ありふれた(?)女神転生   作:はるまき

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難産でした。


第5話:いい日旅立ち

狩居事件が解決して、今更ながら気が付いた事がある。

 

俺の仲魔、回復持ち居なくね?

 

イッポンダタラにど突き回されて、お袋からディアを受けた時、そう言えば、となったのだ(因みにあの虐待じみた特訓を見ていたお袋は、「あら、懐かしいわね。」と微笑んでいた…昭和ウルトラマン世界ぇ…)。

早速ゲットじゃ、と家を出ようとしたところで、親父から呼ばれた。

 

「的、一神教から依頼が来ている。黒田副所長に行ってもらう予定だが、お前も他の組織と行動することを、少しづつ慣れてもらおうと考えている。今回の依頼は危険性が低いと判断しているから、副所長に同行するんだ。」

 

ぺら、と依頼書を渡してくる、親父。

なになに…、ああ、メシア教が世田谷に潜伏して陰謀を企んでいるけど、一神教のエクソシストが地理に不案内なので、協力してほしい、か。

敵として想定されるのは、メシア教の神父と、エンジェルが2、3体ね。

なるほど、危険性は低いな。

エンジェルの攻撃手段はハマだ。

これは、人間には基本効かない。

当り前だ、人間は悪魔ではないのだから。

悪魔憑きは、基本無効(悪魔によってはそちらに引っ張られる事もある)、悪魔人間は破魔無効でない限り効果あり、となる。

終末に備えるためにも伝手は多いほうが良い。

 

「分かった、勉強させてもらうよ。」

出掛けに、無許可でアナライズをかけるのは敵対行為だとの注意を受けてから、待ち合わせ場所のMACに親父と向かった。

 

 

…気軽に了承した自分をぶん殴りたいです。

 

「今回の依頼を受けてくれて感謝する、一神教司祭の唐巣和宏だ。」

目の前の、とても神父とは思えないやさぐれた目をしたイケメン…GS美神世界混じってんの!?

 

しばし呆然としていた(黒田さんは初めて他の霊能者と会うので緊張していると勘違いしてくれたようだ)が、唐巣神父はまだ20代の様で、落ち着け俺、美神の物語はまだ始まっていない、コスモプロセッサーによる世界改変はまだ無い、はずだ(アスタロトによる準備は進んでいるかもしれないけど)。

うん、数あるメガテン世界崩壊の可能性にまた一つ加わっただけだな!(お目目ぐるぐる)

orz

 

こんな内心の俺と唐巣神父を乗せて、黒田さんは住宅街へMAC社用車(マックカー)を進めていく。

因みに黒田さん、Lv3で、懐剣型の霊刀(ほんのり霊格を感じる位)を用いた組内術の使い手で、スキル”鎧どおし”が使えるとの事。

MACでは、親父、玄さんに次ぐ実力者だ。

 

今、俺らは当てもなく移動しているわけではない。

メシアンはまず、霊地を抑えにかかる。

そして、天使を核にした異界を築き上げて行くのだ。

つまり、最近まで周囲にMAGを拡散させていたところが、急にそれが感知されなくなった場合。

 

「新たに異界が形成されて、メシア教徒が潜伏しているかもしれない、という事なんだよ、的君。」

ハンドルを握りながらそう説明してくれる、黒田さん。

そう言った場所は当然MACのパトロールでもチェックされており、定期的な見回りに入っているそうだ。

積極的に除霊はしないのかって?

よそ様のところに勝手に入ったら、いかんでしょ。

依頼があったら(金が出たら)やりますよ、ウチは。

 

その一つに、到着して車外に出た途端。

 

「当りだな。」

唐巣神父が、す、と懐から聖書を取り出した。

 

そこは、一家心中があったという空き家で、かといってそれほど年月が経ってないんで、荒廃もしていない普通の…ん?

 

「ほう、分かるか、面白い。」

意外そうに俺の方を向いて、ニヤリと笑う神父。

 

そう、清浄すぎるのだ、空気が。

まるで神域のように。

 

「メシア教のくそ天使共は、悪魔の存在を憎悪している。だから、自分たちのテリトリーは、徹底的に掃除をするんで、こういう空気になるわけだ。」

そう言って右足を上げると、ドカン、と靴底で玄関のドアノブを蹴り壊す神父。

 

「っちょ、一寸唐巣神父、駄目ですよ!まだ許可が!」

「あぁ?何言ってやがる。んなの待ってたら、犠牲者が出るかもしれないじゃねえか。」

慌てる黒田さんを尻目に、ズカズカ家に入り込む神父。

その後を追いかけるように、家に入る…

 

キン

 

視界が、世界が、変転する。

 

気が付いたら、荘厳な、豪華なステンドグラスから光が差し込む聖堂の中に、俺たちは居た。

神聖な、祈りの場。

 

ただし。

 

祭壇の周囲に、赤子の死体が積み上げられていなければ、だが。

 

 

「くそったれ…。」

 

ギリっ

 

神父の、奥歯を噛み締める音が響いた。

 

 

「おやおや、迷える子羊達の来訪ですか?」

 

耳に心地よく、まるで心の奥まで撫で摩る様な、甘く、吐き気のする声が、響いた。

 

ざ、と振り返ると、そこには。

 

平凡で、違和感しかなく、温厚そうな、寒気がする、徳の高そうな、ドブの香りがする、神父が佇んでいた。

 

「貴様、栗獲神父!異端審判を受ける直前、姿を晦ましていたが、メシア教に属していたか!」

唐巣神父が、嫌悪感を隠そうともせず、叫ぶ。

「貴様は、貴様は!、まだ救世主計画(プロジェクトメシア)を諦めていなかったのか!」

 

千年王国計画(ミレニアムプロジェクト)、進行してる!?

 

その、唐巣の糾弾に、穏やかな顔を崩さず、心底困った様子で、幼子を諭すかのように、栗獲は、口を開いた。

 

「やれやれ、唐巣君。以前にお話をしたではありませんか。救世主様が降臨されないのは、それに耐えうる母体が居ないからです。で、あるなら、我々がその母体を準備せねばならないのです。その為に。穢れなき天使様と、罪なき赤子を合体させるのは、当然ではありませんか?」

ニコニコと、全く邪気が無い、見るに堪えない、笑顔でそう嘯く、栗獲。

 

これが、メシアン。

ゲームでは知っていた、嘲笑した、ネタにもした。

だが、目の前にいる、それは。

あまりにも、悍ましく、逸脱している。

 

しらず、俺の膝は震えていた。

 

「違う!」

 

唐巣が叫ぶ。

「終末は、何れ来るだろう!だが、救世主は、作られるものではない!汚濁の中から自然と立ち上がって来られる、尊き存在だ!人間が人工的に作れるような、薄っぺらいもので、あるはずが無い!

 

清涼な風が、吹いた。

 

そうだ。

意思が、前に進むという気持ちが折れなければ、負けではない。

 

ぐ、と膝に力を入れ、栗獲神父を睨み付ける。

 

「…これだから、背教者と異教徒は、度し難い。だが、無知ゆえの罪。その罪を許し、じっくりと教化して差し上げます。」

す、と手を上げる、栗獲。

 

栗獲の背後に現れる、3体のエンジェル。

 

「さあ、神の祝福を受け入れよ!」

 

 

 

 

 

勝ちました。

いや、Lv3~5の天使と、Lv5の神父(デビルサマナー)相手だから、当然と言えば当然なんだが。

一神教に警戒される恐れがあるので、今回は仲魔の使用を禁止されていたため、唐巣神父に回復してもらいながら、俺と黒田さんがクソ天使のSPが切れるまで、延々と殴り続けるという泥仕合の末の勝利であった。

一寸でも削ると、祝福で回復されるし、死んでもリカームだし…。

何でか狂ったようにハマを連発してくれたから、SP切れが早かったのが唯一の救いか。

 

「今回は助かった、何かあったら連絡してくれ。」

祭壇の横に奇麗に並べられて、白布がかけられた遺体達に静かに祈りを捧げていた唐巣神父は、立ち上がると沈痛な面持ちで礼を述べてきた。

これから一神教の処理班が来るとの事なので、神父からの報告書と謝礼は後日受け取る事にして、俺たちは退散することになった(処理現場は組織の秘匿技術等あるため、関係者しか入れないのがこの業界の不文律である)。

 

 

帰りの車内で、今回の件を反省する。

あの、ゲーム時には雑魚扱いのエンジェルでも、回復できるという事がこれだけ厄介だとは。

実体験をしないと、分からなかったぜ。

 

親父に報告してMACから出たのは、まだ日も高い3時。

さて、天使対策にムド系を使える悪魔も確かに必要であるが。

 

「先ずは、回復役が必要じゃあ~~!」

 

今、MTBで海岸線を爆走してます。

 

あ、江の島が見えてきた。

BGMにサザンが欲しいところだぜ(中身令和50台おっさん)!

 

江の島とくれば、もうお分かりと思うが、弁財天(サラスヴァティ)が祭られている。

しかし、弁天様のコスチュームも際どいけど、ここの弁財天様、真っ裸なんだぜ?

良く公開できてるよな。

 

さて、人除けとラムを召喚して、と。

 

"SUMMON DEVIL"

 

じゃらん、と右肩から襷に掛けた鎖の音を響かせて、やや癖のある髪を後ろで纏めた、右肩だけ甲がある際どい真紅のビキニアーマーを着用した一体の地母神が、顕現する。

 

「あたいを喚び出したのは、てめえか?」

 

「そうだ、うわっと!

また無意識に体が動いて、彼女の手を取りに行こうとした…刹那に、俺の爪先の地面に鎖が叩きつけられた。

 

「ダーリンになにするっちゃ!」

詰め寄ろうとするラムに、ば、と手を開いて押しとどめ、彼女は言い放つ。

 

「あたいは、自分が認めたやつにしか従わねぇ。実力を見せてみな、サマナー!

言うや否や、頭上で振り回した鎖を俺に叩きつけ、引き戻す流れで裏拳を叩きつけて、上に注意を向けさせたところで、躊躇のない金的蹴り。

 

「うわっ、ちょっ、ひえっ!」

半身になって鎖を回避して体を反らして裏拳を躱し態勢を戻す反動を利用して後ろに飛ぶ!

 

 

「ちょこまかと妙な動きで逃げ回りやがって、反撃位しやがれ!」

「俺は、女は殴らないと決めてるんだ!」

 

え、お前天使ボコボコにしてたろ、って?

あいつらTINTINついてるからノーカン!!

 

「ふざけやがって!戦いに男も女もねえ!!」

憤怒に顔を朱に染めて、顔面目掛けて目にも止まらぬ速さの拳を叩きつけてくる!

それを、ぬらり、と紙一重でかわしながら、俺は後ろに回り込んだ。

 

「なに!!!」

慌てて俺から距離を取る。

 

はらり。

 

その背に、纏められていた髪が、広がる。

 

「な…!?」

驚愕に見開かれた瞳の前で、俺はクルクルと髪留めを人差し指の周りで回して見せた。

 

「これで、どうかな?」

「…ち、納得いかねえ部分もあるが、実力はあるようだな。仕方ねえ、コンゴトモヨロシク、だ、サマナー。」

「コンゴトモヨロシク、弁天様」

 

さて、弁天様のステチェック、っと。

 

種族:女神(弁財天劣化分霊)Lv10

火炎弱点 衝撃耐性 呪殺弱点 混乱耐性 魅了無効

ザン バインドボイス ディア リカーム

衝撃プロレマ 騎乗の心得

 

…あれか、鎖を高速で振るうことで衝撃波が起きるという事ね。

で、姉御の叱責で身が竦む、と。

マジで悪魔って情報生命体だな。

てか、騎乗の心得なんてスキル、あったか?

 

今後についても考えさせられる事が多かったが、大満足で帰宅したのであった。

 

 

…無事を伝える前に出かけるとは何事か、と、お袋に正座の上懇々と説教を受けたのであった…。

 

 

 

 

 




栗獲神父の呼び方は、”くりとる”です。

くりとる。

く・りとる。

く・りとる・りとる……
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