偽書・銀河英雄伝説   作:隠居おっさん

34 / 79
No.31 救国軍事会議

 

「SPは何をしていたんだ!!/していたのですか?」

 

 その報を聞いたとき、打ち合わせ中のキャゼルヌは声を荒らげ、ヤンの声にも普段には見られない棘が混じっていた。

 

 3月30日、統合作戦本部長クブルスリー大将が撃たれた。撃ったのはアンドリュー・フォーク予備役准将、先の戦いに関する事情聴取等を終了しこの末日をもって不名誉除隊となる予定であった男である。退役前の挨拶という形で訪れた彼は最初は普通の会話となっていたが徐々に変調をきたし「やはり、やり残した事があります」「次は必ず勝てるでしょう」「これからを導くには私のような人材が必要」「僕が一番、艦隊をうまく使えるんだ」と"わたしはこれで、組織を首になりました"という自己紹介のような戯言になり、呆れ果てたクブルスリーが静かにそれを制し「今はこのまま除隊となる事。それが君が行える軍への最大の貢献だ」と言い渡した瞬間、ごく自然に動いたフォークの右腕がハンドブラスターを抜き、そして撃った。

 

「現時点で意識不明。回復なされたとしても数か月は入院・治療が必要との事です」

 

 報告書を読むフレデリカの声も曇る。

 

「やはり、薔薇の騎士SPは常時付けておくべきだったんじゃないか?」

 

「表面上、日常と変化ない形にしないといけませんし常備のSP達の体面もあります。付けたいから付けよう、という事にする訳にもいきませんよ」

 

 キャゼルヌの指摘に対しヤンの回答には苦々しいものがある。やろうと思えば付ける事が出来るように薔薇の騎士側の準備は出来ていた。そして警護対象となるクブルスリーとビュコックに確認を取ったが先に上げた理由で安易に増強する訳にはいかず必要と判断した時に両氏から要請を出す、という形で落ち着いたのである。

 

「起きた事を嘆いてもどうにもなるまい。しかし万が一の二度目が起きないように手はうったほうがいいんじゃないか?」

 

「はい、常備のSPを増やしてもらって薔薇の騎士には間接護衛として周辺の警戒をする形で参加する事を進言しておきます」

 

 ここが対策室の難しい所である。本業は国防要綱と長期整備計画制定に関する素案作りとそれに伴う各種提言。基本として直接の指揮命令権のないアドバイサー的存在であり、"○○した方がいい"とは言えるが"○○をしないといけない・しろ"とは言えない。どれだけ先読みしようが所詮は状況証拠とヤン・ウェンリーの頭脳によって導かれたものでありそれを信用するかどうかは受け取り側次第。現職であるクブルスリー&ビュコックの両名の信頼があるからこそ聞いてもらえるのであり人によっては「つべこべ言わずに本業だけやっていなさい」と言われて終わってしまう。そして受け止めてもらえてもその温度差によって成果が異なる。その結果がこの現状だ。しかしヤンは進言を受け止めてもらえている以上、この状況・結果を受け止めている。いや、"受け止めないといけない"と思っている。自分の意のままに事が進まない。それに不満を持ち、自分で全てを操れればと思い、全てを自分で決定できればと思いつめた結果がこの銀河の反対側にあるのだから。

 

 

「個人としては兼任してもらうのが一番信用出来るのですが政治家としては軍部権力を一人に集中する訳にはいかないのです」

 

「もし兼任を打診されていたとしても同じ理由で断っていたでしょう」

 

 宇宙艦隊司令長官室、ビュコックがレベロ議長からの通信に応じている。本部長代理に次長最先任のドーソン大将を任命した事とそれに伴いその支援をビュコックに頼む、その為の連絡である。

 

「国防委員長に確認はしましたが正直な所、序列を崩さないように最先任を代理に任命したというのが実情のようです。ビュコック長官から見てドーソン大将というのはどれだけの信頼がおありでしょうか? 一応次長の最先任という事なので駄目な人ではないと思いますが……」

 

 恐らくこちらが本命の用件なのであろう。レベロ議長は元々財務畑だったが故に軍に深いパイプは無い(そもそも基本的に金を握る側と軍を握る側が仲が良い方が少ない)。そして一番のパイプであったシトレが退役してしまったので頼れる者はそのシトレが推薦した後任者だけである。律儀な人でもあるから数ヵ月とはいえ付き合う事になる(国防関係の定例会議で何度か顔を合わせる事になるだろう)のでドーソン大将の人なりを掴んでおきたいのだろう。

 

「代理として日頃の事務をやってもらう分にはなんとかなるでしょう。重要案件については幕僚総監のヤン中将が概ね把握しているのでそちらに任せるように私からもお願いしておきますし大事な会議には中将にも出席してもらうように伝えておくべきでしょう。あとは彼がそれを嫌がって意図的に妨害でもしようとしない限りは大丈夫かと」

 

「わかりました。ありがとうございます。では」

 

 忙しいのであろう。聞きたい事が聞けたという事でレベロは素早く会話を終了させる。オフになった通信画面を見ながらビュコックは考える。ドーソン大将は細かいところに目が届きすぎてしまうという長所にも短所にもなる才があるのだが重役としてならば完全に悪い方に傾く性格である。下手にやる気を起こして引っ掻き回されなければ良いが…………

 しかし、そのようなビュコックの心配は悪い意味で杞憂に終わる。その後の動乱はドーソンの理解・処理能力を大きく上回り「特別な事はヤン中将に任せると良い」という言葉を都合よく解釈、幕僚総監としてヤンに基本対応を立案させそれを承認する事で事態の鎮静化を図る事にしたのである。良い意味では助言に従っているといえるが悪い意味では職務放棄と見られてしまう、だがヤンにとっては動きやすいという事は確かであった。そして"本命に備えるためになるべく艦隊を出したくはない"と考え、方針を定めようとするヤンの気持ちと裏腹に一度狂い始めた状況は文字通り最悪の事態に転がり落ちていくのである。

 

 4月3日:惑星ネプティスにて軍が武力蜂起、同星が占領下となる

 4月3日:評議会にて軍に対しまずは交渉、同時に鎮圧準備を行なわせる事を決議、国防委員長を通じて正式に伝達

 4月3日:統合作戦本部長代理ドーソン大将よりヤン中将へ幕僚総監として傍らにて助言(実質的指揮)を行うように命令

 4月4日:第四艦隊(モートン少将・七八〇〇隻)に対して出撃準備を指示。ネプティスに対し交渉のチャンネルを開こうとするが応じず(以後の叛乱箇所に対しても交渉チャンネルについては同様)。

 4月5日:惑星カッファーにおいて武力反乱、ネプティス同様の措置。ランテマリオ方面に近い為、ランテマリオ星域方面司令官ドワイト・グリーンヒル大将に交渉(直接の使者派遣含む)を依頼。グリーンヒル大将よりカッファー単独であればランテマリオ星域方面兵力にて軍事対応も可能(※1)との提言があり正式に討伐軍編成を指示。

 4月5日:別件(※2)にてイゼルローン方面に出撃中であった第二艦隊(フィッシャー少将・七八〇〇隻)に対し、予定を変更し一旦イゼルローン要塞までの移動を指示。第二艦隊より先行隊が本体より別れ、イゼルローンに急行開始。

 4月7日:第四艦隊、惑星ネプティスに向けて出撃

 4月8日:惑星パルメレンド、叛乱勢力に占拠される

 4月8日:第四艦隊の目的地を惑星パルメレンドに変更。第二艦隊本隊に対して目的地を惑星ネプティスに変更するように指示(※2)

 4月9日:6日から帝国にて大規模な内乱が発生している模様、という第一報がイゼルローン及びフェザーンより届く

 4月10日:惑星シャンプール、武力勢力の占領下におかれる

 4月10日:第二艦隊の目的地を惑星シャンプールに再変更指示(※3)

 

「しかし、ビュコック君が支持しているとはいえ首都防衛はともかく第一・第三艦隊を残したままでいいのかね?」

 

 各地への指示を終え、ドーソンがヤンに尋ねる(あくまでも指示を出すのは本部長代理としてのドーソン)。

 

「この四ヵ所の叛乱が"それだけ"のものでしたらこの兵力で鎮圧は可能です。大きな計画としての本命の為の陽動だとすればそれに備える事が必要になりますし帝国の動きも不明です。現在、本部長隷下となっている特務班が情報部と連携して本命の発見に全力を挙げていますのでそこで何かを掴むまでは我慢です」

 

 その努力の結果が表れたのは数日が経過した13日の事であった。早朝、出勤してまずは行うメールチェックというよくある風景。その最中にヤン宛に一つの電話が入る。

 

「はい、ヤンです」

 

「ブロンズです。もし近くに人がいましたら人払いを」

 

「今は大丈夫です」

 

 情報部長ブロンズ中将。特務班が本部長隷下としてあるが防諜という任務上情報部がその主力を勤めており特務班そのものには間接的関与になるとはいえ各種情報が一番集まるブロンズ中将がごく自然にまとめ役になっている。

 

「端的に申し上げます。尻尾を掴んだ可能性があります。詳細については情報部にて。可能な限り秘めてお越しください」

 

「本部長代理や司令長官は?」

 

「同様に招いております。こちらから向かいたい所ですが"お二人の場所ですと尻尾に気づかれる可能性があります"」

 

 つまりは統合作戦本部や宇宙艦隊司令部にも浸透している、という事だ。

 

「分かりました、時間と場所の指定を」

 

 

「ちょっと急な呼び出しが入りましたので行ってきます」

 

 そういうとヤンはフレデリカのみを連れて対策室を出ようとする。周囲の者は最近のヤンがちょくちょく本部長代理に呼ばれているので今回もそれだろう、という事で特に反応はしない。

 

「そうだ、ユリアン、ちょっと雑務お願い」

 

 そういうとヤンが折りたたんだメモをユリアンに渡す。ユリアンがそのメモを見ると折りたたんだメモの表には"一人で見て"と小さく書かれていた。

 

「では、行ってきます」

 

 

 部屋に入ると既にドーソンとビュコックは到着していた。副官は傍らの部屋に待機しておりフレデリカも同じく待機である。

 

「申し訳ありません。そちらでは聞かれたくない者に聞かれてしまう可能性があります。こちらは私が掌握してますので」

 

 ブロンズが一人で入室し、三人に詫びを入れる。

 

「それで、尻尾を掴んだ可能性がある、という事だが」

 

「はい、ほぼ掴んだとみて間違いありません」

 

 ビュコックの問いにブロンズが応える。部屋に四人しかいないのに何故か声は低くなり前のめりでの会話になる。

 

「今、腹心の者に最後の確認をさせています。もうそろそろ到着するはずです」

 

 そういうとドアが軽くノックされる。トン、トトトン、トン、と何か特徴のある叩き方。情報部故の符合かなにかなのだろう。

 

「皆様とはいえ職務上腹心が"誰であるか"を見られる訳にはいかないものでして。情報を取ってまいります」

 

 そういうとブロンズがドアを開けて軽く顔を出す。その者を確認したのだろう、一旦部屋から出てドアが閉まる。

 

「流石に情報部の根底となると重々しいな」

 

「はい、しかし統合作戦本部や宇宙艦隊司令部の本陣にも宜しくない勢力が浸透しているのは覚悟はしていましたが辛いものです」

 

「ところで一ついいかな?」

 

 ビュコックとヤンの会話にドーソンが割り込む。

 

「言いたくはないのだが、ここに来たというのは統合作戦本部や宇宙艦隊司令部に宜しくない勢力がいて危険という事なのだな? だとしたら"情報部が安全"という保障はどこにあるのだ? という話ににもならんか?」

 

 ドーソンの言葉に二人が顔を合わせ、一つの可能性を思いついた時。ドアが開きブロンズが戻って来た。多数の完全武装兵を連れて。

 

 その日、首都中枢部において査閲部主導の元で大規模な訓練が実施されていた。事前予告されていた為、完全武装した兵が集団行動を行っているが誰も疑う者はいない。その兵達の各グループが同じタイミングで政治・軍などの要所に入っていく姿を見てもやはり訓練の一環と見られていた。そして兵達がその要所を守る様に布陣し一息ついたような状態になった時、いつの間にか事の始まりが終わっていたのである。

 

 

「国民の皆様に重要なお知らせがあります」

 

 それは官民問わず全ての放送チャンネルを通して発せられた。各民放などが確認をするが通信センターなどは全てその制御を離れ、何者かによって統制されている。

 

「我々は自由惑星同盟救国軍事会議です。現時刻を持ちまして首都ハイネセンにおける政治・軍事全ての機能を掌握した事を宣言いたします。これより解除宣言が発せられるまで同盟憲章は停止され、救国軍事会議の決定と指示が全ての法より優先されます。我々は腐敗した旧政権・軍部による帝国打倒という国是に反する逼塞主義を排し…………」

 

 人々が街の広告塔ディスプレイに映し出されるそれを見て初めて何かが起きたという事を悟る。そして何をするという訳でもなく、ただ呆然とその映像を眺め続ける中、救国軍事会議より同盟憲章にかわる"新たなる国是"が発表される。

 

  1・銀河帝国打倒という崇高な目的を取り戻す為の官民軍一致体制を確立する

  2・その目的に反する政治活動および言論の、秩序ある統制

  3・司法警察権を軍の統率下とする、それに伴う軍による指導の徹底

  4・全国に無制限の厳戒令を布く。また、それにともなって申請許可なきデモ、ストライキの実行を禁止する

  5・恒星間輸送および通信の全面国有化。また、それにともなって、すべての宇宙港を軍部の管理下におく

  6・目的に反する反戦・反軍部思想を持つ者の公職追放

  7・最高評議会の停止、その権限は救国軍事会議が引き継ぐものとする

  8・良心的兵役拒否に対する扱いを私的兵役拒否と同等の罰則対象とする

  9・政治家および公務員の汚職対策の強化。司法・警察関係へ対策専門部署を設け、軍より派遣された者で任務を遂行する

 10・有害な風俗や娯楽に対する対策の強化。同様に対策専門部署を設ける。

 11・過剰な社会保障の見直しを行い、国益を第一とした税の再分配を行う。

 

「国民の皆様におかれましては救国軍事会議より新たなる告知が行われるまで厳戒令に従い不要不急の外出を行わず、ご自宅にて待機をお願いいたします」

 

 いつの間にか街中を完全武装した兵を乗せたトラックが巡回するかのように走行していた。実際に国民に何かをする意図での巡回ではなく、それを見る国民に"今起きている事"を知らしめる意味合いを持つ巡回である。

 

「続いて、我々救国軍事会議の代表となる議長を紹介いたします。議長は軍情報部部長ブロンズ中将、副議長は軍査閲部部長ダニエルズ大将であります。尚、軍階級においてはダニエルズ大将が上位ではありますが代表の席をブロンズ中将に譲り、自身はその支援に徹する事を申し出ており、会議にて承認されましたのでこのような席次となっております。では、代表であるブロンズ中将より……」

 

 

「これは……なかなかに酷い冗談。と言いたい所だがそうともいかんようだな」

 

 イゼルローン要塞司令部でウランフ大将は何とも言い難い苦笑いを浮かべ、超光速通信による映像を眺めていた。後ろでは参謀長チェン少将が慌てて幹部を召集している。幹部が集まるまで三分と三四秒。青ざめた顔で来る者、苦虫を噛み潰したような顔で来る者、何故か楽しそうな顔で来る者、色々な顔色が並ぶ中で今後の方針が話し合われる。

 

「首都が落ちたとなれば現時点での軍最高位なのですからあれに与しない者を束ねて立ち向かうしかないのでは?」

 

「しかし、法的正当性を持たねば"軍内部での私的戦闘"という解釈になってしまうぞ」

 

 分艦隊司令の一人、アッテンボロー少将の言葉に要塞事務監ムライ少将がストップをかける。

 

「でも動かんことにはいかんでしょう。幸いにもあっち(帝国)はあっちで何かドンパチ始まったお陰で動こうと思えば動けるのですから」

 

 要塞防御副指揮官兼独立旅団長(要塞総司令直属)シェーンコップ准将がいつも通りの皮肉めいた口調で場をつつく。会議の場は大筋で"動かなくてはいけない"と分かってはいるが"どこまで動いていいのか? "で迷走する事となる。ただの基地ならともかくここはイゼルローン要塞、帝国に対する空けてはならない"蓋"なのである。例え帝国が内乱状態であろうと空になったイゼルローンを見てどう思うのか?? 

 

「ひとまず艦隊は出撃準備。支援分艦隊(※4)も動員だ。地上戦要員はこれ以上減らす訳にはいかんから旅団だけ連れていく。准将、動員準備を。それと……確か第二艦隊の先遣隊が近々到着するはずだが?」

 

「明日、到着予定です」

 

「わかった。到着したら情報交換して行動指針を立てる。あとは第二艦隊本隊と第四艦隊、それとランテマリオ星域方面軍のグリーンヒル大将と連絡を取りたい。通信を繋げられるか試してくれ」

 

 ウランフが命令し、チェンが通信担当に指示しようと振り向いた所、逆に通信担当が歩み寄り何か耳打ちをする。

 

「司令、その第二艦隊先遣隊より通信が入っております。繋げますか?」

 

「ん? 流石に状況が状況なので一日が我慢できなかったか。繋げてくれ」

 

 チェンの報告にウランフが繋げるように命じる。

 

「第二艦隊所属、マリノ准将です。先遣隊を預かっております」

 

「ご苦労、ウランフだ。クーデターに関しての事でいいか?」

 

「はい。詳細については明日、到着後に相談させていただく形になりますが一刻も早くお知らせしておかないといけない事があります」

 

 そういうとマリノが映っている画面に追加情報として一枚の命令書の様なものが映しだされる。

 

「閣下宛の荷物の一つとして預かっておりました。読み上げます」

 

 

 "発:宇宙艦隊司令長官 宛:イゼルローン要塞司令官兼駐留艦隊司令官 首都ハイネセンにおいて非常事態が発生し、政府・統合作戦本部・宇宙艦隊司令部との交信が不可能となった場合、残余軍を統率してその原因を排し状況を回復させる措置を取れ"

 

 

「以上です。ウランフ閣下はこの命によりクーデターに与しない全軍を統率し秩序回復の為に軍事行動を行う法的根拠を得る事になります。…………使わずに済めばよかったのですが」

 

 全員の視線がウランフに集まる。書面による命令書なので正式に効力を発揮するのは受け渡された後になるのだがこれで問題となっていた法的根拠については解決する。だがそれ故に"動かなくてはいけない"という問題が発生する。つまりはイゼルローンを空にしないといけないという事だ。

 

「命令については承知した。明日、受領後にそれを踏まえて全土に向けて声明を出すので焦らず急いでイゼルローンまで来てもらいたい」

 

「了解致しました。では、失礼します」

 

 通信が終了し、静寂が訪れる。

 

「聞いての通りだ、どうやら首脳部は万が一の保険を用意していたらしい。彼の言う通りに使わずに済めばそれでいいものではあったのだがな」

 

 全員がウランフの言葉を待つ。状況が固まったので冷やかし担当の二人(アッテンボロー&シェーンコップ)も余計な茶々は入れない。

 

「参謀長、使えるチャンネルを全て使って"イゼルローン要塞司令部は救国軍事会議に対する声明を明日一四日に出す"と触れを出せ。これでどうしようか困っている者達もとりあえず聞くまでは静観の態度を取ってくれるだろう」

 

「了解しました」

 

 ウランフの言葉にチェンが頷く。

 

「さて、諸君。これで我々がやらないといけない事は定まった。どうやって解決させるかについては今後の課題ではあるが確定している事といえば……我々が屈してしまえばあのひよっこルドルフのような輩が国を乗っ取るという事だ」

 

 

●七九七年四月一四日一四時:イゼルローン要塞より全星域に対して発信

 

「国民の皆様に申し上げます。私は自由惑星同盟軍所属、イゼルローン要塞及び駐留艦隊の司令官を務めますウランフです。先日、首都ハイネセンは救国軍事会議なる者達によるクーデターによって占領され、政府及び軍組織は機能を停止した模様です。この愚挙に対し、我々イゼルローン駐留軍が与する事はありません。我々は共和制民主主義国家における軍隊として、国民皆様の平和と自由を守る軍隊として、主権者たる国民の皆様が選ぶ議会が、政府が、軍という暴力装置を制御する正しいシビリアンコントロールを取り戻す為に救国軍事会議なる者達と戦う事を宣言いたします」

 

「このイゼルローン要塞は我が国において初めての艦隊規模の軍が駐留する施設となっております。また、軍という組織において私が勤めますイゼルローン要塞及び駐留艦隊司令官という地位は統合作戦本部長、宇宙艦隊司令長官に次ぐ三番目の地位であると定義されています。これらを踏まえまして私は軍上層部より"万が一、天変地異などによって首都ハイネセンに集中している政府や軍組織、この場合は統合作戦本部と宇宙艦隊司令部となりますがこれらが機能を停止してしまった場合、直ちにこれらの機能を回復させる為の行動を起こす事"という命令を受け取っております。これは皆様がお住いの都市や行政が軍などと結んでいる大規模災害時における救援協定の大きなものと捉えて頂ければ良いと思います。我々はこの命令を元に活動を致します。よって、これから行う我々の行動は法的根拠を持つ命令を元に行う行動であり救国軍事会議なる者達のようなシビリアンコントロールを逸脱した違法な暴挙ではないという事をご理解いただければと思います」

 

「全星域における自由惑星同盟軍全将兵に告ぐ。軍上層部による合法的命令の元、現状況下における軍最上位者として全軍に対する指揮権の発動を宣言する。各星域の最高位者、出撃中の艦隊の司令官は直ちにその立場を明確にせよ」

 

 

 

 七九七年四月一四日、ウランフのこの宣言により自由惑星同盟は二つの勢力が相討つ内乱状態に突入した。

 

 

 




 ドーソン大将の歴は士官学校教官、憲兵隊司令官、国防委員会情報部長、第1艦隊後方主任参謀などを務めた事があるそうです。いわゆる情報畑が主戦場。これで大将になれたのですから良い意味でも悪い意味でも細かい所まで目が効く人なんだと思います。でも"階級が上がった際にその視野の修正が出来なかった"のでしょう。上にあがるにつれて狭めなくてはいけない(=部下に任せて口出ししない)所も狭めずに動いてしまう所が"細かすぎる"ということで、それが原作中の評価に繋がってるんだろうなぁ、と。尚、本作ではヤンは"年下で階級が下で役職も下"なので僻み等はありません。どうしよう→いいのいるじゃん→つかったれ、くらいの気持ちでやらせています。「代理なんだから滞らなければ上出来」なのである。

 ヤンの権限は原作に置いてイゼルローンという地では最高権力者でしたが他の領域には及ばない局地的なものでした。本作では幅広く色々な所に顔を出し、"進言"はできますが直接の命令権等はありません。とても広くなったけど浅くなった、と言えます。まぁどちらにせよ数千万人の組織で一人で影響を及ぼせる量なんてたかが知れているのです。

 シェーンコップの地位としては"准将が要塞防衛司令官になれるはずねぇだろ"です。

 どうでもいい事ですが声優が自分の演じたキャラを嫌うのはタブーに近いと思うのですが古谷徹さんは自分の演じた役で一番嫌いなのは?と聞かれて「アンドリュー・フォーク」と答え「思い入れが全くない」と言っているw

 今すんげー悩んでるのがウランフの参謀長のチェンさんと後に出てくれであろう有名な方のチェンさんをどう区分けするかなんですよね。

※1:ランテマリオ星域方面軍の軍事対応
 再建計画の一環としてグリーンヒル主導の元、方面軍の配備及び運用実績の調査、それに伴う再編成案の作成を行っていた。なので方面軍としての余剰艦艇は把握しておりそれをかき集めればカッファー単独程度であれば対応可能と判断し提言を行った。

※2:第二艦隊の別件
 第二艦隊の元々の任務は
  1・偶数艦隊駐留予定基地への物資・駐留施設等(※:A)の輸送、現状視察
  2・イゼルローン要塞への軍事物資輸送(主に同盟各地でやっと生産が開始された帝国規格品の代替品 の試験用初期ロット)
  3・工作対策特務班・対策室・統合作戦本部・宇宙艦隊司令部などからウランフ大将への各種伝達事項(要書面&口頭)の通知
  4・イゼルローン回廊隣接地域(旧帝国侵攻対象)近辺の帝国軍哨戒網&監視システム残余の調査・破壊
 となっていたがとりあえず2&3を先行隊に預け急行させる事とした。尚、第二艦隊は地上戦戦力を用意していなかったので叛乱討伐に関してはイゼルローンより地上戦戦力を派遣してもらうという方針になった。

※A:物資・基地施設等
 恰好つけているが中身はハイネセン衛星域にある現艦隊駐留施設の予備を丸々転用である。元々一二個艦隊+α(長官直属や独立部隊等)分の駐留施設があってその予備なのでかき集めれば半個艦隊程度が駐留出来る施設を作れる程度の分量はあるし足りなければ使用中の施設を分解して持っていく。保管も超大型輸送トランクに満載し現施設の端に接舷させてただけである。予備を根こそぎ持っていくので現施設の補修はどうするのだ?という話もあるが現在の施設規模は保有数に対して過大なので当面、共食い整備やり放題である。なのでこの範囲に関しては既存の予算を超過せずに作業は出来るはず?となっている。

※3:目的地変更
 惑星シャンプール:イゼルローンに一番近い
 惑星カッファー:ランテマリオ星域に一番近い
 惑星ネプティス:上記二ヵ所の間
 惑星パルメレンド:上記3つとは別方面の場所、イゼルローン・ランテマリオ・バーラドで一番近いのがバーラド(=出撃直後の第四艦隊)

 という位置関係の為、第二・四艦隊の行き先を近い場所に変更していった結果じたばたする羽目になった。

※4:支援分艦隊
 イゼルローン駐留の一五〇〇〇隻+二四〇〇隻の二四〇〇隻の方
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。