ロボス関係書きたかった結果、苦しみまくって出来た駄文。没にするかどうか悩んだけどガイアが俺にいつもこの程度の駄文じゃんと囁いているので投稿
あなたは体重が落ちる程に"集中して考える"時がありますか?
「フォーク君が倒れたか」
これが起床し、一通りの説明を受けた侵攻軍総司令官ラザール・ロボス元帥の第一声であった。そして軽く目を閉じると考えをまとめ、正式な命令を告げる。グリーンヒルからの(艦隊の撤退はしないという決定に対する)「再考を」という進言に対してはただ一言、「全ては補給が届いてからだ」として却下された。
「では、休憩に入らせていただきます」
徹夜明けであるグリーンヒルが退出しようとした所、ロボスが呼び止める。
「休息は要塞内ではなく、アイアース(総司令部(=ロボス)の旗艦)内で取ってくれ。当直だった他のスタッフも同様だ。準備が出来次第、総司令部は前線に移動する」
「でしたら準備のお手伝いを・・・」
「いや、その程度なら参謀長の手は借りなくても出来る。それ以上に"その後"は体力勝負だ、今のうちに休んでおいてくれ」
何とも言い難いロボスの雰囲気にグリーンヒルは当惑するが下手につついてぎぐしゃくさせてしまうのも問題である。後陣からの報告を聞く限り、今休んでおけば"その後"には間に合う。そう考えるとグリーンヒルは素直に引き、英気を養うしか選択肢はなかった。
「フォーク君はもう駄目か・・・さて、私は何処まで持つ事やら」
周囲に人のいない司令官席でロボスが呟く。自分自身の体力の低下については十分に自覚していた。本気で考え続ける、という行為は他人が思っている以上に肉体的・精神的な疲労を伴う。その集中力が近年、はっきりとわかる程に続かない。彼はやや大雑把と見られる所もあるが艦隊をアグレッシブ・能動的に動かす能力、その動くタイミングを見出す集中力、その二つの能力に基づいた戦術指揮手腕をもって現在の地位に登りつめた人物であった。一個艦隊を率いていた時の実力では戦略家寄りであるライバルのシドニー・シトレ元帥はもとより、現役の艦隊司令官の誰よりも優れていたといっても頷かせる実績を持っていた。複数艦隊を率いる先任となってもその手腕は発揮され、宇宙艦隊司令長官就任後はドワイト・グリーンヒルという大雑把をフォローするに最適な参謀長を得てその手腕は熟練の域に達した。
だが、その手腕を維持する"集中力"が持たなくなった。それを誤魔化しきれないと認識してからは本当にそれが必要な時以外、なるべく体力を消耗しないように陰口を叩かれるのを承知の上で"休める時に休む"事を徹底するようになった。そして自分の長所をフォローしてくれる、アグレッシブ・能動的に動いてくれる人材を欲した。それがアンドリュー・フォークという男であった。
アンドリュー・フォークという男はそれが自己顕示欲の表れとはいえ、ロボスの欲するアグレッシブ・能動的な動きを示し続ける存在であった。ロボスとグリーンヒルという"ストッパー"さえいれば自由に動き回らせて、良い所(提案)だけを汲み取って活用する事が可能であり実際に多数の功績を上げている。後は採用されている案されていない案の何が違うのかを知り、その性格の角がある程度丸くなってくれれば良い参謀になれるのだが・・・というのがロボスとグリーンヒルの密かな願いであった。しかし、彼はそれが出来なかった。"自分の都合のいい事しか見ることが出来ない"という彼の精神構造は採用されなかった案という存在そのものを記憶から消去した。残るは採用された案とそれに基づく功績のみ。彼にとってロボスの元で働いた日々は常に成功と功績に彩られた花道であり、近年の戦術的成功は彼が作り出したものであった。そしてその成功の集大成として作成・提案されたのが「帝国領侵攻作戦」である。そしてこの「帝国領侵攻作戦」が評議会を通して承認された時、彼は"ストッパー"から解き放たれた。
「これで全艦隊が交戦状態に入りましたな」
スクリーンに映る全域図を見ながら休憩明けのグリーンヒルが呟く、全ての艦隊の位置に交戦中を示すマークが表示されている。戦闘中は双方の電波妨害と戦闘行動による電波の乱れが元となりまともな長距離通信は不可能となる。そもそも総司令部がこれだけの離れている戦闘指揮というものは過去に例がない。口には出さないが今更出て来て何が出来るのか?という事を考えている者は多いだろう。雰囲気でそれを察してはいるがロボスは何も答えずじっとスクリーンを見つめていた。そのロボスの態度に変化が訪れたのは先陣任務群六個艦隊との通信が回復してからである。回復するや否や他の者たちを差し置いてロボスが真っ先に確認する
「艦隊にて掌握している艦艇数・地上要員数を知らせよ」
第一〇艦隊、第八艦隊は艦隊と呼べる状態であった。第九艦隊は副司令官の元、部隊としての秩序は保っていた。第七艦隊は死に体ではあるが四散はしていなかった。第一二艦隊は残兵からの連絡が個々に入って来た。第三艦隊からは「作戦行動不可能、降伏する」という連絡を最後に通信が途絶えた。
連絡が入る度にスクリーンの情報欄に各艦隊の状態が追加され、司令部にいる者たちの顔から生気が失われていく。ロボスがそれを見つめながら何かを計算しているかのように指を動かす。生気を失った司令部要員の中でグリーンヒルだけがロボスのその姿を見つめ、待っていた。ロボスの行動は最近めっきり見る事のなくなった"全集中をしている"時の仕草である。
「全艦隊に連絡、これより我が軍は全占領領域を放棄し撤退を開始する。全体の統率は総司令部が行うが現場での詳細については現地指揮官の判断を尊重し、その結果については全て総司令部が責任を取る」
いつもとは違う"覇気"を伴った宣言を聞き、司令部要員達が唖然となってロボスを見つめる。
「気を入れ直せ!ここから一秒たりとも無駄には出来ない。どれだけの友軍が故郷の地を再び踏めるか、それがこれからの行動にかかっているのだ!」
グリーンヒルが畳みかけ、司令部要員達の顔に血の気が戻る。
「後陣艦隊は後退を開始、振り切ったら全力で逃げてよい。第一〇艦隊は後陣の直接援護に向かうように。第八艦隊は該当領域に迫る敵艦隊の位置捕捉に努めよ、後陣艦隊の後退を妨害する位置への侵入を許すな。第九艦隊は第七艦隊を支援できるルートを目指せ。第七艦隊ははそのまま全力での後退を継続。第一二艦隊と第三艦隊の残存兵については何も考えずにイゼルローンまで走れ」
「輸送の護衛をしていた部隊は総司令部本隊に合流、付近の哨戒分隊も加われ。総司令部本隊はこれより第七艦隊の支援に向かう!」
近年のロボスしか知らない司令部要員がその形相に驚きつつも勢いに押されるかのように動き始める。その中でグリーンヒルだけが悠然とロボスの横に立ち己の任務を開始した。近年はグリーンヒルが急かしてロボスが動くという姿が日常であったが本来はまずロボスが動きそれをグリーンヒルが支える、この連携こそが本当の彼らのスタンスなのである。
「ここまであっさりと撤収に移行するとは思いませんでした。集結させて直接指揮で再戦するものかと」
(主に政治方面の)面子の為に何かしらの戦果を求められているのではないか?と思っていたグリーンヒルが不思議そうにロボスに尋ねる。
「撤収条件」
ロボスが一言だけ応え。グリーンヒルが"はて?"と一瞬考えてしまうが少しの間を置いてそれに気づく。
<<輸送力に関する危険性、それについては国防委員長を通じて最高評議会に報告し何かしら限界点についての判断基準を示して頂くように進言する。この件については一旦それで矛を収めてもらいたい>>
侵攻前の作戦会議にて統帥本部長シドニー・シトレ元帥が語った"約束"である。その後何も音沙汰が無かったので皆が皆、存在を忘れていたのだが・・・・
「前線の部隊が意図的にその状況を作り出そうとしないように、詳細は私だけに告げられていた。"大規模輸送の到着前に現地にて生命の危険(餓死など)などが発生する事が確実である事"と"総兵力に二倍以上の差がついてしまった時"。この二つの条件のどちらかを満たした時、それが撤収の判断基準だ」
「故に、初回の輸送完遂は行わねばならなかった、と」
「そうだ。我々は結果として"こちらから撤収条件を聞いてしまった"のだ。こちらから聞いてしまった以上、最高司令官としての評議会議長から示された条件には忠実に従わねばならない。それが共和制の軍隊におけるシビリアンコントロールというものだ」
皮肉なものだ、とグリーンヒルは思う。焦土戦の話が出てしまったが故に、引き際と言うものを確認した。一部の艦隊を後陣とし占領地の範囲(=兵站への負担)を抑えた結果、初回の大規模輸送が間に合う見込みとなった。それぞれが適切な判断であり、その時やれる事を十分にやったといえよう。その結果がこの"引っ込みを付けられない状態"からの敗走である。恐らくはその判断が付けられるまで、戦闘以外の後退なども認められていなかったのだろう。
「もう少しやりようがあっただろうと思われているだろうし実際にあったのだろう。しかし今の私にはこれが限界だ。せめてこの最後の指揮くらいはまともに終わらせなくてはいかん。すまないがもう暫くの間、付き合ってくれ」
「背中はこちらで。存分にどうぞ」
「本隊は第七艦隊の左側、敵に対し八時方面から迫るように回り込め。第七艦隊は戦闘可能艦は本隊と並ぶように進路変更、損傷艦は変更せずに真っすぐ逃げよ。哨戒部隊集団は敵の外周を回って一〇時方向から牽制、まともにやりあわなくていい。だがやりそうな動きは見せろ。輸送護衛隊は逆、第七艦隊の右側から四時方面、哨戒部隊集団の対の位置で同じく牽制、但し第七艦隊損傷艦を狙う部隊が来たらその阻止を優先」
それからしばらく経過し、第七艦隊及びそれを追撃する敵艦隊を発見した総司令部本隊は直ちに行動を開始した。途中で哨戒部隊や(直近の輸送先から)帰還中であった輸送護衛部隊を取り込み、数としては約三〇〇〇隻。第七艦隊からこちらに合流してくるのは二〇〇〇隻程度で合計約五〇〇〇隻。敵は八〇〇〇~九〇〇〇隻、普通の戦いであれば撤退は可能であるしそれなりに撃ち合う事も出来る戦力差といえる。その敵艦隊はこちらを優先したのであろう、陣形を変えながらこちらに向けて方向転換を行う。陣形変更と方向転換、両方をスムーズに行えるあたり技量はかなりあると言わねばならない。
「流石にこれ以上欲をかくと痛い目に合う。あの増援をひと叩きして安全を確保したら後退だ」
"狩りの終わり"を悟ったグリッセリンがトーンを落とした声で陣形の変更を指示する。本隊を中心として前方の二個部隊と左右をうろつく小部隊二個に同規模の部隊を用意して対峙、補給艦等を含む支援艦とその護衛は後方で待機。数は優り余裕はあるので相手の各部隊に対峙させても本隊と護衛が丸々残る。左右は守れればいい、ある程度消耗させて本隊で〆る、今まで戦ってきた敵艦隊と同程度の技量ならこれで勝つ自信がグリッセリンにはあった。そして前衛の部隊が射程距離手前に入った所で・・・
「敵、発砲!!」
「少し早いな、この程度か」
グリッセリンの口に余裕の笑みが浮かぶ。
「主砲斉射三連しつつ後退開始、斉射後エネルギーはシールドに集中、同時に長距離ミサイル系全力発射!!」
"射程距離に入るほんの手前"でその命令を出すと「まずは軽い挨拶だ」と言ってロボスはコーヒーを一口啜った。最初の斉射三連はぎりぎりとは言え射程の外であるが火点ポイントを絞っていたので小さな先制パンチとして不運な艦が犠牲になる。敵がその攻撃を流した後にお返しとばかりに撃ち返すが後退を開始しているので射程はぎりぎりのまま、しかも狙って撃ったわけではないので火点も集中せず用意したシールドが弾き返す。それに気を取られていた敵をばら撒いた長距離ミサイルが襲い、また少し犠牲が出る。一連の流れでグリッセリン艦隊が受けた被害は数十隻にすぎないが相手に被害らしい被害を与えられない中で受けた数十隻であり、前方を任された分艦隊司令を苛立たせるには十分だった。敵が前進と攻勢を強めてきたのを確認したロボスは後退しつつ防御主体の陣形に移行し、横で戦う第七艦隊残余部隊もそれに倣う。そしてねちねちと敵を引きずる状態になったのだがロボスがここで大きな"餌"を見せつける。
「敵増援部隊の旗艦らしき大型艦を感知・・・・・ん?え???」
「さっさと言え!!」
オペレーターの報告にグリッセリンが苛立った声で反応する。
「艦名アイアース、データ通りなら叛徒軍宇宙艦隊司令長官の乗艦です」
「はぁ?」
考えてもみなかった情報にグリッセリンが一瞬呆けたような声を上げ、そのまま止まる。数十秒思考の後、"欲"が"安全"を制して一つの決断をする。
「攻勢をさらに強めろと前衛に伝えろ!左右は邪魔されなければどうでもいい。予定より少し早いが本隊も動くぞ、用意しろ!!」
これを落とせば他の何がどうであろうと勲功第一、日頃文句を言う奴も黙らせられる。特上の獲物を発見し、グリッセリンの思考がまた"狩り"に戻った。
「この艦を見つけてもらえたようだな。こちらへの攻勢が雑に強くなるわ、露骨に本隊の進軍路を作り始めるわ、判り易い動きだ。下手に動かれるより来てもらった方が対応もしやすい。ところで時間はもうすぐだと思うがどうかな?」
「この流れですと敵本隊との接触前には時間になるでしょう」
アイアースの艦橋ではロボスとグリーンヒルがいつもの事務作業のようなのんびりとした口調で言葉を交わす。しかし目の前にはこの二人がコンビを組んでからはめったに見ない光景が広がっていた。まさしく最前線。このアイアースが直接戦闘可能な位置まで出るのは過去に何回あっただろうか?時間稼ぎの為に相手を"釣る"タイミングを計っていたロボスに対し、グリーンヒルが「前に出てこの艦の存在を見せつけてみますか?」と反応、躊躇いなくロボスがそれを採用した結果である。相手の反応を確認し、アイアースが本来の位置に戻る。艦橋内が一息ついた時、待望の反応がスクリーンに映し出された。
「識別完了、第九艦隊です」
オペレーターの報告を受け、艦橋内に歓声が上がる。ロボス達から見て敵艦隊の背面から広がる光源は計算通りの位置であり、事前報告のあった通りの数である。
「小細工不要。突き進め」
第九艦隊残余を率いる副司令官ライオネル・モートン少将が戦況を見るや否や即断即決の命を下す。総数はほぼ互角、ならば相手が形を整える前に目の前の敵後陣を潰せば勝ちだ。
「残兵がこれだけいやがったのか。・・・・潮時か」
接敵直前、今にも突撃の命令を出そうとしていたグリッセリンがスクリーンに広がる光源を睨みつける。
「全部隊に通達。撤収する、定石通りに引き上げろ。相手が総司令官様なら多分深追いはしてこねぇ」
前後の挟み撃ちを避けるべく、グリッセリン艦隊は左右に分かれて移動を開始する。そして元々撤退が目標だったロボスはこれを妨げず撤退する帝国艦隊に寧ろ遠ざかる方向へと移動し、全部隊を集結させる。集結が完了した時、グリッセリン艦隊もまた悠々と戦場を離脱していた。
「餌に食いつくか手を引くかで迷うかと思っていたがあっさりと引いてくれたものだ」
敵のいなくなったスクリーンを眺め、ほっとした表情でロボスが呟く。ここまで深追いしてきた部隊である、総司令部本隊のみでは決定打にならず的が増えただけとばかりに襲ってくる可能性が大きかった。ならば切り札の第九艦隊が到来するまで時間を稼いで変化を待とう、とロボスは会敵当初から決めていた。アイアースを見せつけたのも下手に自由に動かれるよりかは自分が的になっている方が対応がとりやすいと判断したからである。
「全域の状況をまとめてきました」
グリーンヒルがレポート片手にロボスに近づく。
「後陣の第五艦隊及び第一三艦隊は支援で合流した第一〇艦隊と共に後退中。時間経過的に更なる追撃の可能性は低いそうです。第八艦隊の哨戒網への反応もありません。このまま全速で後退を続ければ、艦隊戦はもう発生しないものと判断して良いでしょう」
「そうか・・・ 艦隊としての形を維持しているのは四つ、か」
グリーンヒルの報告を受け、ロボスが静かに呟く。
「速やかに回廊出口までの移動を。万が一に備え、友軍の受け入れ準備をする」
そういうとロボスは大きく息を吐く。あとはこれを混乱なく連れて帰るのみ、それが彼の艦隊司令長官としての最後の仕事であった。
ロボスの現役最終戦、あっさりと終了。唯一追撃を受け続けている第七艦隊を見捨てられない、でも本隊だけじゃ足りない、なので近くを撤退中の第九艦隊も集める。引いてくれればそれで良し、抵抗するなら挟撃で潰す。もっと華々しく戦わせようと思ってたのですがグリッセリンの性格なら自分の命をチップにした博打は絶対にやらないだろってなってしまった。悩んだのが全部隊撤収にするか本隊以外に攻勢を命じて相手に取り付いたら本隊だけ逃げるか。ちなみに後陣(第五&一三艦隊)に対しては本隊の数では増援に行っても意味がないし下手に指揮で首突っ込むよりもビュコック達に任せた方が混乱しなくていいって事で丸投げな形にしたって感じです。