Fate/Grand Order ゴッド・オブ・サンダー ~愛と雷の彼方へ~   作:ドレッジキング

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「アベンジャーズが人類最後のマスターと共に戦うようです」と同じ世界の作品となります。まず最初に神殺しゴアのオリジンのみを投下。

※投稿時間をミスったので再投降します


プロローグ ある名もなき惑星に暮らす男の話

今日もまた祈りの時間がやってきた。というのも、ゴアの生まれた部族にとっては神への祈りは生活の一部となっている。太陽が降り注ぐこの不毛の地では食料に乏しく、毎日神への祈りを捧げる事で明日の命を繋ぐ……という日課だった。最も、幼いゴアは神など見た事もないし、直接自分や部族の前に現れた事も、ましてや神の声を聞いた事もない。それでもゴアの母は神への祈りを欠かさなかった。ゴアは母に連れられ、石で出来た神の像が聳える祭壇の前に来ている。周囲には誰もおらず、ゴアと母の二人だけだ。

 

 

「おなかすいたよ、ママ」

 

 

毎日食う物にも困る生活を送る中で、育ち盛りのゴアにとって空腹は苦痛と同義だ。しかしゴアの母は優しく自分の子を諭す。

 

 

「ここに来れば心配ないわ、愛しい子」

 

 

そんな母の言葉を受けてゴアはある事を尋ねる。

 

 

「あのリンゴはどうして食べられないの?」

 

 

ゴアの言うリンゴというのは岩で出来た祭壇の上に乗っているリンゴの事だ。最も、それは神への捧げ物なのであるがまだ無知なゴアにとっては単純な疑問だったのだろう。

 

 

「あれはこの神聖な土地のお供え物として置いておくの。そうすればきっと神様が見守ってくれるわ」

 

 

ゴアの母は自分の子供に対して岩の上に置かれたリンゴは神への供物だと説明する。信じ続ければ、信仰し続ければ神からの救いを受けられると純粋に信じている。

 

 

「それならどうしてパパが太陽熱にかかった時に神様は守ってくれなかったの?」

 

 

この大地を照り付ける太陽はゴアを始めとする部族にとっても苦しいものであった。四六時中容赦なく熱い日差しの中で生活を続けているが、それにやられて死ぬ者など決して珍しくはないからだ。

 

 

「お父さんは長く生きたわ。30年もの夏を生き延びて息子の成長を見られたじゃない。それに夜がきたらまた会えるわ。空から私たちを照らしてくれる沢山の英雄たちと一緒にね」

 

 

「でもどうして今は会えないの?神様たちはどこにいるの?」

 

 

幼いゴアにとっては分からない事だらけだった。ゴアの部族は神を信じているにも関わらず、肝心の神は姿を見せないし、神の声も聞かない。神からの恵みさえ受け取った事もない。これも純粋無垢な子供の抱く単純な疑問であろう。そしてそんな純粋な質問に対し、母は答える。

 

 

「いつかあなたの周りにも沢山見えるわ。心からちゃんと信じる事ができたらね」

 

 

「信じてるよ、ママ」

 

 

ゴアの母はそれでも神を信じる事が重要だと説く。神を信じ続ければいつの日にか会えるのだと。そんな母の言葉にゴアは頷いた。母は更に続ける。

 

 

「神々には常に敬意を表しなさい。そうすれば、ママにしてくれたように恵を与えてくださるから。ママにとってあなたが最高の恵みだわ、私の大切なゴア

 

 

そう言って息子のゴアの頭を撫でる母。自分の夫の忘れ形見であるゴアを神からの最高の恵みと言う母はゴアを愛していた。そんな母の愛に対してゴアは答えた。

 

 

「多分ね」

 

 

母からの愛を受け入れるゴアだが、彼の心の中には太陽熱で死んだ父の事が頭から離れなかった。何故神は自分たちの前に姿を見せないのか、何故神は言葉さえかけてこないのか。だがその疑問はとりあえず心の隅に置いておき、母との時間を楽しもうとした。ゴアくらいの年齢の子供にとっては母親と過ごす時間は大切だからだ。事実ゴアにとって母は何物にも代えがたい唯一無二の存在なのだから。が、そんな二人の水入らずの時間を邪魔する存在があった。母はその気配を察知し、素早く立ち上がると、ゴアを立たせる。

 

 

「立ちなさいゴア!」

 

 

「ママ……?」

 

 

殺気立つ母の様子に戸惑うゴアだが、恐ろしい唸り声が聞こえる方向に目を向けるとそこにはこの荒野に住む原住生物のサンドタイガーが二頭いた。こんな不毛の大地にさえ凶暴な肉食獣でがいるのだ。二頭のサンドタイガーは目を血走らせながらゴアと彼の母に狙いを定めていた。彼らからすれば目の前にいるゴアと彼の母は極上の餌に見えるだろう。この荒れた大地に生えてきたご馳走と言ってもいい。そんなに餓えた肉食獣から息子を守るべくゴアの母槍を構える。

 

 

「サンドタイガーだわ!走りなさいゴア!振り返ってはだめよ!」

 

 

ゴアの母は槍を振りかざして二匹のサンドタイガーに果敢に挑んでいく。ゴアは母の言いつけ通り、不自由な足を引きずりながらも必死にその場から逃げ出した。ゴアの背後ではサンドタイガーの咆哮と母の叫びが聞こえてくる。だがゴアは振り返らなかった。母は息子を守るべく奮戦するが、二匹のサンドタイガーの牙が容赦なく身体を貫いていく。そして母は息を引き取る直前、息子のゴアの事を思い浮かべていた。

 

 

(あの子に……神のご加護がありますように。……そう、私の事を見守ってくださったように)

 

 

二匹のサンドタイガーは遺体となって地に伏すゴアの母の亡骸の前で咆哮を上げていた。

 

 

 

 

 

***************************************************************

 

 

 

 

 

「すまない、これしか見つけられなかったんだ。ほら、食べて」

 

 

ゴアは僅かばかりの植物の花を身重の妻であるアッラに差し出した。洞窟の中にはゴアとアッラの間に生まれた三人の子供が寝そべっている。

 

 

「心配しないでゴア。じきに夜になる。私には分かるの、神様がきっと見てくださっている」

 

 

妻であるアッラも死んだゴアの母に劣らない信仰心の持ち主であった。毎日神への祈りを欠かさず、こうして生きられているのは神の加護のお陰だと信じている。

 

 

アッラはゴアとの間にできた四人目の子供が入っている自分のお腹をさすりながら幸せそうな表情を浮かべている。

 

 

「子供たちは寝たよ。お腹の鳴る音は聞こえるけど」

 

 

毎日が空腹に襲われる日々を送る中で、子供たちは腹を空かしている。しかし本当に生物の住めない土地であるならゴアやアッラを始めとした部族の者は生きていけないだろう。こんな不毛の大地でも食べられる物はあるのだから。

 

 

「この子は寝ないわ。きっとお父さんみたいに立派なハンターになるの」

 

 

「立派なハンター?」

 

 

アッラは大きくなった腹を手でさすりつつ、生まれてくる子供が夫であるゴアのようになる事を願っている。だがゴアはそんなアッラに対して自分達が置かれた状況を説く。

 

 

「俺達全員が飢えているじゃないか。洞窟にはソルトワームと壁に付いた少しの水分しかない。太陽なんて知るか、生きる為にはここを出ないと」

 

 

ゴアは今自分たちが住んでいる地を離れて豊かな土地へと移住する事を望んでいた。毎日の食料にも事欠き、太陽熱で苦しみながら生活を送るのはアッラや子供たちにとってもよくないと思っていたのだろう。一家を支える大黒柱となった今のゴアには守るべき者があるのだから。そんなゴアに対してアッラは語り掛ける。

 

 

「聞いてゴア。神様はきっと与えてくれるわ。今までもそうだったように。あなたの人生を委ねればいいの落ち着いて……彼らの声を聞くのよ」

 

 

母と同じく、信仰に生きるアッラもゴアに対して神を信じる事の重要さを説く。確かにアッラという女性に巡り合えたこと、そして三人の子宝に恵まれた上に、また新たな命がアッラの腹に宿っている。彼女と出会い、家族が出来た事は紛れもない事実だ。しかしゴアには家長として、夫として家族を養っていかねばならない。今でこそ母の気持ちが理解できた。そう、サンドタイガーから守る為に、身を挺して自分を救ってくれた時のように。が、その時大地が大きく揺れ始めた。ゴアとアッラは何が起きたのか理解できぬまま、揺れる大地に翻弄される。

 

 

「アッラ…」

 

 

「ゴア!?何が……!?」

 

 

その時、アッラの立っていた足場が崩れ去り、彼女は下に落下してしまう。ゴアは咄嗟に妻の手を掴もうとしたが間に合わずアッラは大地に出来た裂け目に向かって落下していく。

 

 

「アッラ!!!」

 

 

ゴアは落ちていく妻を見て叫ぶ。

 

 

「神様、どうか……!」

 

 

神への助けの声も空しく、アッラは地の底の闇へと消えて行った。まだ生まれていない命を腹に宿した状態で……。

 

 

 

 

 

 

*******************************************************************

 

 

 

アッラが地の底に落下してから数か月が経過した。彼女との間にできた子供たちも餓死と太陽熱で死に、ゴアは最後に残った息子であるアガーを抱いて、仲間の部族と共に豊かな土地を目指して歩いていた。容赦なく照り付ける太陽に焼かれつつ、ゴアは息子をしっかりと抱いた状態で歩き続ける。ゴアは生まれつき不自由な足を持つが、息子の為に懸命に歩いた。他の部族たちも似たようなものだ。皆一様に痩せこけた肉体を持ち、荒野をさまよい歩く。

 

 

「ママ?ママはどこ?」

 

 

息子であるアガーは母であるアッラがどこにいるのかをゴアに聞いた。意識が朦朧としてるようで、体力も底を突きかけているのだろう。幼いアガーは体力に劣るため、こうした過酷な環境下では生きる事は難しい。そんなアガーに対してゴアは優しく語り掛ける。

 

 

「お母さんは7つ前の砂嵐のときにお別れしたよアガー。少し休みなさい。もうすぐ着くからね」

 

 

「ママは…死んじゃったの?太陽熱で死んじゃったお姉さんたちみたいに、パックみたいに。僕ね、言ったんだよパパ。そんなに石を食べちゃダメだって」

 

 

凄まじい程の上は時に正常な判断を狂わせる。洞窟にへばり付いたソルトワームでは足りず、石も食べていたのだ。

 

 

「休みなさい、じきに着くから」

 

 

父も死に、母も死に、妻であるアッラも死に、他の子供たちも死んだゴアにとってアガーは最後の家族だ。神への祈りを続けても、信じ続けても自分の家族を奪われてきたゴア。自分の中にある神への信仰心は最早僅かしか残っていない。

 

 

「次の丘を越えたすぐ先に森が見えるよ」

 

 

ゴアは息子のアガーを少しでも生き延びさせたいが為に、嘘を付いた。森が見えるなどという言葉は真っ赤な嘘であるが、そんな嘘でさえも息子に生きるという希望を抱いて欲しいという意味が込められている。

 

 

「滝もあるの?水の音が聞こえる気がするよ」

 

 

「ああ、もちろんだ。実がたくさん成った木もある。きっと食べきれないほどだ。少しだけ目を閉じていなさい。そうすればもうお腹が空くことは二度とないから」

 

 

そう言ってアガーを寝かせるゴア。下らない嘘、小さな嘘、目の前に広がるのは荒野ばかりで森などあるわけがない。だがゴアはそれでも息子に希望を持たせるため、少しでも生きたいという気力を沸かせるため、嘘をつく事を厭わなかった。これ以上家族を――かけがえのない者を喪いたくはないのだから。だが暫く歩いていく内にアガーの身体が冷たくなっているのに気づく。天から降り注ぐ焼け付くような太陽の日差しを浴びていても、冷たくなった息子の身体の感触が嫌という程に理解できた。いつ消えてもおかしくなかった命の灯が今消えてしまったのだ。いや、ゴアが気付く前からとうにそうだったかもしれない。ゴアは息子の死を受け入れつつ、部族の者たちが休息を取っている場へと辿り着き、アガーの遺体を地中に埋葬し始める。

 

「アガー…もう涙も出ないほど渇ききってしまった」

 

 

父が、母が、妻が、他の子供たちが、そして最後に残った息子のアガーまでもが死んだ。それでもゴアは涙を流せなかった。最早流す涙さえも失ったのかと思うと悲しくなるが、同時に自分が一人ぼっちになってしまった事を自覚した。両親と死別し、アッラと出会うまではゴアは天涯孤独の身であったが今再びゴアは一人になった。

 

 

「すまない息子よ。こんな不幸な世界に連れてきてしまったことを許してくれ」

 

 

ゴアは息子であるアガーの遺体に土をかけながらこの苦痛に満ちた荒野の世界に産み落とした事を詫びていた。こんな荒れ果てた大地に生まれてさえいなければ生き残れたかもしれない。だが太陽熱と飢餓によってアガーは死んだ。が、息子の遺体を埋葬しているゴアに対して族長のルゴックが口を挟んでくる。

 

「こんなことはやめるんだゴア……」

 

 

「放っておいてくれルゴック。俺の最後の息子にゆっくりお別れをさせてくれ」

 

 

ルゴックが口を挟んできた理由はゴアも理解している。部族の風習で遺体を土の中に埋めるのは忌むべき行為と見なされているからだ。

 

 

「こんなことは間違ってる!息子の遺体を埋めるなんて禁忌だぞ。遺体は木に吊るさなければ神々が見つけて天に連れて行ってもらえないじゃないか?」

 

 

だがゴアとしては照り付ける太陽の下に息子の遺体を晒し者にするのは耐えられなかった。生前の時点でさえ大人の命さえも奪う太陽熱に晒され続けたアガーを、死後も太陽光を浴びせ続けるのは余りにも惨すぎるではないか……そう考えたからこそ彼はこうして墓を作っているのである。しかしそんな思いとは裏腹にルゴックは反対するばかりであった。

 

「お前の冒涜に息子の魂を犠牲にするんじゃない。土の中でミミズのように永遠を過ごさせるなんて彼の母親のようにさせてはいけない」

 

 

母……というのはアッラの事だ。突如起きた地割れで地中に真っ逆さまに落ちて命を落としたアッラの亡骸は今でも地中にある。部族の習わしからすればアッラの魂は天の神に見つけてもらえず、永遠に土の中で生き続けているのだ。が、ゴアはそんなルゴックに対してこう言い放つ。

 

 

「俺達は皆呪われている」

 

 

「なんだって?」

 

 

自分の家族が全て死に絶え、残されたゴアには最早神への信仰心など存在しなかった。信じ続けて……信じ続けてきた結末がこれだというのであれば……。

 

 

「現実を見ろ、この無知なクソ野郎が!俺たちは洞窟から洞窟に移動しながら石の底に溜まった僅かなスライムを食べてしのいでいきた。失った者たちを後に残しながら沈まない太陽の下をずっとな!俺達は皆、飢えて燃え尽きるんだよ!ありもしない天罰のことなんて忘れろ!もうすでに俺達は呪われているんだ!この土地で!この瞬間に!」

 

 

幼い頃から神々を信じ続けるように言われてきたが、そんな事はもう関係なかった。愛する者は全て死に、残されたのは自分一人だけ。ゴアはやり場のない怒りをぶつける以外に方法がなかった。

 

 

「口を慎めゴア。神々は一語一句聞いておられるぞ」

 

 

ルゴックはゴアの暴言に対して警告するが尚もゴアの憤りは収まらない。

 

 

「俺の母が信じた者の眼前で生きたまま喰われながら祈っていたときのように?生涯を信仰に捧げた俺の妻はどうなった?お腹に子供を抱えながら地面の下に消えていったんだぞ?」

 

 

神々へ祈っても意味がないのであれば、それはもう無に祈っているのと同義だ。そもそも神など最初から存在しなかったのではないか。祈り続けて、信じ続けて、救いを求め続けても神の声など聞こえないし、天からの恵みも現れない。この大地で生きる気力を持ち続ける為に神という架空の存在をでっちあげて、それを精神的な拠り所にしていたに過ぎなかったのでは?最初から神などいないのであれば信じ続ける義務もない。

 

 

「ゴア、そこまでだ」

 

 

だがルゴックの警告を無視してゴアは彼の後ろにいる仲間の部族たちに言う。

 

 

「お前達は毎日祈ってるよな?食べ物と水!それに安心して眠れる夜をな!それでも与えられるのは更なる太陽!試練!」

 

 

「やめろと言っているだろう!!」

 

 

遂に堪忍袋の緒が切れたのかルゴックが叫ぶが時既に遅し……ゴアの言葉は止まらない。

 

 

「お前らの祈りが届かないのはそもそも神様などいないからだ。今までもこれからもな!我々を作った神も見守ってくれる神もいない。誰の祈りも届きやしない。ここは俺達しかいなんだ。それをさっさと受け入れて……」

 

 

が、神への冒涜の言葉を吐き続けるゴアの頭に石が飛んできて彼に当たる。

 

 

「ぐ!?」

 

部族の者たちは神への信仰を失ったゴアに対して投石を始めた。彼らの信心深さは本能にまで刻み付けられている。であればそんな彼らの前で神など存在しないと言えばどうなるかはゴア自身も理解できていただろう。だが最後の息子であるアガーを喪ったゴアは、行き場のない怒りとやるせなさを吐き出す以外に道はなかったのだが。

 

「この冒涜者め!」

 

 

「神にこいつの戯言が聞こえちまう前に殺してしまえ!」

 

 

「きっと黒い神の使いだ!奴の不自由な足をみればわかる」

 

 

「奴を喰っちまえ!」

 

 

部族の者たちは落ちている石を次々とゴアに投げつけ、ゴアは彼らの投げる石に当たり続けた。が、族長のルゴックはゴアに対する投石を止めさせた。

 

「ダメだ!誰も奴に触れてはならない!奴は穢れている。そしてこの時をもって奴を追放する。お前の魂に神々の慈悲が下ると良いなゴア」

 

ルゴックは地面に倒れ伏すゴアを見下ろしながら言う。

 

「まあ、太陽は見過ごしてはくれないだろうがな」

 

そう言うとルゴックは仲間の部族を連れてその場を去り、地面に倒れるゴアだけが残された。

 

 

 

 

*******************************************************************

 

 

部族を追放されてからゴアは一人で荒野を彷徨い続けた。部族というコミュニティの中で生活していたからこそ今日まで生き延びられ続けたが、たった一人で生きていける程この大地は甘く無い。ゴアは天からの直射日光と飢えに苦しみ、地面を這いながら大地を進んでいた。もうゴアには生きる希望も気力もない。これまで神に祈って来た自分の人生はなんだったのか。結局神はいなかったし、助けの手もなかった。

 

「ハァ…ハァ…うぅ…疲れた…アッラ…もう……死にたい……」

 

地面の底に消えた妻であるアッラを思い出し、ゴアは静かに死ぬのを待っていた。

 

 

「天国も…地獄もない…なら死ねば…もう二度と考えなくて良いんだ…。感じることもない…ただの…暗闇…ただの暗闇だけが…永遠に続く…頼む…それだけが望みだ……」

 

この不毛な大地で生きる上では常に苦しみが付きまとってきた。だが死ねばそんな苦痛からも解放される。神々への信仰を続けてきても、愛する家族は全て死に、残されたのは自分だけ。なら何もない無の世界に行けた方がどれほど楽か。ゴアはそう思いながら自分の死を待ちわびていた。が、その時天から何かが落ちて来たのをゴアはハッキリと見た。まるで星が落ちてきたかのように見えたが、落下した物体は大地に到達すると猛烈な爆発を発生させた。落下地点には爆炎と轟音が轟き、その衝撃によって巨大なクレーターが出来上がると同時に大量の砂塵が巻き起こる。

 

 

「穏やかに…死ぬこともできない」

 

 

地面に伏していたゴアは死ぬのを待っていたが、突如として空から落ちてきた落下物に邪魔される形となってしまう。ゴアは地面にできたクレーターの中に何かがあるのを見ると、それに近付いていく。

 

 

「何だあれは……?」

 

 

ゴアがクレーターの中心部で見たのは金色の鎧を纏った存在と漆黒の鎧を纏った存在だった。金色の鎧の存在は自分の剣を漆黒の鎧の存在の頭に、そして漆黒の鎧の存在は自分の剣で金色の鎧の存在の胸を貫いていた。ゴアは二つの存在を見た瞬間、本能的にそれが"神"だと理解した。部族の伝承に伝わる金の神と黒の神…。目の前の存在はその二つの神そのものだったからだ。

 

 

「神だ…神はいたんだ、ずっと…」

 

今まで祈りを繰り返しても現れなかった神という存在。それが今ゴアの目の前に現れた。これが神でなくて何だというのだ。ゴアはクレーターの中心に倒れる二つの神に近付いていく。そして金色の鎧を纏った神が口を開く。

 

「うぅ…ハァハァ…」

 

「お、おい。話せるか…?」

 

神が言葉を話せたのを目の当たりにしたゴアは金色の神に話しかけてみる。すると金色の神は自分の手を伸ばしながらゴアに助けを求めてきた。

 

「助けてくれ…」

 

「助ける……だと……?」

 

が、ゴアは金色の神の言葉を聞き、自分の中に何かが生まれてくるのを感じ取った。

 

 

――――――助けてくれだと……?

 

――――――助ける……?

 

――――――助けて……?

 

――――――助け……

 

「どの口が……!」

 

ゴアはその瞬間に神に対する怒りが爆発した。神々は存在していた。なのに何故今まで信じ続けた者たちを救わなかったのか。この大地で生きていく事がどれ程過酷なのか、そんな生活から救われたい一心で祈る者が生半可な思いで信仰しているわけがない。ゴアは金色の神に詰め寄り、自分の抱く怒りを吐く。それは神々を信仰する事を教えられ、神を信じ続けたにも関わらず父を、母を、妻を、子供たちを、そしてアガーを救うことさえしなかった神への純粋なる怒りだった。ゴアは不自由な足を引きずりつつ、地面に倒れている神に詰め寄る。

 

「今までどこにいたんだ!?子供たちが飢えているときも、妻が助けを求めて叫んでいたときも!俺の母が動物のように屠られていたときは!?神々の慈悲が一番必要だったとき、一体どこにいたんだ!?」

 

 

ゴアの怒りは収まらない。抑える事ができない。ゴアが祈りを捧げていた時には何も助けなかった癖に、自分が命の危機に瀕すればこちらに助けを求めてくる。そしてそんなゴアの怒りに呼応したかのように黒い鎧の神の剣が液体のように変形していく。それはまるで意思を持つ生き物であるかのように、ゴアに向かってきたのだ。

 

「ぐああ!!な、何だ…?離れろ!」

 

 

ゴアは不気味な黒い流体と化した黒い神の剣が自分に向かってきた事に驚くが、やがてそれはゴアの手に収まり、彼の手には黒いナイフが握られていた。そしてゴアはそれを用いて金色の神を切り刻む。自分がそのナイフでどうるすべきか、何をするべきなのかを理解していたからだ。そしてゴアは金色の神の返り血を浴びつつ、空を見上げる。先程まで飢えに苦しんでいたにも関わらず、黒い神の剣と融合した事により自分の中に力が溢れるのを感じていた。液体と化した黒い剣がいつの間にか自分の肉体と"同化"していたのだ。

 

 

――――――遥か昔、名もなき場所にそれは空から落ちて来た。俺はそれを拾い……最初の神を殺した。

 

 

 

――――――奴らの地を浴びて立ちながら俺の単純な頭にある疑問が浮かんだ…。

 

 

 

――――――まだ他にもいるのだろうか?




最近、FGOのオープニングテーマである躍動の歌詞がゴアに合っているような気がしてきました。
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