偽書・銀河英雄伝説   作:隠居おっさん

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 言わなくても判っている者同士の判っている会話にしたら初見にはわからん会話になってしまいました。が、まぁ原作既読者が対象だと思うので大丈夫でしょう


No.26 表と裏と裏の裏

 

 オーディンに帰還した帝国艦隊本隊、束の間の休養を取った幕僚達であるが大規模出兵の後処理は山盛りである。

 

「他の者達は後処理や艦隊整備で忙しいのでお前たち二人だけで考えてもらいたい」

 

 いつもの先任将校に呼ばれた二人、キルヒアイス大佐とオーベルシュタイン中佐は別任務となった。一般雑務は免除して難しい事を押し付ける。もう定例となっている幕僚達の役割分担である。

 

「叛徒軍に再出兵させない為の工作、ですか」

 

「そうだ。皇位継承後の政治的安定、そして対イゼルローン用基地整備。これらの目途が立つまでの間、叛徒共には静かにしてもらいたい。十分な打撃を与えたとはいえ手を出してくるだけの戦力はあるからな」

 

 目的と理由を話すと先任将校は自分の仕事に戻り、二人が取り残される。"正直、二人きりはつらい"とキルヒアイスは言いたいのだが言うタイミングがない。

 

「工作というからには直接艦隊戦力を使いたくない理由があるのでしょう」

 

「現状が現状ですので叛徒軍以外に正規軍を使いたいから、と考えるのが妥当かと」

 

「もうすこし、言葉を秘めた方がよいと思いますが……」

 

 国内情勢を考え、ある程度頭の回る人ならわかってしまう言い方である。しかし、この男に空気を読むという概念を期待しない方がいい、とつくづく思ってしまう。

 

「大佐しかおりませんので」

 

 空気は読んでいるらしい。しかしその読み方は巻き込まれる側にとって恐怖でしかない。

 

「首脳部もそれを考えて指示しているのでしょう。表立って言ってしまい、聞こえてしまうと相手への挑発行為ととらえられます。何時、何処まで言うかは大佐にお任せします」

 

「とりあえず命題の"目的"については考えず"手段"について考えましょう」

 

 危なっかしい言動は隅に置き、オーダーの消化に話を戻す。というかなるべく危ない会話はやりたくない。

 

「"手段"ですか。それはもう大佐も気づかれているはずです。後はそれをどう仕込むかでしょう。仕込み元はこの度の戦いで抱えすぎていますので」

 

 他の人達に話す時よりも明らかに言葉が少なくなっている。しかし言いたいことは十分にわかる。

 

「直接手を出さずに動けなくさせるとしたらそうなりますね。本来は長い時間をかけて仕込んだ者たちを送って成功させなくてはいけませんが時間稼ぎだけが目的ならば成功しなくても発覚だけで充分です。自国でクーデターや反乱の類が露見したら綱紀粛正前に出兵など許されないでしょうから」

 

 このような事が起きたのに何をやろうとするのだ! これは政治体制が違っていても政治と軍部の関係上避けられない。少なくとも軍部に対する政治の優位が確保されているらしい共和制とやらでは確実だろう。

 

「こういう時の為に丁寧に仕込まれている者たちがいるはずです。使ってよいかは後で確認をとるのが良いかと」

 

「そうですね。それと捕虜の数そのものはこの度の戦いで相手より多く抱える事になっているはずです。公平を期す為にも相手が用意できた人数と同じ人数をこちらも返す、という形にしましょう。そのうえで表口と裏口から忍ばせる形で」

 

「表と裏のみですと悟られる可能性があります。裏の裏も用意してはどうでしょう?」

 

「裏の裏? "イゼルローンとフェザーン以外"に入り口はあるのですか?」

 

 賢いが正攻法に寄りすぎる感のあるキルヒアイスにとっては裏の裏まで考える事は苦手である。しかしここ(裏の裏)からが本番といえるのがオーベルシュタインという男である。

 

「先ほど言った仕込まれている者たちがいる事が前提ですが……」

 

 オーベルシュタインが裏の裏について説明をする。確かに仕込み済みの者がいないと間に合わない。そういう入り口だ。

 

「ではそれを含めた三段階で纏めましょう」

 

 方針が決まるとキルヒアイスが話を纏め始める。オーベルシュタインでも纏める事が出来るがキルヒアイスの方が丁寧なので外部のウケはいい。そしてキルヒアイスからしてみればオーベルシュタインに纏められてしまうと何が紛れ込むかわからないので怖い。本人にははた迷惑この上ないが首脳部からしてみたら期待通りの保護者である。問題はオーベルシュタイン"への"被害ではなく"からの"被害、に関する保護者なのだが……

 

「長官もこの策を採用する前提で良いとの事だ。公式の使者や準備についてはこちらが行うので工作の表はキルヒアイス大佐、裏はオーベルシュタイン中佐が指揮をするように。取りまとめは、頼むぞ」

 

 キルヒアイスが纏めた策の採用をアーベントロートが伝え、先任将校に取りまとめを命じる。決まると行動は早かった。捕虜交換については政府の許可が必要になるがすんなりと通るあたり、元々織り込み済みの行動なのだろう。多すぎる捕虜はそれ自体が負担になるので過剰な分はさっさと手放すに限るしそれが正当な交換としてできるのであればなんの問題もない。むしろ、増えすぎた捕虜の仮設収容所を更新する手間が減る。帰ってくる味方の捕虜たちは先の戦い(同盟の侵攻戦)の損失を一定量埋めてくれるだろう。

 こちらが行う仕込みの確認とデータ上の捕虜の集計などにある程度の時間を費やしたが一二月上旬には全ての下調べが終了し、オーディンからいくつかの艦艇が出発する。イゼルローンに向かう正規の使者、そして捕虜収容所に派遣されるまとめ役などだ。そしてそこまでの差配を終わらせたキルヒアイスとオーベルシュタインはやっと解放、される事もなく短い休暇後にアムリッツァ居残り組の帰還受け入れ準備、艦隊再編成作業(居残り組に臨時編入していた部隊の原隊復帰、貴族六個艦隊から引き抜いた補充部隊編入など)と立て続けに業務をこなしつつ年を超え、新年早々キルヒアイスはオーディンを出発する。先日派遣された捕虜まとめ役のまとめ役としてである。まとめるのも大事だが同行させる"仕込み"を混ぜる作業も行わなくてはいけない。彼らは収容所出発時点で既にいた事になっていないといけないし話を通している少数の高官達とのすり合わせも必要である。重要な任務故に中途半端に上司を挟まず、自身で仕切らねばならない。実際の所、最初の使者はまだイゼルローンに到達していないのでそもそも捕虜交換が実施されるかは不明である。しかし、時を逆算すると今からこうして動いておかないとなにからなにまで間に合わないのである。

 

 そして出発の日、指定された艦艇ドックに向かうキルヒアイスを思いもよらない人物が待っていた。

 

「元帥閣下、わざわざこのような所までお越しいただかなくても……」

 

「なに、朝の散歩代わりよ。気にする事は無い」

 

 その人、ミュッケンベルガー元帥は最低限の護衛を(なるべく)後方に控えさせ、キルヒアイスと共にその艦へと歩み始める。

 

「先の戴冠式で今どのような状況であるか、これからどうなるか、そして今行っている事が何であるか、理解できているな?」

 

「……はい」

 

 新年、エルウィン・ヨーゼフ二世の戴冠式。それは新時代を印象付けるには十分な光景であった。オーベルシュタインの言葉通り、これから正規軍は叛徒軍ではない者と全力で戦わなくてはいけない可能性がある。

 

「叛徒軍のみ、あ奴らのみ、それだけであれば形を作る事は出来る。しかし同時となると何が起こるか判らん。故にこの度の策は成功させねばならぬ。……とはいえ、遂にあれを貴官と離して任務に就けるはめになってしまった。他の者では手綱を握りきれるかどうかが不安でな、そっちは早々に片付けて戻ってくるように」

 

 ミュッケンベルガーが苦笑交じりに語る。あれとはオーベルシュタインの事であり彼は今、別箇所で裏口からの"仕込み"を指揮している。

 

「私以外の働き場所を探す良い機会だと思っていただければ……」

 

 流石に"もうこのまま離れたままでいい"とは言えないのでやんわりと"私専属前提はやめれくれ"と訴える。しかし、自分以外で彼を制御できる人がいるかとなるとこれといった人物が思い浮かばず、それどころか自分自身も制御できているという自信が無い。

 

「それを考えねばならんという事は理解している。貴官はあれ(オーベルシュタイン)とは趣が異なる。将来の為にももっと艦隊戦に直接携わる席に座った方がいいだろう。そうすれば年齢や身分に関係なく昇進できる戦果を上げやすいというのもあるがな。……うむ、これだ」

 

 二人はとある艦の目の前に立ち止まる。司令部直属予備となっている中から今回のキルヒアイスの任務の足として用意された戦艦である。通常型と明らかに異なるその船型は本来自分のような一佐官が使いまわしていい物ではない、という事だけははっきりと判る。

 

「立派なものを用意して頂いて誠にありがとうございます」

 

 戦艦というより高速戦艦に近い、任務に必要だろうという事で通信能力などを考慮して選んでくれたのだろう、旗艦級の艦である。

 

「戦艦バルバロッサ、第三世代旗艦の一つだ。試験運用のデータ取りも終わって正式配備前の(司令部直属予備として)預かり状態だったのでわしの一存で自由に使える。旗艦用なので馬力もあるし単艦で走るなら二~三割は早く動ける。調整やらで動き回る必要があるだろう。自分の艦だと思って好きに使うといい」

 

「重ね重ね、ありがとうございます」

 

「何事も経験だろうから捕虜交換の際には随伴員として現地入りには参加してもらうが本番はそれが終わって戻ってきてからだ。では、頼んだぞ」

 

 二人は敬礼を交わし別れる。これがジークフリード・キルヒアイスと戦艦バルバロッサの一回目の邂逅であった。

 

 

「これもこっちに回してくるのか」

 

 帝国から申し込まれた捕虜交換について同盟政府は了承の旨を即日回答。イゼルローン経由で帝国に伝えると共にハイネセン側で行わなくてはいけない関連事務の取りまとめをアレックス・キャゼルヌ少将に命じた(現地(=イゼルローン)取りまとめはムライ少将)。

 

「申し訳ないですが捕虜交換に紛れての工作を防ぐ為、情報はなるべく持っておきたいので。流石に専用スタッフは増援としてもらえるように依頼しています」

 

 ヤンが申し訳なさそうにはしていない顔で応える。

 

「まぁ、対策室としても重要なイベントだ。…………ざっと二〇〇万人弱。一番大きな比率になってるのはお前さんがイゼルローンを落とした時のだな」

 

 キャゼルヌが会話しつつ見つけたデータを元に語る。どうやら同盟が抱えている帝国軍捕虜総数がそれだけいるらしい。

 

「あの時は艦隊総員と比較できる数を抱えてしまいましたからねぇ。それに対して帝国側が抱える数は……」

 

「先の侵攻戦だけでこちらの総数より多いだろうな。それさえなければこちらよりはるかに少なかっただろう」

 

 同盟と帝国における捕虜事情。イゼルローン攻略前時点においてその数は同盟が帝国を大きく上回っていた。帝国が同盟に侵攻するという都合上、帝国側にはどうしても撤収時に取り残される兵というものが多数存在しその都度捕虜となるが逆に帝国側が得る同盟軍捕虜は抱えて帰らない限り発生しない。その少ない捕虜ですら不利な状況から安全に撤収する為に"人道的扱いによる現地判断の捕虜交換及びそれに伴う一時休戦"として使ってしまう事が多々ある。そして社会システム上、抱える捕虜を粗末に扱えない同盟と存在そのものが叛徒としての罪人という扱いになる帝国では捕虜となった後の生存率が違う。

 

「流石にこっちが返す数より多く返してくれるほど帝国は甘くないだろうが二〇〇万の捕虜が帰ってくれば二〇〇万人分の遺族年金支払が無くなる(※1) 恐らく比率的に七~八割が先の侵攻戦からの帰還組だ。復員希望者もいるだろうが希望退職で調整すればその数がそのまま今後の増強枠になるし艦隊要員だったらそのまま増強人員になる。そして抱えた捕虜は空になって当分の間増える事は無い。二〇〇万人の無駄飯食いがいなくなる効果は詳しく言う必要もないだろう。政府は人道上やら選挙票やら色々な本音や建前もあるだろうが対策室の銭勘定を預かる身としては有り難く話に乗らせてもらうぞ。その代わりにだ」

 

「えぇ、帝国が忍ばせる可能性のある工作員対策の方はこちらで考えます。先輩は捕虜交換そのものの作業を確実にお願いします。あとは戻ってくるであろう人達の情報をまとめて置いてもらえるとありがたいです」

 

「わかった。しかし俺はその時に現地に行く事になるだろうがお前は行く名目は無いだろう。どうする?」

 

「確かに……」

 

 ヤンが考え始める。現地で出来る事に限界はあれど最新の情報にいち早く触れる事で綻びを見つけれるかもしれない。しかし、立場としてもその場にいる名目は無いし無暗に押しかけるのも宜しくない。となれば、

 

「ミューゼル少佐!!」

 

 ヤンが呼び、ラインハルトが何事かと近寄る。そしてヤンは経緯を軽く説明すると命じた。

 

「すまないが今日から私の補佐と先輩の補佐の兼務だ。それで何かをするというよりも私達が何をしているのかを頭に全部入れてくれ。そのうえで先輩の現地入りに加わってもらう。私の代わりに現地で怪しい匂いをかぎ分けるんだ」

 

「私が室長の代わりをどこまで勤められるかはわかりませんがやれるだけの事はやらせていただきます」

 

 ラインハルトが状況を理解し応える。

 

「それならば鞄持ちとしてユリアンも貸してくれ。あれの理解力や気付きの才能はお前が一番判っているはずだ。それにイゼルローンを見にいける機会などそうはあるまい」

 

「ユリ……ミンツ君がいてくれればより良く空気を感じられると思いますので賛成です」

 

 キャゼルヌの提案にラインハルトが即賛成の態度を取る。

 

「二人がいうのなら私もそれでかまいません。確かに良い経験である事は確かですからね」

 

 最前線ではあるが戦闘の可能性がほぼ無い事もあるのでヤンも了承し、現地対応チームが決定した。後は準備のみである。

 

「では先輩は準備の方をお願いします。私と少佐は少々席を外さないといけないので」

 

「あぁ、確か帝国情勢対策の説明だっけか?」

 

「はい、帝国政府と大貴族の対立の話です。今回の捕虜交換での工作対応もその一環なので無関係という訳ではありません」

 

「そういう事はそっちに任せた。こっちは数値との戦いに専念だ」

 

 それにしても忙しい、とヤンは思う。仕事嫌いの彼からしてみたら好ましくない状況なのだが他の役職で同じように振る舞えるかと考えると現状が一番なのだろうなと思うしかない。そう考えつつ、ヤンは慌ただしく次の仕事の準備を開始した。

 

 

「帝国における内乱の可能性、そしてそれに我々を介入させないための工作、か」

 

 ヤンの説明を聞きクブルスリー大将が眉をしかめ、その横ではビュコック大将がため息をつく。この二人と参謀長のオスマン中将と次席幕僚であるマリネスク少将、そしてヤンを入れた五人のみが説明という名の相談事を行うメンバーである(最少人数で、となったのでラインハルトとフレデリカは隣の部屋で待機)。

 

「だからといって捕虜交換を止める訳にはいきません。捕虜交換そのものは予定通り行なったうえで内々に探るしかないでしょう。問題はどれだけの深さで探るかです」

 

 オスマンの言葉に皆が皆、考える。内乱の可能性云々が無いとしても二〇〇万人の捕虜が帰ってくるのであればそれ(=工作)への対策はやって当たり前である。しかしながら帰還叶った人達に対して露骨に「君たち、スパイになったかもしれないからチェックしてます」と判る行動を取るわけにはいかない。手元にある情報と戻ってきた時に携えてきた情報を元に隠れて行わなくていけないものなのだ。

 

「まず、政府に対しては"大量の捕虜交換につきものである工作員の侵入に関する内部調査を行う"という事は伝える。ただ、こちらにも内乱に近い事を起こさせようとしているとは報告できない。それはあくまでも状況からくる推測に過ぎないからな。内部調査を進めた結果そういう兆しを見つけた、という流れにするしかない」

 

「わしもそれで良いと思う。しかし、内部調査となると直属のみで密かにとなると限界がある。後どこまで巻き込むべきかな?」

 

 クブルスリーの発言にビュコックが追随する。如何せん二〇〇万人の"候補者"である、軽くふるいにかけるだけでも少人数で出来る作業ではない。

 

「情報部の力は借りなくてはいけないでしょう。そもそも我々だけで極秘裏にやろうとしても情報部には見つかります、そういう部署でもあるので。委託してしまうとどこまで拡散してしまうか判らないので話を通して必要な人員を貸してもらう形にしておくのが最善ではないかと思います」

 

 想定していた疑問に対してヤンが用意していた回答で応じる。

 

「統合作戦本部と宇宙艦隊司令部、そして情報部より人員を厳選し特務班を作る。形としては私の直轄下としておこう。別途心配しているフェザーン経由の侵入対策もする、という認識でいいかな?」

 

 クブルスリーが対応を決め、周囲に確認を求める。

 

「宇宙艦隊司令部としてはその方針に賛成する。人選に関しては参謀長、任せていいかな?」

 

「承知しました」

 

 ビュコックがまず賛成し、皆の視線がヤンに集まる。

 

「対策室としてもその方針で良いと思います。情報は連携する形で。それでですが対策室としてはこちらはどれだけの比重で動くべきでしょうか?」

 

 元々少人数である対策室で抱えきれる問題ではないのでヤンもその方針で賛成する。しかし無関係という訳にはいかないのでどこまで手をかけるべきかはあらかじめ線引きしておかないといけない。

 

「情報の連携については君とキャゼルヌ君は無条件で全情報が見れるようにしておく。追加で"権限"を持たせたい者がいる場合は君が私に直接伝えてくれ。判るのなら今でもいいが?」

 

「では、パトリチェフ准将、ミューゼル少佐、グリーンヒル中尉の三名の追加をお願いします」

 

 クブルスリーの回答に即座に追加を注文する。ラインハルトとフレデリカがいないと任務が回らないしパトリチェフがいないと連絡役がいなくなる。実際にはユリアンも話に加わってしまうだろうが流石に従卒を権限者には出来ない。

 

「わかった、合計五名だな。それと任務の比重についてだが対策室固有の仕事を優先してもらいたい。今回絡みに関してはキャゼルヌ君が命じられた事務関連とそれに追随する現地派遣組が対象でそれ以外はこちらで引き受けるのを基本線としよう。ただ、連携の為にまとめた情報は必ず目を通しておいてくれ」

 

「判りました。こちらで気づいた事については速やかに連携しますのでよろしくお願いいたします」

 

 ヤンが承諾し、体制が固まる。基本おまかせとなってしまうが対策室の運用的にそれ(大筋を固めて細かい所は他に任せる)が正解だ。そして統合作戦本部・宇宙艦隊司令部・情報部の厳選チームで内調して駄目だったらもうどうにもならないのであれこれ考えるだけ無駄だろう。

 

「と、いう事で二人にも情報に積極的にアクセスしてもらう事になると思うから覚えておいてくれるといい。少佐はまぁ、すぐにイゼルローン行きになっちゃうけどね」

 

 対策室への戻り道、結局隣の部屋で最後まで待ちぼうけとなってしまった二人にヤンが概要を説明する。

 

「対策室の人数を考えるとそうなるのは当然ですね。そうなりますとイゼルローン派遣組は帰還までの間に情報を見つけて連携するのが役目といった所でしょうか?」

 

「そうしてくれると連携先も助かる。頼んだよ」

 

 帝国からの申し出だけあって同盟政府が承諾の回答を送るととんとん拍子に詳細が定まり交換式はイゼルローンにて二月一九日に行われる事となった。申込が一月二〇日なので一ヵ月での実施である(※2)、月が替わる前に出発しないと間に合わない。対策室イゼルローン派遣組は慌ただしく準備を行い、ハイネセンを発つのであった。

 

 




 馬力がある、という単語をそのまま使ってよいかは判らなかったけどこのレベルまで気にしたらやってられんという事でこの手の単語や用語については時代との関係を考えない事にしてます。

 ラインハルトが"ユリアン"呼びしそうになってしまったのは完全に弟分として馴染んでいるからです。原作ではシェーンコップが師匠になってた白兵戦技術は本作ではラインハルトが伝授してます。彼らがジム(士官が勤務に影響のない範囲で体を鍛える事は奨励されている)でトレーニングしている姿は女性職員達のいわゆる"目の保養"になっているが男性職員たちは彼らの格闘トレーニングを見て片や元薔薇の騎士所属のガチ、片やあの年齢で形なりとも食らいつけれる才能にガクブルしている。

※1:遺族年金
 同盟帝国共に国是上相手を国家として承認していない関係で抱えた捕虜の定期交換はほぼ無いといっていい状態となっている。但し、特別な人物などが捕虜になってしまった場合などではフェザーンを通じて個別に交渉する時はある。このような状態なので同盟では捕虜になったと思われる人に対しては実質戦死扱いとして遺族年金の支払い措置が取られる。捕虜交換等で帰還した場合は復員手当を支給したうえで支払いは停止となる。なので帝国領侵攻で失った事になっている一二〇〇万人の負荷が一割以上軽くなる今回の捕虜交換は渡りに船というものである。

※2:短期間での実施
 同盟はデータ管理はしっかりしていていたし、侵攻作戦の時と同じ流れで二〇〇万人の輸送力を用意すればいいだけなので思った以上に苦労はしなかった(その現場だったキャゼルヌに用意を押し付けたおかげでもある)
 帝国は同盟の侵攻作戦時の捕虜収容所を近場に立ててたのでイゼルローンに近い。そして元々実施する事を前提として使者を出すと同時に動いていたので準備も間に合った。しかし、申込から交換式までの合間が短すぎてオーディンからの捕虜交換式帝国代表が間に合わないという大ポカをやってしまったのでまだ帰還していなかった(本来ミュッケンベルガーが行う予定だった侵攻軍迎撃に尽くした関連各所へのお礼参りをやってた)シュヴァルベルク上級大将がまたとんぼ返りでイゼルローンに帝国代表として行く羽目になった。つまりシュヴァルベルクは同盟軍侵攻迎撃に出撃して戻ってくるのは捕虜交換終了後という超長期出張になっているのである。
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