桐ケ谷深澄の冒険   作:三毛の高志

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キリミト姉弟設定第11話です。攻略会議を聞いてキリミトが何を思うか。かなりあっさりですが読んでいただけると嬉しいです。


2人と独り

 

 

ソードアート・オンラインがデスゲームと化してからおよそ一か月。ミトたち3人はホルンカの村からトールバーナに拠点を移し、迷宮区攻略に勤しんでいた。

そして──────────遂にSAO初となるフロアボス攻略会議が開催されると言う情報が3人の元にも届けられた。

 

「フロアボスかぁなんだか不思議な感じ」

 

「なにが不思議なんだ?」

 

「だって、第1層の最後の敵ってことでしょう?なんだか遠いところまで来た気がして」

 

草原を吹く風に髪を靡かせながらアスナがため息を漏らす。確かに初めてRPGをプレイする彼女にとってみれば、ゲーム攻略自体が未知の出来事の連続なのだ。ボスを倒して次の階層へ向かう、ということにイマイチ実感を持てていなかったのかも知れない。

 

「まだ気を抜くのは早いぞアスナ。そもそも今日の会議でメンバーが集まらなければボス攻略自体延期だろうしな」

 

「たぶんそれは大丈夫よ」

 

「そうなの?」

 

「ええ。ここ何日かトールバーナに来る人が増えてるし迷宮区で見かけるパーティも多くなったわ。

………それに、アイツが発起人なら人数は集まるでしょ」

 

「?アイツって?」

 

「今回の主催者の事知ってるのか?」

 

ミトの台詞にキリトとアスナがそろって首をかしげる。キリトが中性的な顔立ちのせいで、まるで姉妹のようだ。

現実世界でも、直葉と和人が並んでいるとよく姉妹に間違えられていたっけ。

 

「ディアベル。ベータテスト時代に私とコンビを組んでいたプレイヤーよ」

 

「「は????」」

 

 

*********

 

 

「キリト君、ミトのアレどういう事だと思う?」ヒソヒソ

 

「分からない。姉貴が誰かとコンビを組んでるなんて全然知らなかった」ヒソヒソ

 

ミトがポーションの買い出しに行っている間、アスナとキリトは路地裏に身を潜めて声を潜めていた。

 

「キリト君は、そのディアベルって人の事は知らないの?」

 

「ベータの時に見かけた覚えはないな。9回あったボス戦は全部参加したけど、そんな名前の奴は見かけなかった。あとミトもボス攻略には参加してなかったよ」

 

「え?ミトって攻略プレイヤーじゃなかったの?」

 

「う~ん。そこはミトに聞いてみないと分からない。正直お互いにベータテスターだってことも知らなかったし。最前線で戦えるくらいにはレベルも高かったはずだけど」

 

同じ家に住んでいて、同じゲームをやっていることに気付かないとはどういう事か。というか上二人がそろってゲームにのめり込んでいる間一人ぼっちだったであろう妹ちゃんは大丈夫なのだろうか。

 

「…………私が言うのもなんだけどさ。キリト君とミトはもっと家族とコミュニケーションとった方がいいよ?」

 

「う、うるさいな。………………………帰ったらちゃんと話すよ」

 

「………………うん。約束ね」

 

キリトもSAOに来てから少しずつ変わっているようだし、きっと大丈夫だろう。

帰ったら。その未来が来るように頑張らなくちゃ。

 

 

 

「………それは兎も角。結局、実際会ってみるしかないよな」

 

「そうね。ここで悶々としてても仕方ないわ」

 

「「ディアベルって男がミトにふさわしいか見極めてやる──────!!」」

 

 

*********

 

 

 

「こん中にも!何人か詫び入れなあかんやつがおるはずや!!」

 

そんな一言から始まったキバオウの演説を私は冷ややかな目で見つめていた。

ベータテスターの責任?彼らが情報を共有していれば死なずに済んだ?ゲーム攻略がもっと早く進んでいた?

ふざけるな。あの日、はじまりの街の広場の混乱を目にしておきながら、そんなことを言えるのか。

1万人のほとんどがパニックを起こし、座り込むものや、周囲に当たり散らす者までいた。その後もそうだ。今までの生活を奪われたという絶望感に、何もできないプレイヤーが大半を占めたのだ。

そして、そうでない者たちは我先にと攻略に乗り出していった。………私たちでさえ、自分たちの安全のために一刻も早くレベルを上げようと躍起になっていた。

そんな状態で誰がプレイヤーをまとめ上げられると言うのか。

大半が戦う意志などなく、残った者たちも周りを気にする余裕などない状況で。

────────一体だれが、プレイヤーをまとめた攻略集団など作れると言うのか。

 

「くだらない。いい年こいた大人が、在りもしない幻想に囚われるな」

 

名前も知らない誰かを救う、なんて。

そんな事、出来るなら初めからやっている。

 

 

*********

 

 

「そいつらに土下座さして、有り金全部吐き出してもらわな背中は預けられんし、預かれん!ワイはそういうとるんや!!」

 

そんな言葉で締めくくられたキバオウの演説を俺は胸を抉られるような思いで聞いていた。

彼の言う通り、俺はこれまで自分たちの安全だけを考えて行動していた。実際、初心者だったクラインとその仲間を見捨ててきたのだ。ミトやアスナが居なければ、間違いなくソロプレイヤーとして効率のいい狩場等の情報を共有せず、レベリングに勤しんでいたことだろう。

そもそも。見知らぬ誰かを助けようなんてこと。考えもしなかった。

ミトとアスナを守ることで精一杯だった。そもそも俺はまだ中学生なんだ。

色んな言い訳が頭をよぎる。その事実さえ、俺自身が以下に矮小な人間かを見せつけてくるようだ。

結局のところ。俺は他人に興味なんてないのだ。

両親が本当の両親でないと知ったあの日から。そして、全く血のつながりのない姉ができたあの日から。

俺は、他人とつながると言うことがどういうことなのか、分からなくなった。

少しは改善されたと思っていたのに、なにも変わらなかった。俺は独りよがりな自己中心的な人間なのだ。

 

「違うよ」

 

「え……」

 

深く深く呑まれていく思考を手を包み込む温もりが遮った。

 

「キリト君がなにを考えてるか、少しだけ分かるから。キリト君は冷たいヒトなんかじゃないよ。

────────だって私を助けてくれたもの。自分の命さえ危ない状況で、必死に知恵を絞って、私をネペントの大群から助けてくれた。そんな人がキバオウさんの言う利己的なベータテスターなわけないよ」

 

「あれは別に、意識してやったわけじゃ………」

 

「無意識にできることが、君が優しいことの証明だよ」

 

そう言ってぎゅっと俺の手を握るアスナの手は少し熱くて。フードから除く頬もほんのりと赤い気がする。

そんな彼女を、無性に抱きしめたくなって、でも俺にそんなことをする度胸はないので。

 

「ありがとう、アスナ………」

 

気の利かない礼を返すくらいしかできなかった。

 

 

*********

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひっそりと交わされるキリトとアスナのやり取りに、私はそっと息を吐いた。

大丈夫だ。この二人は、私なんかいなくてもやっていける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから、この『予感』に怯える必要は、もうない

 

 

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