とある酒場のとある一角。
「なんだ、卿はまだ返答していないのか?」
「そう軽々しく言われても困る。こっちにしてみればそれこそ人生の大分岐点なのだからな」
「俺の家は満場一致であっさり決まったがなぁ」
卓を囲むのは三名、オスカー・フォン・ロイエンタール、ウォルフガング・ミッターマイヤー、カール・ロベルト・シュタインメッツ。前者二人と後者は先の内乱で共に戦う事で知ったる仲となり三名共々正式な艦隊司令官として色々と初動業務をこなしているうちにこうやってごく自然に飲む仲となっていた。
「こいつ(ミッターマイヤー)が断るのはご家族の事を思えばさもありなん(※1)といった所だが卿のご家族の事はまだしらんのでな。やはりご家族絡みか?」
ロイエンタールがグラスを傾けつつ尋ねる。この度の騒動(叙勲問題)は己には関係ないと思っているので気が楽であるが(※2)、知り合いの事となると流石に気になる。
「いや、両親は俺に望み通りにして良いとは言っているのだがな……」
「だとしたら卿個人の問題か? 歯切れがわるいじゃないか」
同じくグラスを傾けるミッターマイヤー。こっちは推薦を知った直後に行われた夫婦両親を含めた家族会議で"そういう柄じゃあないよなー"と瞬時に決まり"どういう口上で丁寧にお断りするべきか"の方に大半の時間を費やされた。
「いや、俺個人の問題というか……、いや、うむ、俺の問題でもあるな」
「歯切れが悪いぞ、良い機会だから言ってしまえ。俺達で貸せる知恵なら貸すぞ」
「う、うむ……」
相変わらず歯切れが悪い。しかし意を決して口を開く。
「実はな、付き合っている女がいて、だな……」
「平民か? それならさっさと籍を入れてしまえ。貴族と平民の婚姻は下級貴族なら一応事例はあるが余程本人に力があるか有力貴族へのコネがないと申請が通らん。籍を入れてしまえばこっちのものだ、役所も離婚しろとはいってこないだろう」
「いや、彼女はな、いわゆるその帝国騎士階級でな……」
「なんだ、なら願ったりかなったりではないか。卿も叙勲を受けて堂々とプロポーズすればいい」
「いやいや、それはそれで色々と都合があってだな……」
ここで半分ロイエンタールが切れた。
「ええぃ、まどろっこしい! いったい何がどう悪いのだ!!」
「馬鹿者! 声が大きい!!!」
思わず怒鳴り気味になってしまったロイエンタールをミッターマイヤーが窘める。
「しかし、こいつの言う事にも一理ある。何がどう都合が悪いんだ。ここまで来て知らずに終わるとなると何とも言えない"むずむず感"を残したまま仕事で顔を合わせないといけなくなる。どこまで知恵を貸せるかは判らないがここは一つ、話してみてはくれないか?」
「う、うむ」
そういうと手酌で並々と注いだビールを一気に飲み干し、シュタインメッツはぼそぼそと己の状況を語り出した。
その女の名はグレーチェン・フォン・エアフルト。貧乏貴族の一人娘として生まれ、食い扶持を得るためにとある酒屋(ここではない)で働き始め、たまたま飲みに来たシュタインメッツと出会い、常連となり、ごく自然にいい仲になった。本来、末端とはいえ貴族が酒屋で働くなど奇異の目で見られる行為でありしかも男尊女卑の激しい帝国で、である。それ故にシュタインメッツも興味を持ってしまったたちであるが言葉を交わしてみると貴族としての教養なのか地頭なのか非常に賢く、口が立つ。シュタインメッツがド辺境に飛ばされた際に"一緒に来てはくれないか"と恰好付けようとしたが彼女の両親は帝都に健在であり、しかもまだ挨拶を済ませていないから連れて行ったらただの拉致誘拐である。止めとばかりに平民と貴族の婚姻は先に述べた通りなのでまだなんのツテもない准将(当時)に過ぎない身の上でその挨拶も出来ない。としているうちに辺境赴任となり、いわゆる遠距離恋愛(距離約五〇〇〇光年オーバー)が続き、やっとこの度帝都に帰って来た。しかも宇宙軍中将、帝国で最大一八人しかいない正規艦隊司令官としてである。これで己の地位は十分になった、後は然るべき後ろ盾を見つければ婿入りという形で結ばれる事が出来る(嫁入りだと末端とはいえ彼女に貴族位を捨てさせる事になるので形としてはこうだろう、とシュタインメッツ本人は考えていた)。という所で叙勲推挙の話が来た。
実は聞いた当初、シュタインメッツも"願ったりかなったり"と思った、後ろ盾を探さずに済むと思った。のだが少し考えて"あれ? "と思ってしまった。
・叙勲を受けて、嫁入りしてもらう
嫁の実家が断絶する
・叙勲を受けて、婿入りする
俺の実家が断絶する、叙勲即断絶ってなんだよって思われるのではないか?
・叙勲を受けずに、後ろ盾を見つけて婿入りする
叙勲推挙をしてくれた人に悪印象を与えるのではないか?
・叙勲を受けずに、嫁入りしてもらう
嫁の実家が断絶する
なんか上手く収まらないぞ、と。なんかこう、納得がいかない。という事で悩み続けて今日まで来てしまったという訳だ。
「関係者全員が納得するか、となると確かにどれにしろ不安にはなってしまうな。どう思う?」
ミッターマイヤーが感想を述べ、ロイエンタールの方を見る。
「………………卿の御両親と、その女の御両親。特に病気とかそういうものは患っておらずご健在。という事で良いか?」
「うむ。俺の両親はまだまだ元気だしあれの御両親も特にそういう事は聞いていない」
その問いにシュタインメッツが答え。ロイエンタールが二度三度と頷く。
「ならば話は簡単だ」
ミッターマイヤーとシュタインメッツが身を乗り出す。
「叙勲を受けてさっさと結婚してしまえ。嫁入りでも婿入りでもいい。そのうえでだ……」
「夫婦の営みを励め。ノルマは二人だ。さっさと双方の御両親に家を継ぐ孫の顔を見せてやれ」
こんな簡単な事で悩んでいたのか? と言いたげなロイエンタールの顔を二人がぽかーんと見つめる。
「確かに」
「口に出してしまうと恥ずかしいが、確かにそれなら俺達の頑張り次第だ」
女性問題について詳しい(?)ロイエンタールだけにあっさりと答えをはじき出す。だが当の本人としては。
(結婚している奴と結婚しようとしている者より結婚を全く考えてない者が素早く答えを出すというのはちょっと違うのではないか?)
という気持ちであるが言わない方がいいだろう。
とりあえずシュタインメッツはそれに納得し、関係者に相談・説明を行った後に叙勲を受ける旨の回答を行い晴れて彼は帝国騎士カール・ロベルト・フォン・シュタインメッツとなる。そして驚きのスピード結婚、そして嫡子誕生(しかも双子!!)となるのだが夫婦(になる前から)共々頑張りすぎたのか"叙勲&結婚と出産の日付が合ってねぇ!! "と周囲から散々とおもちゃにされるのである。
同じ時、同じ酒屋、そして同じく三人。しかしそのテンションは明らかに異なっていた。
「やる事をさっとやってさっと帰るはずでしたがこの短時間で、いやはや見事というか……」
と参謀長。
「少しは成長してそうですし危険を冒して一家で鞍替えして良かったとは思っていますがやっぱりというか……」
と情報参謀。
「いっその事、正面からばっさりの方が気が楽になる。距離をおかんでくれ……」
と艦隊司令官。つまりはいつもの(?)主従と取り込まれた(?)参謀長である。
「いや、素直に嬉しかったんだよ。彼がこっちの世界に来てくれれば良い空気が流れる。世界そのものに良い影響を及ぼす。俺は良かれ悪かれこの世界にどっぷり浸かってたから大抵の困り事には手を貸せる自信がある」
「とはいえはしゃぎ過ぎです」
「それだけ浸かっていたのなら場の空気が変わった事に気づきましょうよ」
「はい」
三人の中で社会的地位も軍的地位も一番上のはずなのに精神的には一番下という空気。もはやいつもの事になっている。
この艦隊司令官、イザーク・フォン・フレーゲル中将は社会的立場としては過去最高位と言って良い所に来ている。お家存続をひとまず勝ち取り、親より家督(爵位)を譲り受け正式な男爵家当主となり軍人としてはガイエスブルク要塞司令官代理兼駐留艦隊司令官兼旧ブラウンシュヴァイク公領警備隊総司令官という長ったらしい名札を付け、先の内乱で壊滅したブラウンシュヴァイク家私兵艦隊(=治安維持部隊)に代わり広大な旧公領の治安維持総責任者となっている。ついでに旧公領中からの色々含んだ怨嗟の視線と言葉を集める的になったり視線と言葉では我慢できずに武力まで行ってしまった者達を叩き潰したりしている事は"膿は絞り出しておきたい"としている上層部からしてみれば予定通りのお仕事である。どれだけ大変かというと常時SPとして(あの内乱で縁が出来た)オフレッサー上級大将が厳選してくれた装甲擲弾兵のエリートが常時待機しており既に何度か出番が発生しているくらいである。
そんな彼(+二名)がオーディンの酒場にいるのはどうしても直接報告したり手続きしないといけない事が重なり、現地滞在一日ちょっとという突貫スケジュールで訪れているからであり、昨日の夜到着、今日一日仕事、明日朝一出発という予定のその一日の仕事が終わったらハードスケジュールの息抜きとして無礼講でたっぷり飲もうという予定だったからである。ただ計算外だったのはその一日の仕事で彼が宇宙艦隊司令部で盛大に爆死してしまい"無礼講で楽しく飲もう"が"ほぼほぼやけ酒"に近い有様になった事なのである。
その仕事の一つとして宇宙艦隊司令部を訪れた三名はわざわざここまで来ることになった理由の一つである提出物を宇宙艦隊司令長官シュヴァルベルク元帥の副官に手渡しその内容を確認してもらう。そう、ジークフリード・キルヒアイス大佐に、である。キルヒアイスがそれに目を通し始めた時、まだシュヴァルベルク本人が来ていなかった事もあるし本人曰く"正直ちょっと気が抜けていた"という言い訳もあるがついつい口が軽くなってしまった。つまりフレーゲルは噂に聞いていたキルヒアイスの叙勲候補や推薦の話について盛大に"歓迎"してしまったのである。それはもう盛大に。困ったことがあったら何でも聞くし手伝うから是非ともこの世界に来てくれ、とかかんとかetcetc。そして軽快に口が滑ってる最中にやって来たシュヴァルベルクが"君、なにしてるの? "と絶望した目で見つめている事に気づいた頃には時すでに遅し。"確認が終わりました。大丈夫です"と提出物を受け取ったのだがその声がいつもの調子ではなく絶対零度のそれだった事で己が盛大に地雷を踏んで砕け散った事を悟ったのである。キルヒアイスが席を外し正式にシュヴァルベルクに提出物を渡しその最終確認を待つ間、場は極めて冷え切っており好人物であるはずのシュヴァルベルクの機嫌は極めて悪かった。
その間、目ざとい情報参謀は周囲の者からの情報収集を怠らず、(今日はこっちで仕事だった)義眼の幕僚から事のあらましを聞きだすことに成功する。尚、何故か判らないが情報参謀のご主人様がやらかしてしまった事を少し喜んでいる様子であったらしいが時間が無いので深くは聞かない事にした(※3)。
「今やキルヒアイス大佐は長官の高級副官、つまりは各種取次担当です。何かある度に彼を通す形になるでしょう。私は当面、別任務もある事ですし閣下にその手の作業をしていただくことになります。お願いですからこれ以上事をややこしくはなさらないで頂ければ、と」
「判ってはいるが……その別任務の比重を下げてもらってもう少しこっちに寄るというのは?」
「それは無理です。私個人としてはこの別任務の方に専念したい気持ちです」
「そうか……(チラッ)」
「こちらを見ても無駄です。元主家で色々知っているからという理由で旧公領の各種情報を一括処理・管理しているのは誰だとお考えで? それと重要な報告をするには佐官の情報参謀というのは格が低すぎます」
「はい」
うなだれる。(別の意味で)酒が進む。
両名共に"あなたの自爆はあなたか解決しなさい"という気持ちであるが実際にとても忙しい。フェルナーは情報参謀として旧公領を飛び回る情報を集約し、ほぼ海賊化してしまった旧私兵艦艇や反乱に近い反抗をしている警備兵などに対して適量な鎮圧軍の編成や各地にいるその鎮圧軍の状況把握などを統括する役目を参謀長に代わり担っている。その参謀長、メックリンガーはある意味彼にしか任せられない別任務が発生している。"文化保持活動"である。旧盟約派諸侯の凋落により彼らがパトロンとなっていた文化人は保護者を失い、諸侯が所有していた文化財の保持能力(=予算・人員)は大きく損なわれた。これらの救済が待ったなしなのはメックリンガーはとある知り合いから聞き出していた。
「エルンスト。多分あなたの元にも助けを求める声がすぐに届くと思うけど個人じゃ無理。早いとこしかるべき政府の機関なりに対策を求めないと沢山の文化人、文化財が失われる事になるわ。私も出来る限り助けようとはしてるけど抱えられる量に限度はあるしなによりも"反乱を起こした者達の元にいた"というレッテルを張られた文化人を助ける事自体に拒絶反応を示す空気があるの。だから帝国政府そのものが"それはそれこれはこれ"と彼らを助けるべき対象であると態度を明確にしないと駄目。こちらでも援助の陳情は行うけど貴方の方からもお願い」
各所から陳情が行われた結果、政府は文化人に罪はないと声明を出し有力な文化人達は各所からお誘いを受けれるようになった。そして没落等の結果、手の回らなくなった文化財に関しては保護の名目で国や皇室の所有物として預かる事になった(体の良い資産没収)。それらの活動の中でメックリンガーが旧ブラウンシュヴァイク公領における文化保持活動に深く関わる事になり他の業務に割く時間がめっきり減っているのである。如何せん、お家取り潰し&ほぼ全領直轄化という形なので公家がパトロンとなっていた優れた文化人達を救済しないといけないし大量の文化財を失わせるわけにはいかないのだ。
「当分の間、休み無しかぁ」
とても酒が進む。とにもかくにも治安を落ち着かせなくては政府の行政官派遣も進まない(現状は現地、つまりは公家お抱えだった行政官による今まで通りの統治)。どうせやる羽目になるだろうと思っていたとはいえなかなかの重労働なのである。
「まぁ愚痴をこぼしていてもどうにもならん。今くらいは飲むとしよう!!」
結局は飲む。どこまで記憶があったかは判らないが気づいたら旗艦の司令官室でその時の姿のままベッドに放り込まれていた。そしてそのままガイエスブルクへの帰路についていた。彼の立場は未だにこんなものである。
「どうかね? こういう場は?」
「正直な所、慣れる事ができません」
主催者にそう答えてしまうあたりがフリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルトという男である。
「君もいつか艦隊司令官になる。嫌でもこういう場には慣れたがほうがいい…………が」
そういうと周囲を見渡す。
「確かにここはその"慣れ"の為の場としては良くないかもしれん」
とてもではないが友好的な場、とは言い難い空気も秘めているこのパーティー会場をマクマン・フォン・カルネミッツ子爵がうんざりとした目で見つめていた。
と言ってもこの場を設けて人々を招いたのはカルネミッツ本人である。この館、カルネミッツ本家の館も最近彼のものになった。いや、ものにさせられた。盟約軍に参加した事により当主である老父が死刑となり、継嗣である兄は行方不明となった。甥も姪も義姉も死を賜るか流刑となりこの場にはいない。家に仕えていた者も多くが失われ、また、自主的に去っていった。領土のうち、実入りの良い所領を没収され現状では黒字運営出来るかもわからない残余が残り、彼は当主となった。継嗣でもなく気楽な立場故に好きで軍人でいたが当主の命に逆らい、むしろこれを撃つ立場となり、うち滅ぼした後に"当主でござい"と帰って来た(帰るように命じられた)。これでまともな自領運営が出来るはずがない。それが現在のカルネミッツ子爵家の状況である。このパーティーもこのような状況下で残ってくれた家中への慰労であり、数少ないツテを招いての自領運営協力への嘆願の為という理由がある。周囲が彼をどう見ているかはさておき、となるが。
「全てを返上して身軽になる事も考えたのだがな。もはやこの家中でしか生きていけん者達も多くいる。それに"家を割ってまで正しい立場に立った現職艦隊司令官"というのは体の良い存在らしいからの。子爵家にしても艦隊司令官にしても都合の良い看板、贄というものよ」
声に以前の生気はない。最近、いや、ガイエスブルク攻防戦でのあの時からこの人の魂は半分消えたようなものになっている。その時に艦隊の指揮を一時的に預かった事を契機としてビッテンフェルトは実質的な艦隊司令官として艦隊の差配をしている。名目上の副司令官は存在するが艦隊旗艦に直轄部隊司令官として同乗するビッテンフェルトの命令に従う事を皆、承諾している。そしてカルネミッツはビッテンフェルトの中将昇進、艦隊司令官就任(自分は退任)、帝国騎士位叙勲の推薦状を提出するが今の所、全て保留なり却下なり辞退なりされている。ビッテンフェルト自身といえば実の所、これから復興する艦隊司令官(平民枠)の候補になっておりこれまでの実績から平民少将・中将達の中では"最も攻守の均衡のとれた良将(※4)"と評価されている。それ(艦隊司令官就任)を前提として宇宙艦隊司令部が用意している"候補者達の独立部隊"に籍を移す事も打診されたようだが艦隊(と司令官)の現状を放り出していく事を良しとせず名目上は直属分艦隊司令の少将という立場で残り続けている。
「艦隊の事でしたら僭越ながら小官が御支え致します。閣下には閣下でしか助けられぬ者達の為に」
「ありがとう。ほとぼりが冷めたら適当な閑職に回してくれるらしい。そうしたら艦隊は君の物だから今から手足の如く動かせるようにしておきたまえ」
パーティーは主催者を無視して進む。この主人の事をどう思おうが関係なく、どこにも行けずに残っている家中の者にとって自領で生き延びる為の"ツテ"は確保せねばならない。彼らなりに自分達の明日の飯を食う為に必死にならなくてはいけないのだ。そして主催者と場違いな青年将官は場に取り残されるのだがこちらにわざわざ足を運ぶ人もいる。
「主催者がいつまでもそうやって突っ立ってないで少しは挨拶廻りでもしたらどうですか?」
「閣下に対して何をいきな」
文字通りずかずかと歩み寄る相手に対しビッテンフェルトが慌てて声を上げようとするのを軽く手を上げて抑える。
「閣下?」
「娘だ」
きょとんとしてその相手を見つめ直す。相手も気づいたのかこちらに歩み寄ってくる……のだが妙に違和感を感じる。
「お名前を」
「フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルトであります」
思わず上官に行うが如しの直立敬礼で応えてしまう。
「父よりお名前は伺っております。自分よりはるかに覇気も実力もある、と。父は辞め時を誤り今暫く矢面に立たねばならぬ故、御支え頂ければと思います」
「誠心誠意、務めさせて頂きます!」
「では、私はもう一回り挨拶してきますので。父上も少しは顔をお出しください」
言うだけ言うと踵を返して人々の輪の中に戻る。そしてやっぱりその姿に違和感を感じる。
「その、閣下?」
「どうした?」
「ご息女は、その、何か武術をお習いに?」
その質問を聞いてカルネミッツは"はぁ"とため息をつく。
「元々、家を継ぐ予定もなかったからの。わしも自由にしていたからお前も自由にしてもいいとは言っていたのだがな……」
「やはり何か」
「警備員の格闘術講師相手にな……」
「なるほど、格闘術を。素人ながらあの足の運び方に違和感があると思ったのですが」
「三度に二度は投げてしまう」
「…………は? ……残りの一回は」
「引き分けだ」
ぽかーんとしつつパーティーの輪に入っている彼女の姿を探してしまう。
「……ま、そっちは"余興"で一番得意なのは実戦型弓術なんだが」
「はぃ??」
「私兵のコマンド達の技術大会に飛び入り参加してな」
確かにコマンドには銃器を避けそういうものを使うのもいると聞いたことはあるが……続きはもう聞きたくないが聞くしかない。
「ぎりぎり表彰台には届かんかった。自信を無くした者達の辞表を取り下げるのに苦労したがな」
「これは、また、お見事なもので」
さて、褒めていい物なのか? と思ってしまう。
「一人娘なのだよ。唯一の跡取りだ」
「…………それは、大変ですね」
つまり、相応しい婿を探さねばならないという事だ。
「気が楽だった時期にはそれなりに縁談はあったんだがな。あれにとっては"お見合い"ではなく"お手合い"で納得しないと認める気にならんそうだ」
「それは…………大変ですな」
「お陰で年齢的には"行き遅れ"だ」
「しかし……」
自分の目の前に立った姿を思い出す。贔屓目なしに……
「十分お綺麗ですからそのうち良い縁談は必ず来るのではありませんか?」
「そうだといいんだがのぅ」
(それなのに叙勲を蹴った候補者が一人、いるんだがな)
「じっくりと外堀から埋めていくしかないだろうな」
「形を整えていけば堕ちぬ男はおりませんよ」
「そうあってほしいものだ」
この青年提督が貴族らしい根回しで外堀を埋められていくのに気づくのはもう暫くの時間が必要であった。
「閣下からこういう所へのお誘いというのは初めてですね。ただの飲み食いでない事は判るのですが」
と言いつつ"奢り"と言われたので遠慮なく普段注文しないお値段のお酒を注文している。高級士官用のお店だけあって質もお値段も見事なものである。
「この手の悩み事を語れる同僚が少なくてな」
誘い主、ウィリバルト・ヨハヒム・フォン・メルカッツ上級大将が困ったようなしぐさを見せる。
「ある程度内容の予想は出来るのですがそれが私というのは人選ミスかと」
そう応えつつ酒のつまみも注文をしているのがアーダルベルト・フォン・ファーレンハイト中将。社交界から距離を置いている帝国騎士有力軍人同士として何かあった時の話し相手となってそれなりの年月が経過しているが今回は二人に余り縁のない話となってしまう。
「そういえば閣下は土地はもらわない予定で?」
「土地と言うな」
思わず親戚の子を叱るおじさんのような話し方になる。
「卿の方はどうなのだ?」
本題からは一寸それるが気にはなる。ファーレンハイト家は特に名家という訳ではないのだがそれなりに代を重ねている。品行もまぁ良くはないが悪くも無いし実力でここまで上がって来ただけに能力に不足はない。爵位を与える対象にはなり得るだろう。
「欲をかきすぎたというべきか自業自得というべきか……」
妙に目が泳ぎつつ応える。
ファーレンハイト家は貧乏貴族である。跡継ぎであるアーダルベルトは飯を食う為に軍人になったと公言しており、その非凡なる実力によって中将という位と艦隊司令官という席を手に入れた。一家を養うその目的は十分に達していると言える。しかし、それは個人の力量で手に入れたものであり今後の事を考えると安心という訳にはいかない。そのような時に噂になった叙勲騒動。現役艦隊司令官であり一応はそれなりに代が続いている帝国騎士の家であり跡継ぎはまだ未婚である(ややこしい縁者問題が無い)、といった事もあり爵位叙勲の候補となり役人が訪れた時にファーレンハイト親子が対応したのだがその話を聞いての第一声が
「実入り次第」「安定した黒字が見込まれる土地であれば」
翌日から一切話が来なくなったという。
「親父は俺の脛をかじって暮らすと開き直るしお袋は良い縁談はないのか、老後が安心できるなら婿入りでもいい、と」
"一生の不覚"とぼやきながら次の酒を注文する。"そういう所だぞ"と言いたい所だが紳士たるメルカッツは口に出さない。
「それ(爵位)の話はこちらにも来たがな……、なかなか踏ん切りがつかん」
メルカッツがぼそっと呟く。
「いやいや、閣下に話が行くのは当然でしょう。積み上げてきた勲功といい次期三長官候補である事といい、閣下がそれを受け入れていただかないと他の者達が恐縮してしまいます」
"まだ受けてないんですか! "と驚きと咎めの気持ちが混じった言葉をまくしたてる。だが実際にこの人が受け取らないと周囲から"なんで? "という空気が出てしまうのは事実である。
「私自身はいい。領を頂いたとしても経営は然るべき者にまかせればいいし妻も私も贅を尽くす気持ちはない。だがな、その次をどうするか……」
年齢相当の皺が眉間に集まる。
「確か娘さんがいらっしゃったはずですが…………」
メルカッツ夫妻の子は娘が一人、未だ未婚なのは門閥貴族達からの抱え込みを含めた縁談を丁寧に平等に断り続けたからである。その影響で門閥貴族の逆恨みを恐れてか他の下級貴族仲間からの申込もなくなる始末であった。しかしその縛りももう存在しない。縁組を行いたければ簡単に出来るはずだ。
「元々娘には良きところを見つけ嫁がせ、メルカッツ家は私の代で畳んでしまっても良いと考えていた。しかし爵位を拝領するとなると畳む訳にはいくまい。娘を嫁に出して実家は養子を入れてというのも形がおかしい。となると婿を探すしかない」
「まぁ、そうなりますな。しかし探そうと思えば見つけるのは難しくないのでは?」
「確かに、少し自惚れて良いのならそれなりに手を上げてもらえる程度の名は持っていると思っている、しかし……」
どうも歯切れが悪い。
「そこまで歯切れが悪いとは……どなたか見初めた候補でもいるのですか?」
じーっと見つめてみると珍しい事にこの尊敬に値する御仁が汗をにじませ"動揺"と言って良い姿をさらけ出している。はて、はて、はて、と考えてみてファーレンハイトは一つの可能性に辿り着く。
「副官殿、ですかな?」
ビクッ!! っと目を見開いたその姿は一度も見た事のないものである。
「正解、ですか」
「うむ」
そう言うとメルカッツは全然手を付けていなかったグラスを一気に空にする。どうやら今日の場の"本丸"に辿り着いたらしい。そうでもしないと気合が入らないのだろう。
「私の、いや、メルカッツ家の全てを委ねるとしたらあの男しかいないと思っている。我が家の少ない財などより良く身を立てる為に遠慮なく使い潰してもらってもよい」
「それならばさっさと申し込んでしまえばよいではないですか? 誰が見ても良縁。収まる所に収まったと皆が祝福してくれるでしょう」
ファーレンハイトがあっけらかんと応える。メルカッツの副官であるベルンハルト・フォン・シュナイダー中佐は長きにわたりその副官を務め、もはや副官の枠を超えた艦隊司令部の要として周囲から頼りにされている。他艦隊などからはより高い役職での引き抜き(転籍依頼)も多々あったらしいが本人が今の立場(副官)以外で働きたくない、と断り続けて今に至っている。
「彼は本当に良く働いてくれている。副官という立場はなかなか(階級が)上に上がりにくいからもっと評価を受けやすい所でその実力に見合った地位に上がって欲しいという気持ちもあるのだがここがいい、と首を縦に振ってくれぬ」
「そこまで敬愛されているのであれば尚更全てを託す事で感謝の気持ちとする、というのも礼の一つでは?」
「それも理解している。しかし私の口からそれを言ってしまうとな……」
どうもぎこちない言葉になっている。"何故に? "と考えてみるファーレンハイトだがここで一つの答えに辿り着く。
「つまりは、閣下から"娘を"と言ってしまうと"この人にそう望まれたから"としてしまうかもしれない、と。そこに"彼の本心"はあるのか? と」
「それだ! それなのだ!」
我が意を得たりとばかりに身を乗り出す。つまりメルカッツはシュナイダーの事をとても大事にしている。大事にしているからこそ彼の意思を尊重してあげたい。だから彼の意思を封じ込めるような形(だと思い込んでいる)で事を運ぶことが出来ない。ある意味貴族の良縁探し、跡取り探しの精神からしてみれば論外の姿勢なのだ。
「しかし、率直に言わせて頂くのであれば。今から"ごく自然に"などと言う流れに持っていく事など不可能なのでは? 娘さんと副官殿が出会える空間を今更作り出しても誰だって"あぁ、お父さんが頑張って仕込んでいるな"としか思いませんよ」
「そうか、やはりそうか」
「軍人同士といっても社交の場はあったのですからそういう場であれば副官と娘を同行させても何も問題はありません。寧ろ軍人同士の縁はそういう所で作り出していくもの。それを嫌ってしまった閣下の失敗ですな。今からやるにしてもさっき言った通り、露骨になりすぎます」
正しく"ズドーン"と言っていい具合にメルカッツが沈んでいる。少なくともファーレンハイトはここまでメルカッツが"負けている所"を見た事が無い。艦隊戦なら間違いなく壊滅・敗走後の姿である。
「しかし、そこまで不安になる必要はないと思いますよ」
「本当か!」
ぱっと表情が変わる。気が付くとメルカッツの傍らにある空のグラスがそこそこ増えている。この人の酒量を知らないので不安になるがここまで来たらそうもいっていられない。ここで放り出したらメルカッツに私的に愚痴をこぼされる(恨まれる)というなかなかお目にかかれない称号を得ることになってしまう。
「今度は副官殿をここに誘って一度腹を割ってお話されると良いでしょう。駄目なら駄目ときちんと答えてくれるでしょうしそれで崩れる程、閣下と副官殿の絆は薄いものではありますまい。大丈夫です。脈ありと感じたら上官ではなくお父さんとして拝み倒してしまいなさい」
「そういうものか?」
「そういうものです」
「そういうものかぁ」
そしてまたグラスを傾ける。"それ、俺の注文した度の高いものなのだが"と口に出したいが出せない。そして"そうかぁ、うむ、そうなのかぁ"と呟きつつゆっくりと頭を垂れていき…………
「マジかよ」
目の前で轟沈している宇宙艦隊副司令長官を唖然として眺め、最終的には仕方なく肩に担いで帰路につくことになる。のだが、
「申し訳ありません」
「なんだ」
「お代の方は?」
………………
高級店の鉄則として支払いは事前の申し出がなかった場合、意識がある者が行う事になっている(酔い潰した相手に代金を押し付ける行為を防ぐ為)。
「俺の名義でツケといてくれ」
(なんだこれは。上官の愚痴を聞いて聞いて聞いて金は俺か? なんだ? 接待か??)
待機していたメルカッツ付運転手に後を頼んでファーレンハイトは何とも言い難い気持ちのまま帰路につく。そしてその後、両者は職務に忙しくなり顔を合わせる暇が無くなる。結構な時が経ち"そういえばその後どうなったんだ? 何の進展のうわさも聞かんのだが? "とメルカッツに話を振るがなんとこの時の記憶が半分吹っ飛んでおり、また聞くのも恥ずかしいと聞くことも出来ず、(記憶が中途半端だったので)その後のアクションを起こすに起こせずなんとまぁ"何の進展も無し"という衝撃の事実を知る。その日、宇宙艦隊司令部の片隅であのウィリバルト・ヨハヒム・フォン・メルカッツが息子くらいの年齢の戦友を相手に子供のように委縮しながらひたすら説教を受けるという信じられない光景を多数の者が見る事になるのである。尚、あの酒の代金は自分が払っていたと思ってた(普段財布の残高など気にしていない)と聞いてしまった為、説教の時間が伸びたという事だけは追記しておく。
「すまんが邪魔するぞ」
「毎度毎度邪魔だ。休憩所に使うのなら帰れ」
「そういうな」
部屋の主の拒絶を相手にせず、"近衛兵総監"ヴィルトシュヴァイン・フォン・オフレッサー上級大将は客席に腰を下ろし当たり前のように飲み物を要求する。
「貴様の"爵位嫌々"もいい加減にしてほしいものだ」
仕方なく部屋の主、ミュッケンベルガーが対面の席に座る。
「人の欲とは見上げたものよ。普段は近寄ってすらこない遠戚どもが領主の可能性がと噂が立つや否や羽虫のように近くをぶんぶん飛び回る。ついでに捨てた女どもも猫なで声で擦り寄ってくる」
粗暴であるがそういう者達に手は上げない。いつもは"威"のみで散らす事の出来るがこういう時に限って散らずに飛び回る。なので実の所、かなり困っている。
「散々駄々をこねて前線から身を引いたのだ。それくらいの箔付けは受け取っておけ」
「俺は前線ではない、現役から引くといったのだ」
「そんな簡単に辞められてたまるか。貴様は存在そのものが"戦略兵器"なのだ」
「もはやそのような力はない」
「貴様がそう思っても、現実にそうでも、相手が怯えればそれでいいのだ」
「俺は飾りになるつもりなどない」
「今でも飾りではないか」
「勅命だからだ。百歩譲って現状は我慢してやる。だがこれ以上の追加はいらん。お前がリストから外せばいいだけだ」
"ふんっ! "とふんぞり返るオフレッサーを見てミュッケンベルガーが呆れる。力はないとは言うが"今までのオフレッサー比"としてである。現状でも大抵の人間は大抵の方法で殺せる。なのでまぁリストに乗せるにしても外すにしても本人を無視できない。
七九八年よりオフレッサーは装甲擲弾兵総監から近衛兵総監に配置換えとなった(ラムスドルフ上級大将が交代で近衛兵総監から装甲擲弾兵総監に配置換え)。理由としてはオフレッサーが退役願い(予備役ではなく退役)を出した事が発端となる。
事の起こりはガイエスブルクでの負傷。オフレッサーは右肩を撃ち抜かれ肩の関節部に致命的な傷を負った。自然治癒は不可能であり機能を回復するには人工物を植え込む必要があるのだが関節部への補強であるが故に強度に限界があり"人並みの力には耐えられる"というその補強は当然ながらオフレッサーという超人の稼働には耐えられないだろうという試算が出た。耐えられなかったらどうなるか? 人工物とその接続部がひしゃげて体内でもげてかき混ざるだけである。それが嫌なら肩全体を人工物に替えるしかない。当然だが肩を交換するならその先も交換するしかない、つまり完全な義手ならぬ義腕である。そしてオフレッサーは
「それで強さを維持した所でそれはもう俺の強さではない」
その一言で義腕を拒否、人工物によって機能を回復させた。その後動けるようになるや否や"もはや俺は俺でなくなった"と辞表を提出したのである。オフレッサーには矜持があった。彼がこれまでの地位を手に入れてきたのは正真正銘己の腕、己の肉体が元であった。これで義腕になって同じ強さを保った所でそれは違う。何よりも義腕でオフレッサーの肉体と同一の能力を保てるのであればオフレッサーである必要はない。志願した者達に義腕でも義脚でも付けてしまえばいい。それで(オフレッサー並)中隊でも大隊でも作ってしまえばいい。だが自分自身はそんなものはごめん被る。彼は彼の矜持の為に義腕を取らず、己が己ではなくなった姿を見せるつもりもなく身を引く事にしたのだ。
といっても"はい判りました"で引退できるはずがない。実際に彼がその身を挺したからこそ被害が最小限に収まったのであり、そうでなかったらどれだけの被害が出ていたかは想像したくもない。なので彼はそれ相当の恩賞を受けないといけない。のだが前線戦闘が不可能(能力的に、ではなく本人のやる気的に)となったら装甲擲弾兵総監のままという訳にはいかない。如何せん彼は過去から現在に至るまで本来の指揮官としての仕事を全く行っておらず一人の戦略兵器として動き続けていたからだ。それが出来ないとなると本当にその席にいても仕事が無い。なので辞める駄目だの押し問答の末、地位的には同等であり組織として仕事が定例化していてお飾りでもいい近衛兵総監への配置変換となった。といってもそれも嫌々言ってきたのでミュッケンベルガーがリヒテンラーデに頼んで勅命と言う形にして押し込む事で一区切りとなった。実際にはさらに元帥にするかどうかで揉め、爵位を与えるかどうかで揉めている。そして勅命を根回しした恨みもあり元帥なり爵位なりの承認に大きく関わる事もあり、何かにかこつけて愚痴をこぼしにやってくるようになったのだ。極めてはた迷惑である。
「貴様ほどの勲功があれば正式な引退時に元帥杖は土産に渡される。領土は任せられる者に運営を任せて自領に入らん領主など山ほどおる。現に一人ここにいる。他者とのバランスの問題もあるのだ、どれだけ駄々をこねようと遅かれ早かれで逃げられん。覚悟しておけ」
その一言で"休憩は終わりだ"とばかりにミュッケンベルガーは立ち上がり(迷惑な)客を放置して執務席に戻る。三分後、ぶつぶつ言いながらオフレッサーも出て行った。オフレッサーが去ったのを確認したのか執務室奥の休憩スペースから退避(?)していたと思われる何人かの事務員が各自の席に戻る。そしてその中の一人、義眼の男が大事そうに抱えていた分厚い書類が入っていると思われる封筒を差し出す。
「…………閣下、宮内尚書からの預かりものです」
封筒の表裏を見ても何も書いていないが封には尚書の印が押されている。他人には見せるな、という意味だろう。
「面の皮が分厚いお前でもあいつは苦手か?」
「あの方は道理が通じませんので」
そそくさと自分の席に戻る。嫌でも存在を意識し始めてから気づいてきたがあれでもなかなかに"感情"を持っている。理に徹しすぎる性格があの無表情を作っているのだろう。それはさておき、
「で、なんだこれは」
と封筒を開け、中身の書類を確認する。表紙に書かれているのは
"ジークフリード・キルヒアイス大佐について"
そして
"当方からの説得は行いません。この内容をご確認いただき、元帥がご判断ください"
その書類を素早くめくり概要を把握する。そして、
「オフレッサーといい、キルヒアイスといい、"恩賞を与えるべき"の声が大きい者に限ってこれだ。あげくにこっちに最終判断を飛ばしてくる」
そうボヤくとめくった書類を元に戻し、仕方なく最初から詳細の確認を開始した。そして翌日早朝、出仕前の清掃に来た職員はこの新任軍務尚書の机上に飲み終えた酒瓶が置かれているのを初めて見かけるのである。
双璧は原作でも795/3の時点で少将だったのでこの時期(798/頭)の中将は普通に"あり得る"範囲だと思っています。特にロイエンタールは一回降格してからの再昇進での少将ですし。しかし艦隊司令官は貴族であるロイエンタールはまだしもミッターマイヤーに関しては原作で正規艦隊司令官の席にどれだけの平民がいられるか?というのが疑問。でもラインハルト元帥府にて宇宙艦隊副司令官として九個艦隊握った時に簡単に任命できたことを考えると実の所編成権持っている人の気持ち次第なのかもしれない。だとしたらミュッケンベルガーあたりは実力があればあっさりと任命してしまうかもしれないと思った。ただ、ミュッケンベルガーの場合は本人の気持ちはともかく周囲からの声でストレスが溜まるかもしれない。"お前ら(妬む貴族軍人)が不甲斐ないのが原因だろうが!悔しかったら実力で奪えばいいだろう"って感じ。
今後色々とくっつく事があるかと思いますが作者本人が混乱するのが目に見えているので露骨ながら姓は変えずに進めて行こうと思います。
※1:さもありなん
ロイエンタール個人としては下級貴族など一般民と変わりが無いと思っておりそれで高官への道が開けるならなってほしいなーとは思っているがミッタマイヤー家の事も良く知っているので「あのご家族が貴族は・・・といったら強要できないよなぁ」という気持ちもまた本音なのでそう決めたなら仕方ないな、となっている。尚、当のミッタマイヤー本人は「むしろ一個艦隊の司令官止まりの方が自由にやれていい」という考えを持ち始めている。それを聞いて「(一個艦隊の使い方を覚えて)好き勝手動きまくるお前を指揮しないといけない総大将の事を考えろ」と言いたくなったが諦めた。もはや"暴風ウォルフ"の異名は彼の脳内にもへばりついているのである。
※2:ロイエンタールと叙勲問題
他人事のように思っているが帝国騎士→爵位の方も選定作業は行われている。のだが彼に関しては「その素性、宜しからず」として不合格になっている。
※3:ちょっと嬉しい
自分以上におもしろおかしく盛大に地雷に垂直降下する姿を見て"なるほど、指さして笑いたくなる状況、とはこういうものなのか"と妙な納得と充実を得ていた。
もし彼に十分なユーモア心があれば、一言で言えば m9(^Д^)プギャー してしまいたくなる気持ち。である。
※4:ビッテンフェルトの評価
攻撃しかアテにならないカルネミッツ艦隊の前線指揮官としての手腕とガイエスブルク攻防戦末期の艦隊指揮権委譲後の混乱からの立て直し後退手腕などが評価されており"実質的司令官としての手腕は評価しているが本質はサポート役が良いメックリンガー"・"パイロット出身なので近距離戦闘以外苦手で内乱時の艦隊戦でも特筆すべき戦果を上げてないケンプ"・"辺境の小中部隊ならまだしも艦隊司令官としては未知数のシュタインメッツ"・"暴風(走)ウォルフ"などよりはるかに艦隊司令官として適性があると思われている。が、本人は攻撃型を自任しておりこうなってしまったのはあくまでも実質的艦隊司令官であり艦隊そのものは預かり物なので自分の我で振り回す訳にはいかないというとてもまっとうな謙虚心からである。