今から一週間前、怪物に襲われた私、八乙女リサは狩谷相談所という場所に相談に行き、そこで事務所の所長”狩谷ミサキ”さんと職員の”門原ヒロト”さんの二人と出会った
怪物関係の事件に手慣れているらしい二人は私の依頼を受けてくれた後、門原さんが私の護衛をしてくれるという話になった、簡単な身辺警護だって本人も言ってたし私一人じゃないから大丈夫だと安心しきってたけど、結局怪物には襲われるし門原さんはよくわからないクモ男みたいなのに変わっちゃうし……もう何が何だかわからない
「はぁー……」
「リサちゃん、大丈夫?」
「あぁ、大丈夫だよやよいちゃん。気にしないで」
余りにも現実離れした光景を目撃してすんごい疲れてベッドに突っ伏している私に話しかけてきたのはルームメイトで幼馴染の”星川 やよい”ちゃん。小学校からの付き合いで今まで高校二年になるまでの付き合いで、一番の親友だと思ってる
「本当に大丈夫? 何かあったらいつでも相談に乗るからね」
「うん、ありがとぉやよいちゃん」
「……あっ、そうだ。クッキー食べる?」
「クッキー?」
「うん、今日少しお出かけした帰りに見つけたんだ。本土からの出店販売だって」
「食べる!」
私たちが学生ってのもあるけど案外長期休みとかじゃないと実家……というか本土に戻る時間が取れないし、店舗限定のお菓子買うために半日かけて本土に戻ってる子もいるけど、仕事はじめてからそう言う時間も取れなくなっちゃった
まぁ、そんなことは置いておいて。私はやよいちゃんの用意してくれたクッキーと紅茶をひとまず楽しむことにする
翌日の狩谷相談所、状況説明……というか彼女が何に狙われていて俺たちが何をしているのかという説明のため八乙女さんには事務所までやって来てもらった
そして、いま事務所の中にいるのは俺と所長、八乙女さんの三人で現在はもう一人の到着を待っているところだ
「あの、それで今はどういう状況なんですか?」
「人を待ってるところだよ、これから話す内容に関しては昨日のことも踏まえないといけないから」
「昨日のことって……もしかして牧瀬君のことですか?」
「そうだよ。はい、お茶どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
八乙女さんにお茶を出してから程なくして、事務所の扉が開いて一人の男が入ってきた。少しくたびれたスーツを着て目の下に隈を作ったその男性は手に持った紙袋を俺たちに見せながら気軽に声をかけてきた
「お待たせ、時間通り……だよね?」
「はい、時間通りです。それよりその手提げ袋は……」
「ちょっとしたお土産」
そう言いながら紙袋の中から取り出されたのは一冊のファイル、多分今回の事件に関係する事かスタンプを使ったあの男子生徒の調書あたりだと思う
「それよりも、まずは自己紹介した方がいいんじゃないすか? 八乙女さんも困惑してる」
「あぁっと、そうだった。君が今回の依頼人かい?」
「は、はいっ! 八乙女リサです」
「八乙女さんね、俺は
「刑事さん……ですか」
八乙女さんに挨拶をした男性、改め新見真人。自己紹介の通りこの島にある警察署の巡査で主にスタンプ関連……というよりも悪魔犯罪の取り締まりや注意喚起を行っている部署に所属してる刑事さん。そして俺たちの協力者でもあるありがたーい人
「とりあえず込み入った自己紹介は後! 早速話を始めちゃいましょう」
所長の言葉を聞いた新見刑事も席に座ると、部屋の中が暗転し天井からスクリーンが降り、プリンターで情報が表示される。そこに映っていたのは昨日の生徒に関する基本情報と使ったスタンプの情報
「やっぱ使ってたスタンプは粗悪な量産品か」
「ヒロト君はそれわかってた感じか、昨日戦ったんだっけ?」
「まぁ戦った直感ですけど。普通の量産品ならもうちょっと契約者にも言葉通じるんで」
「……でも、昨日はS型以外に確かC型も出たんだよね」
「あぁ、ゴリラみたいなやつ……正直S型よりC型の方が本命って感じだったな」
俺らが話している間、近くにいた八乙女さんはなんのこっちゃって顔してるからそろそろそっちにも会話振った方がいいか
「八乙女さんは、一応聞くけど話付いてこれてる?」
「全くついてこれてません」
「だよね……」
正直かなり面倒な分類だったりするので完全に把握するのは無理だけど色々端折って話を進めていくとするか、この事務所のこととか俺の……仮面ライダーのこととか話さないといけないだろうし
「とりあえず、所長に新見刑事、八乙女さんに基本情報の共有だけしといて良いすか?」
「俺は構わないよ、今日は非番だし」
「私も基本的には暇だからね……まぁ書類仕事はあるけど」
新見刑事の方は問題なし、所長に関してはいつものことながら放っておいて……最初は悪魔のことから初めていくか
「それじゃ八乙女さん、まずは昨日襲ってきた怪物──悪魔について説明するぞ」
──悪魔、人間がバイスタンプって言うスタンプを使って契約することで現れる怪物。基本的にはS型って言う量産型ばっかり出てきて極稀にC型って言うS型の上級個体が出てくることがある、実はそれ以外にももう一種類あるんだけどそっちは基本的に出てくることないから今は省く
「じゃあ、牧瀬君が契約したのがS型で私たちに襲い掛かってきたゴリラみたいのがC型って事ですか?」
「そう言うこと」
「それなら、スタンプって言うのは何なんですか?」
「あぁ、スタンプって言うのは……これだ」
俺が取り出して机の上に置いたのは昨日変身に使ったスパイダーバイスタンプ。一応彼女にはスタンプに触らないように言ってから説明を始める
──スタンプ、正式名称はバイスタンプで悪魔と契約するためのアイテム。八乙女さんの前に置かれてるのがそのスタンプ。契約者がスタンプを自分の身体に押印することで契約完了。悪魔は自分の契約を遂行するために行動する……因みに昨日の男子学生が使ってたスタンプは目の前にあるスタンプの量産型、それのコピー品って言うかなり面倒な立ち位置のやつ
「とりあえずここまででどんな感じ?」
「正直頭がこんがらがってます」
そりゃそうだ、時間も丁度いい感じだな、俺は何やら話し込んでいる所長と新見刑事の方に声をかける
「所長、新見刑事。時間もいい感じなんで八乙女さん連れて少し出てきます」
「少しって……あぁ、了解」
新見刑事はなんのこっちゃって感じだが所長の方は何処に行くのかを理解したらしく了承してくれた
「それじゃあ、少し息抜きにでも行こうか」
「えっ? はい」
困惑している八乙女さんを連れて、事務所の外に向かった
-本日の用語解説-
・悪魔
人間の心に潜む存在、本来ならば表に出てくることはないがスタンプを使用することで外の世界へと解き放たれる
人間は悪魔に対して代価を支払い、悪魔は人間の契約内容を完遂する為に行動する
支払う代価は人それぞれであり、軽いモノから重いモノまで千差万別
・バイスタンプ
悪魔との契約の際に使用するスタンプ型のツール
前回紹介した量産型スタンプとは異なり、一つ一つに生物の遺伝子が組み込まれている。このスタンプを用いて悪魔と契約した場合スタンプに内蔵されている生物に適応した悪魔が生まれる