っている以上信じる他ないけど……まぁそれについては改めて八乙女さんと面談をする必要がある気がする
そんなことを考えていると、校舎の方から長身痩躯の男性が歩いてきた、かっちりとしたスーツを来たその人こそ私たちの恩師であり当時の担任──
「久しぶりだなぁ、狩谷。それにそっちの子が言ってた八乙女か」
「お久しぶりです、大蔵先生」
「初めまして、八乙女リサです」
「初めまして、俺は大蔵宗一、詳しいことは連絡貰ってるからそこら辺の話は校舎に入ってからだ」
大蔵先生にそう言われた私と八乙女さんの二人は、彼を先頭に校舎の方に歩きだす
「そう言えば大蔵先生、来丘さんがこの学校で教師やってるって聞いたんですけど」
「あぁ、正確にはまだ教育実習だけどな、確かにここに居るぞ」
「そっか、時間が合ったら会いたいかも」
「あの、来丘さんって一体……」
「昨日言ってた私と門原君を色々手助けしてくれた人だよ……私が転校してきて、門原君が成り行きで仮面ライダーになってから活動する為に嵐山くんとか来丘さんが色々助けてくれてたんだ」
当時は今と違って学校もあったから自由に時間も使えなくて、それでも私たちの事情なんてお構いなしに悪魔は出て、いつも通り門原君は無茶するし私は私でお姉ちゃんが残したデータの解析とかに追われててすっごい大変だったけどあの二人がいたから無事卒業出来たんだよね
「俺も門原が化け物と戦ってるのを知ったのはだいぶ後だったからなぁ、よく職員会議でも議題に上がってたよ。問題児四天王」
「問題児四天王?」
「狩谷と門原、それにさっき話に出た嵐山と来丘の事だよ。無断欠席に早退、遅刻は日常茶飯事。けど普段の素行は全員良いほうだし成績も良かった……当時は他の先生方と一緒に何度頭を抱えた事か」
「その節は本当にご迷惑をおかけしました……」
「気にすんな、お前らの事情が知ってた後は俺もちょっと融通は効くように動いてたし……それに何だかんだ言ってあの時は楽しかったからなぁ」
大蔵先生はそう言うと私たちに苦笑いの混ざった笑顔を見せてくる。こうして考えると本当に私も門原君も環境……というか友人や恩師には恵まれてるなぁ
「それじゃあ、俺は入館証貰ってくるから二人は来賓用の入口から校舎に入っててくれ」
「「わかりました」」
大蔵先生が去っていったあと、私たちも来賓用の入口で靴を履き替える
「それにしても、所長も問題児だったんですねぇ」
「……言わないで、当時はホントに色々大変だっただけなの」
「けど、なんか羨ましいなぁ。大蔵先生と話してる時の所長、ホント青春に思いをはせるって感じがして」
「八乙女さんもまだ高校生でしょ? 青春する機会なんてまだまだあるよ」
「だと良いんですけどねぇ」
来客用のスリッパに履き替えた私たちは入館証を持ってきてくれた大蔵先生と合流すると、階段を上がって今回使わせてもらう部屋……は……
「先生、ホントにここですか?」
「あぁ、お前らも学生時代よく使ってただろう?」
「そ、そうですけど……何というか、当時を思い出して拒否感が……」
「ここ、補習室ですよね、ホントに大丈夫だったんですか?」
「疑問を持たないで、ホントに大丈夫だったから……よ、よし! 入りましょう!」
高校時代、出席日数不足やらで散々お世話になった補習室。当時の事を思い出して本能が拒否感を露わにしているが今の私はもう大人、大丈夫、私は大丈夫。何とか自分の中の自分を納得させて補習室の中に入り、大蔵先生から話を聞く
「そ、それで……大蔵先生、電話でお話したことなんですけど……」
「あぁ、確か小桐忠君についてだったな」
「はい、学校での彼の様子をお聞きしたくて」
「俺は受け持ってる学年が違うから詳細はわからないんだが、彼のクラスの担任によるとクラスだと特にいじめは受けていないと言っていたな」
大蔵先生はそう言った、学校全体でいじめを隠蔽したいのであればそもそも私たちを学校内に入れるなんてことはしないだろうし、目の前の大蔵先生の反応を見る限り嘘をついている様子もない……そうなってくると
「小桐くんの担任が嘘をついている可能性はありませんか?」
「……それは、完全にないとは言い切れないな」
「? それじゃあわざわざ聞いた意味ないんじゃぁ……」
「ううん、意味はあったよ。仮に嘘をついてるなら今回の大蔵先生が聞いてくれたことで学校側に認知されるかもしれないって相手に思わせられたんだから」
「成る程」
「もう一つの可能性として考えられるのは、そもそもイジメている側が学校側にバレないよう巧妙に隠している可能性だな」
けど、その場合だったら学校側はイジメている場面を抑えない限り動くことが出来ない
「後者の可能性が高いですかね」
「実際にイジメが起きているのなら、可能性が高いのは後者だろうな」
「小桐くんの担任の先生からお話を聞くことって出来ないんですか?」
「今からは難しいな、話をするならまた後日になる」
「そうですよね……それなら少しだけ学校を見てまわっても良いですか? 卒業生なので人目につかない場所にも心当たりありますし」
「そうだな、それくらいなら構わないぞ……私も着いていきたい所だが生憎とこれから処理しないといけない業務がいくつかあってな、申し訳ない」
「気にしないでください、それじゃあ私たちは失礼します」
大蔵先生と別れた私たちは、二人で学校の中を見てまわる、授業中ってだけあって生徒は全員教室で授業を受けている
「それで、所長。最初は何処に行くんですか?」
「そうだねぇ、とりあえず体育倉庫かな」
「まぁ、定番ですねー」
そこから一目……というか教師の目に付かない所を色々と見てまわったけど不審な痕跡は特になかった
「空振りですかねぇ」
「多分、それに回った感じ私たちの時と違って教師のチェックが入ってる場所もいくつかあったし」
「……よくわかりますね」
「まぁ……たまに作戦会議で使ったりしてたから」
「やっぱり所長たちって不良」
「違うよ!? 勘違いしないで────ッ!」
話を続けようとした直後、急に嫌な感じが身体中を襲い八乙女さんの手を引いてその場から少し飛び退くとバシンッ! という音と共に土煙が上がる
「……八乙女さん、離れてて」
「まさか、学校の中でですか?」
「うん、問題のいじめっこかわからないけど……この学校でスタンプを使ってる人がいるのは間違いないと思う」
土煙が晴れ、私たちの前に姿を現したのはムカデの意匠を身体の至る所に刻み込んでいる悪魔、ぱっと見の特徴で相手がムカデである事は理解した。悪魔が右手の触手を鞭ように動かし、私の方にダメージを与えようとしてきた
「あぶなっ──」
その一撃を避けながらデモンズドライバーを腰に巻いてホルダーにセットしてあるスタンプを手に取る
『クワガタ』
【Deal】
スタンプを押印台に押印するとベルトから現れた機械仕掛けのクワガタが私の周りを飛び回り、こちらに向かって放たれた触手を切り裂いていく。思わぬ一撃でダメージを受け、後ずさる悪魔を捉え──
「変身ッ!」
──ベルトの正面にもう一度スタンプを押印する
【Delete up】
【Unknown】〘未知なる〙
【Unlest】〘混沌が〙
【Unlimited】〘超える〙
『仮面ライダー
機械仕掛けのクワガタが、装甲へと変わり、エネルギーに包まれる私の身体を覆い、頭部のアンテナがガシャリと音を立て装着され、複眼が黄色に輝き、オーバーデモンズへの変身が完了する
「行くよ」
私がそう言うとダメージを受けた悪魔は一歩後ろに下がろうとするが、少し動きを止め力無く項垂れたかと思えば、こちらへ向けて急に走り出してくる
『ァァッ!』
「ッ!」
まるで理性を失った獣のようにこちらに向けて放たれた一撃を受け止め、悪魔の腹部に拳を一発叩き込む、本来であれば痛みを感じて怯むはずの一撃だが悪魔は気にした様子もなくこちらに攻撃を続けてくる
「痛みを感じてない!? どうして……けど、それなら」
それなら戦い方を変える、まずは悪魔が放ってくる触手を受け流し触手を伸ばしている腕──右腕の肩に掌底を叩き込む。ゴリッと言う音と共に悪魔の片腕はだらりと力を失う。痛みを感じなくても異常は感じたらしい悪魔に対し次は左太ももに一撃、ガクンと身体を落とし落下する悪魔の腹部にボディーブロ―を叩き込み悪魔を空中に浮かべる
「ごめんね、でも……これで終わらせるから少しだけ耐えてね!」
【Charge】
【デモンズフィニッシュ】
ベルトにスタンプを押印した後、両サイドを思い切り押し込むと右腕にエネルギーが集まっていく──そしてそのエネルギーが拳に収束した瞬間、落下してきた悪魔に拳を叩き込む。悪魔に拳が叩きこまれると同時に余剰エネルギーがクワガタの牙を形作り悪魔を挟み込んだまま爆散する
「ふぅ……」
少し肩の力を抜いた私は悪魔の契約者を探そうとすると、一人の女子生徒を連れた八乙女さんがこちらに近づいてきた
「所長」
「八乙女さん、その子は?」
「さっきの悪魔の契約者みたいです、これも持ってましたし」
そう言いながら彼女が見せてきたのはムカデのエンブレムが刻まれたモノクロのバイスタンプ
「貴方がこのスタンプを?」
私がそう聞くと、少し怯えた表情を見せた女子生徒はこくりと頷く、どうやら本当に彼女が悪魔の契約者で間違いないようだ
「それは────」
「所長後ろッ!」
八乙女さんの声で後ろを向いた私は女子生徒を庇いつつ迫りくる触手を何とか回避する。改めて後方に視線を向けるとそこにいたのはさっき倒した筈のムカデ型悪魔。それも今度は一体だけでなく三体
「これは、一体……」
「見ての通りだよ、クソッ人様が卒業して何年かしたらこの有様か」
私の疑問に答えたのはD.D.C.Uの隊員を二人ほど引き連れたフタバ先輩──否、クロハだった
「クロハさん? どうしてここに」
「こっちも仕事だよ、全員構え、眼前の悪魔を掃討、そして契約者の捜索に入る……もう無理だろうがこれ以上騒ぎを大きくすんじゃねぇぞ」
「「了解!」」
悪魔と交戦を始めた隊員たちを見てすぐ、クロハは私の方を向く
「悪いが協力をお願いする、話はそれからだ」
「……わかりました」
改めてオーバーデモンズに変身した私は、隊員たち共に眼前の悪魔と交戦を始める