なんやかんやの家庭内騒動があったが、それは置いといて。
現時点で困ったことがある。
MACが俺を育てる事が出来ないという事だ。
デビルシフターも、悪魔召喚アプリを使えば仲魔を持つことは出来る。
しかし、シフターは悪魔への変身にMAGを消費する為、精々1体を維持する事が出来るかどうか。
基本戦術が全く異なるのだ。
簡単に言うと、シフターは自身が最大戦力で、仲魔は支援主体となる。
逆にサマナーは、仲間を主体にしてその場で臨機応変に組み換えをする事が求められる。
これには、親父も頭を悩ませた。
いかに親父が指導者として優秀であっても、知らないことは教えようが無いのだ。
じゃあ、知ってる人に聞けばいいと思うかもしれないけど、この業界、秘密主義なのよ…。
一子相伝、門外不出、純血主義、秘宝、etc。
加えて、権威主義がまかり通るんだよねぇ…。
ウチみたいな、
仕方ないので、じゃあ実戦で体で覚えさせる、となったのは流石脳筋レオ世界と言うかなんか。
で、また困ったのだ。
俺に合う異界、管理してない。
精々Lv3の餓鬼が出る位(これでも現状ではそこそこなんよ?実際俺、死に掛けたし)の異界である。
しかも、得られるものはショボい(マッカがちょっぴり)のだ。
これでは、来るかもしれない終末に備えることも出来ないし、なによりMAC所員さんの底上げにもならない。
由々しき事態である。
俺は夕食の時に親父に切り出した。
「親父、今のウチの異界では、世間の悪魔のレベルの上昇に追いついていないよ。」
あ、親父、お袋呼ばわりは、前回のやらかしの後で「自分の区切りとするため」、と了承してもらった。
…お袋からは「女の子に格好つけたい年頃ですものね」、とニマニマと笑われたが、違うからね!
ん、んん!
と、取り合えず俺がそう言うと、親父も認識はしてたのか、
「そうだな。今の異界では、玄の特訓にもならない。しかし、他の管理異界は、ウチと縁が無いし…。」
と眉根を寄せて悩んでいる。
「親父、この間やらかしといてなんだけど、一寸異界のボス候補に思い当たる悪魔がいるんだ。鉱山と鍛冶を司る神に、ね。」
あの入院時に、今後の事を無い頭で考えていた。
もし終末が来たら、現在の物理法則は当てに成らなくなる。
であるならば、異界産のMAGを含んだ鉱石を用いた武器が、今後必要となるはずだ。
生産拠点&鍛錬場は、絶対に確保しなければならない。
そう考えて検索したのだが、意外と近いところに良さそうな神様がいたのだ。
「むぅ…、確かに現状、ラムさんとおユキさんと言う大悪魔がいる…、ここは勝負どころか…。的、その悪魔について教えてくれ。」
悩みつつも訪ねてきた親父に、現状で考えられる相手の情報を告げながらディスカッションを重ねて、許可をもぎ取った。
さて、俺は今またMTBに乗って埼玉を目指している。
え、おユキさんの転移どうしたって?
…向かうとこ、転移した後でMTBに乗ってもあんまり変わらないんだ…。
川口市。
ここに目当ての神を祭る神社がある。
なんで鍛冶の神?、と思うじゃん?
江戸時代が関係している。
江戸の町は、兎も角火事に弱かった。
勿論生活に関わる鋳物何かは江戸の町で賄っていたが。
大規模な鍛冶場は、許可されない、いや出来ない。
足りない。
それを補っていたのが船運を利用した荒川・芝川水系である。
その鍛冶場の集積地の一つが、ここ川口市。
今でもモノづくり都市を掲げてるんだぜ。
と、調べた情報を頭の中で再整理している間に目的地に着いた。
金山彦を祭っている神社。
知らない人、多いよね?
俺も知らなかった。
いや、カグヅチってメガテン的にメジャー、いるじゃん?
それが生まれた時に、瀕死になった伊邪那美の吐物から生まれたらしいんだわ。
火しか関係ないよね、と思うけど、鉱物、鍛冶の神として、夫婦神とも、兄妹神とも記述されている神だ。
あと、
因みに、物作り日本らしく全国に3,000程神社があるらしい…ホント?
さて、と。
人除けの香を焚いて。
アプリ、ポチ。
SUMMON
「どうしたっちゃ、ダーリン?やけにテンション低いっちゃよ?」
もしもの時対策の為に呼び出したラムが、俺の周りをふわふわ浮きながら不思議そうに覗き込んできた。
今の俺のレベルだと、おユキさんと二体召喚してもMAGは問題無いが。悪魔召喚時にどれだけ要求されるか分からない為ラム一人だけ顕現させている。
「あ~いや、これから呼び出す奴は、出来れば!、呼び出したくは無かったんだが、しかし、実際有用だから仕方なくだな…。」
渋々と、更に気休め程度の性能の呪殺除けお札を、ぺたりと額に張り付けた後、悪魔召喚タブに指を滑らせる。
"SUMMON DEVIL"
うおっ!?、えらく持ってかれたな!!?
空間が揺らぎ、白詰襟の学ランで腰に日本刀を履いた、オールバックのいけ好かないイケメン悪魔が、顕現した。
「私を呼び出したのは、貴様かあぁぁぁ!!!!」
俺の顔を見た悪魔が、行き成り憤怒の表情を浮かべると、腰の日本刀をスラリと抜いて切りかかってきた!
「ぬあぁあああ!?」
はっし!
「む!?」
カ、カカカカ!
あなたはスキル「真剣白刃取り」を習得した!
なんか、頭の中にモノローグが流れた感じがするが!
凄いぜ、的君の運動神経!
日本刀を両手で挟んで止めてるぜ!
「て、てめえ、行き成り切りかかってくるとはどういうつもりだ!」
日本刀越しに悪魔に怒鳴りつける。
「分からん、だが何故か貴様は切らねばならんと思った!」
悪魔も親の仇を見るような目で怒鳴り返してきた。
「…ふっざけるなよ!面堂ぉ!!!」
「…貴様に、名付けなぞされたくないっ、がっ、何故か魂がそれを受け入れているのが、また腸が煮えくり返るっ!!!」
「「ぐぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ!!!!」」
「だ、ダーリンになにするっちゃ!ジオ!」
一瞬のやり取りをあっけにとられたかのように、ぽかんとした顔で眺めていたラムが、面堂に攻撃を放つ。
だが。
「ば、馬鹿、ラム!こんな状態(白刃取り)でそんなの(電撃)撃ったら…!!」
「あ。」
Shock!
「「あばばばばばばばばばばばば!!!!!!!!!」」
「ごめんっちゃ、ダーリン!」」
ぴくぴくと土の上で痙攣をする俺と、面堂。
「おほほほほほ、情けないお姿ですわね、お兄様。」
と、鈴を転がすような笑い声が響いてきた。
朦朧とする頭を何とか上げると、射干玉の黒髪をピンクのリボンで後ろに軽くまとめた和服姿の美少女がほほ笑んでいた。
シュタッ
「お美しいお嬢さん、もしや金山姫の現身では…?」
恭しく美少女に対しボウアンドスクレイプを捧げる。
通りで先刻の悪魔召喚に大量のMAGが持っていかれたわけだ。
同時召喚になってたな?
後ろではラムが一瞬前まで俺が倒れていた場所と、こっちとを、目を見開いて何度も見返していた。
ラム、挙動不審だぞ?
「あら、面白いお方ね。その通りですわ。」
くすくすと小悪魔チックにほほ笑む女悪魔。
「あなたに付いていくと、もっと面白いことが見れそうですね…、いいですわ契約、いたしましょう。」
す、と右手の甲を差し出してくる。
「有難き幸せ。では、面堂了子、と。」
その甲に口づけをしようと…
「ダァ~リン!!!」
「あばぁ~~~~~!!!!!」
カ、カカカカ!
ラムはスキル「ジオンガ」を習得した!
再び土の上でぴくぴくと痙攣していると、面堂がよろよろと立ち上がった。
「く、ゆるさんぞ妹を貴様のような奴の仲魔なんぞに…。」
震える手で日本刀を構え直そうと…した所で、了子ちゃんの合図でどこからもなく表れた黒子達が、巨大な甕をガポン、と面堂の上から被せた。
「うわ~~~ん、狭いよ、暗いよ、怖いよ~~~!!!」
「お兄様ったら、鉱山で崩落事故があって閉じ込められてから閉暗所恐怖症なんですの。…お兄様?出して欲しかったら契約をなさいませ?」
「分かったから~、早く出してよ~~!!」
カパン
「ふ、仕方ない、不本意ではあるがこの私の力を…」
ピ
RETURN
甕を退けられた瞬間、ふぁさっと髪をかき上げて気障に言いかけたのがムカついて、途中で送還してやった。
「おほほほほ、戻る瞬間のお兄様のお顔ったら!やはり、面白い方ですわね、サマナー様。コンゴトモヨロシクお願いいたしますわ。」
「ああ、コンゴトモヨロシク、了子ちゃん。」
さて二人とも送還した後は恒例のステチェックである。
面堂終太郎
種族:国津神(金山彦劣化分霊)Lv10
火炎無効 魅了弱点(改善不能) 閉所弱点(改善不能) 暗黒弱点(改善不能)
五月雨斬り ヒートウェイブ 挑発 タルカジャ
物理プロレマ 金運
面堂了子
種族:国津神(金山姫劣化分霊)Lv10
火炎無効 毒耐性 退屈弱点
毒針 ポイズマ プリンパ ダストマ スクンダ デカジャ
毒の使い手 金運
…面堂の方は分かるけど、了子ちゃんのこれ、いや、ホントこれナニ?
デパフばら撒きじゃん、怖!?
え、ホントに神様?…メガテン世界では標準だったわ(呆れ)。
ま、まあ、目標は達成したからいいじゃろ!
まだブツブツと文句を言ってるラムを宥めて送還し、呼び出したおユキさんに転送してもらって帰宅したのであった。
予定に無い二体の大悪魔を連れ帰ったことで、俺がまた、親父の特大の雷を食らったのは言うまでもない…。
うん、今回の話では実にメガテン的悪魔会話だったですよね。
最初に(的が)拒否されて、ラムの攻撃により弱らせて、更に(了子ちゃんが)弱点・暗闇・閉所状態に追い込み、(了子ちゃんが)説得(脅迫)して契約に持ち込んだ。
ほら、実に原作に沿った流れじゃないですか?
ここの的君、弾に叩き込まれたおかげで元々女性に暴力は振るわないポリシーの上に紳士的に(見えるように)振舞えるようになってます。
…面堂の近親憎悪が更に酷くなる仕様ですね。