私の実力がよくわかる駄文です。
帝国領への侵攻は後陣である第五&一三艦隊が先陣を切るという形で始まった。
この後陣がまず橋頭堡としての占領領域を確保、この領域を起点として先陣任務群合計六個艦隊が展開を開始するという流れである。後陣艦隊は総司令部より各艦隊に追加増援として付与されている支援艦(偵察巡洋艦・電子戦&通信用工作艦)を活用し橋頭堡まで偵察しつつ前進、その航路に沿って工作艦が帝国の通信網を物理的・電子的に遮断し味方の通信網を形成する。その後、橋頭堡より先陣各艦隊が同様の行為を行いつつ目標とする初期到達限界まで前進する。そこまでが第一段階となっている。初期到達限界は分散した先陣各艦隊が一定の連携を行える距離を保てる線を限界としている。もしそれ以上の深部に侵攻した場合、各艦隊の距離が開きすぎて連携が鈍くなるし後陣は後詰として動きたくても急行できない距離になってしまう。しかし逆に帝国から見た場合、この限界に到達する前に何かしらの迎撃を行わなかった場合、広く展開した侵攻軍の捕捉が難しくなるし一歩間違えれば広くなりすぎた防衛ラインをすり抜けて自由度の高い後方遊撃戦が展開されてしまう。そのような事情で"捕捉可能な領域で迎撃を行うはずの帝国軍を高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処し撃破する"というのが本侵攻作戦の主眼(第二段階)となっていた。
先陣を切った後陣艦隊は予期されていた焦土戦とみられる状況を見る事もなくいくつかの有人惑星を占領しつつ予定していた地点まで進出した。占領地にはイゼルローンへの後詰や支援に使用されていたであろう軍事施設もあったが撤収済みであり、軍事物資についても持っていける範囲で持ち去ったらしくもの抜けの空の場合もあれば一部残っている場合もある、と言った感じであった。住民生活については特に軍からの徴発は行われておらず、せいぜい軍民共用施設からの撤収時に(数えて分けるのも面倒になったのか)一部物資がまとめて持っていかれた程度であったがその程度の事象は焦土戦に関係なく織り込み済みであり艦隊に同行していた地上戦要員が管理する物資より提供が行われた。最終的にその地上戦要員達によって有人惑星単位に統治司令部が組織され、現地行政と協力して臨時統治を行う事になる。この統治司令部発足をもって管理は艦隊から総司令部に移譲され、艦隊は次の目標地点に進むのである。
このようにして占領領域を広めつつあった侵攻軍に最初の暗雲が漂い始めたのは後陣を追い越した先陣任務群が予定の三分の一あまり進んだところであった。新規占領領域にて「来るはずだった定期便がお前たち(同盟軍)の侵略で来なくなった。このままだと不足しそうになるものがあるから事前に提供してくれないか」と援助を要請してきたのである。そして同時期に既存占領区域(後陣占領領域含む)にも同様の提供要請が発生し始めていた。統治司令部は管理物資にて賄える場合は提供し、持ち合わせの無いものに関しては後方から輸送して提供する事を約束する。(本音はともかく)我らは解放軍として来た、と言うからには必要と言われた物資を断るわけにはいかない。その時はまだ要求量も少なく対応が可能だろうという判断で提供を約束し、各地の統治司令部は総司令部に追加支援を要求する。統治司令部はその要求に対しこの世の全ての種類の物資を事前用意する事は不可能であり、要求が出るのは想定の範囲であろうという認識で後方参謀チームに輸送予定の物資にそれらを追加するように命じる。その追加要請物資の内容を確認し、それに秘められた意味・危険性を最初に認知したのはその物資管理の総責任者である後方主任参謀アレックス・キャゼルヌ少将なのであった。
「占領領域の全てに最優先指示として連絡を取れ!!何もしない場合、一カ月、いや二ヵ月以内に欠乏する物資を全て報告させるんだ!! クソッ!そうだよ!何故この程度の事に俺が気づかなかったんだ!!同盟と帝国じゃあ備蓄している量に違いがあるのは当たり前じゃないか!!」
それは無意識のうちに刷り込まれた"常識の違い"というものであった。同盟領のイゼルローン隣接地域の有人惑星は帝国からの侵略の可能性が常に存在していた為、民間航路の一時的封鎖などに備えた各種物資の備蓄が義務付けられており、それらを一定量自給自足出来るように生産体制を確保する事も努力義務とされていた。これは政府の指示であるから当然支援も行っている。この体制が一〇〇年以上続いた帝国との戦いの中で培われた"当たり前の制度"なのである。しかしながらそのような制度が帝国にあるという保証はない。ましてやイゼルローンという壁が出来て数十年が経過して帝国領は安全な世界になっているのである。言われてみればすぐわかるが言われてみないと判らない。本来はそういう差異を発見する為に十分な事前調査を設けるものであるがそれが行われなかった故の"気づき遅れ"であった。
キャゼルヌ達後方参謀チームは十分な準備期間があればそれに気づいたであろう。しかし彼らは帝国領侵攻が決定した直後から"国内の軍事物資の貯蓄量・生産量・輸送能力を把握し会議までにその総量と輸送限界を把握し説明できるようにしておく事"という無理難題に立ち向かわねばならなかった。そしてその後は帝国領に侵攻する三〇〇〇万人という人員の初動に必要な物資を計算し、集め、補給部隊として編制をする。さらにはその作業を行いつつその後の輸送が出来るように国内の物流ラインを形成しイゼルローンまでの輸送を可能とし、さらにさらにイゼルローンから現地への輸送護衛計画を立てる。過去における最大の演習ですら扱ったことのない動員量なのである、余計な事を考える余裕などどこにもなかった。当然ながら侵攻開始までに全ての準備が整うはずもなく現在はその計画の調整をしつつ国中から物資をイゼルローンに輸送している真っ最中なのだ。当然ながらしばらくの間、まとまった物資はイゼルローンからは出せない。侵攻してから追加の物資が送れるようになるまでのタイムラグ。輸送を出すまでこれくらいの期間なら何とかなるだろうと判断したその期間は無意識のうちに同盟領の備蓄物資を元にしたものになっていた。
キャゼルヌは部下たちに当面の指示を出すと総司令部に向かう、
「総参謀長・・」
彼が話しかけたのは総司令官ロボス元帥ではなく総参謀長のグリーンヒル大将であった。ロボスの傍らには常にお気に入りであるフォーク准将が控えており直接ロボスに話す事が出来なくなっている。物理的にも精神的にも少し距離を置いている形になってしまったグリーンヒルにまずは話を通すことにした。一人で突入するよりもその方が結果として効率が良い。
「先ほど指示されました追加輸送の件ですがこれは重大な危機に直面する前触れかもしれません」
唐突な物言いにグリーンヒルが眉をひそめる。
「大胆な物言いを・・・とい言いたい所だが君がそのような言い方をするには訳があるだろう。まずは言えるだけを言ってみたまえ」
ロボスとフォークであれば笑われて打ち切られそうな話であるがグリーンヒルはそれをせず続きを促した。彼の人格もさることながら色々な所から話を汲み取る事こそ総参謀長の仕事の一つである。グリーンヒルに促されたキャゼルヌは不完全ながら己の立てた予想を言う。
帝国領の各有人惑星には同盟のような自給自足目標も備蓄義務も恐らくは存在しないであろうという事。その場合、主要産業物資以外の多くが外部からの定期輸送(輸入)で賄っているであろうという事。それらのうち比較的少なくなっていた物資に関して要求が出たのであろうという事。占領領域内での生産量で融通も出来ない場合、同盟より少ない星内備蓄では帝国軍が特に焦土作戦を意識してなくてもあっという間に不足してしまうであろう事。などなど。まだ予想に過ぎないが「備蓄があって当たり前」と考えている同盟側と「定期便があって当たり前」と考えている帝国側で認識にずれがあったとしたら・・・・・・
「少なくともわが国では危険性のある地域には長めの一作戦が終わるまで持ちこたえる事の出来る物資備蓄が義務付けられています。しかし言い換えるのであればそういう義務を課していなければ一作戦中に物資の不足が発生するという事です。恐らく最近まで安全だった帝国領はそれが当たり前の状態です。現時点で帝国が焦土戦を意図的に実施しているという証拠はありませんが実質的にそれはもう始まっているといえます」
キャゼルヌは言うだけ言うとグリーンヒルの返答を待つ。
「・・・・総司令官への報告は私から行う。想像通りであればすぐにでも後退、最低でも停止はしたいのだが現状はまだ状況証拠のみであって説得できるだけの数値が無い。君が集めるように命じた情報が集まって始めて数値を使った説得になるはずだ。私もなんとかそれまでの間、動きを止めるように説得し続けよう」
そういうとグリーンヒルが立ち上がる。
「ここが私たちの最前線だ。やれる事はやりつくそう」
「はい」
グリーンヒルとキャゼルヌは己の職務において戦闘を開始した。
「これは・・・・・」
ヤンが司令官デスクの上で胡坐をかいた状態でフレデリカから手渡された統治司令部からの報告書を見る。
侵攻にあたって焦土戦についての危険性は事前に地上戦要員部隊には伝えているし「軍事組織の撤収具合」と「徴発やそれに準じる民需物資の強制的な持ち出しの有無」については必ず連絡する様に伝えていた。それに対し占領地に設置された統治司令部からの返答としては「軍事組織は撤収済み、徴発の類は特になし」との事だったので以後の作業を統治司令部に移管し、定期連絡と非常時連絡のみを行う事になった。後陣艦隊の主任務は1・先陣とイゼルローンを結ぶ航路の保持、2・その範囲における精密偵察、3・先陣に対するいわゆる後詰となっている。有人惑星間の主航路周辺は先陣の通路として優先的に整備されたが無人惑星が本当に無人なのかの確認も必要であるし何もない宙域はそれはそれで通行路として使用される可能性がある。これらを精査し、可能な限り遠い位置で捕捉できるように哨戒網の構築や使い捨ての監視衛星の配置などをヤンは指揮をする必要があった。幸いにも第一三艦隊には艦隊運用の達人であるフィッシャーや(常識的な)作戦の立案運用に優れたムライがいるのでヤン本人の負担は少なかったがこれだけの範囲偵察はイゼルローンを拠点とし月単位に計画的行われる作業である。それを他作業と並行して行わねばならないので一旦大丈夫と言われた統治司令部に関しては何かあったら遠慮せずに連絡するように告げて受け身にならざるを得なかった。そして何度目かの定期連絡にてその予兆を発見したのである。
「何か特別な連絡でもあったのでしょうか?」
やや表情を(悪い方に)崩してレポートを見ていたヤンが気になったのかラインハルトも寄って来た。特に専任となる作業の無かった彼はつい先程までムライの作業の手伝いを行っていた。既に大局的視点では優れた見識を認知されていたがこのような細かい実務作業の力量はどうだ?とばかりにムライに預けてみたのである(後に落ち着いてからムライに確認した所、「丸ごと任せても大丈夫だったかもしれません」との事だった)
「所感を聞かせてくれるかな?」
そう言ってヤンは報告書を手渡す。ラインハルトはそれを一読し、重い声で応えた。
「同盟と帝国で備蓄というものに対する概念が異なっていた。元をたどればその一言に集約されます」
「その通りだと思う。かくいう私も"徴発等は無し、備蓄は大丈夫"と連絡を受けて少なくとも後方からの輸送が開始されるまでは大丈夫だろうと思ってしまった」
ヤンが頭をかきつつ応じる。彼もまた"備蓄"という言葉に秘められていた"量"を間違えていたのだ。一〇〇年以上続く戦争で培われた常識にはそれだけの魔力がある。
統治司令部の問いは(当面の生活等が可能な)"備蓄は大丈夫か?"」というものだった。これは同盟側には備蓄義務等があった為に生まれた当たり前としての認識であったが特別な備蓄という概念の無い現地行政は(定期便が来るまでの)"備蓄は大丈夫です"という認識で回答を行った。それだけの事だった。その認識で後陣は主任務に専念し、先陣任務群は占領領域を拡大し、同じようなタイミングで「定期便が来なくなったのだからその分は定期的に頂けると思ってたのですがいつ頂けるのでしょうか?」という話が出てきたわけである。恐らく、帝国が侵攻を確認すると同時に地域一帯の民間船を止めたのだからどこもかしこも同じようなタイミングで話が出始めたはずだ。
「中尉、各統治司令部に対して総司令部から欠乏しそうな物品情報を報告するようにと指示が出ているそうだ。その報告内容はこちらも回すように連絡を取っておいてもらえないかな。足りなくなる分は恐らく、艦隊からも出すことになるだろうからね」
帝国軍はまだ姿を見せていない。焦土戦をしているという形跡も見えない。しかし全ては既に始まっていた。
あなたは日本において一〇〇年以上常識とされている事、無意識に思ってて疑問すら持ってない事。それを思い出して羅列する事は出来ますか? この駄文を読んで「その程度の事を気づかないはずはないだろう」って思う人も沢山いるはずです。しかしそれを言われるまで気づくことが出来ないってものが刷り込まれた常識というものなんだろうと思います。
侵攻が決定して数週間で三〇〇〇万人という扱った事のない遠征軍に当面必要な物資を集めて輸送部隊として整える。物語では特に何も言わずにやってますがぶっちゃけ不可能だと思う。
そもそも交易路の遮断を考えてない安全な帝国領においては占領して帝国他領から隔離された時点でアウト。というのをどうお話にするかというのを悩んで悩んで悩んだ結果がこの駄文です。
昔っから思ってたんですけど焦土戦を意図しなくても数百万とかしかいない人口の惑星なんぞ正式な貿易ラインが切れたらあっという間に干上がるはずなので不足物資の相互融通が出来るだけの広範囲を一気に制圧して制御するか全部背負っても大丈夫な程度の領域に止めるかの二択しかないはずなんですよ、あの世界。エル・ファシルですら四国より人口少ねぇんだぞ、原始農業世界じゃないんだから賄えるはずねーだろ。
※:有人惑星の生産体制
エル・ファシルを例にとると人口三〇〇万人。同盟一三〇億、帝国二五〇億という人口がいるが広大な宇宙に広がっているので有人惑星一つ一つの人口としては多くはない。なので特別な措置をしない限り自給自足の生活は難しいと思われる。民間輸送船よりかは早いと思われるとはいえハイネセン~イゼルローン間の三五〇〇光年ですら一カ月はあれば移動できる世界なので民需必須品の輸入元が一〇〇〇光年先の惑星であっても何もおかしくはない。物資は多岐にわたるので大量消費する品物は単独で輸送できますが細かい品については中大惑星にまとめた量を輸送し、そこから各品目を細かく積んだ定期輸送船が出ている、と言う形で末端惑星の生活を支えているのだと思います。ちなみに原作で侵攻軍が五〇〇〇万人を抱えた時点での占領した有人惑星数は三〇です。平均二〇〇万すら達していない。
尚、イゼルローンは自給自足が可能なように作られているがそれは軍事施設だし例外中の例外だと思われる。