(事が、大きくなりすぎている気がする。今更あれはという訳にもいかないし……)
ジークフリード・キルヒアイスは焦っていた。確かに自分は門閥貴族のせいで人生を狂わされた。それなりの感情を抱く対象である事は間違いない。色々と苦労はしてきたが近年は良き縁に恵まれ悪くない状況になりつつあった。そしてその対象である門閥貴族達やその頭領たるブラウンシュヴァイク、リッテンハイム両家は滅んだ。溜飲が下がる思いである。長らく理不尽な遠地派遣が続いていた父も帝都での勤務に戻れるとの連絡があった(これは恐らく自分に対する"配慮"なのだろう)。実家に戻っていた母も父が戻るのに合わせてこっちに再び来るらしい。
しかし…………話をややこしくしてしまったのは自分のせいである。まだ心の整理も出来ておらず、父に話を聞く前だったというのもある。その噂に対してついつい無意識に強く拒絶してしまった。"しまった"と思ったのだが今まで特に親しくしていなかった(フォンの称号を持つ)同僚たちから次から次へと妬みやら色々な感情がこもった"歓迎"の言葉を受けるに至り元の気持ちがぶり返してしまい"君たちと同じ所と言うのはお断りです"とばかりにかなりツンツンした態度に徹してしまった。貴族と言っても上から下まで沢山いる。あの門閥貴族達とミュッケンベルガー元帥達を同じ貴族という枠で一括りにするほど自分は愚かではない。そうしているうちに皆に"これは振ってはいけない話"という認識を持たれそれについては話題にされなくなったのだがそれに代わって元帥達が乗り出してくる始末である。ここまで来たら引っ込みがつかず恩もある元帥達相手に内心心臓がバクバクしつつ拒否を貫く事にした。その過程で少しストレスが溜まってしまったのか悪気はないであろう義眼の同僚幕僚やある提督に強く当たってしまったが特に問題にはならないだろう。そもそも自分が貴族など似合わないにも程がある。政府の動向を見る限りこれまでよりかは一般臣民への迫害も減るだろうし自身もそれなりの地位にいるし万が一の時は後ろ盾を願えるだけの縁も得ている。このままツンツンした姿勢を示して話が流れてくれればそれでいい。そう思っていたのだが…………
「いや、申し訳ない。呼んでおきながらこちらが遅刻してしまうとは」
キルヒアイスをここに呼んだ、この場の主が姿を現す。
「いえ、お忙しい立場なのですから私などに配慮する必要はありません」
「おっと、そのままで」
席から立ちあがりかけたキルヒアイスを制し、対面の席にその男が座る。
「遅刻した側が言うのも情けない事だが次の予定もあるのでね。用件を始めてしまっても良いだろうか?」
「はい」
その返答を聞くとこの部屋の主、宮内尚書ヨッフェン・フォン・レムシャイドは傍らの鞄からいくつかの書類を取り出した。
「まずはこれにサインを」
二枚の用紙が差し出される。この場での会話内容は記録しない、両者は合意のない者へ内容を話してはいけない。それを誓約するものである。レムシャイドの記名は既にされており後はキルヒアイスが記名するのみとなっている。キルヒアイスがレムシャイドに誓約するものではなく両者が大神オーディンに誓うものになっている。つまりはこの誓約は有力貴族であり宮内尚書であるレムシャイドと平民であり軍においても一人の大佐にすぎないキルヒアイスが同等とされているものである。
「どうぞ」
記入した用紙を渡し、レムシャイドが確認する。そして片方をキルヒアイスに渡す。
「いきなりですまないが軍務尚書殿には話さないといけない。それだけは了承してくれ」
「判りました」
それを聞くとレムシャイトは"さて"と一息ついてから口を開く。
「ここに呼んだ理由は君が思っている事、も少しは含まれているが実は別件が本命だ。故にこの誓約を用意させてもらった」
そういうとレムシャイトは用意した資料の一つをキルヒアイスの目の前に置く。
「私は宮内尚書として過去の記録の確認・整理を行っている。謀反を起こした者達の余罪やその権力で表に出す事の出来なかった情報の掘り出しなどをね。そしてその中の一つに一〇年ちょっと前の"寵姫候補亡命事件"というものがある。ブラウンシュヴァイク公オットーの面子に著しく泥を塗った事件であり、故に徹底した情報封鎖が行われた。表に出せば引っ込みがつかなくなる政争の元になるので敵対するリッテンハイム家も秘める事に同意し暗黙の"禁忌"として皆が口を閉ざす事になった」
「そしてその"八つ当たり先"として私の家が選ばれ、"事が重大にならない程度"に扱われる事になった、と」
「そう見てもらっていい調査結果は出ている」
キルヒアイスが捲る資料にはその過程の情報が記されている。自身の記憶を辿りその時の状況と照らし合わせる。
「ミューゼル姉弟が消えた前後の記録、君の記憶と相違ないな?」
「…………はい」
間違いはない。ただ記憶にない、知り得る事の無い情報もある。
"セバスティアン・フォン・ミューゼル及びその妻子、(帝国歴)四七七年X月XX日全記録抹消"
つまりミューゼル一家はこの帝国に存在しなかった、という事になった訳だ。そして更に一枚資料を捲り、紙質が変わり真新しい物になる。ここからは今回まとめられた情報という事だろう。そしてこの記録は、
「そこからは君の記録になる。この騒動の関係者であり叙勲候補者である君は一定レベルの精査が必要となってしまった。父君の状況はこの過程で判明し、手は打たせてもらっている。あまり思い出したくもない記録であろうが本件の添付資料として残す必要が出てしまったので確認はしてもらいたい。それが私の方の本命だ」
そう言うとレムシャイドは立ち上がり奥の席に移る。彼にとっての本題であるこの資料確認に集中させる為の配慮であろう。覚悟を決めるとキルヒアイスはその記録に目を通し始める。
・ジークフリード・キルヒアイス (帝国歴)四六七年一月一四日誕生
・父は司法省官吏、母は専業主婦
(略)
・四七七年
ミューゼル一家、隣家に転居。ミューゼル姉弟との交流開始
ミューゼル姉弟逃亡。セバスティアン・フォン・ミューゼル亡命実行容疑として拘束
セバスティアン、尋問の結果子二人の亡命を単独にて実行した事を供述(セバスティアンに関する抹消を免れた最後の記録)
キルヒアイス一家に対して事情聴取実施、関与認められず(※1)
キルヒアイス一家に対する謂れ無い噂が出始める。その後の各種行為はセバスティアンの娘アンネローゼの寵姫入り作業を担当していたワトガ子爵(※2)による八つ当たり行為である可能性が高いと推測される状況証拠が多数存在
キルヒアイス父、遠地へ単身赴任。以後、半年~一年毎に遠地(平均移動距離三〇〇〇光年)への赴任先変更が繰り返される。
子爵関与の記録有り、最後の記録は行政上設定できる最大赴任期間で最遠地に飛ばされており、そこで"飽きた"と思われる。
キルヒアイス母、謂れ無い噂によるストレス等が重なり精神に変調をきたす。その原因となったジークフリードに対する家庭内暴力が行われていたと推測される(近所住人の証言)
キルヒアイス母、実家にて養生する事になる。但し、ジークフリードの同行は拒否。幼年学校への入試手続きとそれまでの下宿先の用意のみを行い放置
ジークフリード、幼年学校入試試験にて合格、平民枠として入学(※3)
・四八二年
ジークフリード、幼年学校を卒業。入学後から卒業まで席次は平均五〇番前後、最高三七番
教官・同級生たちの評価
何事もそつなくこなせるがとりたて秀でた所無し
器用貧乏
演習などで上位者に優位になってもうっかりミスで逃す事が多い
司令官としてはそのうっかりが危険なため、直接の責任を持たない参謀(補佐)が適任と思われる
備考:入試試験の成績は首席相当であり入学後は伸び悩んでいたが後の功績・評価より入学後は目立たぬ様に手を抜いていたと推測される(※4)
士官学校進学を志願、席次は十分であり授業料は半免除・半後払にて当面負担なしと言う形で内定
内定取り消し。理由は非公表だが子爵による八つ当たりの一環と思われる(代わりに子爵家に仕える家人のドラ息子が内定となっており、これが目的なのか追い出したついでなのかは不明)
強制的に卒業となり准尉として任官、イゼルローン要塞支隊前線哨戒部隊(※5)に配属
・四八三年
精神的重圧のかかる最前線にて貴族士官のストレスのはけ口なり慰め者に近い扱いをされていたが見かねた平民士官Aがイゼルローン駐留艦隊査閲部に密告。査閲部長(貴族)は貴族・平民間の"よくある些細な出来事"であるとして黙殺するが厳格な査閲次長(平民)が独自判断で強制介入しジークフリードを要塞へ召喚。聴取を開始するが同盟軍の襲来(第五次イゼルローン要塞攻防戦)に伴い作業中断、攻防戦終了まで査閲部にて待機。攻防戦終了後、該当哨戒部隊の消滅に伴い査閲部長が調査中止、記録削除を厳命。査閲次長及びジークフリードはオーディンの異なる閑職に移動。記録上懲罰人事(記録削除の為、 素行不良の為となっている)となった為、通常一~二年で少尉任官になる所、三年を経過しても准尉のままとなる。
・四八五年
該当部署は前途ある若手士官候補の職場ではない、としてその"期待"にそった配属先に移動させるべしという名目でグリンメルスハウゼン艦隊陸戦隊に所属変更。当然ながらたまたま存在を見つけた(思い出した)子爵による嫌がらせ人事介入行為。
衛星ヴァンフリートの地上戦に参加。所属中隊の中隊長Aは卑屈な者であり、主戦場外にて極力戦闘を避ける行為を実施。部下に命じて戦闘の起きそうにない場所を探索させそのエリアを維持するという名目で主戦場を離脱。記録上、最終決定したエリアの進言者はジークフリード・キルヒアイス(※6)。その外れのエリアで極秘通路を経て逃亡中であった同盟軍基地司令官セレブレッゼ中将を含む少人数の一行を発見し中隊総出で拘束(※7)。その勲功にて中隊所属士官は全員昇進、その結果やっと少尉となる(※8)。
・四八六年
休暇中(※9)に惑星クロイツナハⅢで麻薬密売組織の捜査に協力。本来任務外の出来事ではあるがサイオキシン麻薬は帝国叛徒問わず"絶対悪"であり、恩賞として中尉への昇進が認められる(二〇歳を迎える直前で"絶対悪"への功績があるのに少尉というのはかわいそうという同情人事、八つ当たり介入の形跡はあれど覆らず)その際、事後調査に赴任してきた軍大佐(元イゼルローン要塞査閲次長)と再会し、改めて縁を得る。
同年、宇宙艦隊司令部に配属になったその元イゼルローン要塞査閲次長レンネンカンプ准将(昇進)の推薦で宇宙艦隊司令部に配属変更(※10)。そこでミュッケンベルガー元帥に"認められる"。以後、介入の形跡無し。ミュッケンベルガー元帥を恐れての自粛と思われる。
・四八七年
出兵(後のアスターテ会戦)に伴い、経験の為に大尉に昇進(※11)させたうえでメルカッツ艦隊司令部に"貸出"される。
(略)
「どうかね?」
読み終えたタイミングでレムシャイドが手前の席に戻る。
「若干気になった所などがあったので直接記載をしておきました」
それを聞きレムシャイドがテーブルに放り投げられた書類を拾い、素早く確認する。
「わかった。これについては正式資料化の際に並記しておく」
修正ではなく並記。キルヒアイスが残したくない記録を修正と言う形で消してしまう事への警戒である。
「実の所、本命としてこの確認してもらった記録はさほど重要ではない。あくまでも過去の記録だからな。しかし」
レムシャイドの目が鋭くなる。
「イゼルローン捕虜交換式」
その一言で背筋が凍る。
「あの出会いについて詳細を報告しなかったのは宜しくない。帝国に仕える者として不本意であるが亡命なり捕虜からの転向なりで叛徒に転ずる者が出る事は多々発生する。若い時の知り合いがそうなって奇遇にも再会するというのも確率的にはゼロではない。しかしそれがあの隣人である事。その事についてまったく記録が残っていないというのはどういう事か?」
"フェザーンの白狐"と呼ばれ、フェザーン自治領主と長きにわたり表裏の交渉を続けてきた帝国最高の外交官。その姿には下手な軍人よりも多くの修羅場を潜って来た威がある。
「そ、それは……」
思わずしどろもどろになりそうな言葉をレムシャイドは手で制す。そして思わず出てしまう含み笑い。
「いや、すまなかった。ここまで圧するつもりはなかった。その時の状況は今見た資料の通りではないか。まだまだあの時はブラウンシュヴァイク家も健在、表立ってしまってはその身に何が起きるかわかったものではないと考えるのは当然。やっと光が見えてくる職場(宇宙艦隊司令部)に巡り合えたのだ。余計な災難など避けるに限る」
どっと汗が噴き出る。
「しかし、だ」
だが話は終わらない。
「せめてミュッケンベルガー元帥なりシュヴァルベルク元帥(当時上級大将)なりにひっそりと報告しておいた方が良かったとは思うぞ。"重要な事なので他には秘めていました"とでも言っておけば筋は立つ。そしてあのご両名なら君に不利になる行いはすまい」
「……その通りです。配慮が足りませんでした」
キルヒアイスが頭を下げる。"まだ頼るに足る存在であるか見定め終えていなかった"とは口が裂けても言えないからここは素直にふりをしておいた方がいい。この人はその立場上、この一件のみで自分を罰する罪を簡単に"作る"事が出来る。刺激しない方がいい。
「うむ、それでよい。これで本命だった確認は終了だ。それで私にとってはおまけ、君にとっては本命の話だが…………」
ここでレムシャイドが顎に手を当て、首をひねる。
「あんな経験しているのに"貴族になりませんか? "って言われても正直困るよな。説得してくれと言われた私も困る。まぁ時代も変わったし心を入れ替えてというのもあるかもしれないが気分転換に貴族になりますって言うのもやはり違う」
「それは……、正直な所、その通りであります」
二人揃って"ふぅ"っと溜息をつき、少しの静寂の後、何故か二人揃って笑いが込み上げてくる。
「だから私からは説得はしない。軍務尚書殿にはこの資料は見せねばならぬ。その際に"私は説得しない、そっちにまかせた"と投げつける。あの御仁ならそれで君と私の気持ちは察してくれるはずだ。そのうえで君の説得を図る様ならその思いを素直にぶつける事だ。受け止めてくれるはずだ」
「そうしたいと、思います」
素直に応じる。しかしそれはレムシャイドを信用したのではなく話しても大丈夫だろうとミュッケンベルガーへの見定めが終わっているからである。
「しかし、貴族社会の浄化と質の向上を考えれば君がその世界に入る事が望ましいと考える者は多いだろう。もしいつか、その一歩を踏み出してみたいという気持ちになったら遠慮なく私に相談したまえ。色々と知ってしまったからな。年長者として少しは背中を押せるはずだ」
「もしその時が来たのなら。考えておきます」
(誰かを頼る事にはなるでしょう、しかしそれは貴方ではないと思います)
「うむ。では終了だ。ご苦労だった」
キルヒアイスが出て行った扉の鍵をレムシャイドが掛ける。そして二人が会話していたテーブルの近くにある壁に手の平を押し付ける。
"ガガガガガガガガ"
隠し扉が開き、人影が二人見える。
「聞こえていたな?」
レムシャイドが二人のうちの片方。頭髪をほぼ失っている男に問いかける。レムシャイドは誓約をしている。しかしそれは"記録しない"という事と"内容を話してはいけない"というものである。彼は記録してないし話してもいない。ただ近くで聞いていた者がいただけである。
「はい」
その男、内務省社会秩序維持局局長ハイドリッヒ・ラングが恭しく答える。
「ジークフリード・キルヒアイスという男の事をどう判断する?」
その問いにラングは少し考え込み、言葉を選ぶように丁寧に答える。
「あの資料、それを作らせていただいた際に得た感想としては刺激さえしなければ害になることはないでしょう」
「今の政府が行っている改革が進む限り、か」
「はい」
「なら、当面放置するとしよう」
そしてレムシャイドの視線がもう一人に移る。その視線を受けるや否やその男は背筋を伸ばし緊張した趣を示す。
「君と直接会う事は初めてだが緊張する事は無いぞケスラー准将。君のもたらした情報は謀反人共の罪の洗い出しに非常に役に立っている」
そういうとレムシャイドは己のデスクの引き出しから一つの分厚い冊子を取り出す。
「しかし、役に立つ情報をもたらした事とその情報を"隠し持っていた事"はまた別の問題だ」
その鋭い目がケスラーを射抜く。
「リヒャルト・フォン・グリンメルスハウゼン子爵は亡くなる直前に君にこれを託した。これのページからは君の指紋も多数検出されており、それは君がこれを読んでいるという証拠になる。重要な情報は立派な"財産"だ。子爵の世話人と言える立場であり葬儀や遺産整理まで関わった君はこれを報告せずに隠し持った。金品問わず死亡直前に譲られた物は遺産として処理しなくてはいけない、それを報告していない以上これは明確な"横領"である」
ケスラーは何も答えない。レムシャイトの言っている事は全て"事実"だからである。レムシャイドがラングに依頼したジークフリード・キルヒアイスの調査、その過程で発見されたイゼルローン要塞でのラインハルトとの会合。その報告内容に関する疑惑への追求として当時その上官であったケスラーにも調査の手が及びケスラーもまた、その報告内容に何らかの手を加えている事が確認されて社会秩序維持局は直接の取り調べを実施。ラインハルト・フォン・ミューゼルが特別な人物であると知っているという確信に至り家宅捜査、そしてグリンメルスハウゼンの遺品は発見された。その遺品にはミューゼル家の一件も記載されており、そのページにはくっきりとケスラーの指紋が残っていた。
「准将、そう怯える事は無い。いわゆる司法取引と言うものだ。この情報、遺品を提出する事。そしてこの事を口外しない事。それを条件に君は一切の罪を問われない。もしこの遺品の内容と君がそれを知っているという事が裏の世界で知れ渡ると、恐らく君は考えもしたくない方法でこの世を去る事になるだろう。しかし私たちだけがそれを知る状態である限り君に害は及ばない。害が及ばない様に君とその縁者には影ながらではあるが社会秩序維持局が用意した腕利きのガードが控える事になる。安心したまえ」
何も、答える事は出来ない。
「その代わりと言っては何だが、私やラング君がちょっとしたお仕事を依頼するかもしれない。その際はまぁ、出来る範囲で手助けしてもらえないだろうか?」
疑問符という名の命令。
「…………出来る範囲となりますが務めさせていただきます」
「ありがとう。君は宇宙艦隊司令部が目をかけている次世代将官の候補らしいからね。あそこは簡単には手を出せないから君がいるととても助かる。期待しているよ」
キルヒアイスと同じ扉でケスラーが退出する。この扉は特別な裏口専用であり、ここに来たと判らない所から出る事が出来る。そして定期的に出口は変更される。
「もう一つ聞こう。ウルリッヒ・ケスラーという男の事をどう判断する?」
「油断なりません」
ラングは今度は即答する。
「ほぅ、どのようにかな?」
この反応は予想していなかったレムシャイドが興味を示す。
「あの者の経歴に"こちら"と同系統のものはありませんでした。しかし、我々との交渉(※:尋問)などで見せた対応などから考えるに"こちら"への理解若しくは適正が感じられます。こちらの手綱が繋がっているうちはむしろそれが有用となりますが切れてしまったら……どう反応するか判りません」
「なるほど。だから"ガード"を付けろと言った際に縁者を含めたのか。本人のみならどうなるかわからん」
「はい。まぁ、縁者に付けているというのは"嘘"ですが」
あっさりと嘘というラングにレムシャイドが思わず笑いこむ。
「はっはっは。縁者如きにガードが見つかるはずがない。本人が見張れればそれで良し、か」
「はい。本人の動きが判れば良し、です。直接、間接問わず情報伝達方法は全て押さえてありますので縁者経由という事も出来ないでしょう」
「しかし宇宙艦隊内で口頭なりとなると……流石にこれはどうにもならんか」
「そこまでは流石に。しかし、我々の捜査の為の秘密捜査官である。とすればバレても大丈夫かと」
その言葉を聞き、レムシャイドは深く考え込む。そして、
「わかった、それで良い。我々の目的は旧門閥の穢れを見つけ、取り除く事。そのうえで」
レムシャイドの顔がこの日最も恐ろしい凄みを見せる。
「新たなる穢れが蔓延る事の無いように我らの楔を埋め込む事だ」
「ご指示のままに」
「うむ。では、本日の任務は終了だ」
レムシャイトは三度、扉から出ていく男を見送った。
(何が我々の楔だ。次の首魁を狙って手当たり次第に首根っこを掴みたいだけだろうに)
帰り道で思わず口に出しそうになるのを必死にこらえる。内務省社会秩序維持局長官ハイドリッヒ・ラングはその職務に対し、極めて優れた能力を持っていた。主に政治犯や思想犯などを取り締まる社会秩序維持局はその職務故に重要な情報を握れる政府高官にあるにもかかわらず代々の長官は平民が多くを占めていた。貴族がこの役職に就いた時、縁者や派閥の者が調査対象となった時に手を抜く事が出来ない。それを行えないと己が重罰となる。貴族たちが敬遠し続けた結果、ごく自然に平民が就く役職となった。ただ、その職務を終えた後に平穏な余生を送れた者は少ない。
その職務をラングはほぼ完璧に遂行していた。政治犯や思想犯などを取り締まる事は正しい帝国の政治を維持する為の正義の職務である。帝国の臣下として道を踏み外している門閥貴族どもを"皇帝陛下の定めし法を守らぬ者"として裁けぬ無念、今こそその恨みを晴らすべしとその使命に燃えていた。宮内省と協力して行うこの浄化作業は帝国摂政リヒテンラーデが音頭を取る大事業であり決して"次の門閥貴族"を作り出す為のものではない。明らかに"次の図面"を描こうとするレムシャイドは戦火を免れた門閥貴族の生き残りであり没落した者達を含めても上位に属する大物であった。今は没落門閥貴族共の穢れを拭う為に手を組んでいるがもし帝国の正義に反する勢力となるならば…………
(そうなればあのウルリッヒ・ケスラー、そしてジークフリード・キルヒアイス。色々と納得して手を結べる相手なのかもしれん)
ハイドリッヒ・ラングはあくまでも己の職務は皇帝陛下の統治する帝国を正しい姿に保つ為の正義の執行であると肝に銘じていた。そこに私利私欲など何一つ存在しない。それが彼のプライドであった。
ここは応接間の一つなのだろう、立ち並ぶ調度品はこの館の主らしい質実剛健な実用品で満ちている。応接間というよりも日常の休息などに使う居間の一つなのかもしれない。
「む、来たか」
部屋の隅でその調度品をいじっていた主が入室に気づき歩み寄る。考えてみたら軍服ではない状態のこの人を見たのは初めてではないか?
「この度はお招きいただき……」
「そういう堅苦しいのはいい、今は私用、プライベート時間だ。そこにでも座れ、上着も堅苦しければその辺に掛けておいていいぞ」
緊張する客キルヒアイスを制し、館の主グレゴール・フォン・ミュッケンベルガーが気軽に飲み物を用意し始める。
「ここは寛ぎの間、と言った所だ。貴族としても軍人としても人の目だらけの生活だ。こういう場でも作らんとやってられん」
そう言いつつ自ら入れた二人分のコーヒーを己とキルヒアイスの手前に置く。
「そもそもこの館自体がデカすぎるのだ。大半の部屋が空だ。これでも出来るだけ小さくしろとは言ったのだがやれ司令長官だやれ軍務尚書だで役職相当の大きさにせんと示しがつかぬらしい」
確かにこの部屋に来るまでの間だけでもこの館がサイズの割に人の気配が全くない。そういえば家族がこっち(帝都)にいるとも聞いたことが無いしこの人が自宅で沢山の人をはべらす姿は想像できない。
「………………」
ミュッケンベルガーが何かを語ろうとして戸惑い、口には出さぬが"う~~ん"といった仕草で指でポリポリとこめかみをかく。そして"ふんっ"(これは聞こえた)と気合を入れたかと思うとおもむろにこちらを覗き込んだ。
「まぁ、判ってはいると思うが。あの話だ。宮内尚書から受け取ったあれは読ませてもらった」
実はちょっと言葉を濁している。キルヒアイスも確認したそれは確かに読んだ。しかしそれより前に概要については知っていた(※12)そう言うとミュッケンベルガーはまったくもって彼らしくない仕草、両手を上げてぼやく。
「お手上げだ。あのような経験を得た者の人生の分岐点をこちらで決める訳にはいかん。やっと家族一緒の生活が戻って来るらしいではないか。まずは十分に親孝行して、その後に次の道を考えるといいだろう」
正直ほっとした。これでもまだ強く押してくるのならこちらも腰を据えなくてはいけなくなる。
「しかし、だ」
そういうとミュッケンベルガーがずいっと前に乗り出す。
「今後のわだかまりなどを考えるとだな。一度貴族と言うものについて腹割って話した方がいいだろう、と思ったのでな」
結局、腹を据えた方がよさそうである。
「貴族と言うのも上から下まで沢山ある、実際の所はそれで得する事と損する事の天秤の結果次第だ。領土を持たぬ帝国騎士ならオーベルシュタインの奴がぼやいたが"貰って何か損するものでもない"というのはある意味真実だ。数は多いがその大半は一般臣民と大して変わらん生活をしている。高名を得てもメルカッツのように距離を保つ姿勢を取り続ければ周囲もそこまで巻き込もうとはしない。有力貴族がお気に入りの平民家人に箔を付ける為、優秀な平民官僚を高官にする為、"貴族である"という名札を付ける為に使われる。それが帝国騎士の一面だ。まぁこれからは質の向上の為にそれなりの吟味を義務付けるようだがな」
「……それは"とりあえず貰っておけ"という事でしょうか?」
腹を割ってという事なのであえて強めの言葉で迫ってみる。
「恐らく、周りはそう思っているのが多いだろう。特に先の叛乱貴族共に近かった者、そこでこちらに踏みとどまれた者はそう考えている者が多い。これから自分達がどう見られるのかを理解しているのだ、己が政府から見れば"今回は上手い事逃れた予備軍"だという事を。だから恭順の意を示す為にも貴様の様な立場の者が貴族の世に入る事を望んでいる。新興貴族層は政府の望む層である事を認めますよ、己たちの勢力拡大には使いませんよ、という無言の意思表示だ。軍務尚書として受け取る推薦も驚くほどその予備軍からの推薦が存在しない。下手に動いて目を付けられるのを恐れているのだ」
「それだけを聞きますと"とりあえず貰っておけ"となるのは一応理解できるのですが"周りはそう思っているのが多いだろう"というからには尚書閣下のお考えはまた、異なると?」
その言葉を聞いてミュッケンベルガーがニヤリとする。この理解の速さというのがミュッケンベルガーが望む好ましい人材の条件の一つである。ただ、早すぎても駄目というのがミュッケンベルガーの難しさでもある(オーベルシュタインはそれだから苦手)。
「こっち(貴族の世界)に入って欲しいという気持ちは今でも変わらん。しかし、今の貴様に関して言えば周囲然り本人然り、少し冷めてからの方がいいだろうと思うようになった。あれを読んだのでな」
そう言うとミュッケンベルガーは手を組み、ぼそっっと言葉を繋げる。
「今は両親との生活を取り戻す方に専念したいだろう。子としてはもう一人立ちしてもおかしくない年ではあるが空洞を埋めずに巣立つほど年を食っている訳でもあるまい」
家族。そこに触れてもらえた事を心の中で感謝する。実は父から帝都に戻れると連絡があった時、以前住んでいた住居が空いてたら借りておくようにと言われていた。そして奇遇にもその住居は何人かの手に渡った挙句、つい最近また空いて居住者募集中だった。キルヒアイスが即契約し父はそこに帰って来る事になっている。「また一緒に」と言われたキルヒアイスも引っ越し予定である。そして、母も。
「親とは会える時に会っておいたほうがいい」
キルヒアイスが言葉に詰まっているとミュッケンベルガーはそう言い、椅子に深々と身を傾ける。
「軍人であるならば尚更だ。実力どころか運一つで会う事は叶わなくなる」
これに関してはこの人の言葉は重い。
「わしは次男坊だった。軍人としての家系に生まれ、軍人であるべしと育てられ、特に疑いの気持ちを持つことなく軍人になった。貴族の家の次男以降はある意味"跡継ぎのスペア"であり"外交の道具"だ。しかし今、わしは当主としてここにいる。ただの艦隊司令官から宇宙艦隊副司令長官になった時は親族総出で祝賀の嵐だったぞ。"これで戦死する様な位置で指揮を取る事はないだろう"とな。だからこそ」
そういうと身を再び乗り出す。
「貴様のキャリアを考えれば何度かは最前線に位置する所で働く事になる。そしてこれはわしの負の遺産であり弁明の余地のない事だが。その最前線にはあの要塞がある」
イゼルローン要塞。これから何かしらの形で正規艦隊所属になればそれを相手にしなくてはいけない時は必ずやってくる。そしてあれはもう才能とかそういうものを超越した死を振りまく。恐らく叛徒軍の未来から多数の名将・名参謀を奪ってきただろう。それがこちらにも降りかかる。
「だから今回の推挙からは外す。それで何かもめごとが起きそうならわしが責任を持って対処する。貴様は新しい役職(司令長官付高級副官)と再び動き始めた両親との生活。これを充実させる事だけを考えろ。まだまだ若いのだ。少しはだらけてもいいと思うぞ」
腹を割った話、というかミュッケンベルガーが言いたい事を全部吐き出す事が目的だったような気もするがとりあえず叙勲問題については一旦放置してもよさそう、という事なのだな。とキルヒアイスは考える。その後にまた再燃するかは自分の勲功次第なのかもしれないがその頃には新しい生活も落ち着くだろうしそれはその時に家族と相談して決めればいい事だ。その後は他愛のない話となり食事まで頂いてキルヒアイスは少し胸中のわだかまりが消え、気持ちよく帰宅する。
「では、今日はお先に失礼します」
あの日から暫くが経過した。叙勲問題については手が回ったのか皆諦めたのか声はすっかりかからなくなり、それなりに平穏な日々に戻ってきたと言える。後は今日、これから帰るあの家で両親とどういう再会をするかである。父とは何度か連絡は取れたが母とは直接の連絡をしていない。住所は知っているので父に依頼されて母には鍵のスペアを送っており一足早く入って最低限の家具と人数分の寝具は用意しているいう。さて、どうやって顔を合わせればいいものか。
「大佐殿、この辺りで宜しいですか?」
「! 、……あ、あぁここでいい。ありがとう」
宇宙艦隊司令部付の車が適度な場所に停まる。トランクから数日分の衣類を入れたバッグを取出し家路につく。遠目に見える家からの光が僅かに確認できる。
(最後に来たのは何時だったっけ?)
幼年学校在学中の休みに何度かは見に来たことはある。しかし卒業してからは来た記憶がない。
(あれも、もう様変わりしえいる)
"隣の家"があった場所はあの日から少し後に更地になった。その状態で暫く放置されていたらしいが解放されたのだろう。新しい家が建ち生活の光が灯っている。住人はそこが何であったのか、何が起きたのか知らないだろうがそれでいい。その方が幸せだ。
キキィ
その"隣の家"をのんびりと眺めていると前方、家の手前にタクシーが止まっており男が一人、トランクから取り出した大きな旅行バッグとキャリーを手にえっちらおっちらとしている。それが誰なのかは暗がりの中なのにはっきりと判る。いや、真っ暗であっても今ここに降り立つ人は一人しか思いつかない。
「父さん!!」
思わず小走りになって駆け寄る。
「!!!! ……おー、はっはっは。映像とは違って実際に見てみるとまぁ本当に大きくなったなぁ」
父が見上げるというほどでもないが自分より大きくなった息子の姿をまじまじと見つめる。何度か映像記録付の手紙はやり取りしていたがやはり実物は違う。
「荷物はこれだけ?」
「仕事に必要な物だけだ。大きな荷物は全部最安の貨物便だからな、一足二足遅れて届くだろう」
二人で玄関に進む。
「それにしてもまたここに戻ってこれるとはなぁ。いつかお前が何とかしてくれる。そう思って我慢した甲斐があった」
横目で見る父の顔は思った以上に生気に満ち溢れており、安堵と喜びを覚える。
「さて、と」
ピンポーン とチャイムが鳴る。キルヒアイスが鍵を持っているので開けれるのだが父が押してしまったのでそのまま待つことにする。そして、玄関が開いた。
「ただいま」「ただいま」
「……おかえりなさい」
まだ家具などが届いてないので殺風景な屋内。でも知ってる屋内。恐らく事情を知っているであろう父が一人で奥に進み、母と子が残される。
「……ジークフリード」
父と違い母はまだ四〇代ではあるが一回り老いた気配を感じさせ、目元にはクマのような跡が見える。
「……ジークフリード、…………ごめんなさい」
母が頭を下げる。それだけで、もう、十分だ。
「母さん。ありがとう」
母を抱きしめる。あの時は自分の顔が母の胸元だったが今はその逆。随分な時が経過してしまったものだ。そう考えているとふいに母から力みが消え、ペタンと膝をつく。
「母さん!?」
「大丈夫、大丈夫。どうやって顔を合わせようかずっとずっと考えてて。やっと会えたと思ったら体がふわ~~ってなっちゃって」
照れたように顔に手を当てる母の両脇に手を添え"どっこいしょ"と持ち上げる。
「ただいま、母さん」
「おかえりなさい、ジークフリード」
やっと見れた母の笑顔。
「さて、と。調理機器とか色々と揃うまでは出来物ばっかりになっちゃうけど夕飯は用意しているわ」
そういうと母は台所の方に歩を進め。
「その前にこっちこっち」
と、家の奥の方に歩を進める。それを確認するとキルヒアイスは自宅の中に歩を進めた。
「大丈夫だったか?」
「……うん、大丈夫」
「ならそれでいい」
最低限のテーブルとポットだけが用意されている居間で父は寛いでいた。まだ着替えもそのままで荷物も横に置きっぱなしである。
「私が言うのもなんだが家族そろってこれから再スタートだ。これまでの事を忘れる必要はない。だけど無理に引きずることも無い。なるように、やりたいようにやってみるしかないさ」
父の言葉に力強く頷く。そして父が傍らに置いたキャリーを妙に大事にポンポンと叩く事に不思議な感じを覚える。
「それ、何か特別な物でも入っているの?」
思わず聞いてしまうと父が満面の笑みを浮かべる。
「これはだな」
そう言って父がキャリーを開きキルヒアイスも覗き込み。そこにあるのは……
「種、の入った袋????」
「そうだ」
父がいくつか取り出す。雑貨店に売っていそうな家庭菜園用種子の袋みたいなものや小さなビニール袋に入ってペンで名前が書かれている物、種だけじゃなくて球根らしいものもある。
「何時か絶対にここに戻って来て見せる。とは思っていたが遠方まで飛ばされたんだ。その地方地方で目についたものは蘭だけじゃなくて手当たり次第に買っておいた。庭も荒れ放題だから造り直し甲斐があるってものだ」
蘭の栽培と食後の黒ビールが楽しみだった父。ごく普通の人だと思っていたが思った以上に逞しく力強い人だった。それが妙に嬉しくて思わず笑いそうになる。
「じゃあ父さん、バッグの方は部屋の方に持って行っておくよ」
「あぁ、頼む」
自分のと父のバッグ、二つを抱えて両親の部屋に行く。母のものと思われるバッグとダブルベッドが一つ。最低限の部屋に父のバッグを置き部屋を出ると隣の部屋から母が出てくる。
「ごめんなさいね。これから夕飯準備するから」
そういって母がそそくさと台所に向かうのを見つつキルヒアイスは首をひねる。隣の部屋はいわゆる季節ものなどの雑貨を手あたり次第に入れておく小部屋だったはず。少なくとも今、わざわざ入り込む必要はないはずなのだが? 不思議に思いその部屋の扉を開けて覗き込む。
部屋には小さなテーブルの様な棚。そこに置かれた一冊の本。壁飾り。架けられたフード。
知識としてそれは知っている。しかしこう間近で見る事は無かった。それは、
「……地球教」
※1:関与認められず
本当に無関係。聴取する側もプロでありその態度言動などより「あ、これ完全に白だ」と判断するしかないという結果になった。特にセバスティアンとの交流が皆無だったのが致命的であり共犯者としての捏造をしてもたかが平民一家が死ぬだけでなんのうさばらしにもならないとブラウンシュヴァイク本家は無視する事にした。
※2:ワトガ子爵
内乱の際、アルテナ星域の会戦にて捕虜となる。その後、正規軍の策(無能は解き放った方がいい)によりガイエスブルク要塞に帰還。要塞攻防戦にて行方不明。
※3:幼年学校
軍の教育機関として「広く開かれている」という建前であるが実態は"貴族>>上級市民>>>>>一般市民"という明確な枠組みがなされておりキルヒアイスが相当する一般市民は全体上位成績相当でやっとボンクラ下級貴族(合格圏ぎりぎり)より優先される"かもしれない"という程度である。つまり入試試験成績順で入れるわけではない。
※4:評価
入学試験は中の雰囲気が判らず、落ちる訳にはいかないので本気を出してしまった。その後は備考に記載されてしまった通り、目立ち過ぎない為の"手抜き"である。もっと低い順位に設定しても良かったが幼年学校に入ってしまったからにはきちんと士官学校も出ておきたい、しかし学費が用意できそうもないという事で学費はなんとかなる順位になるように調整は行った。尚、入試試験(一般基礎知識)と入学後の学業内容(幼年とはいえ軍の教育機関)の趣が大きく異なるので入学後に伸び悩む者は多々おり、入学後に成績が適度に落ち込んだ事は当時は怪しまれなかった。
※5:イゼルローン要塞支隊前線哨戒部隊
イゼルローン要塞同盟側出口付近に配備される小規模哨戒部隊。出口付近の監視・監視、状況により同盟領への強行偵察を主任務とし同盟軍のイゼルローン要塞侵攻の際には邪魔なので真っ先に消滅させられる。少なくとも士官未満のペーペー准尉が配属されるところではない(生きるのに必死な現場なので准尉に任せられる事など無い)
※6:エリア進言
このような何の意味もない戦闘で死ぬのは心底嫌なので本気で考えた戦闘のなさそうなエリアを適当に選んだような仕草で進言した。
※7:セレブレッセ中将拘束
完全な幸運。戦略的に見て兵力を置く意味がまったくないエリアを狙って極秘逃亡ルートを用意したはずなのに不運にもそれが原因で鉢合わせる事になってしまった。
※8:全員昇進
この人事で中隊長Aは実力不相当の大隊長(大尉)となり、後にその卑屈な頭ではどうにもならない前線で戦う事になり戦死。
※9:休暇
当時は真面目に仕事するのも馬鹿馬鹿しいという気持ちなので休みは取れるだけ取っていた。尚、現在はかなりルンルンなので全然休まなくなっている。
※10:配属変更
理由としては生来の気難しさから副官を次から次へとクビにする当時の司令長官ミュッケンベルガー元帥から「わしが満足する人材を持ってこい」と無理難題を叩きつけられた新米幕僚レンネンカンプがやぶれかぶれで連れて来たと言うのが真相でありキルヒアイスの事を思った行為ではない。まぁ頭悪くなさそうだし見てくれはいいし、くらいの気持ち。その評価を改めたのは着任してその仕事を見てからであり己の不見識を恥じてそれ以降はよく世話をするようになった。
※11:大尉昇進
士官学校に進んでないとはいえなんでこの才覚で五年近くかかってまだ中尉なんだよ、と思ったミュッケンベルガーによるごり押し人事。
※12:それより前に
No.48参照 この時は亡命事件のゴタゴタの八つ当たりで家族バラバラで幼年学校→士官学校は入れずに卒業 くらいまでの第一調査概要情報のみ(それでも きっつ と思うくらいではあるが)でありその後の詳細肉付けは後日受け取ったキルヒアイスも確認したそれである