ニーゴ好感度逆転モノ   作:村岡8bit

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アンケート結果を見て、とりあえず司といっちゃんをプロットに組み込みました。


学校へ行こう!

 

 ボンヤリと視界に色が付き、意識が覚醒する。

 

 朝だ。何故か枕の位置が足元に来ているが、気にしないでおこう。

 

 昨日はゲロしてシャワー浴びたあと、結局すぐに寝てしまった。

 疲れてたからとかそういうわけではなく、ただ何も考えたく無くて睡眠という逃げの一手を取ったんだ。

 全く、真剣に考えなきゃとかほざいてたのはどの口だよ。そうだよこの口だよ。

 

 寝ぼけ眼を擦りつつ、体を起こす。まだ少し、意識がポワポワしている。

 

 「ふわぁ……ねみ」

 

 大きく欠伸をかいてみるが、眠気は取れない。

 

 叔父さん曰く、俺の寝覚めの悪さは母親譲りのものらしい。まぁ今現在、それが本当なのか確かめる術はどこにもないんだが。

 

 フローリングにペタリと足をつけると、ヒンヤリとした感触が足裏に伝った。

 

 今日はよく冷える。寒さ対策をしっかりしないと風邪をひいてしまいそうだ。

 

 こんな日の朝には、電気ポットで沸かしたお湯と、スティックのインスタントコーヒーをマグカップの中で混ぜ合わせたくなる。

 

 電気ポットに水道水をつぎ、ボタンを押す。

 お湯を沸かしている間に、台所にある収納棚の中からスティックコーヒーとマグカップを取り出しておこう。

 

 間もなくしてお湯が湧いた。マグカップの中にスティックコーヒーの粉を入れ、お湯をそそいでいく。すると、お湯から出てくるもわっとした蒸気が顔に掛かって、頬を湿らせた。

 

 椅子に座って、コーヒーを啜りながらまだボンヤリとした脳みそで思案する。

 

 "何故急にニーゴのメンバーから嫌われてしまったのか"

 

 俺が何かやらかしたのだろうか……?いや、心当たりが全くない。

 

 じゃあなんで……

 

 「……考えるだけ無駄か」

 

 結局直ぐに思考を打ち切り、席を立つ。コーヒーはまだ飲み切っていないが、これ以上は胃に収まらなさそうだ。

 

 「……学校、行かなきゃだよなぁ」

 

 ハンガーラックに掛かっている制服のブレザーを手に取りながらそう呟いた。

 

 一週間程前からずっと無断欠席している学校、教師や同級生からの携帯への不在着信はもうすぐ3桁を超えるところまで来ている。流石にそろそろ学校に行かなければ進級すら怪しくなってくるだろう。

 

 「天気悪い……」

 

 Yシャツの袖に腕を通しながら、ふと窓の外を見る。土砂降りの雨だ。どんよりとうごめく雲を眺めていると、こちらの気分までどんより落ち込んでしまいそうになる。

 

 シャツのボタンを止めて、ネクタイを締めて、ブレザーを羽織る。最後通学バッグを肩にかけて登校準備が完了した。あ、腕時計もしておこう。

 

 「先生絶対怒ってるよなぁ……」

 

 この先待ち受けているであろう先生による説教のことを考えると胃が痛くなってくる。

 

 「……吐きそ」

 

 ナーヴァスが止まらない。些細なことですら少しでもストレスを感じようものなら直ぐに胃が暴れ出してしまう。

 

 一旦深呼吸をして、大した物も入っていないくせに怒り狂う胃の中身を落ち着かせてから、玄関の扉を開いた。

 

 「雨やば」

 

 雨降りの月曜日。憂鬱とした感情を吐き出すようについたため息は、その耳障りな雨音へと静かに溶けていった。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 「失礼しました」

 

 礼をして、職員室を出る。

 

 学校に到着するやいなや即先生に見つかった俺は案の定職員室へと引きずり込まれ、つい先程まで担任から説教を受けていた。

 

 既に疲れがどっと溜まっている。学校って来るだけでこんなにしんどいものか?普通。

 

 「しっかし……」

 

 まさか説教中にゲロを吐くとは思わなかったな。先生ドン引きしてたぞ。

 長ったらしい説教の最中に余計なこと、具体的にはニーゴのことを考えていたらつい溢れてきてしまったのだ。ごめんね職員室の床。

 まぁゲロと言っても、出てきてたのは朝に飲んだコーヒーと胃液だけの残りカスのような物だったが。

 

 

 さて、説教も終わり晴れて自由の身になった俺だが、教室に行くのが億劫すぎる。なんせ一週間も無断欠席したうえにクラスメイトからの着信、連絡をフル無視していたんだ。気まずいにも程があるだろう。

 

 特に、俺と同じクラスに所属している幼なじみの男、天馬司には合わせる顔も無い。

 

 司は本人がそういう気質ということもあるのだろうが、俺のことを一番心配してくれていて、毎日朝昼晩と三度の連絡を欠かさず送ってきてくれいていた。

 連絡の内容も『何かあったのか?』とか『相談に乗るぞ』みたいな、俺のことを思ってくれているのだろうと分かる物ばかりだった。

 そして今のところ、俺はそれを全部既読無視しているのだ。本当に合わせる顔がない。

 

 「気まず過ぎる……」

 

 廊下に立ち尽くしたまま動こうにも動けない。そんな状況がしばらく続いた。腕時計を見てみると、現在時刻は予鈴の数分前。予鈴が鳴るまでに教室に入らなければ遅刻判定になるのだが、ここまで来ておいて遅刻するのは流石にマズい。そろそろ覚悟を決めるしかなさそうだ。

 

 

 

 勇気を出して一歩、足を踏み出そうとしたその時。向かいの階段を登ってくる生徒たちの隙間から垣間みえた見覚えのある金色の頭頂部。

 司だ。久し振りに見たその目立つグラデーションの髪色。思わず目が釘付けになってしまった。

 

 「……あ」

 「愉太郎!」

 

 ヤバい。ずっと司のことを見つめていたせいで彼と目があってしまった。どのみち司には会うことになっていただろうが、少し待ってほしい。こ、心の準備が……

 

 そんな俺の内心だが、それが司に伝わるはずもなく彼はズンズンとこちらへ歩みを進めてきている。もう俺と司の距離は5mを切っているだろう。

 

 「お前!一週間も音信不通で何をしていたんだ!?心配したんだぞっ!」

 「つ、司……」

 

 怒っている。当たり前だ。俺はなんと言えばいいのか分からず、閉口してしまった。

 

 「……お前のことだ、理由もなく無断欠席などするはずがない。……愉太郎、一体何があった。教えてくれ。俺は、お前の力になりたい」

 「っ……」

 

 そう言った司の表情はとても真剣で、とても頼もしく見えた。だからつい口を開いて、全てを話してしまいそうになった。

 

 ……そんなの、駄目だ。ただでさえ心配を掛けさてしまっているんだ。これ以上司に迷惑を掛けるようなことはしたくない。

 

 「……ごめん!」

 「なっ!? おい待て!愉太郎!」

 

 司に背を向けて一目散に駆け出す。司は俺が急に逃げ出したことで呆気にとられたのか、俺を追ってくるような素振りは見せない。

 

 ごめん、司。でも、これ以上お前に迷惑掛けたくないんだ。だから、許してくれ。

 

 

 

 

 

 

 走って走って、辿り着いた場所は屋上。ここならば誰もこないだろう。

 雨が降っていて外に出られないのでその手前、入口の扉に腰を掛ける。

 

 走っている最中に予鈴がなってしまったが、もういい。今更気にしてもしょうがない。

 

 「やっちまったぁ……」

 

 息を整えながら、先の行動を深く後悔する。また、逃げの一手をとってしまった。司に事を話さないにしてももっとやり方があったはずだ。それに……

 

 「ハァァァ……」

 

 深くため息を付いて、思考をぼかす。これ以上うじうじ考えてても切りがない。はいやめやめ。この話し終わり。

 

 

 

 ……扉越しでもうるさい雨音を背に、ボーッとしてみる。そういえばこんなこと、昔もあったな。

 

 

 

 

 

 

 

 回想するのは数ヶ月前の出来事。その日は瑞希と一緒に屋上へ出て特に目的もなくだらだらしていたのだが……

 

 

 「いやぁ、急に降ってきたね」

 「しょっぱなからザァザァ降りだったせいでめっちゃ濡れたな」

 

 なんの前触れも降ってきた雨、しかも降り始めから土砂降りだったもんでビショビショ、とまではいかないが結構濡れてしまった。

 

 俺と瑞希、そろって屋上の扉に背を預けて会話をする。

 

 「風邪引かないように気をつけなきゃだねー」

 「それな……ぶぇっくしょい!」

 「あはは、いった側からくしゃみしてるじゃん」

 「体が冷えやすいんだよ、俺は。……にしても寒いな」

 

 少しわざとらしく腕をさすってみると、瑞希がなにか悪い事を閃いた時の表情でこちらを見てくる。

 

 「ふーん……じゃ!ボクが愉太郎のこと暖めてあげるよ!」

 「えっ、ちょ……」

 

 ギュッっと、瑞希が俺の脇腹に抱きついてきた。

 ふんわりとした女の子らしい優しい香りが鼻腔をくすぐる。思わぬ不意打ちに少し、いやかなりドキッとしてしまった。

 

 「ふふ、これならあったかいでしょ?」

 「いや、確かに暖かいけど……」

 「愉太郎は、ボクにギュッってされるの嫌?」

 「うっ……まぁ嫌ではないが……」

 

 上目遣いで見つめてくる瑞希、嫌な訳がない。むしろウェルカムだけど……こんなこと言ったら奏たちに殺されるな。言わないでおこう。

 

 「嫌じゃないなら、別にいーよね!」

 「ったく、お前って奴は……」

 

 カラカラと笑う瑞希。とても幸せそうな顔だった。俺もそんな瑞希を見て、つい笑みが溢れた。

 

 それから、少しの沈黙が訪れた。ただ、肩を寄せ合ってじっとしているだけ。それだけなのに、とても暖かかった。

 

 数分たったあたりで、瑞希がゆっくりと口を開いた。

 

 「ねぇ、愉太郎」

 「なんだ?」

 「愉太郎はさ、ボクのことどう思ってる?」

 「え?うーん……どう思ってる、か。難しいな」

 「……もしかしてボクのこと嫌い?」

 「ちっげーよ、なんでそうなる。瑞希のことは嫌いじゃないし、その……むしろ好きっていうか……」

 

 恥じらいながらもそう言うと、瑞希は少しの間目を丸くして、その後悪戯な笑みを浮かべた。

 

 「……へぇ、そっか、そっかそっかぁ。愉太郎はボクのこと好きなんだぁ?へぇ〜」

 「……たった今嫌いになりそうだ」

 「うわー!ごめんごめん!ちょっとふざけただけじゃんかー!」

 「ハハ、冗談に決まってるだろ。俺は、お前が、ニーゴの皆が俺を必要とする限り、俺も皆を必要とする。そういう人間だよ」

 

 こてん、瑞希が俺の肩に頭を乗せてきた。もう今更どうこう言うつもりはない。

 

 「そっか、そうだよね。愉太郎はそういう人だもんね。 ……ねぇ、もう一つだけ、聞いてもいいかな?」

 「ん、おう」

 「愉太郎は、ずっとボクの味方で居てくれる?」

 「は?何で今更そんなこと……瑞希は俺の大事な仲間なんだ。当たり前だろ」

 「ホントに?どんなボクでも、受け入れてくれる?」

 「……あぁ、俺はどんな時でもお前の味方だ。今ここで約束してやってもいい。……だから、安心しろ」

 「……ありがと」

 

 瑞希の俺を抱き締める腕の力が、少しだけ強くなった気がした。

 

 

 

 

 

 今思い出しても、辛いだけだな。俺のことを必要としてくれていてた瑞希は、ニーゴの皆は今となってはもう見る影もない。

 

 「……雨止んでる」

 

 思い出に耽っている間に雨が上がっていた。

 

 ……外、出てみるか。

 

 扉を開いて、屋上に出る。

 

 上を見上げると、視界に映るのは灰色だけ。

 

 空はまだ、晴れていない。

 

 

 

 

 





オリ主:好感度逆転の犠牲者。可愛そうだけどお前は可愛くないよ。

瑞希:可愛い。まずAmiaっていうハンドルネームから可愛い。全部可愛い。後々好感度が戻って可愛そうになるけど可哀想は可愛いからOK。

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