帝国領への侵攻はハイネセンを出発して一ヵ月の行程が必要であったという事は当然ながら撤収するのも一ヵ月必要であるという事である。各艦隊などはただ一ヵ月移動すればいいという訳ではない。艦単位の情報(乗員リスト&その状態・艦の損傷状態)が各艦から分艦隊旗艦へ、分艦隊旗艦から艦隊旗艦へと集約され必要各所に送信される。そのままではハイネセンまで帰還できない重症者や損傷艦には当面の措置を行う施設に誘導され別行動となる。火急の対応が終了すると艦単位で戦闘詳報が作成され、分艦隊司令官や艦隊司令官はさらに詳細な詳報を作成。それに伴う殊勲者の推挙、若しくはその逆の告発等も行う。そしてこれらの作業が一段落する頃には帰路も終わりに近づいているのである。
「本部長からの"お願い"? 命令じゃなくて?」
第一三艦隊司令官ヤン・ウェンリー中将がその電信を受けたのはそういうめんどくさい作業をこなしている最中であった。といっても大抵の事務作業は参謀長のムライ少将や副官のグリーンヒル中尉が片付けており、その内容を承認するだけなのだが・・・。
「これは統合作戦本部長としての指示・命令ではなく、あくまでの一個人としての依頼となる。私の後任予定者にも伝えてあるし、君にはこの依頼内容の実現に関して一定の権限を持つポストを用意してもらう予定だ」
統合作戦本部長シドニー・シトレ元帥から送られてきたその電信には短いメッセージとその依頼内容のみが記載されていた。
"現有兵力にてイゼルローン要塞を基点とした専守防衛を行う為の艦隊再編案及びその運用方法について立案せよ"
"一定の権限を持つポストを用意してもらう予定"という事は正式な命令ではないが上(最高評議会議長&国防委員長)のお墨付きをもらったうえでの話なのであろう。政治に疎いヤンでも"現在の最高評議会議長代理であるジョアン・レベロ氏とシトレ元帥が親しい事"くらいは知っている。恐らくは侵攻軍の帰還後に実行される軍首脳部交代(※1)や人事組織変更を行う前に出来る限りの根回し・準備はしておこうという事だ。
「つまりはまだまだ辞めさせないよ。働かせるよ。という事じゃあないか」
それに気づいたヤンが天井を見上げ恨み節を呟く。
(いっその事、色々忙しくて手が付けられませんでした。とでも言うか? 依頼であって命令じゃないし)
必要以外に働かない事に定評のあるヤン・ウェンリーがその定評通りの考えを思い浮かべるが仕方ないのでそれは却下する。あの人の事だ、手を抜いたりサボったりしたらどれだけ嫌味を言われるかわかったものではない。それにこれが恐らく現役としてのシトレ元帥の元でやる最後の仕事だ。根詰めるまでやるつもりはないが手は抜きたくない。その程度の恩はある。しかし結果としてこのちょっと真面目にやってしまった頼み事というのがヤンにとって後日「痛恨の失敗」と語る出来事となる。
「ま、この程度のものでいいだろう。素案の一つとして下地にしてください、くらいは言えるかな」
「後は用意されているらしいポストのテーブルにこれがそのまま置かれていない事を祈るだけですね」
「・・・・・頑張りすぎたかもしれない」
ハイネセン到着の日、最低限の厚さになった"計画書"をひらひらさせながらヤンが呟き、(やっぱり巻き込まれた)ラインハルトが突っ込む。今日までの間、彼ら二人は本来の業務そっちのけで(ムライとフレデリカがいるから許される所業)この資料の作成をしていた。仕事に対して真面目ではないヤンであるが戦略構想を考える事自体は嫌いではなく、考え始めると時間を忘れる(そして後になってそれを好んでいたことを自覚してちょっと機嫌が悪くなる)。細かい数字は手元に無いのでそのあたりの事は省き、大まかな艦隊編成案と配置&運用想定、イゼルローン隣接区域(元帝国軍侵攻対象)、他の星域の軍施設、艦艇生産計画、対フェザーン&対帝国諜報・情報収集などの再編&再考などを素案の素案というべき粗さでまとめたこの計画書は"何を考えるべきなのか?"を羅列した資料となった。この"考えるべき事"の一つ一つが"案件"となり実務チームが出来るのである。
「艦隊はこれより自動運転に切り替わります。各艦、自動駐留システムの確認を・・・・」
自由惑星同盟軍の艦隊艦艇は帝国軍のそれと違い大気圏活動能力を持たない為、各艦隊は首都星ハイネセン付近に存在する駐留施設(※2)を利用している。この施設に停泊した後、付属する交通シャトルでハイネセンにまで移動してやっと帰還となる。殿として動いていた関係上、第五・一三艦隊は帰路も最後であり、これでやっと全艦隊が帰還となった。七九六年一一月二一日、出発して約三ヵ月での帰還。建国より約二七〇年、自然死(一般的な病死を含む)以外の理由で一〇〇〇万人以上の人命が短期間に失われた記録は残されていない。それがこの侵攻が残した記録である。
全艦隊が帰還したからといってすぐに大再編成が始まるというわけではない。少なくとも今回の出兵の総括を行わなくてはいけないのだが一つだけ例外があった。人事は事前調整済みであり帰還後必要な手続き総括等を最優先で処理したその艦隊は一一月二六日に出発する。
イゼルローン要塞司令官兼駐留艦隊司令官ウランフ大将(中将より昇進)、艦隊一五〇〇〇隻を率い、ハイネセンを出発。
とにかくイゼルローンに蓋をする。何よりも優先となったこの処理が終わるまで他の艦隊所属者などはつかの間の休息をとっていたがこれでやっと色々と動き出す。目標は年内の新体制編成完了、それまでがいわゆる"引継ぎ期間"となっている。シトレ&ロボス両元帥はこの引継ぎをもって引退となる(但し、現在給与は全額返上になっている)。
「すまんな、時間を取らせてしまって。職場で顔を合わせる前に色々と話しておきたかったからな」
「なんとなく一回はこういうのがあるかな、とは思っていました」
高級士官用料理店の一室、シトレに招かれたヤンが恐縮もせずに席に座る。お店がお店なのでお互いに制服であるが仕事としての気持ちが無いと不思議な事に統合作戦本部長と艦隊司令官ではなく士官学校校長と生徒といった感覚になる。そして面白い事にこっちの精神状態の方が"気が楽"であると同時に"頭が上がらない"のである。ごく普通の雑談をしつつ食を進める。こういう場は"職場ではできないお話の場"としても利用されるしそういう時は飲み物とおつまみだけで時間を使う事も許されているがまずは食事としてしまう所がなんとなくこの二人の趣を示していた。そして適度な頃合いの時から"本題"が始まる。
「イゼルローンさえ取れれば、事は良い方に傾くはずだと思っていたしそうなってくれるように軍という枠内で出来る事はしてきたつもりだが結果として国、軍、そして君個人にも多大といえる負担と重荷を残すだけになってしまった・・・」
「イゼルローンさえ取れれば。それを考えたのは私も同じですし、だからこそ(攻略任務の話に)乗ったのです。そういう意味では"共犯者"でしょう」
良い方へ、というがそれは統合作戦本部長としての地位そして国防委員長に対する立場の強化の為である。いうなれば個人の権力欲なのだが"イゼルローンを取って守りを固める事で被害を抑える事"をその手段にしている分、大抵の軍指導者よりかは許される野望であろう。ヤンもそれに乗って"優雅な年金生活"を夢見ていたのだから身勝手な野望としてはお互い様である。
「レベロ議長が音頭を取って"後処理を終わらせる事も"責任を取る"の枠内だ"言ってくれたお陰で即解任にはならずに後処理が出来る。トリューニヒト氏が動く前に色々と固めて起きたい所だ。その新体制下で君にはそれなりの地位で働いてもらう事になる。私の後任も承認済みというか率先して動いてくれているから辞表は用意しても無駄だぞ」
シトレがニヤリとしつつヤンに"宣言"をする。憎たらしい事にこの校長は後任者にそういう所も引き継ぐらしい。
「トリューニヒト財務委員長、ですか・・・」
シトレの宣言にため息をつきつつヤンが呟く。
「あぁ。議長に立つと思っていたがそれをレベロに押し付けた。彼は残りの政治家人生を全て国家再建で磨り潰す事になるだろう。トリューニヒト氏は空いた財務委員長の席(※3)に何事もなく座り、後任の国防委員長には己の手駒を推薦。これで議長としての棘の道をレベロに踏ませて自身は経済と軍事の二つの委員会を掌握、後に再建の道筋が見えた時台に議長の椅子にすわるのだろう。トリューニヒト氏はレベロよりも一回り若い。一〇年後でも遅いという訳ではないのだ」
「レベロ議長からしたら議長の椅子を断ったら全部をトリューニヒト氏がもっていく。引き受ければ少なくとも当面は主導権を得られる、と」
「その間に種を撒く。少なくとも国防要綱と長期整備計画は完全改定する事が決まっているのでこれを固める事に全力を注ぐ。固まりさえすればそれを越えた介入は行えなくなるからな。そして君にはその制定に関わる仕事をしてもらう事になる」
そういうとシトレは手元の杯を一気に空ける。なんて事は無い、ヤンが新しい椅子を見せられた時に駄々をこねないようにしておくという話だ。今までそういう話をする時はシトレは直接一対一で、もしくはヤンの事を良く知っているキャゼルヌを通して進めていた。ついつい素が出てしまってもこの二人なら笑って済ませられるがこれからはそうはいかないのだろう。
「その下地としてのあの宿題という事ですか。この様子ですと手を付けられそうな人材には手あたり次第頼んでいそうですね」
ヤンが例の依頼の件について語る。しかしそれに対する回答はヤンの予想を裏切るものであった。
「予定としてはそのつもりだったのだがな。下地の下地として君に頼んでみたがここまで詳細にやってくれるとは思わなかったぞ。だから他の依頼予定者には君のものを見せて弄らせる形にした。まぁ"君がまとめ上げるスタッフ候補者"なのだからその方がスムーズに作業は進むかもしれん。それにしても艦隊庶務があるからと思って控えめな言い方にしてみたが本当によくやってくれた」
「・・・・ありがとうございます」
アルコールが入り始めて機嫌が良くなっているのかシトレがうんうんうんと何度も頷きつつさらに杯を空けていく。
(本当に"軽い頼み"だったのか!!!)
シトレとの日頃の付き合いを考えて嫌味を言われないようにそれなりに手を入れてみたがこんな時だけ妙に温情を与えなくてもいいじゃないか!!隙ありと手の平から飛び降りたらそこは墓穴だった。そんな感じだ。
「クブルスリー君も、あぁ彼が私の後任予定なのだが、彼も君の資料を見て"託すに足りる"と判断したからこそ率先して動いてくれている。彼は地位にふさわしい十分な力量があるから君が動きやすき環境は作ってくれるだろうし君もどんどん頼っていい」
「はぁ・・」
実の所、依頼を受けた時からある程度覚悟はしていたのだがここまで外堀が埋まってしまうと気が滅入る。しかも止めになった原因が"自分の頑張りすぎ"である。後任者との相性次第では距離を置く事も出来たかもしれないと思っていたが全てを理解したうえでそれなりの役職が与えられるらしい。
(ん?そうなると・・・)
ここでヤンが一つの事に気づく。
「統合作戦本部長がクブルスリー提督でイゼルローンにウランフ提督となると宇宙艦隊司令長官は・・・・」
「あぁ、ビュコック提督に努めてもらう事になる。本来、座る事が出来ない椅子であるが(※4)今は事情が事情だ。ウランフ君にはイゼルローンの要としてしばらくの間居座ってもらいたいという考えもあるが、何よりもこれから当面の間、宇宙艦隊司令長官に必要なのは各種改革で揺れるであろう軍内部をまとめられる人望だ。実力としても十分なのだが人望という面ならなおさらあの御仁に優る人はいない。あとはまぁ、トリューニヒト派が再浸食する頃には流石に引退なされる年齢だ。そこまでなら奴らも目くじらを立てないだろうという目論見もある」
レベロ~シトレラインによる鬼の居ぬ間の組織固め。客観的に見てみれば現状最適の人材が配置されたのではなかろうか?とヤンは考える(そこに自分が組み込まれている事には色々と思う所があるが)。
「その布陣の裏でこそこそと色々組み立てていくのが私の仕事、という事なのですね」
「それが一段落した後に君の希望が叶うかはわからない。だが出来るものならばその後も籍を残してもらいたいとは思っている」
「約束は出来ません。こういう性格ですから」
苦笑しつつヤンも杯を空ける。腑に落ちたのか諦めがついたのか好きなお酒がやっと美味しく飲めるようになった。にこやかに追加を(これ幸いに自前では手に入らない銘柄のを)頼んだ所でシトレが思い出したように話し始める。
「籍を残すで思い出した。聞きたくは無いだろうが一応伝えておこう。フォーク准将はしばらくの間、予備役という形で軍に籍を残し続ける。不名誉除隊とする予定だったが一連の事情聴取が終わるまで首には出来ないという事だ。不名誉除隊は軍人に対する最も重い罰則の一つではあるが同時に軍からの絶縁宣言にもなる。絶縁してからその時の話を聞かせろ、とはいかんのだ。まぁ事が終わるまで軍病院に実質隔離だろうから気にする事は無い」
結局ヤンが美味しくお酒を飲めたのはほんの少しであった。
「頼める立場ではないのだがな。軍の為でも国の為でもなくていい、自身が楽して隠居できる世の中を少しでも早く作る為にもう暫くの間、力を貸してくれ」
その言葉を残してシトレは待っていた車に乗り込む。ヤンもまた用意してもらっていた車で宿舎に帰る。
「隠居が定年にならなければいいんだけどなぁ」
口に出すと現実になりそうなのでこれ以上は言わない事にする。暗くなった宿舎(遅くなると判っていたのでユリアンには"待つ必要なし"とは言っておいた)に戻ると自分宛ての連絡が入っており仕方ないので確認する。それは統合作戦本部からの呼び出しであった。どうやらヤン・ウェンリーの一休みはこれでおしまいのようである。
一一月三〇日
統合作戦本部ビルの一室。指定された部屋でヤンを待っていたのは四名の高級士官であった。
第一艦隊司令官クブルスリー中将
第五艦隊司令官ビュコック中将
宇宙艦隊副参謀長オスマン中将
統合作戦本部長付主席副官マリネスク少将
※:役職は一一月三〇日付のもの
「呼び出してしまって申し訳ない。事前の顔合わせをしておきたかったのでね」
四人を代表してオスマンがヤンを席に導く。他の三人が黙っている所を見る限り、彼が進行役らしい。
「顔合わせですか。となるとここにいる人達が・・・・」
「うむ。ここにいる五人が明日からの軍首脳部、という事になる」
オスマンの言葉を受けて四人の顔をぐるっと見渡す。先日のシトレとの話でクブルスリーとビュコックは判る。オスマンも総参謀長のグリーンヒルが引く事になろうから何を務めるかは判る。最後の一人は・・・実は顔を合わせた事が全然ないからわからない。確かシトレと一緒にいる時があったような・・・・(※5)
「明日付けでクブルスリー中将とビュコック中将は大将となって統合作戦本部長と宇宙艦隊司令長官に着任なされる(※6)。私は総参謀長を拝命する予定だ。ヤン中将には幕僚総監として本部長を支えてもらいたい。ただ、貴官には幕僚総監と共に一つ兼任してもらいたい役職がある。実際にはこの兼任先が本命なので幕僚総監としての庶務は次官としてマリネスク少将を付けるので基本彼に全て任せてしまっていい。幕僚総監という役職はこれからの仕事の為の格付けと本命の仕事に幕僚達を使いやすくする為だと思ってもらえればいい」
幕僚総監は大体予想通りの役職であった。国防要綱や長期整備計画となると宇宙艦隊側ではなく統合作戦本部側だろうというのは簡単に予想が立てられる。そこで本部長の近くで中将という階級での役職となるとある程度範囲は決まっている。
「兼任、ですか?」
ヤンが少し頭を傾けて尋ねる。流石にそれは予想していなかった。
「"七九八年国防要綱及び長期整備計画制定の調査検討に関する対策室"の室長。それが君にやってもらいたい本命の仕事になる。ちなみに命名は国防委員会側だ」
オスマンが手元のメモを見ながら答える。
「ここからは私が話そう」
クブルスリーが話を引き継ぐ。
「まず、来年(七九七年)については新しい国防要綱も長期整備計画も間に合わないし予算は帝国侵攻前に整理していた金額を仮として議会を通過済みだ。来年はその予算範囲内で活動する事になるが最高評議会承認の元、現行の国防要綱と長期整備計画を一時無効として再来年(七九八年)に繋がる整備再編を行う事になっている。そして来年中に新しい国防要綱と長期整備計画を制定するわけだ」
「その制定作業を"対策室"で行う、と」
ヤンが当然の確認をする。
「それが主任務であるが制定そのものに手を付ける訳ではない。君がシトレ元帥宛に作ったあの資料の強化版を作る事をイメージしてもらうといい。各部署から上がってくる改革案や希望を集約し、先の資料を再編する。個々の詳細を詰めるのは国防委員会・統合作戦本部・宇宙艦隊司令部がそれぞれ行う事になる。なので"対策室"は少数精鋭、細かい事ではなく大局的視野で"考え忘れは無いか"・"何を考えないといけないのか"を詰めることが求められる。シトレ元帥やキャゼルヌ君とも話したが君の本分はそういう所にあるという事らしいからね、総参謀長にという希望も出ていたがこちらに就いてもらう事にした」
「総参謀長に、と希望したのはわしじゃが説明を聞いて譲る事にした。先の侵攻戦で話す機会はけっこうあったから君の人なりは少しは理解したと思っている。"後々の為に何をしておかないといけないのか"・"負けない為に、負けの中でどれだけ損害を抑えられるか"、その視野は小手先の役職ではなく今回のような大きな視野で動ける場所でこそ必要だ。宇宙艦隊司令長官として全面的に支援するし対外的なまどろっこしい事は統合作戦本部と共に引き受ける。君は思うがままに"考えて"くれればいい」
クブルスリーとビュコックの話を聞いて。"外堀が埋まった"という考えをヤンは改める。これは埋まったのではない。本丸で籠城しようとしていたら"外堀をさらに深く掘られて出られなくなった"状況だ。この城、軍というものから出られなくなった。国防要綱と長期整備計画の骨組みを作ってしまったらそれの初動を見終わるまでどうやっても辞表は受け取ってもらえない。長期整備計画は最低でも五ヵ年、最低これだけは覚悟しないといけない。年金受給額に生活の目途が立ったら即退役という"野望"が崩れる音を聞きつつヤンは腹をくくるしかなかった。
「少数精鋭という事ですので人事はある程度私の希望が通るという認識でよろしいでしょうか?」
腹をくくったからにはせめてその環境は自分好みで整えたい。そう考えるのが当然であるし、それ故にこの確認も当然のことである。
「明日はとりあえず幕僚総監としての任命のみでそこから対策室の基幹要員を選別して発足という予定になっている。希望はそこで出来るだけ聞こう」
クブルスリーの回答を聞きヤンが息を整える。そして、
「幕僚総監と対策室室長の件。微力を尽くさせていただきます」
後の歴史書などで揶揄される「ヤン・ウェンリーの嫌々軍人生活(後半戦)」はこの瞬間に開始されたのである。
第一章終了です。同盟はここまでで一区切りですが同時期の帝国側は次章のスタートの方が合っていると思うので。
章の合間だし年末年始だし、来週は1週パスして次回更新は再来週。だと思います。来週更新したのなら「あぁこいつ暇なんだな」とか思ってください。
原作だとアムリッツァ会戦が一〇月一四日、それで帰還して三週間休養してイゼルローンに着任したのが一二月三日ってどう計算しても不可能なんですよね。これ。
※1:軍首脳部交代
統合作戦本部長シドニー・シトレ元帥及び、宇宙艦隊司令長官ラザール・ロボス元帥は既に辞表を提出し受領済み。侵攻軍の帰還完了をもって退役予定となっている。
※2:駐留施設
首都星ハイネセンに対するラグランジュ点に存在する艦艇の停泊ポイント・修理工廠・物資貯蔵基地・常駐者用宿泊施設・ハイネセンとの交通シャトル拠点(シャトルと言っているがハイネセン~施設間の移動に特化した大型船。アクシデント時の損失等を考え超大型にはなっていない)などがセットになったステーション。駐留施設はハイネセンとの交通の便を考え一番近い衛星を中心としたラグランジュ点を優先的に使っており、アルテミスの首飾りはその外側に点を使用している。
※3:空いた席
議長と委員長は兼任禁止となっているので議長を引き受けたレベロは現職であった財務委員長を退任する事になる。
※4:座る事が出来ない椅子
ビュコックは士官学校を出ていない"兵卒上がり"なので艦隊司令官(=中将)が限界と言われてきた。
※5:ヤンとマリネスク少将
本来、シトレ元帥の主席副官として色々な人と繋がりがあるはずのマリネスク少将だがシトレは次席副官のキャゼルヌをヤンの対応担当としてたので接点が全然ない。
※6:統帥作戦本部長と宇宙艦隊司令長官
シトレとロボスは引継ぎ期間として年末まで軍参事官として籍を残して年末日付で退役。