元々この話を書きたいがために本作は出来たのですが、展開を考えている内に没になりました。なので番外編として供養。
ニーゴの好感度は元に戻っていて、オリ主のメンタルはなんやかんやあり完全復活した設定です。
曇るのは瑞希。
―――とある日の神山高校
太陽が激しく地を照らす炎天下、目先のコンクリートがボヤケて見える。
暁山瑞希はその日、入学して以来サボり気味だった高校に珍しく朝から登校していた。
時々、瑞希はこうして高校に顔を出すのだが、そのことにこれといった理由は無い。彼女は気分屋なのだ。
しかし、今日は違う。瑞希は今日、明確な目的を持ってこの場へ足を運んでいた。
「愉太郎……」
その目的は一つ、瑞希の想い人である男、曇 愉太郎に会って話すことだ。
瑞希にとって愉太郎は、性別のことで悩む自分を否定せずに、ありのまま姿を受け入れてくれる、正に救世主のような人物だった。
瑞希が愉太郎に好意的な態度を見せれば、彼も多少なりとも好意的な返しをしてくれる。
その様を待ちゆく人々が見ればきっとだれもが、あぁ、きっとこの二人は付き合ってるのだな。爆発しろクソッタレが。といった感じでカップルに見紛うことだろう。
願わくば、この先もずっと、彼の側に居たい。側に居てほしい。
そう思っていた。
好き。大好き。ずっと信じてる。ずっと側に居て。
しかし、そんな愛情はとある日、一夜にして憎悪の感情へと豹変した。
大好きだったはずの彼に抱くのは、どうしようも無い程の嫌悪感。
嫌い。大嫌い。気持ち悪い。お前なんか消えてしまえばいい。
名前を口に出すだけで吐き気を催し、逆に名前を呼ばれたのならば、これ以上にない鳥肌が立つ。
前に自分のことをおとこおんなだとか言って、差別してきた奴らなんかとは比になら無いくらいに憎かった。憎くて憎くて、しょうがなかった。
だから、とにかく遠い所に行ってほしくて、心無い言葉の数々を投げかけた。
キモい、不快、消えろ、大嫌い。
思いの限りに負の感情を彼にぶつけた。
愉太郎は、そんないきなりの出来事に戸惑いを隠せていない様子だった。
瑞希は傷付いていく愉太郎を見て、いい気味だとほくそ笑んでいた。
そうしてしばらくがたった日、愉太郎はニーゴを脱退した。
彼は最後に頭を下げて感謝の言葉を述べていたが、瑞希にはそれがとても腹立たしく思えて、「あーもう!さっさと消えてよ!」と彼に言い放った。
愉太郎はどこか悟ったような顔で瑞希の糾弾を聞き流し、その場を去っていった。
瑞希含むニーゴのメンバーはこのことに対して、ようやく邪魔者が居なくなってくれると喜んだ。数日後、その自らの行いを心の底から後悔することになるとも知らずに。
全てが戻った。突然のことだった。
大好きな彼にたくさん酷いことを言ってしまった。
取り返しのつかないことをしてしまった。
後悔の念で胸が押し潰されそうになった。
瑞希は直ぐに愉太郎のいる場所へと向かい、開口一番で謝罪をした。
酷いこと言ってごめんなさい。あんなこと本当は思っていなかった。
瑞希の謝罪を聞いた愉太郎は、少し驚いたような顔をした後、かすかに微笑み、口を開いた。
「そうか……じゃあ、まぁ許す。……もう、いいよ」
彼は瑞希を許した。しかし、彼の言葉はどこか素っ気なく、心が籠もっていないように瑞希は感じた。
それ以来、瑞希は愉太郎と会っていない。
許してはもらったが、心の中にあるモヤモヤが晴れない。とても、もどかしかった。
その心の霧を晴らすために、瑞希は今日この場に居る。
靴を上履きに履き替えて廊下を歩く。
本当は今すぐにでも愉太郎に会いに行きたいのだがやはりまだ、瑞希にはどこか気まずさがある。
(本当にボクは愉太郎に会ってもいいのかな……?)
愉太郎を傷付けた自分には彼に会う権利などないのではないかと、瑞希はそう思っていた。
自分の教室に入って席につくと、それに気がついた近くに居た同級生の女子が瑞希に声を掛けた。
「あれ?暁山さん今日来てるんだ。おはよう」
「……」
「あれ?おーい。暁山さーん?聞こえてる?」
「うぇっ!?あ、ごめんね、ちょっと考え事してた……おはよー」
瑞希は同級生からの挨拶にも気付かない程に悩んでいた。
(愉太郎に会いたいな……でも……)
「……あ、チャイム鳴っちゃった」
瑞希が机に突っ伏してウンウンと唸っている間に朝の予鈴が鳴った。
(……取り敢えず、授業受けながら考えようかな)
◆
昼休みの時刻になったが、瑞希はまだ愉太郎と会う決断が出来ずに居た。
「うーん……」
未だに首を傾げて考え込んでいる瑞希。すると次の瞬間、瑞希のお腹が可愛らしい鳴き声を上げた。
「……お腹へっちゃった」
(食堂いこーっと)
瑞希は席を立ち上がり、教室を後にする。目指す場所は、食堂。
(今日は何食べよっかなー?)
今日食べる昼食に思いを馳せながら廊下を進んでいく瑞希。お昼ごはんのことを考えると少しだけ前向きな気持ちになった。
軽い足取りで食堂へ向かう瑞希。しかし、次の角を曲がった所で、瑞希の足はピタリと止まってしまった。
角を曲がった15mくらい先から愉太郎と彼の
同級生が歩いてくるのが見える。まさかのタイミングでバッティングだ。
「あっ……愉太郎……」
「ん?おお、瑞希じゃん。今日は学校来てんのな」
「え、あ、うん。ちょっと気が向いて……みたいな?」
(嘘だけどね!本当は愉太郎に会いたかったから来ただけなんだよね!)
「はは、瑞希らしいな。今から食堂か?」
「うん……ま、そー言う感じかな」
「そうか、じゃあ急がないとだな、昼休みみじけーし。引き止めて悪かった。またな」
「ううん!全然大丈夫だよ……って、行っちゃった」
去っていく愉太郎達を尻目に、瑞希はため息を一つついてから、また食堂へと向かって歩き出す。
(愉太郎と会って、話すことは出来た。けど……)
明らかに以前とは対応の距離感が違った。言葉として形容するのはとても難しいが、瑞希と愉太郎の間に、一枚の大きな壁が出来てしまったみたいだった。
(……そっか……もう前みたいに接することは出来ないんだな……)
彼の隣りに座って、彼と軽口を叩き合って、笑い合う。そんな幸せな時間も、もう二度と訪れることはない。
そう考えると、胸がギュッと締め付けられた。
涙が零れそうになる。
ふと後ろを振り返ると、愉太郎達は角を曲がらずに壁に背中を預けて、楽しそうに駄弁っていた。
頭を左右に振り。目尻に溜まった涙を飛ばす。
(……でも、しょうがないよね。ボクは、絶対に許されちゃいけないことをしたんだから。今こうして、愉太郎が幸せそうに笑ってくれているだけで、十分だよ)
瑞希は談笑する愉太郎を遠巻きに眺めながらそう自分を納得させた。
「今日暑いな。ちょっとうえ脱ぐわ」
「もう夏が顔出してきてるよな。早くね?」
「それな」
彼らはとても楽しげだが、遠くにいるため何を話しているのかが分からない。
(ボクも気持ち切り替えなきゃなぁ)
そう思い、食堂へ向かうため元の方向を向こうとしたその瞬間、愉太郎がおもむろに制服のブレザーを脱ぎ始めた。
途端に瑞希は、何故か愉太郎から目が離せなくなってしまった。
嫌な予感がする。冷汗が瑞希の頬を伝った。
何か分からないけど、とても不安で、凄く怖い。
今のうちにあの男を視界から外せと脳が警鐘を鳴らしている。
しかし、どうしても彼から目が離せない。
そうしている内に愉太郎はブレザーを脱ぎ終え、上に着ている服が半袖のシャツだけになった。
半袖になったことで露出した愉太郎の腕、瑞希の視線は吸われるように彼の左手首へ、そして、それを見た瑞希は自分の目を疑った。
「……ウソ」
横一線に走る何本もの切り傷。それはまるで、リストカットの跡のようだった。否、瑞希から見たそれは、間違いなくリストカットの跡だった。
(なんで……なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで)
頭が真っ白になった。視界が真っ暗になった。
「うわ、なにその傷」
「うわって言うな。猫にやられた」
「あー、お前最近猫飼い始めたって言ってたもんな」
「あの畜生まっっっじで言うこと聞かねぇ」
「畜生て、猫なんてそんなもんだろ」
「まーそうだけどさぁ」
手首の傷を隠そうとする素振りもなく、和気あいあいとした雰囲気を崩さないまま会話を続ける愉太郎を見て、瑞希はようやく理解した。
愉太郎の心は、既に壊れている。
ご機嫌そうに笑っていた彼はもう、正気でない。自分の異常性に気が付け無い程に気狂いしてしまっている。
愉太郎と一緒に居ることができなくても、彼が幸せならそれでいい。そう思っていた。
しかし、その自分勝手な願いはたった今、この瞬間に打ち砕かれた。
全てが手遅れだったのだ。
「ごめ……なさ……」
治まらない動悸、震える呼吸、鉛のように重くなっていた口から絞りでた声にならない声。
彼女の言葉が彼に届くことはもう、決してない。
オリ主:猫の世話が楽しい!ニーゴなんて眼中にないです。
瑞希:\(^o^)/ボクガゼンブワルインダ……
というわけでオリ主救済IF~とある少女の勘違いを添えて~でした。
私のうんちみたいな文章力で書かれた怪文書、読者の皆様の赤ワインが進んでいるのか、とても不安です。
ちなみにボヤケてる部分はコピペするか誤字報告行くかで見れます。
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