――神戸新聞杯。阪神レース場で行われるGⅡレース・菊花賞トライアルの一つ。
ダービーへ挑む為に青葉賞を通るウマ娘達の様に、菊花賞への登竜門たるこの場所には、オープンウマ娘の中でも屈指の強者達が集う。
その出走者の中でも特に注目されているのは、”三強”の一人たるキングヘイローだった。
「……えー……作戦を……一応、もっかいおさらいすっかー……」
「……はい……」
そして例によって、ドロップスティアーの控室ではお通夜ムードが漂う中、名入達は今回のレースに向けて立てた作戦を確認し直していた。
本日ぶっちぎりの一番人気のウマ娘、キングヘイロー。菊花賞に出る為の最適解とも言える京都新聞杯ではなく、何故かこちらにやってきた相手。今日の仮想最大かつ、現実最強の相手である。
この相手に対し、名入は割とお手上げ状態のまま挑む羽目になった。何せ今回のレースは、
「……ヤベー所を、再確認していくぞ……本日は晴天なり、絶好の良バ場だ……」
「……いやぁ、雲一つ無い良い青空ですよねー……」
まず、バ場状態。全くの湿り気も無い、完璧な良バ場。今回は誰もが実力を発揮出来るだろう、ウマ娘達にとっては最も走りやすい健康なバ場だ。
東京レース場のラスト525メートルには及ばないものの、その長さは473メートル。これは全レース場で、三番目に長い直線である。
そして。最終直線というのは長ければ長い程、末脚勝負になりやすい。最も地力が求められるだろうこの性質は、良バ場という状況ではより紛れが起こりにくくなる。
「えー、そんで、お前は芝の右回りレースは今回初挑戦だ……いやまぁ夏と地獄マラソンでブチ込んだ分、そこまでヒデー事にはならんだろうが……練習と実戦はちげーしな……」
「……そーですねー……」
そして今回のレースにおいて、ドロップスティアーは右回りのレースに初めて挑む身だ。正確に言えばフリースタイル・レースで幾らか経験はあるのだが、中央の重賞レースとはバ場の整い方も走る相手のレベルも違いすぎる。
夏合宿によってコーナリングは鍛えてきた。しかしそれでも、未経験のぶっつけ本番なのは事実。これまでは実戦経験によって力の差を詰めてきたドロップスティアーにとって、これは
「……今日のマーク相手は、当然キングヘイローだが……まぁ、不調なんて事は全く無く、前日までの様子のトレーニングでは、実に好調な姿を見せてくれてたぜ……」
「……ですよねー……」
更に最後にして最大の障壁、キングヘイロー。抜群の末脚を持ち合わせつつ、皐月賞やダービーでは先行策も取れる様になっていた、”三強”の一角。
菊花賞の出走権も懸かっているこのレースに対し、調整不足のまま挑んでくる訳も無い。名入の情報サイトや偵察においても、今日まで不安要素は全く見られなかった。
これらの悪条件の全てを総合すると。
「……末脚勝負のほぼ平坦な、こっちは未経験のコースで、相手は良バ場で気持ち良く走れる好調のキングヘイロー。……終わってんな」
「せめて雨でも降ってくれりゃ、まだマシだったんでしょうがね……」
最強クラスの相手が、最高クラスのパフォーマンスを発揮出来て、最大クラスの脅威として立ち塞がった。つまりはそういう事である。
キングヘイローの雨風への苦手意識という弱点は既に克服されているが、それでも重バ場であればまだこちらが少しだけ有利に立てた。しかし今回はそれも無し。起伏の少ないこのコースでは、ドロップスティアーの坂の強さも働かない。
終わっている。やる前から絶対勝ち目が無いだろう、それが両者の共通認識だった。
「とはいえ、キングヘイローに気持ち良く勝たれるだけで終わるのは困る。やる事は一つだ」
「……
「どっちにしろ、キングヘイローに負けてもらわん事にはこっちも勝ち目が無いからな」
しかし、”絶対”は無い。ドロップスティアーというウマ娘は、そのゼロに等しい確率をぐちゃぐちゃに引っ掻き回して分からなくさせる存在である。
そしてその基本戦法は、仮想される最大の相手をマークしてこちらの土俵へ引き摺り落とす事。一位の座を空白とする事で、勝つ可能性を強引に生み出すモノだ。
なので今回もそうする。というか、そうせざるを得ない。
「ダービーじゃ
ドロップスティアーの出るレースは荒れ、誰にも予想が出来なくなる。だがそれは、
セイウンスカイ・キングヘイロー・スペシャルウィーク。”三強”が揃ったダービーで名入すら展開を予想出来なかったのは、『自分がマークされたらどうするか』という思考を三人が共通して抱いたが為だった。
事実、セイウンスカイはヤマ勘ブロックを警戒して強引に前に出た。キングヘイローは脅迫マークとブロックを躱せる逃げという策を咄嗟に取った。スペシャルウィークはダブル鋭角コーナリングという最大の切札に一度沈んだ。
しかし、誰か一人にのみマークを決め打っておけば、
「まず、一番怖いのはキングヘイローが先行する展開だ。先行集団の内に潜り込まれりゃ、鋭角コーナリングが当てられねえ。だから、
「前出てブロックして、後ろに押さえ込みゃいいんですよね」
ドロップスティアーにとって最も避けたい展開は、格上が自分の勝ちパターン通りに走る事と、格上に内側を先行される事の二つである。
そしてキングヘイローは、それが両立出来る相手だ。まずその必敗と言える状況を防ぐ為に、ヤマ勘ブロックを当てて強制的に後方策に落とし込む。
「とにかくキングヘイローの頭をずっと抑えて、第三コーナーまで持ち込む。そっからスローダウンして、強引に外を回らせてロスらせろ」
先行する事を徹底的に封じ、第三コーナーでペースを落として外へと躱させる。これによりキングヘイローは、最終コーナー前にロスした上で先行集団の後ろ側に付く。
この時、ドロップスティアーの持つ
「最終コーナーでキングヘイローを射程内に収めながら、終わり際に外に抜けようとすんなら鋭角コーナリング。脚を温存して先行集団の裏に付いたらラストで強制斜行を狙え。……後者はあんまやりたかねーが」
鋭角コーナリングと強制斜行。最終コーナーまで先行させなければ、この二つのどちらか一つは、事実上回避不能の武器となる。
キングヘイローとの対戦経験はこれで三回目となるが、東スポ杯の時は死角の内側へ切り込む時に使っただけで、大外捲りの鋭角コーナリングは一度も当てた事は無い。故に、鋭角コーナリングの効力は十分に発揮出来る。
それを嫌って直線勝負をするなら、強制斜行の恐怖が待っている。これにハマったエルコンドルパサーには余裕で差し返されたが、この技は相手の動揺を誘うという意味では一級品の技である。
とにかくマーク相手を、徹底して思った通りに走らせない。そうすれば、格上相手でも”絶対”は無くなる。
「……あのー。この戦略、今までのと大体同じですよね?」
「あん? なんだよいきなり」
「『前提が変わる』って言ってた割には、なんかフツーだな、って……」
そしてドロップスティアーは、これまで敢えて聞いてこなかった事を尋ねた。
名入は『走りが完成すれば前提が変わる』『夏の間に走りが完成する』と以前に断言していた。しかし、今回使う戦略は考えられ得るベストと言えど、変わり映えの無いモノである。
コレはどういう事か。正直
「……ハッキリ言ってやる。
「うあ゛ぁぁぁやっぱりぃーっ! そんな気はしてましたよハイ! 気はしてたけど聞きたくなかったんですよぉーっ!」
名入の返答に対し、ドロップスティアーは絶叫した。
今日この時点で、ドロップスティアーは
薄々勘付いていた事だが、こうして言葉にされると絶望感が半端無い。菊花賞目前・前哨戦であるこの時点でまだ未完成。そう言われてドロップスティアーは焦り散らかした。
「夏合宿で鍛えたとはいえ、周囲も準GⅠレベルのウマ娘が揃ってる。キングヘイローだけを落とした所で、今のお前が勝てる目は薄い。いつも通り、全力で負けてこい」
なので今回のレースは、ドロップスティアーの戦術の弱点――マーク相手と共倒れを起こしてしまうという状況に陥ってしまっていた。
天敵たるキングヘイローを放置すれば、間違いなく負ける。なので徹底してマークをかける訳だが、そうすれば他が疎かになる。つまり、青葉賞で使った連鎖脅迫などの、他に影響を与える一部の技が使えなくなる。
最初から低い勝率が、キングヘイローという存在によって限りなくゼロに近付いた。なので名入は最も勝率が高く、しかしほぼ負けるだろうという現実的な作戦を与え――
「……ホントに」
「あん?」
「ホントに。ホントに、勝てないんですか? 自分は」
ドロップスティアーに、そう質問された。
「……何言ってんだ、お前が一番分かってんだろ? お前の戦法は一番つえーヤツ落として、そいつに勝つ為の走りだ。今日のレースはキングヘイロー程じゃねーが、他にも格上のウマ娘は盛り沢山だ。お前不利のこのコースで、上手く行っても一着取れる確率は限りなくゼロに等しい」
「でも、絶対は無い、んですよね?」
「……このレースはお前の仕上がりを確認するレースだ。別に勝たなきゃいけねー勝負所じゃねーんだぞ」
「それは……分かってるんですけど……」
名入の返答に対し、ドロップスティアーは耳を伏せ眉を顰めるだけだった。
歯切れが悪い。納得し切れていない。その様子に対し、名入は妙に思った。
確かに普通『負けてこい』と言われて受け入れるアスリートはいないが、ドロップスティアーは普通の感性を持っていない。これまでのレースでも”勝負所”以外は全て予習として割り切り、全力で負けられる様な図太さによって走ってきたウマ娘なのだ。
どうせ負けると分かっている絶望的なレースでも『はいはいやりゃいいんでしょ』と返してきたウマ娘なだけに、この反応は意外だった。
「確かに、絶対は無い。だがこのレースの最適解がコレしか無い事も、お前なら分かってる筈だろが。……なんか別の案なり、悪巧みでも思いついたか?」
「……いえ、全然思いつきません」
「なら、やるしかねーだろが。キッチリやる事やってきやがれ」
「……はい」
最後までなんとも語調が安定しないまま、ドロップスティアーは控室を後にした。
これまでドロップスティアーは、立てた作戦に対し疑問を抱いた事は無かった。作戦の内容に対して質問をする事はあっても、最終的には納得の上で走ってきた。そこに、翳りが見えている。
(……ちっとマズい、か……?)
控室に残された名入は、その様子の変化に懸念を抱いた。
このレースは負けても良い。勝率はゼロでは無いし、勝てるならそれに越した事は無い。しかし、元々は菊花賞を走る為の調整に近いレースなのだ。
だが、このレースではたった一つだけ、
(頼むぜ、マジで)
名入はドロップスティアーの謎の変調が、その事態を招かない事を祈った。
◆ ◆ ◆
「――あなたとの勝負もこれで三戦目ね、ドロップスティアーさん」
「……あ、どーも、キングさん……」
「……ちょっと。随分腑抜けた返事じゃない、調整ミスでもしたの?」
「そういうワケじゃないんですけど……なんか、ちょっとヘンなんですよね、少し前から」
言葉に出来ないよくわからないモヤモヤを抱えたまま。ドロップスティアーが遅々として地下バ道を歩く中、後ろからキングヘイローがやってくる。
肌身で感じ取れる。キングヘイローは、今日も問題無く強いままだ。不調などなんら感じられない。友人が元気な事は良い事であり、調子については名入の調査から分かっていた事だ。
分かり切っている事――なのに。どうして、
「あのー。キングさんにちょっと、どうしても聞きたい事があるんですけど」
「何よ?」
「なんで
気を紛らわす様に、名入をして理解出来なかった事――キングヘイローの出走の意図について訪ねてみる事にする。
キングヘイローは強い。”三強”と呼ばれる程に強い彼女は、レースを選ぶ余裕がある。ならば、菊花賞に挑むトライアルは
にも関わらず、彼女が選んだのはこの神戸新聞杯。実際、キングヘイローが淀の坂を攻略する為に、ここ最近は坂路トレーニングを重点的にやっていた光景は目撃されていた。
彼女には、自分の様にレースを回避する理由など無い筈なのだ。
「……”選んだ”、ね。あなた、何か勘違いしてない?」
「へ?」
「別に隠すような事でも無いから言っておくわ。私は、
「――うぇえっ!?」
その言葉に、ドロップスティアーは驚愕した。
トライアルレースは一度勝てば――二着以内に入りさえすれば、菊花賞への出走が確約される。つまり神戸新聞杯に勝ちさえすれば、京都新聞杯に出る必要も無くなる。
にも関わらず、キングヘイローはこの場で出走すると言い切った。それはつまり、
「このレースに出るのも不思議では無いでしょう?
「いやまぁ、その通りですけど」
「……本当に、本当に癪なのだけれど。経験というモノがどれだけ大事か、学ばされたのよ。……あなたのせいでね」
ぷいっと顔を背け、溜息交じりにキングヘイローは言い捨てる。
レースを”予習”と割り切り、全ての勝利も敗北も等しく糧として、大勝負に挑む。その姿勢によって得られる力を、ドロップスティアーは示した。
「このレースも、京都新聞杯も――菊花賞も。その全てに、私は勝つ。それが”一流”というモノでしょう?」
「…………」
キングヘイローが背けた顔を戻し、ドロップスティアーに視線を向け直す。
菊花賞に勝つ。京都新聞杯にも勝つ。そしてその為にも、このレースで勝つ。それこそが”一流”の証明だと示すべく。
――そして、
「わかる? 私は、
「……? いやまぁ、このレースに勝ちに来たのは伝わりましたけど」
「違うわよ。私は、
「はい?」
キングヘイローが勝つべきなのは、このレースだけでは無い。
どうにもパリッとしない表情をしている、しかしこれまで自分を二度負かした相手。どれだけ弱い弱いと自分から主張しようが、油断も隙も与えてはならない伏兵。
”三強”として肩を並べているスペシャルウィークとセイウンスカイは、最大級のライバルだ。しかしそれ以前に、自分を初めて負かした存在であるドロップスティアー。その驚異を、最早見違える事はしない。
――故に。
「今日、このレースで証明してあげるわ。このキングこそが、”一流”である事を。……ここで、あなたを完膚無きまでに叩きのめしてね」
「……あ、あのー。間違いなく他の方のが強いと思うんで、そっち意識した方がいいと思うんですけど。いやこれマジで言ってるんですけど」
「今更そんな口車に乗らないわよ。……それに、意識するも何も無いでしょうが」
「え?」
「
勝つ。この場所で、この再戦の場で、今度こそ勝つ。
目の前のウマ娘に勝つ。他のウマ娘に勝つ。全てに勝つ。
負けてもいい勝負などありはしない。逃げるべき勝負も無い。全てに立ち向かい、打ち克つ。それこそが、世代の”キング”なのだと。今日はその証明の為の一歩なのだ。
「うへぇ……流石キングさんですわ、すっごい自信ですね……」
「……どれだけ気が抜けていようが、どうせあなたの事でしょう。何か企みの一つや二つ、持ち込んできているでしょうが……そんなモノ、関係無いわ」
そんな真っ直ぐな決意と闘志を当てられ、ドロップスティアーはビビって引いた。しかしそんな情けない姿を見ても、キングヘイローは警戒を緩める事はしない。もう二度と、甘くは見ない。
大物喰いを得意とする生粋のマーク屋である彼女が、自分に対し何の策も無く挑んでくるとは微塵も思えない。思わない上で――
「――そんなモノ。真っ向から、踏み潰せばいいだけなのだから」
一切の笑みを浮かべず、キングヘイローはそう言い切った。
◆ ◆ ◆
《五番、ドロップスティアー。五番人気です》
神戸新聞杯、十二人の出走ウマ娘。その中でドロップスティアーは、真ん中辺りのゲートを与えられていた。
人気は中の上。曲がりなりにもダービーで二着を取ったウマ娘である事である事がプラス要因で、その戦法が物議を醸し出す物である事がマイナス要因。といっても、それだけではこの人気にはならない。
人気が留まっている最も大きな理由は、ドロップスティアーの
阪神レース場はほぼ平坦なコースであり、ゴール直前に仁川の坂――二メートルの急坂があれど、その直前は速度の出やすい下り坂となっており、上がりの最高速勝負となりやすいこの場所ではそれ程の有利にならない。
《六番、キングヘイロー。一番人気です》
そして上がりの速度勝負と言えば、やはり誰もが期待するのは彼女である。
”三強”、キングヘイロー。ダービーでは暴走にも見える逃げを取ったものの、彼女の力量は誰もが知る所である。
上がり勝負においては、彼女は常にトップクラスの速度を発揮してきた。今世代屈指の差しウマたるスペシャルウィークやグラスワンダーに上がり三ハロンの数字では劣るも、皐月賞の最後の急坂でスペシャルウィークを突き放してセイウンスカイへ迫った彼女の末脚を疑う者は誰も居ない。
そんな彼女の不安要素は、ただ一つ。二度の先着を許している、結果だけ見れば天敵と言えるドロップスティアーが何をしてくるか、それに尽きる。
(……ヤ、ヤバいです……なんか、ヤーな予感しかしませんよ……?)
パドックが終わり、キングヘイローの背後を見る形で返しウマをしながらドロップスティアーは内心冷や汗をダラダラ流していた。
名入の立てた作戦には、自分の走りの完成度以外には別に文句の付け所は無い。今の自分が取れるベストの作戦であろうという事は、納得している。なんか原因不明のモヤモヤを感じてはいるが、その程度で自分の走りは乱れない。
しかし、パドック前に聞かされたキングヘイローの言葉。『企みを真っ向から踏み潰す』。どうにもアレが、ただの自信による強気な発言とは思えない。そして今の彼女は、最早たった少しの油断もこちらに抱いてくれていない。
(……とはいえ、やるっきゃないんですよねぇ)
勝負所で無いとはいえ、手抜きはしない。一着が取れないとしても、全力で挑む。こちらも菊花賞のたった一度しか無い前哨戦を、ただで負けに来た訳では無い。
”勝負”をする。そう頭の中でスイッチを入れ、気分を入れ替える。余計なモヤモヤが掻き消え、心の中にはやるべき
こちらも夏合宿を経て、地力が付いた事は確かなのだ。そうそう思い通りにはさせない。そう思い、キングヘイローの背を見つめ――
(――あれっ?)
マークする相手を定めた。負けないと決めた。いつも通り、勝負をしようと思った。
妙だ。本当に今日の自分は――合宿の辺りから、ずっとおかしいままだ。
(まぁいっか)
その妙な調子も気にしない。絶不調だろうが絶変調だろうが、自分の走りに変わりは無い。
何か変に思うならば、勝負の後で考えれば良いだろう。その割り切りこそが自分の強みであるとドロップスティアーは自覚している。
不利なレースも自分より強い相手も、何もかも今更である。自分が今出来る事は全力を尽くす事、たったそれだけなのだから。
《さぁ、菊花賞への切符を賭けてのこのレース。全ウマ娘、ゲート入り完了》
ゲートに入る。隣のキングヘイローが恐ろしい。ヤマ勘は絶賛フル稼働状態だ。
だからといって、やる事も出来る事も変わらない。いつも通りに、集中して――
《神戸新聞杯、今――スタートしました! ハナを取ったのは、ドロップスティアー!》
いつもと同じ、スタートを切って。
フラグ建築の金スキル
一応「むーりー」で済むレースではありません。