偽書・銀河英雄伝説   作:隠居おっさん

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考えてみたら二週に一回の掲載をこの文字数でやるのってUA的にはすげー損してるんじゃないか、と。



No.48 [タイトルは(略)]

 

「ふぅ、これだから前例主義の官僚どもめが。何度言っても同じ答えを繰り返しおって! イゼルローンが落ちてからどれだけ経過していると思うのだ。今までの常識など通用せんわ」

 

 席に座るなり持っていた資料をテーブルの上に放り出す。内乱後の残余艦艇事情を纏めた統帥本部&宇宙艦隊司令部共同謹製の統計資料。これを手に乗り込んでみたものの何度も何度も……という奴である。既に艦艇建造に関しては増産が命じられており現状における限界である、と。

 

「それを何とかするのが仕事だろうが(ドンッ)」

 

 思わずテーブルに拳を叩きつけてしまい飲み物を出そうとした従卒が足を止める。それを気にもせずに懐からメモの様なものを取り出す。

 

(一七万隻…………本来一八個艦隊あるべき帝国艦隊が全量で一七万隻)

 

 恐る恐る出されたコーヒーを不味そうな顔で飲みつつそのメモを広げる。

 

 

 一八個艦隊定数約二三万隻、現存一七万、不足六万。

  但し充足は国内治安維持優先

  現編成一三個艦隊

  帝都防衛・国内治安維持・アムリッツァ防衛に四個艦隊+&を運用中

  整備待ち等を除き出兵可能五個艦隊、叛徒迎撃可能なのはアムリッツァ防衛を含め六個艦隊(約八万隻)

  国内治安維持の整備完了まで複数年

 アムリッツァ星域整備の完遂

 行軍中継基地としての要塞群の復旧

  中継基地機能復旧を優先、ガイエスブルクの破壊箇所については後回し

  旧盟約軍兵の排除、直轄化

 備蓄弾薬等物資の増産

  内乱による大量消費及び生産能力の低下により極度不足、残余は現有兵力全力一会戦半分のみ

  供給能力は要塞群の機能回復まで規定値未満

  治安維持・再建艦隊の重点的訓練の為、消費規模は収まらず

 要・派兵

  旧盟約軍系が多数逃亡しているであろう棄民勢力対策としての辺境星域定期派遣

  海賊化した旧盟約軍の掃討

  旧門閥領治安維持の為の増援

   艦隊司令官副司令官候補の積極使用

 旧盟約諸侯領土治安維持

  内乱で沈めた貴族私兵艦隊数はそのまま治安維持艦隊の減少数

  低下した貴族領治安維持力の一時補填は軍警備隊の増援が必要

  直轄領化した旧盟約軍諸侯領土の治安維持は正式な軍警備隊の新規配置が必要

  政府による貴族私兵抑制案あり

  それにより足りなくなった分も正式な軍警備隊が必要

  これらの軍警備隊の必要総量は正規艦隊不足分に匹敵する可能性あり

 

 

 とにかく兵力が足りない。本来、宇宙艦隊における正規艦隊一八個は対叛徒軍や辺境外といった外地専任のはずであるが国内の治安維持に多くを割かなくてはいけない状況だ。旧盟約軍諸侯領は治安機構も兵力も崩壊しておりその残りの少なからずが辺境に逃亡したり付近で海賊化している。それにより治安維持が行えず一時的にその多くを正規艦隊からの派兵で補わなくてはならない。更に要整備の為に動けない艦隊などを除いていくと本来の責務である対叛徒軍に対応できるのが六個艦隊しかいないという惨状である。これは帝国が把握している叛徒軍全艦隊とほぼ同規模であり国内不安定を考えればあの大規模侵攻を受けた時よりも状況が悪いといえる。それ故に各対応は急務であり杓子定規の官僚対応などは言語道断なのである。

 

「埒が明かぬ」

 

 そう、埒が明かない。専門外だったこの仕事も何とかなるだろうとは思っていた。そうできるだけの資料を作らせたのに全く進む気配が無い。故に嫌々ながら最終兵器を用意した。嫌々ながら人事のサインをした。この官僚どもの対応は噂には聞いていたがひどいものだ。もう喧嘩を売られたようなものなので受けて立つまでと腹を決めた。

 

 ガチャリ

 

 部屋の扉が開き、一人の男が入ってくる。相変わらずの無表情、年齢以上の若白髪。こちらが個人的にどう思っているかなど関係なく歩を進め形だけは完璧な敬礼を行う。

 

「パウル・フォン・オーベルシュタイン。軍務尚書補佐官として着任いたしました」

 

「着任を確認した。覚悟しておけ、この軍務省の役人どもはお前が思っている以上に"頭のいい馬鹿"だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 No.48 新米軍務尚書の憂鬱もしくは愚痴

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 七九八年一月、グレゴール・フォン・ミュッケンベルガー元帥は軍務尚書に任じられた。

 事の始まりは前軍務尚書エーレンベルク元帥が現役引退の意向を示したのが原因となる。当人曰く

 

「齢八〇となり体が言う事を聞かなくなってきている。ここは身を引いて後任に任せるべきだと判断した」

 

 との事であるが周囲の一致した意見としては

 

 "内乱の事後処理、これからの再編事業をやりたくないだけだろう"

 

 である。しかしながら齢八〇というのは事実でありそれを理由とされては誰も慰留は出来ない。といっても軍部三長官の序列としては軍務尚書・統帥本部総長・宇宙艦隊司令長官であり特に問題が無いのであれば順当にシュタインホフ元帥が繰り上げ、のはずなのだが就任を求められたのはミュッケンベルガーだった。それも摂政としてのリヒテンラーデからの依頼という形である。順序が違うだろう、と言い返してみたがなんやかんやで押し付けられた。

 

「五年先一〇年先を見据えると貴公は早いうちに政治を知っておいたほうが良い。…………おらんのだよ、胆力を持つ者が」

 

 リヒテンラーデらしくもないため息交じりの一言が帝国政府の現状を物語っていた。

 

「一番上が長く居すぎた故の弊害か。さしずめ尚書として自分の仕事をする分には悪くないがその尚書達を纏める気概のある者が己の派閥にいない、といった所だな」

 

「いかにも」

 

「かといってわしにそのようなものを期待されても困るのだがな」

 

「そこまでは頼まぬ。お主が閥を持つとは思えんからな。だが今までと毛並みの違う尚書が求められているという事は理解してもらいたい」

 

「そもそも摂政という陛下の代理人に頼まれてしまったからには断れん。受けてはやるがそこまでアテにはしないでもらおう」

 

「感謝する」

 

 こうしてミュッケンベルガーが軍務尚書就任を受け入れ。その席に座ったら目の前には少し前に提出したはずの艦隊再建の為の統計資料が手つかずで置かれていたのである。

 

 

 かくして新米軍務尚書は自分たちで作った統計資料を元に軍備生産計画の再編を求めたのだが付け刃の説得で論理武装で固まった官僚を動かす事などできない。元々それ(前例踏襲)で良しとしていたエーレンベルクのスタッフ(次官や補佐官)にその説得が出来るだけの胆力もなく、むしろ官僚寄りの語り口である。そもそも尚書にしろ次官なり補佐官にしても軍の役職なので一〇年同じ人が務める時の方がめずらしい。それに対する省官僚はその一〇年経過でやっとぺーぺーではなくなる程度のもの。実際に対峙する幹部級となるとそれこそ三〇~四〇年のキャリアを持つ鍛え抜かれた妖怪揃いなのだ。たとえ尚書であろうとも新米の未熟者が怒鳴り込んだ所でどうにもならないのだ。となると優秀な友軍を得るべきなのだろうが軍務尚書として人事権は握っているもののあまりにも軍政に背を向けていた為にその手の人材のツテが無い。前任者は"残していくスタッフに聞け(役に立つとは言っていない)"とだけ言い残して既に実家にお帰りになっている。爵位等も跡継ぎに譲り人生完全勝利の余生を開始したらしい。迷った挙句の選択肢は……

 

「あいつか。確かにあいつなら胆力も論理も申し分ない。軍政の理解も深いらしい。しかし…………あいつかぁ……」

 

 かくしてミュッケンベルガーは苦渋の顔を示しながらパウル・フォン・オーベルシュタインの軍務尚書補佐官任命(宇宙艦隊司令部幕僚兼務)と准将昇進(役職上の階級及び官僚への対峙に必要な"将官"としての箔付け)にサインを行ったのであった。

 

 

 そのオーベルシュタインが軍政向きだと見られた原因が謹製の統計資料、その作成作業である。

 元々建造計画を立て人員の用意をし予算を決めるのは軍務省の管轄であり宇宙艦隊司令部としてはそこの出来上がり品の受取が主であった。その建造計画も定期毎に決まった数が送られてくるお決まりの流れ作業となっていたのだがそれでも同盟軍より艦隊総数が多いので侵攻に使える艦隊をローテーションさせるには十分だと思われていた。そこにズレが生じたのが同盟軍における帝国領侵攻作戦でありその際の損害が定例分を大きく上回り翌年(七八七年)の予算(建造量)としては"そういう時の為に規定されていた予定通りの増量"がなされていた。元々当時は貴族艦隊というバッファがあったのでそこを消費する事で主力正規艦隊の維持は行えていた。しかしこの内戦で正規軍どころか警備隊や私兵艦隊までもが大量に消費された。とにもかくにも現有兵力の確認と警備隊などを含めた艦艇の必要量、基地施設・要塞施設の復旧やイゼルローンまでの経路の機能回復などなど一番数値を把握している統帥本部と宇宙艦隊司令部がその必要量などを纏め資料にする事となったのだ。

 といっても未だかつてない分量であるし今まで定例作業として降ってくる(補充される)艦・人・物資を受け取る事に慣れてしまっていた両組織のスタッフは国の建造能力や施設能力などの数値まで理解している者などごく少数でありとにかく集まって来た数値をどうやって形にするかで悩まされる事となった。それを恐ろしい勢いで纏め上げていったのがオーベルシュタインである。どうやらこれだけ数値が集まってきているのに形に出来ない周囲に業を煮やしたらしく(後にミュッケンベルガーが嫌々ながら状況を聞いた)場を無視して猛然と纏め始めた。一人にやらせるわけにはいかないと途中から(嫌々ながら)レンネンカンプやキルヒアイスが他の人に振れる作業の仕分けを開始し、何とかかんとかこの謹製資料は完成した。

 

「オーベルシュタイン。貴様は参謀系よりも軍政系の方が得意なのか?」

 

「どちらかを取れ、というのであれば軍政を」

 

 周囲の目する所としては"こんな軍政官僚、相手にしたくない"であり尋ねたミュッケンベルガーもまったくもって同意であった。そして同意したからこそオーベルシュタインは呼ばれてしまったのだ。

 

「一つ、この案を通して再建の為の生産能力を確保せよ。二つ、わしの直属スタッフになりうる人材を探してこい。官僚共の中にも現状を良しとしない者達がいるはずだ。エーレンベルクの置き土産(尚書直属スタッフ)はアテにならん。わしとお前で不要だと一致した人材については血を入れ替える」

 

「現状で使える私以外のスタッフは」

 

「探せ。見つけられんからお前を呼んだんだ。官僚共とどれだけ喧嘩しても構わん。尻拭いくらいはしてやる。必要ならわしの名前を使っても良い」

 

 後にミュッケンベルガーは思う。

 

 "結局、他人にやらせて事を成就しようとするやり方は前任者と同じなのではないか? "

 

 と。だが方向性は違う。少なくとも今までよりかは良い方向に向かわせようとしているはずだ。そうやって自身を納得させてこの男を送り出す。こうして軍務省官僚から長きにわたり"ラスボス" "地獄の使い" "ドライアイスの正論ハンマー"など何十もの恨み節を頂く事になる男が放たれたのである。

 

 

(人一人でここまで変わるものなのだな)

 

 一〇日も経過すると効果が見えてきた。自分が最初の一〇日で出来た事と言えば顔合わせ挨拶と何の成果も無かった交渉という名の無駄話だけだ。この男は丸一日資料を確認し、数日かけて追加資料を集めさせ(既存資料の収集程度は他のスタッフにもできる)、ミュッケンベルガーの時と同じ官僚にその時の話を一通り聞きに行き。"本作業を開始します"と謎めいた一言を残し何と(ミュッケンベルガーにアポを取らせて)リヒテンラーデと短時間の交渉を行いその後"財務省"に終日入り込んだ。

 

「皆さんに作業の振り分けを行います。得たい成果と必要な情報は纏めておきましたので官僚陣への説得は可能でしょう」「この程度の説得が出来ないのならここに籍を置く意味はありません」

 

 後半の台詞はミュッケンベルガーのみに語った内容であるが何をどう魔法を使ったのかは判らないが今まで当てにされなかったスタッフたちは次々と交渉を纏めていった。

 

「後学の為だ。種を明かせ」

 

 ミュッケンベルガーの(嫌々ながらの)説明要求にオーベルシュタインは機械のように応える。

 

「要点のみを申し上げるなら前例無き事はこちらで全て引き受ける、"金"と"責任"をお前たちが負わなくていい。と言えるだけの状況を作ったまで」

 

(口では簡単に言えるのだがな)

 

 ミュッケンベルガーが呆れた顔になる。役人は権利やお金を手放したくないが責任だけは手放したいものである。それに抵抗する為、彼らの権利に必要なお金を他からもってくる、彼らの手放したい責任を負うだけの役目を担ってくれる人を探す。両方とも簡単に出来る事ではない、特に政治における各省など基本味方ではなく"敵"だ。横の連携もへったくれもあったものではない。政治に疎すぎるミュッケンベルガーに至ってはそういう考えすら浮かばなかった(省の問題は省で片付けるもの、という考えと他の省に力を借りる=借りを作る=首を垂れるという事に対する無意識の嫌悪)。

 

「予算については今年中に各省分配が予定されている叛乱貴族からの押収金の前借を財務省から認可頂きました。責任については今回の国政改革にて音頭を取っている摂政殿に引き受けていただく事にしました。流石は摂政殿、概要の説明のみで行っても良い計画であるとご理解いただけました。言い忘れておりましたが両方とも元帥の名義でのたっての願いとした"借り"となります」

 

「…………ご苦労。仕事に戻りたまえ」

 

 席に戻るオーベルシュタインを視界から切り、両肘を立てて頭を抱える。

 

(わしの名前を使ってもいいと言ったが…… 前にあいつを使うつもりが使われている、という事にならないように気を付ける事だ。と誰かに言った気がするがまさしくこの状態ではないか)

 

 しかし、言ってる事やってる事は正論であり正攻法であり文句が言えない。恐らく軍務省がこれからやりたい事を一番効率よく進めるのはあいつに全部やらせる事だ。しかしそれをやらせたら確実にあいつは数年あれば実力で副尚書あたりになって全てを取り仕切ってしまう。わしは完全にお飾りだ。確かにわしは政治は嫌いだ、しかし無能やらお飾りと思われるのはそれ以上に耐えられん。

 

 後の伝記にはこの時こそ政治嫌いであったミュッケンベルガーが真面目に政治を学び始めた契機であった、と書かれている。そして後の世で今より高い地位から本当に嫌々ながらこの義眼の男を置きたくない地位に据えるサインをするハメになるのである。

 

 

 なんだかんだと軍務省二大要綱、金と人の金に関するたんこぶが少し凹んだ事にほっとするミュッケンベルガーだが人の方にもまだ問題はある。

 

「それで、結局は見つける事が出来なかった、と」

 

「申し訳ない」

 

 軍務尚書室を訪れた新宇宙艦隊司令長官ルプレヒト・フォン・シュヴァルベルク元帥(昇進)がちょっと"しょんぼり"といった言葉が似合う仕草で頭を下げる。

 

「では、良い者が育つまでの間、参謀長はアーベントロートを兼務で復帰させるということでいいな」

 

「それでお願いする」

 

「…………まったく。最初から統帥本部次長兼務でいいぞとは言ったのだがな」

 

「見つけられるとは思っていたのですが……」

 

 口では愚痴をこぼしてはいるが目は笑っている。ある程度予想の範囲の出来事らしい。これからの軍再編効率を上げる為、軍三組織(軍務省・統帥本部・宇宙艦隊司令部)の情報をスムーズにやり取りできるようにしたいと、気心知ったアーベントロートを統帥本部次長兼参謀長に押し込んで要になってもらうという算段だった。しかしシュヴァルベルクが"兼務は大変だろうから参謀長は納得してもらえる人材を探しますよ"といって断った挙句がこれ、だったのである。だが根底にある問題はそこではない。

 

「それにしても……宇宙艦隊の人材不足は深刻だな。艦は作ればいい。尉官は畑でとれる。佐官はそこから生き残れば頭数は揃う。しかし将官だけは普通より優れた持って生まれた何かがないとなれない。ましてやそこから幹部になれる者はな…………」

 

「その通りで。私もに人を見る目なら人並み以上はあると自負している。むしろそれだけが取り柄といえる。だから周辺からの評価が高かったり目立ったりする者達をそれなりに集めれば一人や二人は"いける"と思える者がいるはずだと思っていた。しかし、実際に見てみれば、だ」

 

 シュヴァルベルクがため息をつく。

 

「いっその事、元帥府の権限で彼の階級をそこまで上げてしまえれば楽なのだがな」

 

 そう言って横に座る宇宙艦隊司令長官付高級副官ジークフリード・キルヒアイス大佐を眺める(当然ながら"御冗談でしょ"という顔で涼やかにスルー)。

 

「しかし現実問題としてこれから順次再建させていく正規艦隊を含め、中将以上の人材を見つけ出すか育てる必要がある。序列、人望などを含め貴公が後継の長官になったのは当然であるがその人を見る目をあてにさせてもらったというのもある。そこはきっちり見つけ、育ててもらいたい」

 

「わかっている。現場での大軍の指揮はメルカッツ提督(副司令長官)がいる、金と物の都合は尚書殿がいる、そしてわしが人材の都合をつける。それが役割分担というものだ。それで、だ」

 

 言いつつも目線でキルヒアイスに合図をし、彼が一つの用紙を広げる。(※は貴族)

 

 少将

(エルンスト・フォン・)アイゼナッハ ※

 ハウサー ※

 ビューロー ※

 プフェンダー ※

 ビッテンフェルト

 メックリンガー

 レンネンカンプ

 准将

 カイザーリング ※

 クナップシュタイン ※

 ゾンバルト ※

 ヴァーゲンザイル

 グローテヴォール

 グリルパルツァー

 ケスラー

 ハルバーシュタット

 ミュラー

 ルッツ

 ワーレン

 

「例の件の第一陣か、全体的に若いな」

 

「まずはという形で年は四〇前後まで、で絞った。現時点で外せない役職にいる者もいるが動かせる者は全員候補者として予定している部隊でこき使う。これでまぁいくつかの再建艦隊は埋められるはずだ」

 

「…………現状の再確認を」

 

「どうぞ」

 

 ミュッケンベルガーの要求にキルヒアイスが別途用意していた用紙をさらに広げる。

 

 シュヴァルベルク ※

 メルカッツ ※

 ヴァルテンベルク ※

 カルネミッツ ※(→ビッテンフェルト)

(フィリップ・フォン・)アイゼナッハ ※ (→(エルンスト・フォン・)アイゼナッハ ※)

 クエンツェル

 シュターデン ※

 ファーレンハイト ※

 フレーゲル ※(→メックリンガー)

 ケンプ

 ロイエンタール ※

 ミッターマイヤー

 シュタインメッツ

 

「一三個艦隊。正直この中にも仕方なく任じている者もおる。これから更に一八個艦隊まで復帰となると、な」

 

「ある意味貴族枠艦隊のお陰で人材を集中できたようなものですからな」

 

「今計画している増産が計算通り進めば恐らく年に一つか二つの艦隊が再編成できるだけの艦は確保できる。この一~二年は内乱の後始末などで小規模部隊の出兵が重なるだろうからこ奴らを集中的に使って次の幹部候補を見定めて欲しい」

 

「承知した」

 

「それにしても」

 

 ミュッケンベルガーが大きなため息をつく。

 

「帝国正規一八個艦隊を称しているがわしの知る限りその一八個艦隊全体に納得のいく人材が配された事など……ない」

 

 イゼルローンを建造し戦略的に圧倒的優位に立ったはずの帝国。にもかかわらず同盟領への侵攻は多くて数個艦隊。一八個艦隊を有しながらも数個艦隊である。いわゆる三交代(前線・訓練・補充)の法則を考えれば少なくとも五個艦隊程度のローテーション侵攻も出来ない事もなかった(予算がつけば)。そうなれば毎回ほぼ半分の艦隊を動員せねばならなくなる同盟は短期間で継戦能力を喪失してもおかしくはない。しかしそれが出来なかった理由がこの"人材"の差といわれている。法律上国民に上下なく、ある程度派閥の理論などもあるが実力次第で出世できる同盟軍と違い帝国軍には貴族と平民という法的に隔たれた上下関係があり、その中でもまた派閥の理論も存在していた。それでも実力次第の世界であればまだしもその多くを占める貴族という枠が最も非実力による出世が可能な世界である事がさらに状況をややこしくする。その影響で前線指揮官及びその幕僚達の平均的な質は帝国軍が後れを取るのが常であった。その為、ある程度優秀な人材が集中している当てになる艦隊と安心して使えない艦隊が別れ、前者が対叛徒軍となり他の作業に後者が割り当てられる。皮肉な事に(イゼルローンを取られるまでの)近年における相対的優位は貴族枠艦隊という六個艦隊が出来たおかげでこの差別を露骨に出来るようになり質の良い(マシ)な将官佐官クラスを前線に出る艦隊にさらに集められるようになったからである。

 その貴族枠艦隊が無くなった。頭数として存在していた門閥貴族人材も、貴族枠艦隊を最低限動かす為に必要な優秀な武官家人も、皆いなくなった。畑で取れる尉官や佐官も内乱で沈んだ艦の数だけ減った。国内治安維持の一つの要であった貴族私兵艦隊も多くを失った(こっちは本当にアテになる治安維持戦力だった)。つまりここから帝国軍は長期にわたり上は将官から下は尉官まで人材難(質&数)と戦う事になるのだ。第二次ティアマト会戦以来の人材的欠乏が訪れたと言っていいだろう。あの時はそれまで少数であった平民将官の登用率を上げる事で回復させた(といっても落ち着くまで一〇年ほどかかった)のだが今はこれ以上平民枠を広げるつもりはなく大きく減じた貴族界から、さらに軍人を目指してくれた者達の中から多くを見つけなければならない。この内乱は帝国建国から数えて実質的に最も大きな内乱(※1)でありその損失総量は過去全ての戦いを上回るものでありその影響も又然りなのである。

 

「内乱で失われた貴族位については平民から勲功者を新規叙勲する事になっているが……」

 

 そこまで口にだしてシュヴァルベルクはついつい隣の赤毛の青年を見てしまう。

 

「私には関係のない事です」

 

「はい」

 

 口調は特に変わらぬもののいつもとは明らかに違う"オーラ"をまとった一言で何故か押し黙る。

 

「それは置いておいて現役提督の中でもカルネミッツ、アイゼナッハ両名はなるべく早く艦隊司令官から引きたいと言ってきている」

 

「後任については?」

 

「前者に関してはガイエスブルクの一件以降、完全に気が抜けたのかそこの候補にもあるビッテンフェルト少将が司令官直属部隊司令官という形で旗艦同乗して艦隊全体を差配しているとか。中将への推挙文も受け取っている。後者に関してはこれも候補に挙げている彼の従弟が自分よりはるかに優れている、と」

 

 そう言われてミュッケンベルガーが考え込む。

 

「カルネミッツに関しては能力的にも外せるのなら外したいが奴にはあの内乱で"家を割ってでもこちらに付いた"という表面上の実績がある。今、引退されるとクビと間違えられて世間向けとして宜しくない。それに平民の提督枠についてはバランスを考える必要があるから安易に任ずる事は出来ん。ほとぼりが冷めたら名誉職にしてやるからしばらくは我慢しろ、と伝えておけ。アイゼナッハに関しては今、出兵してやってもらっている治安維持(旧リッテンハイム領担当)がひと段落したら得意分野に合った職務について貰う事で転身は出来る。それまでにその従弟が艦隊を引き継げるように勲功を上げさせておく事だ」

 

「ここ一年はアムリッツァまでの航路の安定化と内乱残党を効率よく削っていって総量を減らす。そのあたりが精一杯ですな」

 

「うむ。新しい国情を進めるにあたり潰せる事を確実に潰し、考えなくてはいけないこと減らす。細かい事を出来るようになるのは来年から、と考えるくらいがいいのだろう」

 

「ですな。今日はひとまずこの辺りで」

 

「うむ」

 

 会話していた三名が皆立ち上がる。

 

「大佐、ちょっといいか?」

 

 少し進んだところでミュッケンベルガーがついつい呼びかけてしまう。

 

「はい?」

 

「その、なんだな、やはりあの話は」

 

「既にお断りさせて頂いておりますが」

 

 話終わらないうちにぶった切られる。口調はいつもと同じなのだが同じである方がむしろ怖い。

 

「う、うむ、すまなかった」

 

「受け取ってしまっても良いでしょうに。貰って何か損するものでもないと思いますが」

 

 部屋にいた(そして全部聞いていた)義眼の男が空気を読まずに地雷を踏み抜く。

 

「そういう問題ではありません!」

 

(ビクッ!!)

 

 今まで聞いた中で最大の破壊力を持つ一言にあの男が珍しくも体を反応させ、そして何も言わずに手元の資料に目を向け完全無視を決めこむ。というか完全に精神的にその場から逃亡する。扉の手前ではシュヴァルベルクが"助けて"と目線で周囲に訴えているのだが誰も応じる事は出来なかった。

 

 

「いやはや、貴族そのものに含みのある過去があるらしいという事は知ってはいたが。これ程までに内側に溜めていたとはな」

 

 二人が退出した扉を眺めつつ。ミュッケンベルガーが冷や汗を流す。

 

「だからこそその立場になるべき、という考えもありますが」

 

「そして虎の尾を踏んでしまった、と」

 

「出過ぎてしまいました」

 

「しかしだな」

 

 この件については完全にこの二人は同意見である。

 

「叙勲の為の勲功精査、あ奴の功を省く訳にはいかん。家庭の事情云々は仕方なしにしても個人的感情であるならばなんとかして引き受けてもらいたいものだ。お前の言う"だからこそ"というやつだ」

 

 軍の人事を司る役職として軍内部におけるその候補者を纏めるのも今年クリアしなくてはいけない重要事項となっている。

 

「あのじじいめ、年を理由に逃げおって」

 

(といってもわしも同じ状況なら……逃げる)

 

 過去の戦歴もそれで培った威厳も何の役にも立たない。グレゴール・フォン・ミュッケンベルガー、ここではただの政治知らずの新米軍務尚書なのである。

 

 

 内乱の結果、多数の門閥貴族が没落した。政府より課せされた条件を満たす継嗣のない家は全て取り潰しとなった。継嗣のいた家においても一定の財、そして領土が没収された。その結果、帝国の基盤としての貴族勢力が必要以上に減じた状態となった。政府は盟約に連なる者達の名が判明した時よりこの事態は予想済みであり問題はその後どうするか? に焦点が当たった。失われた家をどうするか? つまりは貴族界のサイズを縮まったままにするか再び広げるか、広げるとしたらどこまで広げるか? である。結果としてそれなりの所まで広げる事にした。なんてことはない、貴族勢力に対しての政府勢力(帝国直轄領)優位をもう少し確保しておきたいと考えていたのであるが二大貴族(ブラウンシュヴァイク本家・リッテンハイム本家)の領土をほぼ丸々直轄領として編入さえすれば必要量の確保は確実である。No.1と2のお家だ、距離的にもヴァルハラ星域に近い優良物件の塊である。そこをキープしたうえで他家からの没収領と二大貴族領の美味しくない所を元種として減った爵位家を増やす事にした。

 増やす、といってもどうやって増やすかも問題になる。いわゆる分家、有力貴族の嫡子外男子から実力者(大抵は政府官僚や軍人として出世した者)を独立させるか領土を持たない帝国騎士階級から同じように実力者を抜擢させるというのがよくあるパターンであるが今回はできるだけ分家による叙勲は行わない様にしよう、という事になった。分家を多く作るとそれは有力家による派閥の勢力が増えてしまうからだ。なのでできるだけこれからの為に新しい血を入れたいという考えが基本方針となった(※2)。しかし爵位(領地)持ちを平民からいきなり抜粋する事は通常あり得ないので(出来るだけ既存爵位持ちとの縁がない)帝国騎士階級からの昇進とし、その帝国騎士階級を平民から叙勲させる事で家の総数を確保する。その対象者のうち、軍関係者の推挙を軍人事を司る軍務尚書が行う事、となっているのである。

 

「軍における平民勢力の増加を防ぐ一つの手にはなるが…………」

 

 将官以上と佐官以下で特別推挙したい者をまとめたリスト(の束)をテーブルに放り投げてミュッケンベルガーは考える。

 

(ある意味、インチキではあるな。有力な平民軍人を貴族にしてしまうという事だからな)

 

 といっても手当たり次第に任じてしまえばいい、という問題でもない。貴族というのは帝国にとって特別な特権階級である。それに相応しい実力・人格等を持つ事は当然ながら当人及びその家族などに貴族として振る舞う事への意欲が必要である。貴族になるからにはそれを穢す事をしてはいけないと受け止める心が最重要なのである。故に"有難い事であるが家族がその責に耐えられない"といった理由での辞退も発生するしそれを責める事はしない。貴族と平民は異なる世界の住人である、と法的に区別している以上"貴族が嫌い"ではなく"その任に耐えられない"として一歩引いた姿勢を取るのならそれはそれで己の分を弁えたという事で"美徳"となるのである。

 

「ケンプ、ミッタマイヤーは辞退。シュタインメッツが返答待ち。クエンツェルは辞退したいと言っているが知人要人総動員で拝み倒し中、か」

 

 その過程においてひどい話であるが"艦隊司令官は出来るだけ貴族にしてしまいたい"という身も蓋もない話が出ている。現在任じられている一三人中の四人が平民でありその確認結果である。辞退した二人は妻や両親達と相談のうえで"真に有難きお話でありますが"と辞退を申し入れてきており、独身のシュタインメッツは返答待ちなので待つしかない。そしてクエンツェルは迷惑なのは判っているが軍幹部合意の上で"ひたすら拝み倒す"と決めている。如何せん"メルカッツの次の三長官候補がいない"のだ。今のままだとシュターデンが第一候補である。もう少し"常識外れ"の現場に何度か突っ込んでその理屈優先の思考パターンが常人並みになってくれれば及第点にはなるのだが今のままでは届かない。それに対してクエンツェルは現時点でも幅広い信頼を得ているあとは貴族という名刺がつけば"まぁ彼ならいいだろう"で特に反対もなくいけるだろうと考えられている。ただ説得の圧が強くなりすぎて軍務を続ける意欲を損なわない様に、という事だけは気を付けている。彼が抜けたら本当に現場の幹部(シュヴァルベルク&メルカッツ)と若手提督群の年齢的中間層がいなくなるからである。

 

「問題はこれをどうするか、か」

 

 候補者リストとは別の紙の束を眺めてミュッケンベルガーがぼやく。軍功者などへの叙勲は大きなイベントに近い代物となって世間の噂を席巻し、各地から地元出身者に関する推挙運動が開始された。特に盟約に連なった貴族領領民は新たなる領主を迎えるかもしれないという事で地元出身でこの人ならまだマシだろうと思われる候補者がいる場合、積極的に推挙を行う事で自分達の身の安全を図ろうとしていた。のだが中には地元出身でもない人を推挙する所もある。一例としてはヴェスターラント領から届いたジークフリード・キルヒアイス大佐に対する叙勲推挙運動がそれである。かの時は認識の違いでどたばたしてしまったが後になって正真正銘の救世主だった事を知ったヴェスターラント領民は星を挙げてのお礼参りを実施、その後叙勲推挙運動を知るや否や"是非とも我らの御領主様に"と運動がエスカレート。そもそも平民からの叙勲は領地を持たない帝国騎士まで、と政府関係者は考えていたのだが今の所この推挙については対象者が軍人なので軍務尚書止まりとなっている。そして先日、シュヴァルベルクと共に軽く確認した所、予想以上に強烈な反応を味わってしまったのである。

 

「それにしても貴様が賛成の立場とはな」

 

(口に出すタイミングは最悪だったがな)

 

 ついついオーベルシュタインに話を振ってしまう。苦手な事に変わりはないのだが如何せん知った顔がこれしかいない。

 

「この度の叙勲目的が貴族の血を清める事ならば適任かと」

 

 それだけを応えて黙々と書類を処理する。

 

(血を清めるというのも露骨な言い方であるが間違いではない。のだが彼にしろこいつにしろ一体この世に何を求めているのだろうか?)

 

 正直な所、ミュッケンベルガーもオーベルシュタインの評には賛成である。子が孫がとなると知った事ではないが当人は耄碌でもしない限り大丈夫だろう、と思う。今、帝国騎士になれば然るべき所から嫁を取り、一五年二〇年順当に経過すれば爵位を得る事も可能だろう。それまでの間に良い交流が出来れば貴族界に一筋の清き流れが出来る。問題はまぁ本人のあの拒絶反応である。直接語ってはこないし語らせようとしても駄目なのだが貴族そのものについて一つ奥底に持つものがあるのだろう。そうなれば無理強いは出来ない……

 

 

「元帥殿よろしいか?」

 

 ふと気づくと執務室に客人が来ている。

 

「レムシャイド殿か。何用で、いや、あの件の経過確認と言った所か。わざわざ尚書自ら来なくてもよかろうに」

 

 新任の宮内尚書ヨッフェン・フォン・レムシャイド伯爵が頭をかく。

 

「いやはや、宮内省の現状が現状ですからな。こういう名目でも作って逃げないと一休みする暇すらない」

 

「ここは避難所か? まぁ、立ち話もなんだ」

 

 ミュッケンベルガーが目線でテーブルに誘い、従卒が飲み物を用意する。

 

「交渉仲介は自信があったのですがフェザーンとは勝手が違いすぎる。理の通じぬ私利私欲絡みとなりますとね」

 

「フェザーンの白狐と呼ばれた者にしては弱気ですな。しかし自身で選んだからにはやり遂げねば」

 

「だからこそ辛い」

 

 ヨッフェン・フォン・レムシャイド伯爵。現在四七歳で前フェザーン駐在帝国高等弁務官。七年近く勤めた前職を退き、七九八年年初(ミュッケンベルガーと同時)より宮内尚書となった。フェザーンでは"白狐"と呼ばれ、自治領主“黒狐”アドリアン・ルビンスキーとやりあった交渉・調略等々の腕利きと言われていた。ただ、フェザーン駐在帝国高等弁務官はその独特な立場故に長期在任による現地独自権力化(フェザーンに取り込まれる事も含む)が危ぶまれる地位であり成果を問わず長期になりすぎる前に交代される事が常であった。そのような理由もあり不手際がないにもかかわらず退任する場合、その代わりとなる地位を中央政府で与えられるのが暗黙のルールであり交代時期を打診されたレムシャイドは宮内尚書を希望した。本人が言う通り貴族界との交渉仲介などを多く抱える宮内尚書であれば己の得意分野を生かせるという気持であったが問題としては打診されたのが七九七年の年初、実際の着任が夏予定、内乱による混乱で収まるまでは新任の高等弁務官が来ないので在任待機。内乱が終わってやっと帰国して着任したら目の前に待っていたのは内乱後の貴族界(主に旧盟約勢力)からの嘆願、陳情、仲介etcという貴族界再編の最前線だったのである。

 

「この期に及んで初手袖の下で事を治められると思っている旧勢力が多いのも困りものです。一人残らず摂政殿に報告の上で厳罰化ですけどね」

 

 さらっとひどい事を言う。しかしこういう旧式弊害な門閥貴族共を懲らしめたいリヒテンラーデとしては飛んで火にいるなんとやらである。袖の下でなんとかしようなどとは予定以上の罰を与える喜ばしい大義名分である。

 

「それで、用件は? 本当に逃げて来ただけではあるまい」

 

「えぇ、頼まれごとが二つ。とりあえず返答できる状態になりましたので」

 

 レムシャイドが姿勢を正し、ミュッケンベルガーも改める。

 

「まず一つ。クエンツェル殿の帝国騎士叙勲について内諾を頂きました」

 

「まことに感謝する」

 

 ミュッケンベルガーが演技ではなく深々と頭を下げる。

 

「社交界などは勘弁してほしいという事でしたのでそのあたりの付き合い方はメルカッツ提督にサポートして頂ければ良いかと」

 

「承知した。わしもそうだが知り合いにも社交界嫌いは沢山いる。信頼できる話し相手を確保しよう」

 

「そして二つ目ですが事前調査をした所、確かにまぁ貴族嫌いになってしまうのは仕方ない所がありました。ですので直接の説得はまでしておりません。概要はこちらを」

 

 手渡された書類を受け取り内容を確認する。そして眉をしかめる。

 

「あの事件絡みの犠牲者だったとはな……貴族界の醜悪の極みを見せつけられたわけだ。思う所もあるのだろう」

 

 もう一つ。レムシャイドが依頼された二人の叙勲候補者説得の片方、ジークフリード・キルヒアイスに関する情報である。まぁ前者が本命でありこっちはおまけみたいなものだったが予想外の収穫があったようだ。

 

「ブラウンシュヴァイク、リッテンハイム両家の喧嘩と手打ちの犠牲者。両家による徹底的な情報封鎖があって表に出てきませんでしたがこの度、両家の機密指定情報が全解除された関係で見つける事が出来ました。この情報自体はこれからの為にと別件で探っている最中に見つけた物ですが知らずに交渉していたらと思うとぞっとしますね」

 

「事がこれだと理を持って説得するのは難しい、情で溶かさねばならん。そう思う気持ちがあればこそその世界でそうはならずに有り続ければ…………いや、難しすぎる話だな」

 

「私からの説得は止めておきますか?」

 

「いや、お願いする。決裂しない程度に」

 

 無理を言う。と顔で語ってレムシャイドが額に手を合わせる。ミュッケンベルガーも同じような姿勢になる。

 

「こういう事情なら本人の事を思えば、どこかで"区切り"をしっかり付けておいた方がいい。持ち続ければいつかは何かを破滅に導く。それが出来てしまう才を奴はもっているのだ」

 

 結果として彼を拾い、何かを出来てしまう地位まで上げてしまったのはミュッケンベルガー自身である。それを中途半端に放り投げるのは己の矜持が許さなかった。

 

「しかしどうもっていくか…………」

 

 二人して静まり返る。レムシャイドの休憩時間はかなり超過していた。

 

 




 原作ではリュプシュタット勢力の貴族領は全没収のはずですがその後の治安維持についてなーんもないんですよね。原作でも自領は私兵で治安維持のはずですしその兵力も内乱で潰れているはず。そして貴族領丸ごと直轄領になったんだから各自勝手だった統治方法を統一させたりそもそもその要員を用意したりで地獄だと思うのですが、何も記述が無いw それを何とかしたいのに出兵しまくるラインハルトを確かにオイゲン・リヒターとカール・ブラッケは殴りたくなるわけだ。

 前にも書いた気がしますがシュヴァルベルクのイメージはFGOのゴルドルフ新所長です(わからん人はごめん)

 誰か、ミッタマイヤーが宇宙艦隊司令長官になった後の参謀長って誰なのか知ってる人います?


※1:実質的に最も大きな内乱
 建前上の一番大きな内乱は"叛徒軍"との戦いである。帝国は銀河有人領域全ての統治権を有する唯一の国家なのである。

※2:新しい血
 文字通り物理的な新しい血である。貴族界が狭くなればなる程に一般平民よりも婚姻により結びつく血の範囲が狭くなり。色々と宜しくない結果になる可能性が高くなる。故に新しい血を求めるというのは貴族界にとってある程度必要な措置にもなる。
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