偽書・銀河英雄伝説   作:隠居おっさん

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No.62 How Much!!

 

 戦いは終わった。しかしここからがある意味本当の戦いとなる。

 

 

「これがここ(対策室)での最後の仕事になるわけだ」

 

 キャゼルヌが早くも積み重なり始めた書類をポンポンと叩きつつ、その書類の内容と端末上に表示される数値を反芻する。

 

「数値についてはお任せします。私の権限や判断が必要な場合は何時でも」

 

 ヤンもまた同じく書類を確認しつつ応える。最近あまり見かけなくなったヤンの真面目モードを見て対策室には久しぶりの緊張感が漂っている。色々なイレギュラー(内乱・戦闘無しで丸一年)は別として本来予定していた見積もりとの差異がどれくらいの範囲で収束するか? それが今の長期計画やその後五年十年と続くであろう(あってほしい)守勢の積み重ねを左右する。嫌でも真剣にならざるを得ない。

 

 

 自由惑星同盟軍は軍事作戦の終了後、その規模に即した報告書を国防委員会に提出する事が義務付けられている。特に艦隊規模の出撃がある場合は報告書の規模も大きく、その影響は国全体に及ぶ事もあり第一報→本報→総括と段階を踏んで出せる所から出していく形となる。年に数度の侵攻を受けていた時代においては"総括を作り終わったら次の会戦が発生していた"という事も珍しくはない。

 七九九年三月一日。統合作戦本部は各関連部から人員を集め作業を開始した。対策室からはヤンとキャゼルヌも参加している。直接作業をするという訳ではなく、現在の専守防衛計画の素案を作成した当事者として集まってくる情報が想定の範囲内であるかどうか必要な情報などを集めて持ち帰り対策室で確認、必要に応じてその修正案を整える必要がある。どれだけ事前に考えていたとしても現実になった時の反応は予定通りにはならない。そういうものだ。

 

 

 ・動員兵力について

 

「無い袖なら振れないが振ろうと思えば振れる袖がある。大丈夫だろうか? もし必要になってしまったが用意していなかったら? という恐怖心は実績を積まないと消える事はない……」

 

 ヤンの言葉が今回の動員兵力についての焦点となっている。実は今回の戦いに対して自由惑星同盟軍は予定していなかった本土部隊動員を実施し、一個艦隊+一個独立分艦隊を出撃させていた。現地司令官であるウランフと要塞司令官のみには通達したが両名はこの情報を伏せて戦い、伏せられたまま帰還させた。追加出兵は国防委員会側からの要請であり、その指示に応じてのものである。理由を一言で言えば"不安"。今、イゼルローンが奪回されれば滅亡までの坂道を転げ落ちるだけである。本当に現地の兵力だけで大丈夫なのか? というその気持ちが想定している最大動員に繋がってしまった。これにより動員総兵力はイゼルローン艦隊一五〇〇〇+二四〇〇、後方駐留艦隊七八〇〇、本土艦隊一二六〇〇+二四〇〇の合計四〇二〇〇隻。従来の三個艦隊規模での防衛戦と同様の規模でありコスト面において従来との差異は(悪い意味で)あまりない、といわねばならない数値が算出される結果になった。艦隊移動はそれだけで物資の消耗、航路交通管制などを発生させそれらは無料で行えるものではないのだ。

 

 

 ・艦隊損失艦艇、兵力について

 

 損失艦艇数約二三〇〇隻、人員約二四万人。イゼルローン艦隊一五〇〇〇隻の一割から一割半の損耗を年に二回乃至三回、年六〇〇〇隻程度の損失。これが現在の五ヵ年再建計画完了までにおける理想ラインであり今回はほぼその通りの数となった。しかし、帝国軍が本腰を入れていなかったのは明確であり陥落よりも消耗を主眼に置いた襲来を繰り返した場合、あっさりと外壁に穴をあけた準備といい"D線上"からの集中爆撃といい事情の違う同盟軍(※1)として無視できない損害の積み重ねになる可能性も否定は出来ず陥落しなければそれで良しとは言えず今後、艦隊と要塞をどのように矢面に立たせるか? について戦術面の研究が必要になるだろう。

 尚、損害の一部は回廊出口付近の監視哨戒網に取り残された艦艇・施設人員のものであり壊滅に等しい状況となった監視哨戒網の再建についてコストに見合うかどうか? そもそも再建すべきかという方針を定める必要がある。

 

 

 ・要塞乃至施設費用について

 

 イゼルローン要塞に複数個所の破孔、少なからずの浮遊砲台の損失。今回の損害分については要塞内に備蓄された(獲得時に元からあった)予備によって回復は可能であるが本年度建築中の後方支援施設稼働は来年度を待たず、準備が整い次第実施するべきである。

 

 

 

「人的損害については抑えられるが予算についてはそこまで大きく減らせるという訳ではない、か」

 

 ジョアン・レベロ最高評議会議長がこめかみを指で押さえつけながら資料の数値に目を走らせる。前財務委員長として何度も見て来た数値とそれを比較する。人的損害に関する費用は過去のそれよりもかなり抑えられているが艦隊運用費(消耗品など)については大きな差異はなく施設運用・修繕費についてはいくつかのプランが提示されておりそれによってコストはかなり異なる。

 

「財務委員長と国防委員長からはこれ(施設運用・修繕費)に関する基本方針を議長として出してくれないと軍に指示も出せないし債券発行規模も設定できないという事だ。一応、議長は軍の最高司令官も兼ねているとはいえ評議会ではなく議長主導でやらせるあたり、責任回避も甚だしい。出来るか?」

 

(気になって顔を出してきた)盟友のホワン・ルイが心配そうに尋ねる。

 

「この規模であれば予備費運用でしばらく時間は稼げるし債券発行手続きもそこまで急ぐ必要はない。委員長時代に嫌な程やった手続きだ。いつまでに何が必要かなど全部頭の中だ」

 

「しかし、一昔前の定型になってしまった戦費計算に比べてこれからは当分の間、交戦する度にこのような判断を積み重ねて新たな定型を作る必要がある。あのライン(※2)からしてみたら大きな予算を認めれば御の字、切り詰めた場合はそのデメリットの責任を君が受ける事になる。やはり最高評議会を召集して決めた方が……」

 

「いや、私が決めよう。向こうからこっちで決めていいと言ってくれたんだ。有難くその機会を活用しようじゃないか」

 

「???」

 

 珍しくも"ニヤリ"としているレベロの顔を見てルイが首をかしげる。

 

「最高司令官としての評議会議長に国防委員長が委員会権限の範囲を超えた基本方針の指示を求めて来たのだ、応えてやらんとな。しかし私は軍事知識が不足している。となれば専門家を顧問として招いて知識を借りるべきだ。現役軍人となると国防委員長を跨いだものになってしまうし軍の利権が絡んでしまう。それならば軍事知識が豊富で近年の軍内部の事情にも詳しい退役OBを招くのが良策だろう」

 

 ルイが思わず吹き出してしまう。

 

「お前、二年前に蹴られた顧問人事を今やるのか! 確かに禊も済ませたといえる時期だし、登用の名目も名目だから否決はしにくいだろう。だがあの人はもう故郷で農場経営か何かをしてるんじゃないか?」

 

「何かあったら力を貸すとは約束しているからな。約束は守ってもらわんとこちらも困る」

 

 それはレベロが久しぶりに見せた。会心の笑みであった。

 

 

 

「この度、議長顧問を拝命し国防に関する補佐を行う事になった。よろしくお願いする」

 

「ヨ、ヨロシクオネガイシマス」

 

(蛇に睨まれた蛙が二匹)

 

 いつもとは全く違うカチンコチンな某室長・副室長を横目にクブルスリーとビュコックがその人と挨拶の握手を交わす。年齢を感じさせない姿勢で佇む二メートル近い長身の男、シドニー・シトレ。軍服を背広に着替えての中央復帰。その最初の仕事である。

 

「やはり気になってな、政府公表の数値には常に目を通していた。クーデターの件は残念だったがそれ以外の点では今できる最善の策が取れていると思う。……よくやってくれた」

 

「ありがとうございます」

 

 シトレの言葉を聞いてヤンが深々と頭を下げる。幕僚総監兼対策室室長となったヤンは軍内部の知名度・存在感は高まってるものの民間においては目立たない存在になりつつあり"そういえばあの人は今何をしているんだろうか? "と思われ始めている。ヤン本人からしてみたらそれはそれでどうでもよく、むしろ有難い事であるがやはり数少ない理解者から見てもらえているというのはとても嬉しい事なのである。

 

「では、内容の再確認から行わせてもらおう。宜しいですかな、委員長?」

 

「どうぞどうぞ。私は立場上ここにいなくちゃいけないけど口を出しても足を引っ張るだけだ。聞き役に徹しさせてもらうよ」

 

 背広組として参加しているアイランズ国防委員長が"どうぞどうぞ"とジェスチャーで進行を促す。背広組と制服組による会談となると専門知識のない背広組に合わせて進めないといけないのだがアイランズが一歩引く事でその必要はなくなる、むしろ大半の内容については背広側となっているシトレの方が詳しい。普通の背広組に判ってもらう為に敢えて丸めたり省略させている部分についても細かく内容を確認され制服組は先生の添削を受ける生徒の様な気持ちになる。

 

「……国防委員会だけではなく議会や各委員会の多くが"イゼルローン失陥恐怖症"といえる状態なのだ。財布の紐を引き締めたいレベロ議長も国防委員長指示による追加派兵に一切口出しをしなかった。いや、出来なかったと言っている。それもあるのでイゼルローン防衛の手を緩める事に繋がるコスト削減には複雑な反応になるだろう。だが、要塞維持を前提とするならば維持コスト確保の為に他要素で新たな削減案を出す事は可能なはずだ。国防企業との調整も必要になるのだが次の編成が落ち着けば君たちの世代の専守防衛体制としては完成だろう。調整そのものについては……国防委員会が受け持って頂ける、という認識でいいですかな?」

 

 傍観者で済ませるつもりだったアイランズが"ビクッ"っと反応し「うん、まぁ、そういう事なら、頑張らないとなぁ……」と明後日の方向を見ながら呟く。今後のコストについて方針を決めてね、と言ったのは委員会側だしイゼルローン失陥恐怖症が浸透してきているのも事実。あと一息で自分達の時代の"利権"が完成するのなら少しは頑張ってもいいだろう。

 その後も内容についての質疑が続く。この手の会談となると予算を削りたい背広側と維持・増やしたい制服側と言う構図になるのだがここに揃った面子は"削れるものなら削りたい"で一致している。その点ではまとめやすい。議長&シトレと軍部のラインにおける協調性には何の問題もなくアイランズもどこまで本気か判らないが比較的友好的であり、会議そのものは至ってスムーズに進み続ける結果になった。

 

 

 

「おかえり」

 

「戻りました。行って帰って来ただけになってしまいましたが」

 

 打合せの結果を元にその後の計画を取り急ぎまとめている最中、独立第三分艦隊首席幕僚として要塞への増援に出撃し特に何もせずに帰って来たラインハルトが帰還した。

 

「…………所定の手続きは取ったね?」

 

「どう考えてもただの知恵熱だと思いますが、報告はサボってはいません」

 

「体に"まさか"は許されないよ。やるべき事はきちんとやらないとね」

 

 ラインハルト・フォン・ミューゼルは久しぶりの前線出撃、添え物だった今までとは違い分艦隊首席幕僚として権限と責任を持ち、(本人が楽する為に)何かと作業を任せてくれる分艦隊司令(アイゼンフート)の指示の元、出撃・移動計画から現地戦術想定の組み立てと、張り切って作業に驀進し…………高熱出して寝込んだ。熱がある程度引く頃には丁度撤収命令が出ており"いいから何もするな"という司令官命令を受け、"こいつ、やるなといっても隙見つけて仕事し始める真面目馬鹿だから見張ってろ"と司令官養女兼従卒を見張りにして密着され、何もできずに帰って来た。これが彼の分艦隊首席幕僚としての初実戦出撃だった。

 

「少将も"知っている方"なので事後症状観察もたっぷりやらされましたし……」

 

「軍医の手配もしてくれているんだ。有難いと思わないと」

 

 佐官昇進時に行われた特別健康診断の結果に表れた"遺伝子異常の疑い"、定期診断が必須になったそれだが程なくして診査内容等が濃くなった。いわゆる"盟約派"の大量亡命、その医療対策(※3)の余波で予算カットがなくなった軍医療部門がカット前提で設定していたサポートを色々と復活させたのである。しかしその影響で秘匿義務付きでラインハルトの直属上官には協力依頼が入りその事情を知られ、それは当然ながら所属分艦隊司令官の耳にも入った訳である。その上官は「未来の婿殿乃至、嫁入り候補の健康には注意を払わないとね」「そういう誤解を招く事は言わないでください!」とその政治的手腕を巡らして分艦隊旗艦に診察担当だった軍医を転属させてしまった。お陰で寝込み直後から帰還するまでたっぷりと診察を受ける羽目になった。分艦隊とはいえ旗艦級だからこそ備えられている高級医療機器もたっぷり使われた。関係ないだろそれ、と言いたい物もあったがデータはあればあるほどいいものだと言われると口答えできない。というか医療に関して医者への口答えは許されない。

 

「士官になってから病欠0だったんだけどなぁ……」

 

 と、ぼやきつつ目ざとくヤンが処理している書類を覗き込む。

 

「……事後計画、ですか?」

 

「そう。防衛戦一回の経費計算とそれを踏まえた事前計画の修正だね。今月中に仕上げないといけない」

 

「別に期限は切られていないが俺がいる(=数値計算してくれる)のが今月いっぱいだからな。で、これが希望の数値だ。確認してくれ」

 

 横からやってきたキャゼルヌがいくつかの書類をヤンに差し出し、確認を求める。

 

「ラインをかなり下げないといけませんが、やっぱりそれ以上に…………安い」

 

 ヤンがその確認した資料をラインハルトに手渡し、彼もさっと目を通す。

 

「回廊出口哨戒網、止めるんですね」

 

「対費用効果を考えるとやむなし、だね」

 

 ヤンがため息交じりに応える。本質的に戦略家であるヤン・ウェンリーは情報と言うものを非常に重要視していた。専守防衛という受け手にはなるが"総戦力が不利であるからこそ可能であれば戦場選択権を握りたい、複数の戦場を設定可能にしたい"と考え、縮小版ではあるが以前は回廊の同盟側出口付近に存在していた両軍の哨戒網を元に帝国側出口に哨戒網を構築した。発見地点次第では回廊出口付近、一個艦隊(=イゼルローン駐留艦隊)をどれだけ振り回しても大丈夫なスペースがある地点での交戦も可能なだけの奥ゆきのある哨戒網。それをばっさり廃止して要塞からの哨戒隊による監視に切り替える。これはどれだけ早く発見しても交戦エリアは回廊内になる、という選択ではあるが同時に哨戒網構築の監視衛星・施設やそこに常駐する少なからずの人員が丸ごとカットできるから予算の削減幅は大きい。

 

「しかし、そのかわりに定期的に破壊されていた哨戒網施設類を専門に製造していた軍需企業は泣きを見る事になる。既存の摩耗・整備分の売り上げじゃあどうにもならんからな。ま、そのあたりを宥めるのは委員長殿にお願いするとしよう」

 

 その後も細かい調整などが続き、同盟の防衛方針が形作られる。

 

 ・回廊帝国側哨戒網の廃止、哨戒隊による監視への移行(基礎案:対策室作成、主担当:宇宙艦隊司令部)

 ・国内施設再精査による更なるコストダウン(主担当:後方勤務本部)

 ・主力艦隊(バーラド星域駐留)出撃に関する判断、責任に関する手続きの再設定(※4)

 

「年次予算は過去と比べてとんとんか微減。補正予算はそれなりの減。人的資源は大きめの改善。遺族年金負担もそれに比例して改善。但し根本的解決までは要数十年(※5)。あとはこれが希望通り続くか? となるが歴史好きのお前さんに言わせれば、だな」

 

「はい。この手の希望は半分叶えば御の字です」

 

 お手上げのポーズでヤンが応える。

 

「ですが、希望の光が見えている事をまずは喜びましょう」

 

 イゼルローン防衛は簡単にはいかないが無理ではない。まずはそれが判っただけで上々といった所なのである。

 

 

 

「言いたい事は判るが、それで君はどうするのかね?」

 

 館の主が訪問者に問う。

 

「は、はい。ひとまずはこういう事もあろうかと今年度契約予定の入札でいくつか未定としておいたものがありますのでそれに落札させる事で収めようかと」

 

「イゼルローン関係の施設だったか」

 

「はい、それです」

 

 へこへこしながら応えるその訪問者、アイランズをヨブ・トリューニヒトが冷めた目で見つめる。現状の軍需産業の再編は財務委員長になっていたトリューニヒトが裏から業界に働き掛ける事で実現したと言っていい。別に彼が国の為にとかそういう理由でやった訳ではない。一気に議長の椅子に座る予定を少し先送りにしてレベロに再建の貧乏籤を引かせ。自分は国防一辺倒だった経歴に財務と言うもう一つの柱を加え、ついでに根の張った勢力を埋め込んでおく。国防一辺倒であればその根は少し無理して広げなくてはいけないが国防・財務の二本柱となるならば腐る可能性のある末端はいらない。その剪定作業をしただけだ。そして今、その剪定の続きが必要となってこの男はやって来た。

 

「…………………………」

 

「あの……」

 

「ん、あぁ。それでいいんじゃないかな。国防委員長は君なのだから君が責任をもってやるべきだ」

 

「わかりました。はい。では、これで」

 

 希望の返答を得て満足したのかアイランズがそそくさと館を後にする。

 

(このレベルすらも自身で決められぬとは……次を考えるべきか)

 

 トリューニヒトが剪定しているのは支援団体なり業界なりだけではない。その日が来た時に各委員長の席に座る駒もまた候補者たちから剪定している真っ最中だ。国防以外の委員会には元から候補者としてのシンパが存在していたが国防委員会は自身で牛耳っていた関係で後に置く駒が薄い。だから特に手下として扱ったわけではなく勝手に寄って来ただけの存在であるあの男すら候補者にはなる。

 

(議長任期は来年末まで。まだしばらくは準備する時間はある)

 

 少し先延ばしにすると決めたのだ、今すぐ全てを決める必要はない。彼は今までその場その場で一番都合のいい手を選択してきた、出来て来た。これからも情報さえあればそれを選択できるというのがトリューニヒトの"余裕"である。だが他人から見ればそれは"慢心"と呼ぶものなのかもしれない。

 

 

 

 四月上旬、政府は国防補正予算の概要を発表。それは過去に発表されていた"普通の一会戦"のそれより規模の小さなものであり、同時に発表された四半期(一~三月)の経済指数が前年度を上回る値を示した事もありレベロ政権の支持率は安全の値を維持。これは近年の政権では稀に見る発足後長期安定の値であった。




・イゼルローン要塞失陥恐怖症
 七九六~七九七年のどたばたも終わり。七九八年、非戦の一年で色々と落ち着いてきた政府を筆頭とする各関連行政機関は現状の各種データが示す"イゼルローンを維持できれば国力回復が可能だが奪回されたらもう無理"という状況を直視する事になる。これが"まともな中・大規模交戦が不可能なレベル"まで損耗していば開き直るなり諦めるなり現実逃避するなりできただろうが数値の判る人達は"投げ出すほどじゃないけど・・・・"というまだ望みのある状況をみるとその可能性への恐怖が現実として目の前に広がる事になる。特に軍事に疎い者達は防衛計画に対して"これで大丈夫"という判断が出来ず、更に不安となってしまっている。

※1:同盟軍の事情
 同盟軍によるイゼルローン要塞攻略戦においては"要塞の陥落"が戦略目標でありこれを達しなければ意味がない。それに対して帝国軍が攻め手となった場合、相打ちで消耗できればそれはそれで良しという考えも持つ事が出来る。

※2:あのライン
 トリューニヒト財務委員長とアイランズ国防委員長の主従(と外部からは見なされている)コンビ

※3:盟約派医療対策
 同盟と帝国はその公共医療体制に雲泥の差があり、特に一般市民のそれに関しては同盟国民が成人になるまでに受ける各種ワクチン接種の大半を帝国国民は受けていない、といった差がありこれらを埋めるだけの措置を取らなくてはいけない。亡命者は一旦隔離、健康診断、必要に応じてのワクチン接種等は義務だが数十万人単位のそれは近年は完全に想定から外れていた事態であり軍・民共同の医療対策チームが大騒ぎになった。医療レベルが段違いでどういう生活をしていたか判らない集団が数十万人やってくるのである。そりゃあ慌てる。

※4:主力艦隊出撃
 基本として想定される範囲での艦隊出撃判断(決定権)は国防委員長であるがイゼルローン防衛に関するそれは当面の間、委員長が判断を付けにくい場合、最高評議会議長(+軍事関係顧問)に決定(+責任)を求める事ができる、とされた。本来これは国防委員長の存在意義の低下や責任放棄につながる行為と見られていた(ので基本想定範囲では国防委員長のの権限としていた)が新たな国防体制の安定の為の一時的措置、として承認された。

※5:遺族年金負担
 遺族年金対象者(≒戦死者など)はイゼルローン建造後、帝国軍の襲来が定期的に行われるようになって毎年一五〇~二〇〇万人程追加されてきた。期間終了や受給者死去などで対象者数から外れるには二〇~三〇年程の時が必要であり、同盟軍によるイゼルローン奪取の時点でほぼ"高止まり"状況にあるといえた。本来であればそこから専守防衛に徹する事により同じくらいの時間をかければ"下げ止まり"となるのだがその直前に帝国領侵攻作戦で六~八年分のそれが追加。だが、対象から外れる時期には変わりがないので"但し根本的解決までは要数十年"となる。
 尚、侵攻作戦後の同盟軍は総軍五〇〇〇万人が一時的に三割減(アスターテの損害もあるので)の約三五〇〇万人まで減少。これの再建では一時的に四〇〇〇万人程度に抑えて残りの一〇〇〇万人分の人件費を遺族年金側に移している。一人分の人件費平均と遺族年金平均は後者の方が安いので一〇〇〇万人分の人件費でそれ以上の人数分の遺族年金が賄えるので七九六年の増加分を何とか抑えている。
 現在の再建計画完了時には総軍は数百万程度は増加予定。この数値はそのまま再建した艦隊の人員である。
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