「――坂路。少しやめるぞ」
「へ?」
いつもの坂路と言う名の直線練習を一本終え、唐突に名入がそんな事を言い出す。
坂路トレーニングは、ドロップスティアーの得意分野だった。坂路の申し子ならぬ山道の申し子である彼女は、全盛期ミホノブルボン程の詰め込みこそしていないものの、同期の誰よりも遥かに坂路施設を走っている。
ただ、データを取る内に名入は気付いた。
「お前にひたすら坂路を走らせた理由は覚えてるな?」
「自分に直線の走り方を教える為、でしょ?」
「ああ。
これまで右肩上がりだった坂路のタイム――っていうか最初が遅かっただけ――が、今は殆ど変わらない。これはドロップスティアーの弱点の一つである、直線慣れの無さが薄れたという事に他ならない。
それ自体は良い事なのだが、坂路というのは元々脚部負担の薄いウッドチップ上でひたすら走らせる事により、ウマ娘の根性が続く限り心肺機能を増設する事が主目的だ。
だが、ドロップスティアーは元々キツい山道で得たピッチ走法によってスタミナ自体は有り余っている。ミホノブルボン程速く走れない反面、長時間坂路を走り続ける事が出来る。故に、
「もう坂路で直線走るだけじゃろくに実力が伸びねぇ。だからこっからは平地コースで走る。
「え゛っ。走法、変えるんです?」
その言葉には正直ドロップスティアーは驚いた。ドロップスティアーの大欠陥、跳ねるピッチ走法。それを追求する事が、最初の契約時の話だったからだ。
というか、今更になってストライドを意識的に広げる練習とか来たらマジで困る。長きに渡る練習とレースの中で定着したこの走りを、今更矯正出来るとは思えない。
「だあほ、今更ストライドに変えられるか。ピッチ走法は変えねぇ、だが
「……質?」
「お前のピッチ走法は、山道のキツい部分を凌ぐ為に体を安定させる為に体が覚えたモンだ。そこで定着しちまってる一つの
名入はそう言いながら、持ってきた鞄に入れたタブレットを取り出す。
そこで、ある映像ファイルを三つ並べた。
「コレが坂路走りたてのお前のバカ走りだ。坂でまるで疲れないだけが取り柄の走りだな」
「事ある毎に自分をバカにするのやめません? タブレット叩き割りますよ?」
そう言いつつも、ドロップスティアーは自分の初期の走りが映された一つ目の映像を見る。名入の手によって、坂路計測区間の前半300メートル・後半600メートル地点を走る部分にズームを当てた物、そして最後に坂路全体を走る姿。これら三種の走りがそれぞれ記録されていた。
「続けて、最近のお前だ。同じトコを同じタイミングで再生するから、比較して良く見てろ」
「……? ……あれ、
「最初が
二つ目の映像、直近の坂路トレーニングの自分。それを比較すると、純粋な速度だけでなく自分の走り方――姿勢が僅かに変わっているのがわかる。
最初の自分は、目に見えて前傾して走っていた。スパート体勢程では無いが、常に体が斜めになっている。だが、直近の自分はその姿勢が少し真っ直ぐとなっていた。少しだけであって、前のめり気味になっているのは変わってないのだが。
「坂を走る時のコツは、坂に合わせて足と体の角度を合わせる事だ。お前は急坂をメインに鍛えてたせいで、常時無意識に体と足を傾けてた。だが、それが行き過ぎてたんだよ」
「えぇ? 体を前に倒せば速く走れるんじゃないんです? 最近自分も教科書で見ましたよ、『スパートではなるべく重心を前にしましょう』って」
「
そして、三つ目の映像。これはドロップスティアーでは無く、ある有名なレースの映像である。
かなり昔の菊花賞の映像。スーパークリークが一着を取った年のレースだった。
「……んー? ……なーんか皆、坂終わったらずっと体まっすぐにして走ってます?」
「菊花賞は3000メートル。クラシック最長最終の持久レース、くっそ長ぇ坂を二度上り下りする地獄のレースだ。普通に走りゃ全員ガス欠する、だから全員道中はペースを落とす訳だが……そうする時は、体を立てて走る」
京都レース場・3000メートル、三冠レースの一つでありクラシック期の終点。走力・スタミナ・思考力の全てが問われ、『最も強いウマ娘が勝つ』とされるレース。
最長・最高低差の”淀の坂”を二度も経由するこのレースは、終盤までどれだけスタミナを温存出来るかというレースだ。ウマ娘の100メートルは人間の50メートルと言われており、即ち菊花賞は人間の尺度で言えば1500メートルの持久走と言い換えても良い。
当然だが、ウマ娘も人間もそれだけの距離を速く走り続ける事は無理がある。故に熟練したウマ娘達は、効率の良いフォームを取るのだ。
「坂を上る時のピッチ走法と同じ様に、お前は平地でも体と脚傾けて爪先か踵から着地する形してやがる。足裏全体使えてねーから、お前のバカパワーはレースで死んでんだ」
かつてシンボリルドルフ達が”狭く強く跳ぶ”走りと考察した、跳ねるピッチ走法。長らく直線を走らせ続け、それを記録・比較し続けた事で、その正確な理由を名入は分析する事が出来た。
走る際に着地させる、足の箇所。爪先から落とすフォアフット・踵から落とすヒールストライク。ドロップスティアーのピッチ走法は、細かく分解するとこの二種を使い分けている。
この二つに共通する点は、足の負担を分散させている事だ。爪先から着地する時は、筋肉では無く脚の腱をメインに使う。踵から着地する時は、逆に体の重心の関係で腱に負担がかかり辛い。
余りに険しい山道と近道を走り抜くべく、体が覚えた足の使い方。だがこの二つの走りは共通して、
更に言えば、ドロップスティアーは爪先・踵を、度重なる曲芸染みた山走りで鍛えて、
「道中でもスパートでも足裏がキッチリ使えてねえ。ついでに坂道登る時限定の筈の半端な前傾姿勢を常にやってる。そのせいでお前は無駄にスタミナ使って、伸びも悪い」
「ほえー、そういう事も考えるんですねぇ。皆、自分と同じ様に普通に走ってるだけだと思ってました」
「お前が普通とか笑わせんな。片腹が捩れて死んじまうだろうが」
「へぇー? そういう事言っちゃうんですかー? へぇー?」
「脚を上げんな、震脚しようとすんな。お前それ完全に持ちネタにしてんだろ」
コミュニケーション感覚で、足裏全体を全力で叩き付け大地を穿とうとするドロップスティアー。だが、それこそが理想なのである。
レースは原則、足裏のグリップをどこまで使えるかで速度・スタミナの効率が大きく変わる。現代屈指の名バであるオグリキャップやナリタブライアンの末脚の驚異とは、体を大きく前傾しながら足裏全体を活用出来ていた点にあった。
大きく前傾しても崩れない体幹やセンス、足裏を百パーセント近く使って地を踏み締めて、蹄鉄で地を抉り取る様に前方へスパートをかける力。それがウマ娘の最高速を引き出す。
ここから逆に分析すると、ドロップスティアーの遅さの本質とは、道中だろうがスタミナを垂れ流す様な無駄な前傾姿勢と、まるで足裏の面積を活用出来ていない事による、まさしく走りの歪みその物に起因していた。
「坂路トレーニングも当然速く長く走るんなら、前傾姿勢にはなる。だがお前の地元の狂った勾配程じゃねーから、まっすぐ突っ走り続ける内に足の角度や姿勢が無意識に効率化されてきた……が、こっからさらに伸ばすんなら、平地用に意識的な体の使い方を覚えきゃ話になんねぇ」
名入は前例の無い奇策を用いて、今までドロップスティアーを好走させてきた。だが、結局レースという最終的に速く走ってゴールを目指す競技において、極端に言えば亀程度の速度のままでは対抗出来ない。
なのでジュニア期全体を使い、ようやくレースの直線に慣れてきた所で、クラシック期の勝負に備えてちゃんと地力を伸ばす。その為に名入は新人トレーナーでありながら、かなりの時間を使ってドロップスティアーの走りの改善点を探してきた。その答えの一つが、”最も強い”ウマ娘が集う菊花賞にあった。
「爪先や踵じゃなく、足裏全体で地面を捉える。”ミッドフット”っつー足の使い方だが、こいつをキチンと定着させていく。道中で体を斜めに曲げる悪癖も直して、スパートまで脚を温存させる。完全に仕上げるにゃ
菊花賞で走るウマ娘がやっている”最強”を問われる体勢――体を真っ直ぐ起こして足裏全体で着地し、スタミナの消耗を減らす姿勢を、そのまま転用する。
坂道を走る時、ドロップスティアーは速い。その一点においてのみ、これまでドロップスティアーはまともに戦えてきた。だが、ここからは平地で走る効率も追求していく。
ピッチ走法は変えない、だが足の使い方を変える。前のめりにぴょんぴょん走ってスタミナを使う走りを少しでも改善させ、最後の末脚を少しでも長く速く発揮出来る様にする。そもそもパワーとスタミナはあるウマ娘なのだ、走法をしっかりと変えればそれをスピードに変換出来る。
それ故にストライド走法へのフォーム変更を誰もが推奨したのだが、半端に変えればこのウマ娘の特異性――坂道の強さと鋭角コーナリング等の一芸が出来なくなる。それ故に、ピッチ走法自体は変えてはならない。というか、変えたら
名入は『面白い・面白くない』という理由で指導する、担当ウマ娘からすれば迷惑極まりないトレーナーであった。肝心の担当たるドロップスティアーが問題児過ぎて気にならないのだが。
「現状のお前の斜めった走りでも噛み合う直線練習になるから、坂路自体は適度にやる。だが、こっからは普通に平地コース使って姿勢を直していく。……ったく、順序が逆なんだよな……平地のが下手ってのがマジでウマ娘として終わってる。普通平地経験多い奴が増強トレーニングとしてやるのが坂路だっつーのに……」
「あの、愚痴るんなら心の中だけにしません? なんだろう、露骨に聞こえる様にするのやめてもらっていいですか? やっぱ震脚しても許されるでしょ自分」
「うるせぇだあほ。ったく、どんだけテメーの事思って俺が悩んでると思ってやがんだ」
「く、くのっ――ん? あれ、
「――……今から具体的な説明を始める。静かに耳かっぽじろ」
名入は自分の発言を拾われてオウム返しされた瞬間、露骨に話題を逸らした。
このトレーナーは基本的に、ドロップスティアーの扱いが滅茶苦茶に雑である。悪い方向にテキトーである。口を開けば『だあほ』が口癖になっている程、毎回バカにしている。
だが、何一つ想っていない訳では無い。可愛げがあるとは全く思っていないが、自分の無茶な提案を恐らく唯一呑んでくれるウマ娘。中央において間違いなく口と印象の悪さがトップクラスのトレーナーである自分に対して付き合える、数少ない少女。
まぁ”愛バ”とまでは間違いなく思っていないし、彼女と名入の間柄は己のエゴを果たす為に協力する利害関係に近い。だからといって、情を完全に捨てている訳では無いのだ。
「速度は
「あれー? なーんでいきなり、いつも以上に口を悪くして早口になっちゃってんですかぁー? ねぇねぇ、なんでですかぁー、トレーナーさーん?」
「うるせぇぞ話の途中だ黙って聴けだあほ。……ともかくだ。お前も知っての通り、フォームの改善は時間がかかる。だが裏返せば、
名入は目を瞑って、つまりドロップスティアーに目を合わせず解説を続ける。
追求拒否。さっきの発言は無かった事にする。言わなかった事にしとく。まぁ実際にそんな時間も勿体無い、そういう尋問タイムをやってる場合では無い事は確かなのだ。
時間が無いなら、時間をかければ良い。シンプルにして、最も難しい事。何せ時間はどう足掻いても勝手に過ぎて行く、即ち有限な以上は出来るトレーニングには限界がある。
だが、かける
「お前も走ってみて分かったと思うが、坂路――ウッドチップコースは、芝より脚の消耗が緩い。コイツは大量の木片が脚力を吸収してくれるからだが……これを平地でやる」
「ん、じゃあ次はウッドチップの平地走るんですか?」
「いや、もっとお前向けなのがある」
中央トレセン施設の中でもかなり新しく設計された、一つのトレーニング用コース。
主に
「俗称、”オールウェザー”。ポリトラックコース、人工素材を敷き詰めたトラックだ」
◆ ◆ ◆
ポリトラックコース。これはポリエチレン・ゴム・
この練習場の最大の特徴は、天候に左右されにくい事だ。芝やダートのバ場は雨を吸えば状態が大きく変わり、走り込む程に脚力で荒れていく。しかし水を弾く素材をメインに敷き詰められたこのコースは、ウッドチップコースすら超える程に水捌けが良く、荒れづらい。
それ故に”
「ほえー。全然地面の感触違いますね、ココ」
「ウッドチップもそうだが、実際のレースで使わないからこその構造だ。軽めに走ってこっちに戻ってみろ、芝やウッドチップとはまるで感触が違う筈だ」
「ほーい。……うわ、ホントだ。めっちゃ
50メートル程走って、すぐ反転して戻ってくる。その途中で強く感じたのは、走る力に対しての
土の代わりにゴムなどの人工物を混ぜこぜにしたこのコースは、多量の木片によって力を分散させるウッドチップコースよりも更に脚力を吸い取る。足のパワーが吸われるというのは、地面が固く反発力が高い芝コースとは正反対の――つまり、脚部負担が大きく軽減される性質がある。
この性質故に、足に不安のあると見られたウマ娘などはこのコースで練習したりする。どれだけ雨が降ろうが荒れ難く、負担も少なく走れるコース。一見して良い事尽くしの様に見えるこの練習場だが、
「足かっるーい。めっちゃ楽じゃないですかコレ。……でも、ここ走ってるウマ娘少ないですよね? 自分も休みの日に散歩しながら練習場見たりしてますけど、あんま見ませんよ?」
「そりゃそうだ、
その理由はウッドチップコース同様、実際のレース場とは全く走る感触が違うからだ。
坂路施設は肺の限界まで坂を往復して登らせるべく、脚の負担を減らすウッドチップを敷いている。ここでは実際のレースにおいても坂を駆ける為のコツや足腰も鍛えられる為、走行距離の延長以外にも効果が見られる。
だが、ポリトラックコースは走るのが楽だ。
故に、真っ当に強いウマ娘は芝・ダートなど、走りやすく負荷の強い場所で力を付ける。ポリトラックコースの最大の強みは、天候に左右されず負荷を減らして走れる点であり、軽く流すならともかく、目一杯まで走って実力を向上させる点では劣るのだ。
「正直な所、お前の今の走りはぶっちゃけ芝だろうがダートだろうが、どっちを走ろうが大差無い。大差無く弱ぇ。だから坂路・プールを多めに、これまで芝の練習は少なく抑えてきた」
ドロップスティアーのこれまでのトレーニングメニューは、坂路・プールトレーニングがメインではある。だが、レース本番での芝の感触やコーナー感覚を忘れても困るので、合間合間にちゃんと芝コースを強め一杯に走らせたりしていた。
困った事にこのウマ娘は芝コースより坂路の方が平地より上手く多く走れるので、本気で芝を走る機会は同期と比べ圧倒的に少ない。が、坂路・プール・サッカーだけとかいう、超極端な練習だけをしている訳では無かった。いや本当に芝での練習は少ないのだが。
「プール練習は
「へ? 全力で走らないんですか?」
「ゆっくり走って、意識的に上体の安定とミッドフットの走りを体に定着させる。負担の少ないこのコースで、トレーニングする日は
「――はっ?」
名入の言葉に、ドロップスティアーは本気で耳を疑った。
「……あの、今『何万メートル』とか聞こえたんですけど? 何千メートルとかじゃなくて?」
「安心しろ、このコースは一周2000メートルぐらいだ。五周で一万、十周で二万。人間のフルマラソンが42キロメートルぐらいだから、ウマ娘なら
「……あ……あ……?」
名入は真顔で、本気でウマ娘換算でのフルマラソンをこれからのメイントレーニングにすると、そんなとんでもない事を言ってのけていた。
84キロメートル。これは人間のトップマラソンランナー並の平均速度で走り続けた場合、四時間以上は余裕でかかる計算となる。当然だが、一つの練習コースの中でそんな超が三つぐらい付きそうな長距離をぐるぐるぶっ続けで走るウマ娘は全く居ない。
持久力のあるシニア級ステイヤーですら、揃って顔を歪めるだろうイカれた距離と時間を走り続ける事。それを名入は、しれっと要求していた。
「あぁ、安心しろよ。最初からぶっ続けで走り切れるとは思ってねえ、何周かごとにスポーツドリンクぐらいは恵んでやる。クールダウンもアイシングも挟むから、少しは休めるだろ」
「…………あ、あのー。それ、『その時間以外は一日中ココ走れ』って言ってません?」
「ああ?
ドロップスティアーは、スタミナ自体は大量にある。ポリトラックコースは、走っても脚への負担が少ない。
だが、同じコースを万単位で一日中走り続けろ、と言われれば流石に目眩がした。っていうか、正気かコイツって思った。練習量の鬼であるライスシャワーとて、クラシック入りたてでそんな事はやらなかった。というか、そんな無茶を指示するトレーナーなど居ない。
確かにローペースの坂やジョギングでなら、ドロップスティアーは自信がある。だが、フォームを意識しながら何万メートルも走れと言われれば、流石に楽観的に構えるのは無理だった。
「まぁ安心しろ、今日はポリトラックコースの下見代わりに軽めに数周すりゃ良い。別に速度を求めてる訳でもねーんだ、鋭角コーナリングしろとも言わん。ただこの先、
「…………」
名入は、自分の無茶に応えてくれるドロップスティアーに対し、確かに情は持っている。
だが、
どんなヘンテコで無茶な事を言われても、『あはっ』で応えていたドロップスティアーですら黙る、圧倒的に異常な量のトレーニング。それが今、求められている。平然と、真顔で、当然と言わんばかりに。
――だが。
「……足の裏、目一杯広く使う感じで走り続けるんですよね?」
「体を真っ直ぐにする意識も忘れんなよ。走る前とアイシング中は手本代わりに過去の菊花賞を見せる。やる時は腹から頭まで、一本の芯を通す意識で走り続けろ」
「……良いですよ、やってやりますよ。速く走らなくていいなら、得意分野です」
ドロップスティアーは、応じた。本気で何万メートル、一日中ぶっ続けで同じコースを走り続けるという地獄に挑む事を腹に決めた。
なぁに、一応アイシングする休憩時間はあるのだ。長く走るだけで良いなら、なんとかしてやろう。バカみたいな前例の無い道へ、限界まで挑戦する事には慣れている。
誰にも走れない所を、走れる様になる。誰にも出来ない事を、出来る様にする。そんな無茶が、自分がいつも選んできた道なのだから。
「……でも。トラックずっと走ってる中、フォーム確認するのは流石に無理ですよね? ちゃんと改善出来てるかどうか、固定カメラで比較しないとどこを直すべきか見つけらんないでしょ」
「そこばっかりはカメラ増やすっきゃねえんだよな……ドローンじゃどうしても映像がブレるし、ちとそこの準備が済むまではどこでどう直すか難しいんだよなぁ……」
ドロップスティアーは己に課せられる地獄に対し、割と真剣に思案し始めた。
この練習は一流ステイヤーですら真っ青になるレベルの超長距離練習でありながら、スタミナの増強では無くフォームの改善の為に行う物だ。その為に、モーションを比較する為のハイスピードカメラが求められる。
坂路の場合は、一本の直線を走るだけだったから高解像度のカメラが一個あれば割となんとかなった。だがポリトラックコースは通常のコース構造、つまり直線二つとコーナー四つが普通に存在する為、それらを走る時のフォームもチェックしなければならない。
ここばかりは、ともかくカメラを大量に用意しなければならない。そう名入は思っていたのだが。
「……金さえくれりゃ、多分なんとか出来ますよ」
「あん?」
◆ ◆ ◆
「どうもー、アグネスタキオンさん。
「唐突に不躾だね君」
ドロップスティアーは、ここぞとばかりに自分の知る最大の天才の手を借りる事にした。
ウマ娘レーシング ~限界へのロード~
いくら奇策練ろうがな 結局最後にモノ言うのは基礎トレだ――