思いついたので勢いで書きました。暇つぶしのお供にどうぞ。
オリジナル秘伝忍術が出てくるのは、先の話になります。気長にお待ちください。
『お前は本当に色々と遅いよなぁ』
『もっと速く動けよ!ノロマ!!』
『もっとこう……サッと印を結びなさないよね』
小さい頃からずっと、全ての動作が遅いと言われ続けてきた。
走れば「もっと速く走れやコラァ!!」と怒鳴られ、また花を生けていれば「作品は素晴らしいのですが、今度からは授業中に終わらせることを目標に頑張ってください」とやんわり注意され、印を結べば「遅い!!!」と一喝される。
どうやらこの世界は、アタシが思っている以上に速い速度で回っているらしい。少し前までは何とかしようと考えていたが、上手くいくどころか失敗することが増えた。
どうやら夢への道のりは遙か彼方のようだ。このままでは一生叶わないかもしれない。だが、それでも歩みを止めるわけにはいかないのだよ。
「次、染井アタミ!」
「はい」
考え事をしていたらアタシの番が来たらしい。
今は変化の術の復習テストをしている所である。何故そうなったのかは分からないが、十中八九うずまきナルトが原因だろう。だってこういうことの中心にはいつも彼がいるんだもの。
きっとイルカ先生が鼻に詰め物をしている原因も彼に違いない。
「___変化の術」
イルカ先生にそっくりそのまま化けることに成功した。お手本が目の前にいるのだから、やりやすいことこの上ない。しかし、やはり印を結ぶ速さが遅いらしく「完璧な変化なんだが、もう少し印を速く結ぶように意識しような」と優しく注意された。
アタシはそれに返事をして、自分の席へとぼとぼと戻るのであった。
翌日……
今日は卒業試験の日。
昨日言われた「印を速く結ぶ」ことを意識して、チャクラをいつも通りに練る。
これはアタシにとってかなり難しい。だけどみんなは出来ている。だったらアタシにも出来るはずなのだ。同じ人間だもの。
(合格出来るのかな……術の精度なら自信あるけど、肝心の「速さ」が欠落してるんだよなぁ)
不安はある。だが、うじうじしてる暇があったら何かしらの行動を起こすに限る。
例えその行動を起こした結果が、失敗だったとしてもだ。アタシはアタシなりの速度で成長していけばいい。他の人は所詮他人。比べるだけ無駄だ。
(合格して忍者になって、そうしたら……)
アタシは自分の夢を叶えるために、忍になることにしたのだ。こんな所で躓いている暇はない。
気合いを入れ直して、イルカ先生の話に耳を傾けた。
「で……卒業試験は分身の術にする。呼ばれた者は1人ずつ隣の教室に来るように」
……何だか肩透かしを食らった気分だ。
卒業試験とはもう少し小難しいことをすると思っていた。しかし、イルカ先生は分身の術だけだと言う。
(……もしかして、素質のある者を
その後に無理難題をふっかけて選りすぐりの下忍を選抜するみたいな。
……まさか、そんなわけないか。これはきっとアタシの考えすぎに違いない。
あー、緊張しすぎて余計な事ばかり考えてしまう。さっさと合格してこの緊張感とおさらばしたい。そしていつものようにヌボーっとしたい。
「___失格!!!!」
?!……うずまきくんだろうか。
まぁ、彼はチャクラコントロールが下手だから、1人しか分身出来なかったとかそんな所だろう。
それはそうと、うずまきくんの結果を聞いて不安がさらに増してしまった。
(アタシも落ちたらどうしよう……)
せっかく気合いを入れ直したのにこれでは台無しではないか。
あのスットコドッコイめ…一体どうしてくれよう。
「……次、染井アタミ!」
とうとうアタシの番が来てしまった……
いや、落ち着けアタシ。大丈夫だ。お前は今まで頑張ってきたじゃないか。昨日の復習テストにだって合格したのだ。今回もきっと大丈夫だ。
自分に暗示をかけながら教室に入ると、ミズキ先生に聞こえたらしく、心配そうな顔をされた。しかし、それを気にする余裕はない。どうやら自分で思った以上に緊張しているらしい。
「それでは、いつでもいいので分身の術をやってくれ」
「はい……」
落ち着け、落ち着け……印を速く結んで、チャクラはいつも通りに……
「___分身の術」
「……分身の数は申し分ないし、印を結ぶ速さもいつもより速かった」
「!それじゃあ」
「あぁ、卒業おめでとう」
「はい、ありがとうございます!」
合格出来て良かった。これで落ちていたら、今日の夜は枕を涙で濡らす所だった。
アタシはイルカ先生から額当てを受け取り、喜色を浮かべて自分の席へと戻るのであった。
あれから全員卒業試験を受けたが、うずまきくん1人だけが不合格となった。
うずまきくんは独りぼっちでブランコに跨がっている。そして、それを冷たい目で睨みつける大人達。
「ねぇ」
「ん?オレ?」
「アナタ以外に誰がいるってのよ…それより、アナタって夢はあるわけ?」
「夢?」
「そうよ…目標でも何でもいいわ。アナタにはそういうのないの?」
独りで寂しそうにしている姿を見て、放っておけずに声をかけてしまった。
挙げ句の果てに、気を紛らわすためにヘンテコな話題を振るしまつ。口下手にも程がある。
「アタシにはあるわ。この里から出て、色々なものを見て見解を深めて、物語を書くの!」
「ものがたりぃ?」
「そうよ!アタシ、自来也様が書いた『ド根性忍伝』好きなのよねぇ。アタシは自来也様を越える小説家になるの!アナタは?」
「!…オレは……先代のどの火影をも越す火影になるんだ!んでよ!オレの力を里のヤツら全員に認めさせる!!それがオレの夢だ!!!」
おぉ……火影を越すとは、大きく出たなぁ。しかも歴代全ての火影を越すのかぁ。
アタシの夢も大概だと思っていたけど、上には上がいるものね。驚きすぎて何と言えばいいのやら……夢が壮大すぎてリアクションに困る。
「…………そう」
「そんだけかよ?!」
「いや、何て言うか……リアクションに困る」
「何でだってばよ!!」
「はぁ、アナタの夢が壮大すぎるからよ」
「え?……そうかぁ?」
うずまきくん……アナタ、火影様達がどれだけスゴい方達なのかちっとも分かっていないのでは?
そんなことでよく「火影になって、みんなにオレの存在を認めさせてやる」的なこと言えるな。
それでも、天才と馬鹿は紙一重と言うし。うずまきくんは地頭が悪いわけではないので、指導者に恵まれれば一気に化けるのではないだろうか。
今後の成長が楽しみだと思う。
「……それはもういいわ…アタシはもう帰るわね……アナタも早く帰りなさいよ」
「おう!……ありがとうな。アタミちゃん」
うずまきくんは照れた様子で礼を言って帰路についた。
周りの大人達は、相変わらず冷たい目でうずまきくんを睨めつけている。
どうしてうずまきくんは里の大人達から嫌われているのだろうか。
彼がイタズラ小僧だからだろうか。いいや、それにしては向ける目があまりにも冷たすぎる。
考えられるとしたら、彼の親が何かをやらかしたとか。
例えば、その人が里を滅ぼしかねない何かをやらかした。しかし、その人はもう死んでしまっている。その恨みや憎しみが、その人の子供に向かっているとしたらどうだろうか。
これなら大人達の対応にも説明がつくのではないだろうか。
まぁ、全てはアタシのくだらない妄想だ。
当たってはいないだろうが、大人達がうずまきくんに良くない感情を向けているのは事実。
大人達はアタシ達子供に何かを隠している。これは絶対に間違いない。だって保護者の人達が話していたもの。
『ねぇ、あの子……』
『
『フン!いい気味だわ……』
『あんなのが忍になったら大変よ』
『だって本当はあの子……』
『ちょっと、それより先は禁句よ』
盗み聞きは良くないと思ったのだが、つい聞いてしまったのだ。
うずまきナルトの「謎」を解明できるかもしれないと思ったから。だがしかし、「謎」はさらに深まってしまった。
何だ「例の子」って。「本当はあの子」の先も気になる。これは、里も共犯だと考えていいのではないだろうか。
あの保護者達の様子からして、
まぁ、分かった所でアタシには何も出来ない。せいぜい自分の欲求を満たすことが出来る程度である。ネタにはなるが、思い切って調査に乗り出すと「死んだ方がマシ」と思うような地獄を見ることになるだろう。
アタシはまだ夢を叶えていない。だから死ぬわけにはいかないのだ。
断腸の思いでうずまきナルトの「謎」を解き明かすことを諦めて帰路についたのだった。
どうも、先生たこ足です。
今回はかなり苦戦しました。原作沿いなのに。
リアルの方が大変忙しく、続くかどうか分かりません!
続かなかったら、作者が貧弱すぎてへばってるんだなと思っといてください。