清麿、こいつも大概な天才だった。
ショップ機能を作り上げたのだ。
異界産の物は、MAGで構成されていることに注目し、それを悪魔保管庫の技術を応用してソースコードに変換して、インターネットで取引できるようにしたのだ。
対価はマッカ。
こいつもMAGで出来ているので、それと交換する形で商品が相手の前に出現し、マッカはこっちに来るという寸法だ。
もう気付いたと思うが、悪魔もMAGで構成された情報体。
なので、悪魔も取引できる理屈となる。
清麿は更に、籤機能まで付けていた。
「いや、籤引きって何かワクワクしません?」
と、本人は宣っていたが、いや、この時代にガチャの実装って、早すぎだろ…。
魔王争奪戦については、ティオとかキョンチョメとかウマゴンとか言う魔物と組んで勝ち進んでいるらしい。
その最中に開発して見せたのだから、どんな頭してんだ、ほんと。
いや、スゲエけどよ。
頭痛案件増えちゃったよ。
ここはもう、纏めてぶん投げるか!
政治家の知り合いと言ったら、この間依頼してきた通商産業大臣しかいない。
石油と鉱山の関係から、なんとかアポイントメントを取り、会談を設定してもらった。
落ち着かない。
前世を含んでも、こんなに高級そうな掛け軸やら皿やらが飾られた和室に来たことがない。
今、赤坂にある料亭の一室で、俺と五島三佐は大臣を待っている。
五島三佐は、流石に目立たないようにスーツ姿であるが、はち切れんばかりの筋肉が存在を誇示しているんで、スーツの意味あったのかなぁ?
と、襖が開き、大臣が入ってくる。
「やあ、待たせたね。二人揃って何の用かな?」
にこやかな、それでいて全く笑っていない笑顔で席に座る。
「はい、大臣のお時間を取らせるのもなんですから、端的に言わせて頂きます。」
俺は、五島三佐に説明したことを大臣に話した。
最後にショップの件を付け加えた時には、五島三佐が、え、と言う顔をしてたけど。
大臣はその間煙草を燻らせて、表情を変えずに聞いていた(禁煙・嫌煙なんてこの頃は一般的でない)。
話し終わると、大臣は煙草を揉み消し、五島三佐の方を向いた。
「五島君、今の話は本当かね?」
「確認する術はありませんが、世界の状況を見るに可能性は高いかと。」
ふむ、と少し考え込む、大臣。
「デモニカスーツって奴は、そんなにヤバい代物なのか?」
「大臣に分かり易く言わせて頂くと、鉄腕アトムの軍団が攻めてくる、と言う感じでありますな。」
「!、…そいつは、怖いな。」
初めて表情を崩すと、もう1本煙草を取り出し、火を点けて深々と吸い込む。
ふうう、と肺の中の紫煙を吐き出した後、俺の方を向いた。
「それで、諸星君?、君は何がしたいのかな。」
値踏むような、冷徹な眼差し。
「世界を救いたいとでもいうのかね?」
「いいえ、世界なんて知りません。日本が無事ならどうでもいいです。」
世界なんて、んなもん背負えるか。
日本でも持て余しとるのに。
ニヤリ、と大臣が笑った。
「合格だ。世界を救うなんて戯言抜かしてたら、帰らせて貰ってたぜ。」
パンパン、と手を鳴らして中居さんを呼ぶ。
「後は、美味い酒でも食らいながら話をしようじゃねえか。おっと、諸星君はジュースで済まんがね。」
五島三佐から献杯を受けた大臣は、くいっと干しながら話を切り出した。
「私はね、政治家なら皆考えてるだろうが、総理の椅子を狙っとる。其の為には、日本と言う国が存続しとかにゃあ、どうしようもない。」
五島三佐への返杯をしながら、嘆息する。
「まだ政府内で情報を留めてるんだが、アフリカ、想像以上に状況が悪い。既に無政府状態になった国が出てきている。」
「な…!、原因をお尋ねしても?」
行き成り出てきた重要情報に、僅かに狼狽える、五島三佐。
「色々だな。民族問題、政治の腐敗、貧困問題、メシア教のテロ、そして、悪魔。」
また一杯干す、大臣。
「政府内でもな、悪魔の出現の日常化は喫緊の課題として挙げられてたんだ。しかし、良い案も無く正直手詰まりだったんだがな。」
そこで、嬉しそうに俺を向く。
「諸星君の話で、ちいと勝ち筋が見えてきた。」
アテのナッツをバリ、と嚙み砕く、大臣。
「まず、ショップとやらは国が音頭を取らせてもらう。」
え、と思った瞬間、ば、と手を開いて突き出した。
「不満は分かる。だがなぁ、今でも諸星君の所は勝ち過ぎている。ここらで国に花を持たせた、と言うのを見せとかんと、排斥されるぞ?」
なるほど。
「国に逆らうつもりはない、と、表明するわけですね?」
「話が早いのは良いねぇ。まあ、それでも言うやつは言うだろうがな。それで、こいつはODAの通信事業支援として公益団体を一つ立ち上げる。そして、異界産の霊薬や装備をショップを通じて弱小国家に融通する。なに、
上手え。
弱小国家への支援と見せかけて、ギリギリまで悪魔を間引かせてGPの上昇を抑え、いざ世界の壁が壊れたら堂々と悪魔を派遣して、更に壁とするつもりだ。
そして、霞が関からは天下り先を増やしたと感謝されるわけか。
「んでだ、デモニカスーツの件だが…。」
にやり、と悪戯小僧のような笑みを浮かべた。
「でかい花火を、打ち上げようや。」
「ふへえ~~~。」
溜息をついてトボトボと家から友引高校へ歩く。
あれが、老獪って奴か。
去り際に、「私は、自分に利を齎す者は裏切らんよ」って、言ってたけど、明らかに釘を刺してたよな、裏切るなよ、と。
何かしてやられた感が半端ないなぁ。
「よう、旦那。景気悪ぃ顔してんじゃねえか。」
ドルン、と言う腹に響くエキゾーストサウンドと共に声を掛けられた。
振り返ると、車輪が燃え盛るチョッパーに跨った弁天様。
これ、どうしたかって?
この間、歌舞伎町に出没するヘルズエンジェルの除霊に向かった時、弁天様が、
「良いもんに跨ってるじゃねえか、寄越しな!」
って言って、鎖をヘルズエンジェルの首に巻き付けて引きずり落とし、
「はっはーーーー!!!、ご機嫌だぜ!!!!」
って走り去っちゃったんだよね。
かくーん、と顎が落ちたヘルズエンジェルに、
「…逝っとく?」
って聞いたら、コクリと頷いたのが、哀れを誘ったぜ…。
「湿気た面してんじゃねえよ、乗りな。」
く、と顎で後ろを示す、弁天様。
え、良いの?
弁天様の後ろに跨り、恐る恐る腰に手を回すと、柔らかくて、良い匂いがして…。
「しっかり捕まっとけよ!」
え、うっぎゃあ~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!
し、死ぬかと思った。
潮騒の響く砂浜で、俺は四つん這いになって乱れた呼吸を整えていた。
「ちったあ気が晴れたかい。」
その声に顔を上げると、澄んだ青い海を背景に、ちょっと顔を背けた弁天様。
「あたいは、がさつで料理とかも出来ないし、旦那の仕事を手伝う事は出来ねえけど、気晴らしにはいつでも付き合ってやるからな。」
少し朱が挿した頬が、蒼穹に映えて。
「弁天様…。」
半身を起こして、弁天様に手を差し伸ばし…。
「危ない!あたる!!」
「おごお!!!」
横合いから飛んできた
「海が好き~~~~!!!」
「あがあ!!?」
ビッグウェーブに乗った竜之介ちゃんの親父のサーフボードに激突した。
「ああ!やはり運命を変える事は出来なんだか。南無阿弥陀仏。」
「貴様が、捻じ曲げたんだろうがぁ~~~~~~~~!!!!!!」
キラ~ン☆
皆様覚えていらっしゃったでしょうか、弁天様のスキルに”騎乗”があったことを。
最初からヘルズエンジェルのバイク、弁天様に似合うんじゃないかと考えていまして、漸くネタとしてお出し出来ました。