――医務室で内密に少女の処遇を決定してから、既にもう五ヶ月。
単独航行を続けていた『
――皆が慌ただしく歩き回っている、積荷が積荷だけに普段は立ち入り禁止令が出ている『林檎の花』第三格納庫内。
この日――もはや何度目になるかすら分からない、先日収容した正体不明機の調査が行われている、そんな中で。
「……随分と綺麗になったものだな」
回収した時のまま『林檎の花』第三格納庫内に寝かせられ、ワイヤーで係留されたままの、正体不明機――現在艦内で使用されているコードネーム『
その脚部表面装甲の感触を確かめていたカーティスが、隣でこれまでの調査結果も含め解説をしてくれていた者たちに尋ねる。
「どうだい皆、この『堕天使』様の取り調べ状況は?」
「はぁ、カーティスさん。相変わらずさっぱりです。とんでもない技術ってことはわかるんですけどね」
「そうかァ、聞いた話だと、なんだか勝手に損傷が直っていったんだって?」
カーティスが救助したときは大破寸前だった。あの天使の少女が乗って来たこの機体。
だが今はもう、ひしゃげていた手足は元の姿に戻っていると整備班たちは言っている。
焼け焦げ、装甲板もボロボロに脱落していたはずの表面装甲も、触って確かめた限りでははスクラップ寸前だったのが夢だったかのように、手触りも新品の艶消し塗装が施されたそれに近い感触を返してくる。
「ええ。ですがこれ、なんで再生するのかいくら調べても全然分からないんですよね……」
気味が悪そうに語る整備員の言葉に、カーティスが首を傾げる。
「わからない……材質スキャンの結果は?」
「それが、セラミックをベースにいくつかの既存の金属の複合素材って、何回やっても出るんですよ」
「それは、変な話だよなァ」
そんなモビルスーツと大差ない素材で直るならば、整備の苦労は無いのに羨ましい限りだ、と皆で苦笑する。
そう言いながらも、興味津々といった様子のカーティスが正体不明機の装甲表面を触って押してみると……微かな弾力と共に少し凹み、すぐに元に戻る。
かと言って柔らかいのかと思えば、試しに借りてみたハンマーで全力でぶん殴ってみたが、手が痺れただけで、凹むどころか傷ひとつ付かなかった。意味がわからない。
やはり、外からの調査では限界がありそうだ。最悪、バラしてみなければならないかもしれないが、できればそれは最後の手段としたい。何が起きるか分かったものではないからだ。
「どうにか内部のデータを見せてもらいたいところだが……やはりコックピットは動かせないのか?」
「カーティスさん、無茶言わないでくださいよ……だってこの機体、
「いやほんと、何なんだろね、コレ」
「もういっそ、オカルトの悪魔かなんかなんじゃないですか?」
「ははは、まっさかぁ」
ここに集まった中でも若いほうの整備員が放った投げやり気味な冗談に、カーティスと整備員たち、皆で並んで乾いた笑いを上げる。
動力に関しては――まず、モビルスーツと同じ核融合炉はあり得ない、もしそうならば真っ先に気づいている。
ではメタトロンによる
その他……光子力にゲッター線等、極東の特機由来のエネルギーも全てことごとく却下だ。出た結論はやはり『動力不明』。
半年間に及ぶ土星から木星までの道中、散々この正体不明機の調査を続けたが……今もまだ眠り続けている天使の少女共々、結局何の成果も得られず仕舞いに終わってしまった。
「事情を知ってるはずの肝心の天使ちゃんは、もう六か月もずっと眠りっぱなしだし、いったいどうすればいいんだろうねぇ」
不甲斐ない結果に、この格納庫にいる皆ともう一度深い溜息を吐いた――そんな時だった。
『――カーティスさん、聞こえますか。医務室へ来てくださいって、ドクターが呼んでます。目覚めた、とだけ伝えるようにだそうです』
そんな呼び出しの放送に、カーティスはナイスタイミングと喝采を上げるのだった――……