ありふれた(?)女神転生   作:はるまき

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絶望感って描写するの難しいです。


第21話:変わりゆく世界

世界情勢は、さらに混とんとしてきている。

ソビエト連邦は元々内部崩壊が進んでいたところに石油の減産が追い打ちをかけた。

え、ロシア資源あるじゃん、と思われるかもしれないが、あれは2010年頃から開発されたのであって、この頃はバリバリの輸入国である。

そして、改革の失敗で当時の国民は非常に貧しかった。

結果として分断が進み、民族主義者やらメシアンやらがさらにそれを煽り、前世のような議会解散ではなく、内戦一歩手前状態になっている。

欧州は、こちらは国内での暴動が多発している。

なにしろメシア教にとってはホームグランド。

もともと終末論は一神教の教義でもあったので、一寸煽ってやると着火しやすいのだ。

アフリカ大陸は、まだ国体は保っているものの、実質内戦に突入している国が大多数だ。

ヨーロッパの軛が外れると、吹き出す民族問題に利権争い、そこに、メシアン。

情熱大陸一歩手前である。

お隣は、この時期から世界の工場として急成長を遂げるはずだったのだが、輸出先が混乱状態では成長できるか分からず、投資が取り返せるか不明となってきており国内に影を落としている。

好材料は、容赦のない宗教弾圧でメシア教の伸長が鈍い事か。

じゃあ、日本はと言えばバブル直後でこちらも国内が安定しているとは言い難い。

日本的宗教観からメシア教はうさん臭くみられているが、不景気と終末への恐怖から、じわじわ都市部で暗躍している。

米国は緩やかな景気上昇をみせているが、メシアンの浸透であちらこちらで事件が起きており前世のような世界の警察は出来そうもない。

気が付いたら田舎町がメシア教に乗っ取られていた、なんてことも起きている。

南米は通貨危機から立ち直っておらず、ゲリラ組織と麻薬組織とメシアンが荒らしまわっている状況だ。

お蔭で終末論がますます盛んになって、メシア教の勢力が増えて、GPが上昇する、の悪循環が加速している。

うん、詰んでるな。

俺一人でこれ止めるって、無理だろ。

せめて日本国内だけでもソフトに終末化したいもんだ。

その国内の霊障事案も、極めて悪化してきている。

零細な退魔組織は軒並みご臨終で、五島三佐の部隊もフル稼働状態だ。

俺にしても、立派な戦力として地方を仲魔達と廻っている。

異界のボスのLvが20と言うものもちらほらと散見される中、退魔側のレベルは1桁が精々なのだ。

そりゃ、耐えきれないよな。

今日も今日とて、地方の異界に潜ってる。

 

 

最初、来訪した少年を見て、ヤタガラスに見捨てられたか、と絶望した。

たった一人で寄越すとは、こちらの情報を理解していないのか、と激怒もした。

だが、今目の前では。

 

「よし、ラム!」

「分かってるっちゃ、マハジオダイン!

押し寄せる怨霊の大群(レギオン)に稲妻の雨を降らせて蹴散らす、鬼女。

 

「おユキさん!」

「お任せを。マハブフダイン。

土蜘蛛(ツチグモ)の群れは、雪女が凍り付かせる。

 

「クラマ様、あいつ、リカーム持ちだ!」

「任せい、ザンダイン。

倒れた悪魔に復活呪文をかけようとした骸骨兵(トゥルダク)を、的確に切り裂く天狗。

 

絶望しか感じなかった悪魔の群れを、文字通り殲滅していく、大妖を率いる少年。

理解が追い付かない。

何故、そのような大妖を複数体引き連れて、平然とした顔で居れるのか。

何故、そのように的確に悪魔の弱点をつけるのか。

そして、指揮能力が高いだけかと思えば、押し寄せてきたガキの群れを、ワイン樽程もある金属製の大槌で、軽々と吹き飛ばしている。

理解が出来ようはず無い!

 

戦慄きながら見つめる私の前で、悪魔の大群は、消滅した。

疲れた様子も見せずに、左前腕に装着された装置を見る、少年。

「ん~、エネミーサーチによると、あっちにでかい反応があるな。ボスだな。」

「ちょっと確認するっちゃね。」

言うと、天高く舞い上がる、鬼女。

「ダーリン、あっちのほうに何かおっきな髑髏が浮いてるっちゃよ。」

「髑髏…あれかな。もう少し近づいて確認するぞ。」

躊躇することなく足を踏み出す少年。

慌てて私も後を追いかける。

近づくにつれ、私でも分かる、どす黒い瘴気。

汚泥のように体に纏わりつき、息をするのさえ、困難になっていく。

喘ぎながらやっとの思いで歩を進める私の前で、まるで散歩をするような気軽な感じで歩を進める、少年。

退魔の家の棟梁としての意地で着いていく私であったが、遠くに見えた怨霊に、思わず膝をついてしまった。

 

家一軒はあるような大きさの、恨みが凝縮したような黒い髑髏。

眼窩には、瘴気を吐き出す蛇が、絡みついている。

 

駄目だ。

あれは、あれはここら一帯、いや日本を壊滅させうる、大怨霊だ…!

 

ガチガチと歯の根を鳴らす私の横で、少年が目を凝らす。

「思った通り、ロアか。Lv25…中々に高いな。ま、何とかなるか。」

と、雪女と天狗を送還し、新たに()()の悪魔を召喚した。

馬鹿な…!

3体召喚でも信じられないのに、4体同時召喚だと!?

あれは、弁財天の分け身か?、それに、詳しくは分からぬが、天津神の気配のする地母神と、まさか地蔵尊!?

 

「じゃあ、ランちゃん、弁天様、錯乱坊(チェリー)、頼むぜ。」

混乱する私の前で少年は悪魔たちに指示を飛ばす。

「はあい、任せてね、ダーリン。」

まず動いたのは、ゆるふわな衣装の地母神。

「マカカジャ。」

途端、少年たちの霊圧が上がる。

それに気づいてこちらに寄って来る大怨霊に、弁財天の分け身がつまらなそうに進みだす。

「ったく、暴れられないんじゃ気合が乗らねえんだけどよ。」

すう、と息を吸い込むと、

「おら、なめんじゃねえぞ、こら(バインドボイス)!!!」

と、力のある言葉を浴びせかけられ、大怨霊が身を竦める!

その隙を見逃さず、地蔵尊が真言を繰り出す!

活あ~~~~~~~つ(ハマオン)!!!」

 

消えた。

あの、死の、穢れの象徴のような大怨霊が、残滓も残さず。

ああ、我が家は、いや、日本は救われたのだ…。

 

知らず、私の眼からは涙が溢れていたのであった。

 

 

 

いやあ~、今回は美味しかったな!

なんせそこそこの経験値寄越してくれる上に、こっちの仲間にとって弱点だらけだったもんな。

Lvも上がって結構アイテムも拾えたし、大満足だ。

あと、最初偉そうにしてたオッサンが、異界破壊後にものっ凄く腰を低くして食事を勧めて来たけど、おユキさんが「残念ですけど、この後も予定が入っておりますので」、とニッコリと断ったところ顔を青くして撤回してたけど、実際色々予定詰まってるからな…。

まあ、いつでも来れるんだし、名物は今度ゆっくりと食べに来よう。

 




今の的君たち、一般的地方退魔組織からどう見えるの?、回でした。

地方巡業の際には、的君の周りは仲間たちでがっちり固められてます。
ハニトラ、絶対負けるから仕方ないですね。
強引に来る奴はいないのかって?
絶対勝てない大妖複数体に挑戦する気、あります?
まあ、メシアンは悔い改めよ!、と喜び勇んで来るんですが。
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