偽書・銀河英雄伝説   作:隠居おっさん

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 ここから段々とオリキャラが出てきます。作りがヘボかったりしても目をつむってください。まぁヘボは全体やろ、と言われればその通りなのですが。
 オリキャラのまとめ(辞典みないなもの)をどうするかなぁ。
 下書き完了時と投稿時に読み直しているんですけどなんであんなにも誤字報告がくるのでしょうか?



No.10 帝国艦隊

 

 

 帝国軍宇宙艦隊司令部小会議室

 

 

「申し訳ありません。司令長官は用事が立て込んでおりましてもう少々お待ちくださいとの事です」

 

「構わんよ、元帥が忙しいのはいつもの事だ」

 

 その返答を聞き、ほっとしたような表情を浮かべた司令部付き従卒が退出すると部屋に残るのは司令長官に呼ばれた二人の将官のみとなった。

 

「今、この時期に呼ばれるとなるとやはりイゼルローン絡み、と考えるのが妥当なのでしょうな」

 

 用意された飲み物を優雅に飲みつつ語るのはルプレヒト・フォン・シュヴァルベルク上級大将。艦隊司令官としては最先任の上級大将であり実質的副司令長官として日頃忙しい長官に代わって各艦隊司令官達のまとめ役となっている。

 

「司令長官直率、もしくは私たちのどちらかが率いて出る事になるのでしょう」

 

 応えるのはウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ上級大将。宇宙艦隊司令長官ミュッケンベルガー元帥の統率下にある艦隊司令官で上級大将となっているのはこの二人のみである。

 

「限度で今年度、理想として今年中に奪回がならないと……これ、ですからな」

 

 シュヴァルベルクが首をしゅっとやる仕草でミュッケンベルガーの未来を語る。

 

「様々な事情で三長官(※1)の進退が保留となっておりますが国民の不信は早期に拭わねばならないでしょう」

 

 イゼルローン要塞陥落。この知らせは帝国中を震撼させた。政府等は厳重な情報統制で事を治めようとするがいつまでもそれを保てるはずがない。この事態に対し、帝国の三長官と呼ばれる軍務尚書エーレンベルク元帥・統帥本部総長シュタインホフ元帥・宇宙艦隊司令長官ミュッケンベルガー元帥は辞表を提出したが国政を司る国務尚書リヒテンラーデ侯がそれを"保留"とした。

 

「責任を取り身を引く、とはその責任の所在を明らかにし今後そのような事態にならぬように手配する、失われたものがあれば取り戻す。そういう処置を行った後にする事である。それを成さずに身を引くのは責任を取るではなく責任から逃げる、といわねばなるまい」

 

 そう言ってリヒテンラーデは皇帝に渡さねばならないであろうその三通の辞表を己の所で止めたのである。

 

「リヒテンラーデ侯の温情。と見る目もあろうが実情としては今、三長官が丸ごと退任となるとその後継に色々と、まぁ、困るのでしょうなぁ。イゼルローン陥落だけでも痛いのだが総辞任となると軍部の威信の低下を世に示す事になる。そうなるとその大事な三長官の椅子ですらあれらの手が伸びてしまう。それだけはいかん」

 

 シュヴァルベルクが いかん、いかん と何度も呟きながらうなだれる。

 

「一部の艦隊司令の椅子で満足していただければそれでよかったのですが。何か手に入るとさらに欲しくなる。それがあの方々の性といわねばならないのでしょう」

 

 メルカッツもまた、何とも言えない顔で同意する。

 

 

 帝国軍宇宙艦隊一八個艦隊。誉れあるその武門の頂は近年、大きな歪みを抱える事になっていた。

 門閥貴族たち、いやブラウンシュヴァイク公とリッテンハイム侯の際限ない勢力争いは貴族社会のみならず政治・軍事を巻き込んだ騒動へと発展した。特に軍事力という明確なステータスは貴族社会を概ね蹂躙した二大勢力の次なる目標として非常に魅力的なものであり、彼らの手が伸びるのは必然だったといえよう。彼らはまず、貴族特権である軍階級(※2)を利用しその階級に準じる軍役職を求めた。求めてきた人数だけでも軽く百を超える数である。当然ながらそのような椅子は用意できないし座らせたら軍という組織が崩壊する。しかしながらそもそも貴族が軍階級を得るのは古き良き貴族の心得である「位高ければ徳高きを要す」つまりは地位に伴う義務として軍務に立ち命をかけるべし、という教え故である。なのでその地位で得た軍階級に伴う役目を求める事自体は間違いではない。ただ、求めているのが危険のない位置での地位と権力である、という事だけである。

 この事態に対ししばらく押し問答が続いていたが最終的に軍部は(軍全体の運営への影響を最小限に抑えられるように配慮し)門閥貴族に対し一定の役職(椅子)を用意する事で妥協を図った。その一部が宇宙艦隊の六個艦隊の司令官の椅子であり、その椅子の一つを名目上宇宙艦隊副司令長官にする、というものであった。しかし、ただその椅子を無条件で渡した訳ではない。これ以上の勢力拡大は望まない、という言質を得るのは当然として(といっても程度が下がったのみで守ってはいないのだが)その六個艦隊には以下のような制約が課せられた。

 

 1・新兵補充を優先的に受け持ち、実働艦隊への兵力供給源となる事

 2・大規模な海賊及び辺境反帝国勢力への討伐任務を優先して行う事

 3・実働艦隊出兵で発生する損傷艦や要整備艦などを引き受ける事(代わりに整備済未損傷の艦を提供)

 4・上記3任務の為の運用人材は宇宙艦隊司令部などが差配するがこれに対して拒否・任務の妨害は行わない事

 

 つまりは帝国艦隊の主任務である叛徒軍討伐以外の仕事を極端なまでに引き受ける事、であった。これに関して門閥貴族側はあっさりと受け入れた。彼らにとって重要なのは艦隊司令官という美味しい椅子に名簿上だけでも座り続け、「恙なくその任を果たした」として一定期間後に昇進→予備役編入とする事だけである。軍務につき(ついてないけど)、貴族特権としての階級を上回るそれを手に入れてステータスにする、それさえできればあとの任務は下にやらせればいい。何もせずに蜜をすする、それが門閥貴族である。

 この手打ちにて騒動には一定の収まりはついたものの軍部(&政府)と門閥貴族の溝はさらに深くなり、軍部の門閥貴族嫌いは益々拍車がかかる事となった。

 

 

 

「待たせてしまったようだな。すまぬ」

 

 そう言ってミュッケンベルガーが席に着く。重要な打ち合わせにしてはお供は少なく、参謀らしき者を数名を連れてきているだけである。

 

「恐らく両名共イゼルローン絡みと思っているのでだろう」

 

「そうだと思っておりましたが異なるので?」

 

 シュヴァルベルクがそれならなんだ? という表情で応える。

 

「端的に話そう。叛徒どもがイゼルローンを越えて侵攻してくる。推定兵力は三〇〇〇万。艦隊は八個乃至九個と見積もられている」

 

 ミュッケンベルガーが二人の反応を見る。自分の時と同じである。侵攻を受ける可能性については考えていた、しかし想定していた規模と違いすぎる。

 

「八個乃至九個。首都防衛として残るであろう艦隊以外、全て来る可能性があるという事ですか?」

 

 メルカッツが信じられないという表情で確認をする。

 

「そうだ。これに対して私の統率下である一一個艦隊全てを使用して迎撃を行う事となった」

 

「そもそも情報の出どころはフェザーンという事でよろしいか?」

 

「情報部曰くそうとの事だ。叛徒政府による一般公開のみではなくフェザーン独自の情報網での裏付けも済んでいるらしい。そこまでフェザーンがする意味は判らんが嘘を教えて得をする事もあるまい。政府も確定事項として扱う事にしたのだそうだ」

 

「敵は八乃至九、こちらは一一。負けの目は十分にありますな。首都防衛艦隊が動かせないのは仕方ないとしてもあの六個艦隊を一時的にでも使う事は出来ませんかな?」

 

 シュヴァルベルクが誰もが思いつく"増援"について尋ねる。

 

「確認はした。あ奴らが言うには」

 

「我々の艦隊が練兵などを引き受けてるお陰で元帥の持つ一一個艦隊は常に精鋭の状態を維持できるのでしょう?それでより少ない叛徒軍に負けるとでもいうのですか?なかなかに素晴らしい精鋭ぶりですなぁ。それでもと言うのなら手を貸す事もやぶさかではありませんが当然、それ相当の見返りもあるという事で良いのですかな?」

 

「と、いう事だ。そこまで言われて頭を下げるくらいなら何をしてでもこの兵力で戦ってくれるわ」

 

 ミュッケンベルガーが"憤慨"そのものの顔で吐き捨てる。練兵押し付けといいそれによる練度の維持といい、なまじ言っている事に正論が混ざっているだけに余計に腹立たしい。

 

「ただ守るという事だけならイゼルローン回廊の出口を数個艦隊で塞げば可能でしょう。しかしそれでは根本解決にはなりません。相手を最低限こちら側に引き入れてそのうえで再侵攻が当面不可能になる程の戦果を上げる必要がある。その認識でよろしいでしょうか?」

 

 メルカッツが淡々と状況を整理する。

 

「その通りだ、参謀たちに何種類かの迎撃案を考えさせてある。今、ここでどうするかを決め、必要な準備を開始する。心得て欲しいのはこの一一個艦隊が敗北する事があれば、たとえその後に勝利しようとも帝国軍人の、武門の伝統は途絶え全てがあ奴らの私物になるという事だ」

 

 ミュッケンベルガーが参謀を呼び、迎撃案を説明させる。二人の上級大将はかつてないほど真剣にその説明に耳を傾けた。

 

 

 

「貴官達が迎撃策を考えた、という事で良いかな?」

 

 迎撃案が決まると共に当面の作業内容を定め、それぞれ即行動開始となった。しかしメルカッツは退出の際に参謀の一人に話しかける。

 

「メルカッツ提督……、いくつかの案は私が考案いたしましたがこの度採用された案に関してはこちらのオーベルシュタイン中佐の発案となります」

 

 そう答えたキルヒアイスが傍らの男を紹介する。

 

「パウル・フォン・オーベルシュタインと申します。司令部付きとしてキルヒアイス大佐の元で働かせて頂いております」

 

 オーベルシュタインがメルカッツに頭を下げる。メルカッツが何か話しかけようとしたが奥から呼ばれてしまう。呼ばれたオーベルシュタインがその場を離れ、メルカッツとキルヒアイスの二人きりになってしまった。

 

「あれがイゼルローンの生き証人、オーベルシュタイン中佐か。陥落の責を要塞司令と駐留艦隊司令に全て押し付けたが故に降格のみで済んだといわれていたが、ここにおったのだな」

 

「はい。色々あって引き取り手がおらず、元帥も苦手とされているようで私の下という形で押し込まれてしまいました」

 

 キルヒアイスが苦笑いを浮かべながら答えた。

 

「確かにあの案は貴官には合わぬな。見栄えも考え方も恐らくは正反対、押し付けたかったのもあるがそれ故に組ませたのだろう」

 

「はい。しかし……あの案は感情論無しで考えれば、最も合理的且つ勝率の高い方法でしょう」

 

 その言い方にキルヒアイスの気持ちが込められているように感じる。

 

「キルヒアイス大佐、この世界で生き抜く為には時にして己の信条と逆の行為をせねばならぬ時がある。人の命を数で考えねばならぬ時がある。己の判断が何人の軍人の、国民の命を背負っているのかを自覚せねばならぬ時がある。己の信条を守りつつそれらを両立させる事は難しいと思うがそれは時間と共に慣れるしかあるまい」

 

「その言葉、心に刻ませて頂きます」

 

「無理をせん程度にな。さて、お互いにやるべき事の準備を始めるとしよう」

 

 メルカッツも場を去り、残るはキルヒアイスのみ。

 

(無理はしておりません。あの策はオーベルシュタイン中佐が発したものですから。……私より先に)

 

 

 その翌日、帝国一一個艦隊に総動員の命が下され、宇宙艦隊司令長官ミュッケンベルガー元帥に帝国領内全ての軍事施設に対する優先指揮権が与えられた。

 

 





 少し、溜めこみ期間に入ります。

 某男爵のまってく出ない帝国編と言う違和感(マテ

 キルヒアイスのアスターテまでの出世RTAを入れるタイミングを失ってしまいましたが"その方が色々とおもしろそう"だと思ったのでこのまま行く事にしました。

※1:三長官
 帝国軍部の最高幹部である軍務尚書・統帥本部総長・宇宙艦隊司令長官の事

※2:貴族特権としての軍階級
 爵位所持者はその位に準じる軍の階級を得られるという制度。特に問題が無ければ
  公爵:上級大将 侯爵:大将 伯爵:中将 子爵・男爵:少将
 の地位を無条件で得ることが出来る。(※与えられる階級については作者設定です)
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