ヤマ娘 ~Crazy Derby~   作:灰の熊猫

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『波嵐』

「おーっほっほっほ! ようやく、ようやく公式戦で会えたわね、ドロップスティアーさん!」

「あ、どうもキングさん。調子良さそうですね」

「当然! 初の重賞だからと言って、気負う様なキングじゃないわ!」

 

 GⅢレース・東京スポーツ杯ジュニアステークス当日。パドックへ続く地下通路にて、キングヘイローとドロップスティアーは顔を合わせていた。

 実の所、キングヘイローの態度は半分はハッタリである。メイクデビューでは二分の一バ身差とかなり危うい所ではあったし、黄菊賞も一バ身差。”キング”と名乗るからには、もっと余裕を持った圧勝を見せつけたい。

 調子も調整も良好ではあるが、その状態で挑む初重賞はそこそこにプレッシャーだった。が、目の前にいる同級生はちょっとした清涼剤になっていた。

 

「そういうそちらこそ、大丈夫なの? 前走はあと一歩だったとはいえ、二連敗から重賞でしょう? 緊張していない訳は無いでしょうに」

「へ? してないですけど」

「していないの!?」

 

 ドロップスティアー。キングヘイローの常識の外からやってきた非常識ウマ娘にして、頭痛のタネ。レースを知らない世界出身による彼女の奇行は数知れず、キングヘイローが『おばか』と言った相手ランキング一位を独占しているウマ娘である。

 キングヘイローは面倒見が良い。面倒見の良さ故に同期では苦労人ポジションを回されてしまうのだが、逆に言えば自分以外の誰かの面倒を見る時に余裕が生まれる。

 なので、重賞という大舞台を見知った同期と――しかも、自分が明確に面倒を見てあげている相手と迎えた事で、ある程度緊張が抜けていた。

 

「重賞だろうが軽賞だろうが、走る事に変わりは無いでしょ?」

「軽賞って何よ!? 無いわよそんなレース! あなた本当にいつも通りで安心してる反面、ちょっと不安よ!?」

 

 何の気負いも無い、いつも通りのやり取りが交わされる。重賞レース直前だと言うのに、本当にドロップスティアーはまるで変わらない。

 本気で走りに来たんだろうか。旅行感覚で来たんじゃないのか。そんな不安すら湧き上がる程、ドロップスティアーの肩に力は入っていなかった。ゆるゆるだった。

 

「……んもう! そんなので大丈夫なんでしょうね! もしもライブでこのキングと肩を並べる事があった時、また踊りもしないとか許さないわよ、おばか!」

 

 思い出されるのは、偽装ライブ放棄事件。カラオケ店できっちりと指導し、何気にそれから後もダンスレッスンの時間をちょくちょく合わせて共に踊るなど、キングヘイローは本当にこれまでドロップスティアーの面倒を見まくっていた。

 全てはこの様な時――同じレースで出走した時の為。もしもこの娘が自分の横でライブをする時に、無様を晒されては困る為。いやまぁ、純粋にこの問題児が心配なのもあるのだが。

 

「大丈夫ですって、ちゃんとレッスンの成果は見せますから」

「あのねぇ、そんな気楽に――ん? それって……」

「立ちますよ、ライブ。()()()()()

 

 空気に、ぴりっとした感覚が混じる。キングヘイローの肌が、一瞬逆立つ。

 ドロップスティアーは、微笑んでいた。微笑みながら、()()()()した。

 ライブのセンターを踊る。()()()()()と、これ以上無く強い言葉で。

 

「――ふ、ふふふっ。面白いわね、ドロップスティアーさん。本気であなた、このキングに勝つ気で来た、と言っている訳?」

「えっ、はい。だって、キングさんが教えてくれたんじゃないですか。一着の振り付け」

「……上等じゃない」

 

 キングヘイローは別にドロップスティアーを甘く見ているつもりは無い。確かに出会った当時は、弱すぎて保健室に運んだレベルの相手だった。

 だが、メイクデビューでは明確に力を付けて、誰にも出来ないだろう技を用いて勝利した。そこからは二連敗しているとはいえ、逆に言えば自分よりレース経験は多い。

 しかし、負けるとは思っていない。彼女の弱点は、そっくりそのまま自分の長所――最終直線の末脚だ。この東京レース場において、そこで負けるつもりは無い。

 

「その言葉、後悔させてあげるわよ。このキングを甘く見た事も、ね」

「あっ、すみません言い過ぎました。後悔してます。許してください」

「早いわよ後悔が! 強気なの弱気なの、どっちかにしなさいおばか!」

 

 さっき一瞬感じた緊張感は一体なんだったのか。一瞬にしてドロップスティアーは自分の発言に謝罪する。変わり身の術かと言わんばかりの言葉の旋回速度だ。

 本当に掴み所の無いウマ娘だ。自由気ままという点で言えばセイウンスカイと似た所はあるのだが、行動と言動の予測に関しては比較にならない程に出来ない。

 出走前の緊張が解けたという点では助かったのだが――しかし。

 

「……後悔はしてる。けど、()()()()()()のね?」

「はい」

 

 このウマ娘は、素直だ。嘘は吐かない。それをキングヘイローは知っている。

 『言い過ぎたから後悔した』とは、『言ったけれど間違ってはいない』の裏返しになる。このウマ娘の思考回路から来る言動は、ここ数ヶ月の付き合いで散々思い知った。

 本気で勝つ気で、ここに来た。どんなに態度が軽かろうが、そこはブレていない。それを確かめて、キングヘイローは――笑った。

 

「――おーっほっほっほ! いいわ! 私のライバルの一人として認めてあげる! 良いレースにしましょうか!」

「え゛。出来れば他の方を警戒してくれると助かるんですけど」

「あなた本当にブレないわね!?」

 

 自分から喧嘩を売っておいて、意識はしないで欲しいと言う。彼女の思考から考えれば、”自分が勝ちにくくなるから”という打算からの言葉だろう。

 勝ち方にスタイルやプライドは必要無い、キングヘイローとは真逆の姿勢。水と油――と言うには、向こうは別に反発せず従ってくれるのだが、決して混じり合わない思考。

 なんかもう、走る前から疲れてしまいそうだ。言う事も言ったし、さっさとパドック行こう。キングヘイローは、宣戦布告を受けた直後にも関わらず、なんか逆にリラックスしてしまっていた。

 

「あ、キングさん。最後に一つ、いいですか?」

「何よ。早くパドック行かないとまずいわよ?」

「雨。好きですか?」

「はぁ? 好きな訳無いでしょう、髪もべたつくし、化粧も落ちるし……良い事なんか一つも無いわよ」

「……ですよねぇー」

 

 急に何を言い出すのか。確かに()()()()が続いており、キングヘイローの気分はそれでほんの少し悪い。

 走るにも過ごすにも、晴れるに越した事は無い。そんな当然の事を何故聞くのか、よくわからないままキングヘイローはパドックへと向かった。

 

「――()()()()()()んですよ」

 

 キングヘイローが小雨の降る暗雲の下に出た後、最後の言葉は風で届かなかった。

 

  ◆  ◆  ◆

 

 東京スポーツ杯ジュニアステークス。この日の東京レース場は、誰が見てもわかる程の重バ場だった。

 局地的低気圧が到来し、かなりの雨が数日前より今日に至るまで降り続けている。数日前はまさしく大雨といった有様だったが、今日は小雨が降るに留まっている。

 それでも、コースのコンディションは限りなく悪い。重賞レースは基本的にその日の最後半に回される物であり、この東スポ杯も第十一レース。速度を競う芝レースでありながら、水を大量に吸った芝は足に絡みつく様に重く、それまで行われていたレースの足跡によって散々に荒らされている。

 このレースで一つだけ確かなのは、この状態で速く走る事は不可能だという事だけだ。

 

《八番、キングヘイロー。一番人気です》

 

 パドックに姿を見せたキングヘイローは、あからさまにジャージを大きく脱ぎ捨ててアピールする。自分こそキング、今日の勝利者。雨など関係無い、そう無言で語るべく。

 そして無言で語った後、やっぱりいつもの高笑いを浮かべた。キングたるもの、笑みを崩してはならぬ。キングヘイローにとって、この高笑いはぶっちゃけいつもの癖になっていた。

 とはいえ、その顔色は良好。少し前に出走した黄菊賞での疲労は、完全に抜け切っているのがわかる。実の所、雨で体操服が濡れていく感覚にちょっと嫌な思いをしているので、本人はさっさとジャージを着直して戻りたいのだが。

 

《九番、ドロップスティアー。九番人気です》

 

 あくまで優雅に見える様に、余裕を持って。身を翻したキングヘイローはジャージを拾って早めに着直して戻る。これ以上濡れたくないし。

 それにすれ違う形で、ドロップスティアーが現れる。九番、即ち外側。内側からバ群の動きを強制させる様に走るドロップスティアーにとって、不利な枠を回されてしまっていた。

 ドロップスティアーも前に倣い、ジャージを大きく脱ぎ捨て――()()()()()()()()()

 

《……はい?》

 

 そして、いそいそと()()()()()()。そしてドヤ顔を浮かべて、さらっと帰った。

 パドックでは自分の仕上がりを見せる為に、ジャージを脱いで自身のレース直前の姿を見せる必要がある。だから脱いで見せた。()()()()()()()()()。そういう気持ちで、一瞬しか自分の姿を見せなかったドロップスティアーは誰よりも早くパドックを終えた。

 

「――って! 何してるの、おばかーっ!!」

「えっ、何って……パドックってこうすればいいんですよね?」

「良くないわよ! もう少し……こう! 時間を取って、自分をアピールするのがパドックという物でしょうに!」

「だって、長い間ジャージ脱いで濡れたくないですし……」

「気持ちはわかるけれど! わかるけれどねぇぇぇ!!」

 

 神速とすら言っていいパドックを、キングヘイローは後ろから目撃していた。王は見た。

 恐らく、トゥインクル・シリーズの歴史でもここまで短いパドックは無かっただろう。確かに彼女はジャージを脱ぎ捨て、自分の姿を見せた。そこまでは義務だからやった。

 だが、()()()()()()()()()()()()()()()は無い。なのでドロップスティアーは、少しでも自分が濡れるのを防ぐべく、この様な動きを取った。

 理屈はわかる。だが、実際にやるウマ娘が居るかどうかで言えば、間違いなく前例も後例も無いだろう。

 

「……はぁぁ……私を倒すって意気の時の、ちょっと油断ならないかなって感じのあなたはどこへ行ったの……」

「自分はいつだって自分ですよ。我思う、故に我在りですよ」

「その言葉は『自分勝手にやっていい』って意味じゃないわよぉ!」

 

 ぎゃーぎゃー。十番のウマ娘がパドックで姿を見せている中、キングヘイローのお叱りの声は外にまで聞こえていた。

 観客もこれにはどういう顔をしていいのかわからなかった。一番人気の後に出てきたウマ娘故に、彼女は無駄に注目を浴びてしまっていたから。実況もドロップスティアーが帰った後、何が起きたか理解し切れず一時沈黙してしまった。

 

「まぁまぁ、そう怒らないで。さっさとゲート行きましょうよキングさん、お隣さん同士仲良くしましょう?」

「この流れを作ったあなたのゲートの横なの嫌なのだけれど!? 冗談でしょう!? こんな空気の中、私の初重賞が始まるワケ!? あぁ、んもぉー!」

 

 キングヘイローはドロップスティアーにとって天敵である。が、逆にドロップスティアーもキングヘイローの天敵であった。一度調子に乗らせたドロップスティアーを止める事は難しい。

 これがセイウンスカイとは一番異なる点だ。マイペースはマイペースでも、派手に周囲を巻き込んで注目を浴びて、そしてなんら自分の行為を恥じない。しかも、形式的な規則は破らない。

 呑まれてしまっている。レース前だと言うのに、これまで通りの日常に呑まれてしまっている。初重賞の気負いなど、もうどこにも無くなってしまっていた。

 

「東京スポーツ杯ジュニアステークス、左回り、東京レース場の芝1800メートル。このレース場での1800・2000は、普段は内側が有利とされている」

「どうした急に」

 

 その一方で、最前列で眺めている観客の内二人が何の脈絡も無い会話を始める。ちなみにこの二人の見た目は、メガネを付けた白シャツ・緑髪のパーカーを着たお兄さんとは違う。

 

「天皇賞・秋で有名な2000メートルとは異なるが、第二コーナーより外れたゲート近くの脇ポケットからスタートする点は同じ。2000と異なるのは最初のコーナーの角度が斜めに緩く、向正面の最初でスピードを乗せやすい」

「最初のコーナーで内を争う事は変わらないが、位置取りがしやすい。レース経験の少ないジュニア級ではコーナー争いが比較的楽になる、って事だな」

 

 レースオタクとも言うべき二人の会話は概ね正しい。この構造は、中京レース場の1600メートルに極めて類似している。

 ただ、東京レース場の場合はホーム・バックストレッチが長い。遠心力の働くコーナーのライン取りで楽をしたい以上、向正面が長い事は、それだけポジション争いが起こりやすい事に直結する。

 詰まる所。この1800メートルは、最初のコーナーを一番前で抜けた者が有利で楽が出来る。それも最終直線と坂が長く、後半勝負になりやすいこのコースで。

 

(――だけれど。キングはそんな事、気にはしないわ)

 

 そんな事は重賞に出走するウマ娘なら全て知っている。内側の先行バは、ほぼ確実に最初のコーナーを早く抜け、向正面の終わりまでに自分達が有利なポジションを取ろうとするだろう。

 しかし、差しウマは最後の最後、最終ラインを誰よりも真っ直ぐ早く駆け抜ける事に集中する。よって無理をする必要が無く、向正面のポジション争いのスピードに引っ張られないように自分のペースを考えれば良い。

 何よりこのレース・この日に限って言えば、外枠の不利は殆ど無いと言って良い。

 

(返しウマでも思ったけれど。やっぱり、内側の荒れ方が酷いわ)

 

 バ場状態を確かめるべく、ウォーミングアップで軽くコースを走って気付いた事。それは当然、コースの荒れ具合だ。

 内側のポジション争いとなるこのレースで、現在第十一レース。都合十回も踏み荒らされた内側のレーンは、酷く傷付けられている。走れば、抉られた芝に足を取られるだけだ。

 よって重要なのは、内過ぎでも外過ぎでも無いラインを取って走り切る事。そう考えれば、最後まで控えて冷静にコース状況を眺められる後方策――差しは、最初に外に回されてもなんら問題は無い。

 

(……ドロップスティアーさんは大丈夫かしら)

 

 誰よりも早めにゲート入りした、自分の同期。好調とか不調とか、ある種そういった概念すら超越した存在。

 しかし、今回の出走者は十二人。明らかに不調そうな三人を除くと、観客から見ての実力は人気が示す通りとしか思われていない。つまり出走する十二人中、九番手の力しか持っていないと評価されている。

 他者からの目というのはプレッシャーだ。最高人気も、最低人気も。容赦無く能力を評価する他者の目や会話は、自分の調子を左右する。キングヘイローはその気分を、ある意味誰よりも理解していると思っている。

 なのでキングヘイローは、あくまで自分の集中は切らさない程度に、ちらりと横目を送った。

 

「――あはぁ」

 

 ――()()()()。一瞬、そう思った。

 牙を剥いた、攻撃的な笑み。キングヘイローが今まで見てきた、へらへらふにゃふにゃとした、表情豊かで明るい笑顔とはまるで違う。そんな顔で()()()()()()いた。

 ()()()()()()。このレースで勝利するとか、そういう次元では無い。自分だけを見ている、キングヘイローはそう直観し、産毛が逆立った。

 なんだコレは。本当にあの手間ばっかかけてくる問題児と同一人物なのか。キングヘイローはそう思い――

 

(……いいわ。あの時の言葉、嘘じゃなかったという事ね)

 

 燃えた。心の奥から燃え滾る物が湧き上がる感覚を覚えた。

 そうだ、レースとはこういう物でなくてはならない。降りしきる雨が気にならない程の熱意が湧き上がってくる。このウマ娘は、敵だ。敵として認めるべき、ライバルだ。

 良いだろう、わからせてやろう。獣に対し、怯える王は居ない。王道に獣は入り込めず、爪牙は届き得ない――という格好良い事は言葉として浮かばないまでも、今のキングヘイローは似た様な心境に居た。

 

(勝負よ、ドロップスティアーさん)

 

 二番人気も、三番人気も、どの出走者も。キングヘイローにとっては等しく強敵であり、ライバルだ。

 速いウマ娘は他にもいるだろう、強いウマ娘も他にいるだろう。だが、()()()()()()にこれだけ敵意を向けてくるウマ娘は他に居ないと確信出来る。

 挑まれたなら、勝つまで。それがウマ娘であり、(キング)なのだから。

 

《全ウマ娘ゲート入り完了しました。東京スポーツ杯ジュニアステークス、今――》

 

  ◇  ◇  ◇

 

「プランBぃ? なんです、そりゃ」

 

 それは、ドロップスティアーのメイクデビューの少し前にあった会話。名入から切り出された話の一つである。

 

「鋭角コーナリングの話はしたな? お前の努力……って言うの癪だわ。まぁなんか上手い事いって二回までなら安全に使える様になったから、俺の方で考えたサブプランだ」

「ちょっと待って下さい、自分めっちゃデビューに備えて頑張ってきたつもりなんですけど。『上手い事いった』で済ませないで欲しいんですけど。純然たる努力の成果なんですけど」

 

 ドロップスティアーの基本戦術は、スタートダッシュを決めて最初のコーナーで相手のラインを強制的に膨らませる。上手く行けば後続に数十メートル以上の距離のロスとストレスを押し付けられる、良く言えば戦略的・悪く言えば嫌がらせの戦術である。

 だが、これは最初に内側を取れた場合の話である。ドロップスティアーのスタートダッシュは、同世代の逃げウマ――それこそ、セイウンスカイより速い程のセンスがある。とはいえ、向こうは先行寄りにペースを落とす事も可能な技量があるのだが。

 しかし、それでも内を取り切れない――最初から大外に回された場合。後続を疲弊させるライン取りは、絶対に取れない。

 だが、()()()()()

 

「ともかく、お前のステップは一レースで二度可能になった。だから、二つ目の戦略が出来た。内側をブン取る運任せの戦いじゃなく、外側からでも仕掛けられる戦略」

 

 名入はこの作戦は、もう少し後から出来る様になる物だと思っていた。実際、この作戦は基本戦術より余程消耗するし、何よりステップを()()()()必要とするだろう、そんな戦略だからだ。

 だが、ドロップスティアーは想像以上に鋭角コーナリングを習得した。だからこそ、これから時間をかければ――ジュニア期後半までしっかり練習すれば十分に実戦レベルにまで持っていけると確信した。

 プランB。この作戦でやる事は、全く難しい事では無い。むしろ、基本戦術より余程楽だ。

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

  ◇  ◇  ◇

 

《――スタートしました! おっと九番ドロップスティアー、速い速い! 抜群のスタートダッシュを決めました!》

 

 東京1800メートル、ポケットからのスタート。そこから最初のコーナーまで、約160メートル。

 重バ場とは思えない程の圧倒的なロケットスタートを決めたドロップスティアーは、雨で僅かに遅れた逃げウマ達を置き去りにし、最初のコーナーへほぼ最短距離のスパートで突っ込んだ。

 ()()()()()()()スピードで。

 

《とんでもない逃げですが、これは膨らんで――はっ!? ま、曲がった!? 凄まじい速度でコーナーを曲がりました、ドロップスティアー!》

 

 ドロップスティアーにしか許されない、ドロップスティアーですら二回しか許されない切り札。

 急角度を刻むステップによる鋭角コーナリング。それを迷わず最初のコーナー中間で使ったドロップスティアーの進路は、向正面の()()()()()()()()へ向けられた。

 




当たる切り札(ぶっぱ)は読み

次からが、これまでに散々仕込んだ本番です。
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