ライブの開催前日、俺たち狩谷相談所一同はライブの行われるスタジアムまでやってきた。ここに来た理由はシンプルで現在リハーサルと各機材のチェックを行っているSI-NAへの挨拶及び、警戒すべきポイントの洗い出しだ、もちろんここに来ているのは俺たちだけではなくD.D.C.Uもやってきている
「門原くん、八乙女さん。私はフタバ先輩たちと打ち合わせに行ってくるから。SI-NAさんへの挨拶はよろしくね」
「了解、任された」
「私たちにお任せください!」
という訳で、所長と別れた俺たちはSI-NAさんのいるらしい楽屋まで向かっているとその途中で地図の挟まったバインダーを持っている鏑木隊員とすれ違う。彼は俺たちの方を少し見た後に苦々しい顔をしながら軽く頭を下げてその場からそそくさといなくなる
「なーんか嫌な感じですね」
「あっちはあっちで色々複雑な感情持ってんだろ、触らぬ神に祟りなしだ」
「まるであの人に触ったら祟られるみたいな言いぐさですね」
「こちとら伊達に悪魔関係の事件に関わってないからな、面倒そうな人間は結構見てわかる」
まぁ面倒そうな人間が全員スタンプを持って悪魔を生み出す加害者になるとは限らないのがこの手の事件の怖い所ではあるんだよな。案外自分らに協力してくれる人が悪魔生み出した張本人だったり、全く面識の無い奴が悪魔を生み出してる場合だってある
「そう言う所が、この事件の面倒な所ではあるんだよな」
「そうなんですねぇ……あっ、控室ここじゃないですか?」
「みたいだな」
色々と話している間に控室の前まで辿り着いていたらしい、二人そろって扉の前で服装を整えてから控室の扉をノックする……因みにだが現在の服装は俺と八乙女揃ってカジュアルスーツ、動きやすい素材で作られているので少々手荒な動きをした所で問題はない
などと言っていると扉の向こう側からどうぞと返事が返ってきたから、扉を開けて中に入る。中にいたのはいかにもマネージャーと言った風の男性とヘッドホンをしている少女
「高梨警備保障からの依頼で共同警備を行うことになりました、狩谷相談所の門原です」
「八乙女です」
「SI-NAのマネージャーをしている倉橋陽平です」
倉橋陽平と名乗ったSI-NAのマネージャーから名刺を受け取る
「いまヘッドホンをしている彼女がSI-NAです。ほらSI-NA、挨拶をして」
「…………よろしく」
思った以上に表情の変化が乏しい少女の口から挨拶の言葉が紡がれたわけだが……何というか、感情表現が苦手なのか?
「すいません、彼女あまり人付き合いが得意な性格ではなくて……それで早速警備の話なんですが」
「あぁ、はい。今日は万が一のことを考えて我々が警護につきます、明日のライブ本番は我々二人に加えてもう三人、追加で警護が──」
「警護なんていらないよ」
「え?」
「警護なんていらない、別に誰に狙われてる訳でもないし……みんなちょっとしたことでいちいち神経質になり過ぎ」
ちょっとしたことってのはどういう意味だ? もしかしてこっちに何かしら隠している事でもあるのか?
「ちょっとしたことって、何かあったんですか?」
「いや、それは──」
「少し痛い手紙が届いただけで、みんな何をピリピリしてるんだか」
何かを隠そうとするようにしていたのをぶっ壊すようにSI-NAは言葉を続ける。流石にこれは追及しておくか
「痛い手紙って、どういうことですか?」
「……実はSI-NA宛てにとある手紙が届いたんです」
そう言って倉橋マネージャーの取り出した手紙を見せて貰うとそこには週刊誌や新聞の文字を切り抜いて作ったであろう脅迫文のようなものが書いてあった
──〇月×日のライブにて、貴方を私だけの歌姫にする。抵抗は無駄だ、私には悪魔の加護が付いている。不要な犠牲を出したくないのなら大人しく私だけの歌姫になる準備をしておけ
「これは……何というか……」
「確かに、傍から見たら冗談としか思えない内容だな」
「でしょ?」
気が付くとSI-NAはヘッドホンを外して俺たちの方に視線を向けていた。相変わらずその表情が変わる様子はないが……とりあえず今はそれを気にしている場合じゃないか、とりあえずこの手紙についてを所長たちに共有しといたほうが良いか
「成る程、それでマネージャーさんは悪魔関係の仕事を請け負ってる高梨警備保障に依頼を?」
「私……というよりはウチの事務所と今回のライブのスポンサーであるレーベル会社ですね」
成る程、とりあえずこの手紙の内容が真実だと受け取ったならD.D.C.U──高梨警備保障に依頼を出すのは当たり前か
「この手紙、お借りしてもいいですか?」
「はい、構いません」
「ありがとうございます、八乙女。今から俺はこの手紙を所長たちに見せに行ってくるから二人の事任せた」
「あっ、はい。任されました」
手紙を持ってその場を後にしようと扉に手をかけた所で、SI-NAからジッと視線を向けられていることに気付いた
「あの、何か?」
「……別に」
何処か釈然としない感覚を覚えつつ、とりあえず駐車場に止めてあるワゴンに足を向けつつ連絡をする
『門原くん、どうかしたの?』
「マネージャーさんから犯人っぽい奴から送られてきた手紙を借りた、一応そっちに持っていこうと思うんだが」
『犯人からの手紙か……あっ、ちょっと先輩に代わるね』
「あぁ、わかった」
『烏野です、門原くん聞こえていますか?』
「はい、聞こえてます」
『良かった、手紙の件ですが、こちらまで持ってくる必要はありません。写真を送ってくだされば解析作業自体は出来ますから』
「わかりました、それなら今から写真撮って送ります」
『はい、お願いします』
先輩はそう言ってからすぐに電話を切る。とりあえず近くにあるベンチかどこかで写真を撮って先輩たちに送るか。丁度近くにベンチもあるし
「よし、とりあえずこれで写真は撮ったし後は送って……って、なんだ?」
俺の今いる場所の近く、具体的に言うとスタジアムの外に一人の男が立ってるのを見つける。見るからに一般人と言った風の男で特に一見すると特に違和感はないが俺はどうしてもあの男に対する違和感を拭いきれなかった
「とりあえず写真を送っておいて……一応話を聞きに──」
話を聞きに行こうとした瞬間、自分が来た方から悲鳴が聞こえてくた。何かあったのは目で見なくてもわかった急いで引き返すとSI-NAを連れてこっちに走ってくるマネージャーと八乙女の姿が見えた
「八乙女! マネージャーさん! 何があったんですか!?」
「先輩、出ました! 化け物です化物!」
八乙女の指をさしている方に目を向けると、そっちから歩いてきたのは鳥男と言った風の異形の怪物。間違いない……悪魔だ
「八乙女は二人を連れて逃げろ、そんで所長たちに連絡」
「わ、わかりました!」
「門原さんはどうするんですか!?」
マネージャーの言葉に対して俺はガンデフォンをガンモードにして鳥男──イーグルデッドマンに銃口を向ける
「俺はとりあえずここであの化け物を食い止めます。だからマネージャーさんも安全な所に──」
言葉を続けようとしたところでイーグルデッドマンは翼をははためかせながらこちらに向かってくる。俺はガンモードの引き金を引いて目の前にいる敵の翼を狙って撃つが回避される────が、それでも僅かながらの隙は出来た
「早く逃げて!」
「は、はいっ」
マネージャーとSI-NAを連れてその場を離れる。イーグルデッドマンは彼女たちを追おうとするが流石にここを通すわけにはいかない──
「──それに、これでようやく人目がなくなった」
【デモンズドライバー】
懐から出したベルトを腰に巻く、このベルトがどういったものなのかを本能で気付いたらしいイーグルデッドマンは警戒態勢を取った後、こちらに向けて大きく翼を振るう
それをローリングで回避しながらスタンプを取り出して天蓋のボタンを押す
『スパイダー』
【Deal】
スタンプをドライバー上部のスタンプ台に一度押印したのち、全速力で相手に向かって突撃をしながら液晶にもう一度スタンプを押印する
「変身!」
【Decide up】
『仮面ライダーデモンズ』
蜘蛛の糸が身体に巻き付きながら赤と紫の光を放ち、俺の身体はデモンズへと変身する。そのまま突撃した俺はイーグルデッドマンの胴体に抱き着くとそのまま少しでもこの場所から離れられるように後退させる
『──ッ! 』
「ぐぅ──ッ!?」
イーグルデッドマンは抱きついていた俺を引きはがすと足の爪を使ってこっちに攻撃を仕掛けてくる。流石に振りほどかれてからすぐに回避行動をすることは出来ずそのまま胴体が切り裂かれ火花が散る
「この野郎ッ!」
吹き飛ばされそうになった体勢を手から蜘蛛の人を発射し壁や天井に貼りつかせて無理矢理蹴りの体勢に移行する……けど流石に当たらない。使われてるスタンプは
「流石に、すばしっこいか……ならッ!」
取り出したガンモードのガンデフォンを使って敵に対して銃撃をする。当たるとは思ってないが少しは行動の制限になる筈だ、少し後方に下がり銃撃を避けたのを確認した俺は蜘蛛の糸をイーグルデッドマンの身体に巻き付かせて思い切りこちらに引っ張る
【Charge】
真っ直ぐこちらに向かってくる敵を確実に倒すため、ベルトの液晶にスタンプを押印し右足にエネルギーをチャージし両サイドを押し込む
【デモンズフィニッシュ】
眼前まで来たイーグルデッドマンにエネルギーの集中した右足で蹴りを入れる──直前で敵は翼から羽根状の弾丸を放ち砂埃を起こした。それに構わず蹴りを入れるが手ごたえはなく、土煙が晴れたころ敵の姿はそこにいなかった
「──逃げたか」
変身を解いてベルトをしまうと、フタバ先輩をはじめとしたD.D.C.Uの隊員たちがこちらに走ってきた。その中には八乙女やSI-NA達の姿もある
「無事ですか?」
「えぇ、何とかしようと思ったんですけど逃げられてしまいました。申し訳ない」
「警護対象を守れただけでも十分です。今回襲ってきた敵に対してはこちらも調査を進めていきますので……門原くん、八乙女さん、襲ってきた怪物の特徴を知るためにお話しを訊きたいのですが」
「俺は大丈夫です」
「わ、私も大丈夫です!」
「わかりました。それではついてきてください」
フタバ先輩はSI-NA達の警護を一時的に他の隊員に任せて、俺たちを駐車場に止めてある指揮官車両に改造したワゴンまで向かう
今回はここまでになります
4話、ライブ会場警備編の後半はワゴン内でのヒロト達の会話からスタートします
次回に関しては少々長くなってしまうかも知れないので、場合によっては三分割する場合がある事をご了承ください
PS.D.D.C.Uが使っているワゴンは仮面ライダーゼロワンに出てくるA.I.M.Sのワゴンと同型のものをイメージしております