現れた悪魔の掃討を終えた私は、八乙女さんが捕まえてくれた契約者と一緒にクロハさんの後に付いてD.D.C.Uの所属する車両までやってきた。車両の扉を開けて中に入るとクロハさんは奥に腰をかける
「お前らも座れよ」
「それじゃあ、失礼します」
私と八乙女さんも車の中に入り席に座る
「さてと、そんじゃ話をするならこっちからだな」
クロハさんはそう言うと、カバンの中からとある書類を私たちの方に渡してくる。そこに書かれていたのは……スタンプ売買組織?
「クロハさん、これってクリスパーの事ですか?」
「いや、アイツらとは違う組織だ。本格的に動き出したのは最近だがもの凄い勢いで勢力を拡大して気が付きゃクリスパーよりも活動が活発になってるな」
「それじゃあ、最近の悪魔事件でスタンプを渡してたのは」
「あぁ、クリスパーじゃなくこの組織って事になる……逆にクリスパーは不自然なほど沈黙を貫いてるな」
そうなるとクリスパーは自分たちが動かないで誰かにスタンプを流してデータを集める方向にシフトした可能性もある
「でも、今まで自分たちで動いていたはずなのにどうして急に周りくどい方向に舵を切ったんでしょう」
「多分だけど、今までよりたくさんのデータを集める為じゃないかな」
「たくさんのデータって悪魔のですか?」
「うん、敵が何を狙ってるのかわからないけど、バイスタンプをばら撒いてるって事は悪魔に関係する事だと思うんだよね」
本当に何を狙っているのかまではわからないけど、大量の悪魔のデータが必要なのはまず間違いない……とは思うんだよね
「まぁ何はともあれだ、俺達が追ってる組織のバイヤーがこの学校に潜んでるらしい……あくまでも疑惑だったが大量のムカデ悪魔のお陰で確信に変わったよ」
そこまで言うとクロハは腕を組みなおして私たちの方に視線を向ける
「さてと、俺は今回の仕事について話した、お前らの事だからなんかしらの依頼でここに来たんだろ?」
「……そうですね、少しいじめの調査に」
「へぇ、慈善事業か?」
「いえ、ただ今回依頼で調べるのはいじめている側です、どうにも自分はスタンプを持ってるって言いふらしてるみたいで」
「成る程な、そいつの名前はわかるか?」
「いえ、そこまではまだ」
「なら、わかったら俺らにも連絡頼んだ。何となくだがこっちの仕事とお前らの受けた依頼は繋がってそうだからな」
「わかりました……でも、それならクロハさんも何か情報を手に入れたらこっちに共有してくださいね」
「出来そうだったなら」
その後すぐ、クロハさん達と別れた私と八乙女さんの二人は事務所への帰り道を歩く
「……何というか、以外でしたね」
「クリスパー以外にもスタンプをばら撒いてる組織があった事?」
「それもありますけど、それ以上に……自分が思ってた以上に普段の生活の中に危険がある事が以外でした」
見た感じいつもと変わらないようだけど、それでも少しだけ憂いが帯びているように見える
「やっぱり世の中、知ろうとしないと知らない事って多いんですね。多分先輩や所長と会えなかったら悪魔の事も怖いなーくらいにしか感じなかったって思うんです。悪魔と契約した人の事とか、悪魔と戦っている人の事とかも、どこか遠い世界の事だって思っちゃってたんだろうなーって」
八乙女さんが話をしたのはもしもの話、きっとそれは私も、門原君も同じなんだと思う。もしも私がお姉ちゃんの研究を継がなかったら、もしも転校した先で門原君と出会わなかったら、そこにあったのは今とは全然違う未来
「けど、今はこうして一緒に歩いてるんだし……あんまり深く考える必要はないと思うよ」
どれだけ考えた所で、もしもはもしもでしかない。結局こうして私たちが生活している時間が私たちにとっての現実な訳だし……それ以上に門原君はそんな事考える暇があったらもっと別の事を考えろとか言いそうだし
「そうですね、結局……もしもの事を考えても不安が募るだけですもんね」
そんなことを考えながら私たちが事務所への道を歩いていると、一人の少女が私たちの前に現れる
「初めまして、貴方達が狩谷相談所の人達?」
「そうですけど、えっと、貴方は?」
「私? 私は……えーっと、まぁ、狩谷相談所で働いてる人の知り合いって所かな? 知ってるでしょ、門原ヒロト」
ここで私は思い出した、目の前にいる少女は私たちがお見舞いに行ったときにすれ違った少女だ
「門原君の知り合い、もしかして従兄弟とか?」
「当たらずとも遠からず……かな、少なくとも小さい頃はずっと一緒だったから。幼馴染って言った方が近いかも」
「先輩の、幼馴染」
「うん、でもビックリしたよ。やっと会えるようになったから会いに行ったのに彼、重傷で寝ちゃってるんだもん」
今この場にいない彼を慈しむように、でもその中に呆れとか怒りとか色んな感情が混ざってる不思議な表情で私たちと話を続ける……けど、なんというか、話をしていくうちに彼女に対して変な違和感を覚える
けど、私が何とも言えない表情を見せていることをお構いなしに八乙女さんは目の前の少女と談笑を続けている
「そう言えば、自己紹介がまだだったね。私は無衣、よろしくね」
「はい、私は八乙女リサって言います。それでこちらが……って、所長? どうしたんですか?」
「……ううん、何でもない。私は狩谷ミサキ、よろしく」
「そう、よろしくね。八乙女さん、狩谷さん……っと、そろそろ行かないと、またね」
それだけ言い残して、無衣さんは私たちの元から去っていった
「所長、少し様子変でしたけど……大丈夫ですか?」
「うん、無衣さんの事が少しだけ気になっただけ」
「あぁ、綺麗でしたもんね。無衣さん」
そこからは特に何があるということもなく、数日が過ぎた後……大蔵先生から連絡が来た。内容は小桐くんの担任の先生から話を聞けるらしい