さやか
「ふぅー」
翌日。さやかはまどかと共に草むらのある坂に座ってため息をついた。
まどか
「どうしたの?」
さやか
「いや、昨日は色々とあったなーって」
まどか
「うん…そうだね……」
まどか達は、あの後何があったのかを思い出していた。
グラハム達が一通り事故処理を済ませた後、まどか達は兵藤家に再び集まっていた。
一誠
「何で俺の家なの?」
ドモン
「ここの方が広いから人数が増えてもかさばらんだろ」
一誠
「それは、まあ……確かに」
渋々納得し、一誠は追求するのをやめた。
雄二
「で、アンタ達仮面ライダーは何故この町に来たんだ?」
フィリップ
「僕達は依頼されたんだ。そこにいる、リアス・グレモリーにね」
翔太郞
「魔女とかの話も、詳しく聞いているぜ」
映司
「俺もここに来た経緯は違うけど、彼女から聞いたのは間違いないよ」
明久
「……あの、リアス先輩。この人達がいるのは凄く心強いんですけど、何で依頼したんですか?」
翔太郞達の話を聞いて、明久が疑問を口にする。
リアス
「少しでも数が多い方が町全体をカバーできるし、援護もしやすいからよ。それに、個人の負担も軽減されるわ。他の部員は冥界とかに出ずっぱりだし」
マミ
「確かに、人数が多いと色々とありがたいですね」
北岡
「人数と言えば、さやかちゃんも魔法少女になったんだってな。どんな願い事をしたんだ?」
北岡の発言に、全員の視線がさやかに集まる。
さやか
「それなんですけど、実は……」
彼女は自分が契約した時のことを詳しく話した。
さやか
「てな訳で、ぶっちゃけ願いはまだ決まってないんです……」
ばつが悪そうに頭を掻くさやか。聞いてたほむらは唖然としていた。
ほむら
(普通なら契約する際の願いは上条恭介を助ける為か、そうでなくても誰かを助けることだったのに……契約前にフられていたのがいい方向に導いてくれたと解釈していいのかしら? ということは、残る問題は佐倉杏子ね……)
ドモン
「いいんじゃないか? いつでも願いが叶えられるし、よりじっくりと考えることができるしな」
刹那
「戦いの中で見つけるというのも手段の1つだ」
マミ
「私としてはなってほしくなかったけど、なった以上は仕方ないものね……」
一誠
「ま、何事も緊張せずに行こうぜ」
さやか
「えっと、ありがとうございます」
フィリップ
「…………(キュゥべぇという生物、どうも裏がある気がしてならない。彼に関しても検索しておこう)」
とにもかくにも、話し合いは終了しその日は兵藤家の空き部屋に寝泊まりすることになった。
まどか
「……あの後、決まった?」
思い出した後、まどかはそう尋ねた。
さやか
「それがまだ。やっぱ漠然としすぎてるんだよねぇ。何の為に、どんなことに使えばいいのか一晩中考えてもわからないんだ」
まどか
「そっか。じゃあ、私も一緒に考えてあげる!」
さやか
「お、これはありがたい! 是非頼みますよ、まどかさん!」
明るく話してる2人だったが、その様子をとある建物の屋上から双眼鏡で見ている人物がいた。
???
「マミがヘマしたって聞いたけど死んだ訳じゃなかったんだな。で、アレが新しい魔法少女と。どうもチョロそうな気がするな」
キュゥべぇ
「気をつけた方がいいよ、杏子。ここには多くのイレギュラーがいるからね」
その発言に「え?」と驚く少女―――佐倉杏子。
杏子
「どんな奴らなんだ?」
キュゥべぇ
「僕の知る限りだと、契約した覚えのない魔法少女に、風都のライダーにメダルライダー、キング・オブ・ハートにイノベイターがいる」
杏子
「……有名人物集まりすぎじゃねぇか?」
思わず唖然としてしまう杏子だが、そうなるのも無理はないだろう。
杏子
「アタシだけでどうにかできるとは思えないけど……あ、ところで、新入りの願い事って何?」
キュゥべぇ
「それなんだけど……」
さやかと契約した時のことを思い出し、キュゥべぇは語り出した。
さやか
「……1つ、聞いていい?」
キュゥべぇ
「何だい?」
さやか
「願いってさ、保留することってできないの?」
キュゥべぇ
「? もちろんできるけど……君は願いがないのかい?」
キュゥべぇはさやかの身の上に起きたことをある程度知っている。故に失恋したことで何らかの願いがあると思っていたのだ。
さやか
「そりゃあ、アンタが言ってたみたいに恭介を奪ったり仁美をどうにかしたりとかできるかもしれない。けど、そんなことをしたら恭介や仁美が悲しむ。……私は友達が悲しんでる姿を見たくない。一応他に願いは探せばあるけど、どうも後で後悔しそうでさ。大切な誰かの為に!って言っても漠然としすぎてるし、好きな人を護る!って考えたけど私フラれてるし……何をどう願ったらいいのかわからないんだ。だから保留ってことで、いいかな?」
キュゥべぇ
「君がそう言うのなら、それでいいよ」
こうして、さやかはキュゥべぇと契約したのだった。
杏子
「願いが決まってない、か……」
キュゥべぇ
「誰の為に使えばいいのかわからなくて、随分考え込んでいるみたいだ。僕にはよくわからないけど」
杏子
「そっか…(てことは今ならまだ、アタシみたいな道を歩まずに済むってことか)」
俯いていた顔を上げると、杏子は踵を返して立ち去った。
杏子
「……ただいま」
杏子は自分が寝泊まりしているホテルの一室に戻っていた。そこにはヘビ柄の服を着た男性がいた。
???
「遅かったな。どこ行ってた?」
杏子
「ちょっと野暮用でな。だから心配しなくてもいいぜ―――浅倉」
男性―――浅倉威の隣に座った杏子はそう言った。
浅倉
「誰が心配するか。1人で遠くに行けないくせによ」
杏子
「う、うるせぇな! 仕方ないだろ、2人でいることにすっかり慣れちまったんだしさ……」
浅倉
「おい、それは聞く人が聞けば確実に誤解されるぞ」
杏子
「あっ……~~っ! こ、言葉の綾だ!」
浅倉
「わかったわかった」
と、軽く返す浅倉。彼と杏子がどうして出会ったのか、時間を巻き戻してみよう。
杏子
(今日はどれにしようか……)
ある日、杏子は近くのコンビニで商品を物色していた。買うためではない。所持金のない彼女は、万引きをするしか方法がないのだ。
杏子
(よし、取った!)
素早く目的の品を仕舞うと店を出て何事もなく帰ろうとし―――
浅倉
「おい」
―――腕を掴まれた。
杏子
「な、何だよ?」
浅倉
「お前今万引きしただろ? 見てたぞ」
杏子
「だ、だから何だってんだよ!? アンタには関係ないだろ!」
浅倉
「ガキの癖に、口も悪いな……俺が言えた義理じゃないが、家族が悲しむとか考えたことないのか?」
彼の言葉に杏子は一瞬だけ悲しげな顔をすると、すぐに睨み付けた。
杏子
「あるかそんなもん! アタシには家族なんてとっくにいないんだ! てかいい加減手を離せ!!」
浅倉
「…………」
何を思ったのか、浅倉は掴んでいた手を急に離した。
杏子
「うわっ!? 急に離すな! びっくりするだろうが!」
浅倉
「……行け」
杏子
「え?」
浅倉
「早くしろ。面倒なことになる」
杏子
「……礼は言わねーからな」
言い残すと、杏子はそそくさと立ち去って行った。
杏子
「ったく、何なんださっきの男……」
人気のない道を歩きながら、杏子は愚痴を零していた。どうも手を離す直前の彼の目が悲しそうだった気がするが……
杏子
(気のせいだ、気のせい)
そう結論づけ、歩くスピードを早めた時。
キィィィン……キィィィン……
杏子
「っ!? 何だこの音?」
突如聞こえてきた金切り音に警戒し、魔法少女の姿になって槍を構える。すると彼女の背後にある割れたガラスが波打ち、そこからアビスハンマーというミラーモンスターが出現した。
杏子
「何!?」
咄嗟に背後を向いて防御姿勢を取る杏子。だが、
浅倉
「ふんっ!」
浅倉が割り込み、飛び蹴りを入れた。
アビスハンマー
「グゲェェェエエエエエ!」
邪魔をされたアビスハンマーは素早く退散してしまった。
浅倉
「逃がすか……!」
しかし浅倉はガラスの近くに立つと蛇の紋章が描かれた紫色のカードデッキを左手で持ちながら向けた。するとガラスにバックルが現れ、実体化すると浅倉の腰に巻き付いた。その後指を開いた右手をゆっくり顔の前に上げていき、
浅倉
「変身!」
と叫びながら一度右腕を前に突き出して素早く戻すとデッキをバックルに装填した。直後、バックルが光ると彼の体に何体もの虚像が重なり、蛇を模した紫の戦士―――仮面ライダー王蛇になった。
浅倉
「っあ~……」
だるそうに首を回し、手首を軽くスナップさせると王蛇はミラーワールドに入って行った。
杏子
「な、何だよアイツ……仮面ライダーだったのか……!?」
現実世界に残された杏子は、呆然と呟いた。
王蛇
「…………」
ミラーワールドにて、王蛇はアビスハンマーを見据えていた。相手も戦う気は十分であり、今にも突進して来そうである。
『SWORD VENT』
杖型の召喚機、ベノバイザーにカードを入れ、ベノサーベルという剣を召喚し装備する。
王蛇
「……うぁああああああああああああああ!」
アビスハンマー
「グルルルルルル!」
叫びながら両者は突進し、激突した。王蛇はベノサーベルを容赦なく振るい、アビスハンマーを何度も何度も斬りつける。たまりかねたアビスハンマーは光弾を放つが、王蛇は軽々と避け再び斬りつけ、蹴りも食らわせる。
アビスハンマー
「ギ、ギギ……」
痛みのあまり動くこともできないアビスハンマーに、王蛇はとどめを刺そうとカードを入れる。
『FINAL VENT』
音声が鳴り響き、背後から巨大な蛇型モンスターのベノスネーカーが迫り来る。それに合わせて王蛇は走り、ジャンプして後ろに宙返りするとベノスネーカーの毒液と共にアビスハンマーに向かい、連続キックを食らわせた。
王蛇
「はぁぁぁ……だぁぁっ!!」
アビスハンマー
「ギャァァァァァァァアアアアアアアアアアアア!!」
必殺のキック『ベノクラッシュ』に耐えられず、アビスハンマーは爆発した。それを確認すると、王蛇はミラーワールドを出た。
王蛇
「…………」
現実世界に戻ると王蛇は変身を解除する。そこへ杏子が近づいていく。
杏子
「なぁ、アンタ仮面ライダーなんだろ? アタシ知ってるぜ。仮面ライダーは正義の味方だって。なのに……何でアタシなんか助けた? どっから見ても犯罪者だっただろ?」
浅倉
「…………」
彼女の問いには答えず、浅倉は近くの段差に腰を降ろした。
杏子
「何とか言ったら「おい」」
浅倉
「今から言うことは俺の独り言だ。黙って聞き流してろ」
そう言い述べてから、浅倉は話を始めた。
浅倉
「……俺には、両親と弟がいた。弟の方が出来は良くて俺はいつも比べられていたが、そんなに悪い生活じゃなかった。……だがある日、俺の家族は一夜にして……死んだ」
杏子
「っ!!」
浅倉
「俺が出した火の不始末が招いた結果だった。生き残った後は、文字通り必死で生きてきた。犯罪に手を染め、それで殴られたら殴り返し、野宿を繰り返してな。……子供の頃に見てた正義の味方とは大違いだ。今となっちゃ取り返しがつかない……が、お前みたいなガキなら話は別だ。生き方なんざ自由に決められる。自分がどんな人間になるのか、それさえもな」
そこまで言うと、浅倉は立ち上がり去ろうとした。
杏子
「待てよ……」
が、杏子に服の袖を掴まれ止められた。
杏子
「アンタ、住むとこないんだろ? だったらさ……ア、アタシと一緒に住まねぇか?」
浅倉
「どういうことだ?」
杏子
「アタシ、裏技使ってホテルに寝泊まりしてんだ。家がないよりはマシだろ?」
浅倉
「構わんが……何故誘う?」
杏子
「そ、それは……(言えない。アタシと似た境遇でアタシを心配してくれたコイツをどうにかしてやりたいと思ったなんて、口が裂けても……!)」
浅倉
「まあいい。案内しろ」
杏子
「へ? お、おう」
何はともあれ、こうして彼女と浅倉は一緒に住むことになるのであった。
杏子
(しかし、あん時は驚いたな。家を無くした後も高校に通ってて、中退した後は職にも就いて今でも働いてるなんてさ。ま、金には困んないけど)
そう思いながら、杏子は浅倉を見やった。
浅倉
「……どうした? 何か悩んでることでもあるのか?」
杏子
「え!? い、嫌別に……」
慌てて否定するも、彼の視線に「はぁ」とため息をつくと真剣な眼差しになる。
杏子
「実はさ……今日、新しい魔法少女の情報を聞いたんだ」
浅倉
「あのキュゥべぇっていけ好かない奴からか……それで?」
杏子
「ソイツ、まだ願いが決まってないんだって。何の為に戦うのか、よくわかってないって……正しい答えを見つければいいけど、もし間違ったら、アタシみたいになるかもしれない……」
浅倉
「……で、どうしたい?」
杏子
「え?」
いきなりの問いかけに、思わず聞き返す。
浅倉
「お前はソイツをどうしたい? 助けたいのか、それとも見過ごすのか。はっきりしろ」
杏子
「っ、アタシは……」
しばし悩み、杏子はこう結論を出した。
杏子
「……アタシはソイツを、正しい方向に導いてやりたい。アタシや、アンタみたいな人間にならないようにしたいんだ……!」
浅倉
「そうか…………ま、いいんじゃねぇか?」
軽く笑みを浮かべ、浅倉は焼き鳥を頬張った。それを見た杏子も自然と笑顔になっていた。
最早誰だお前レベルで改変されてる浅倉といきなり丸くなっている杏子。原作の性格の方が良かった方は本当ごめんなさい……