ヤマ娘 ~Crazy Derby~   作:灰の熊猫

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『神戸新聞杯/思考』

 ゲートが開いて十秒足らず、矢が放たれた様なロケットスタートにより、ドロップスティアーは他のウマ娘達よりも二バ身以上は前に出てみせた。

 神戸新聞杯のスタート地点は、内回りのコーナー終わり――ほぼ最終直線と同等のホームストレッチより始まる。この直線が長いスタート地点では青葉賞・ダービー同様、ドロップスティアーの先手逸走策は使えない。

 だが、今回の狙いはキングヘイロー一人。すぐにドロップスティアーはペースを落とし始め、背後に迫るキングヘイローを勘に任せて()()()()

 

(やっぱり、そう来るわよね……!)

 

 彼女の得意にして特異技術の一つ、ヤマ勘ブロック。これを躱す事は、キングヘイローには()()()だった。

 セイウンスカイの様に判断が早く、かつ最初から先頭に立つ為のスパート的な加速をすれば、このブロックは事前に躱せる。

 しかしキングヘイローにそれは出来ない、と言うより()()()()()()()。そうすれば、ダービーの二の舞――最後まで末脚が残らない、そういう展開になりかねないから。

 

(……コレを喰らうのは初めてだけど。本当に厄介な技ね)

 

 自分の前に張り付く様な、しかしハッキリとは断言出来ない程の微減速を続けているドロップスティアーを躱そうと思い、僅かに横に動いてみる。()()()()()()()

 爆発的なスタートダッシュ、微細なスローダウン、精密な進路変更。その全てを組み合わせ、相手の走るラインを勘だけで察し、真後ろの相手を完全にブロックする。

 エルコンドルパサーに勝てずとも、レースに負けさせかけた技。セイウンスカイが最も警戒し、事前に対策を考えざるを得なかった技。

 これによりキングヘイローは、第一コーナーでのポジション争いが出来ない後方側へと徐々に落とされていった。

 

(良いわ、付き合ってあげる)

 

 キングヘイローは、()()()()()()。この単独ブロックを躱して前側を目指す、それを諦める。

 エルコンドルパサーはこのブロックに対し、極めて対応に迷った。左右にうろうろ動きながら、向正面で後方に位置され続けてしまった姿は映像に残っている。

 ()()()()()()()。脅迫マーク同様、この技は術中にハメて消耗を強いる技だ。だから最初から抜け出すか、最初から諦めれば受けるロスは幾らか防げる。

 だからキングヘイローは、この自分を落とす為だけの走りに付き合う事にした。そして、その上で。

 

(一瞬でも気を抜いてみなさい。……その瞬間、終わらせてあげるわよ)

 

 キングヘイローは、()()()()()()()

 

  ◆  ◆  ◆

 

(あー、なるほどー。その手があったかー)

 

 ヤマ勘ブロックによるキングヘイローの先行封じ。これを成功させながらドロップスティアーはキングヘイローと共に、バ群後方の内側をキープしながら第一コーナーへ入った。

 しかし、キングヘイローの動揺が全く感じられない。ライン移動を試みたのはたった一回、それ以降は背後で走り続けている。

 ()()()()()()

 

(まさか、コレやり返されるとは思わなかったなぁ)

 

 ヤマ勘ブロックは、相手の前方近くを位置し続ける技だ。少しでも離れれば加速する距離の猶予を与え、途中から抜け出されてしまう。

 しかしこの形は、後ろの相手にとっては()()()()()()()位置取りでもある。ドロップスティアーの技の一つ、脅迫マーク。()()()()()()()()()()という反面があった。

 キングヘイローには相手へ数十センチの所にまで迫る様な、狂ったマークが出来る技量は無い。しかし強制的に後ろに追いやられた状態に陥りながら、半バ身弱の位置でいつでも仕掛けてやろうと圧力をかけてきている。

 

(別にそんなん気になりませんけど……このまま思い通りに走られるのもヤだなぁ)

 

 とはいえ、ドロップスティアーも動揺はしない。後方から常にマークする側だったから、やられるのは新鮮だなぁ。その程度の認識である。

 掛からないドロップスティアーに、マークの効果は薄い。というか、元々感じている絶対的な力の差という恐怖が大き過ぎて、プレッシャーに思えない。

 相手がこちらの作戦に乗ってきた、それ自体は歓迎すべき状況だ。しかし、第三コーナーまでこのまま相手が思惑通りに走られるのは困る。

 

(じゃあ()()()()()か)

 

 このまま行くのは良くない。そう直感的に思ったドロップスティアーは、()()する事にした。

 そもそも背面に付く形のマークに関して言えば、こちらが専門家である。故に、やられたら困る事も知っている。

 なので事前の作戦の範疇で、走りに少しのアドリブを入れてみた。

 

「……っ!」

 

 今走っている後方寄りのペースより、更に微減速。一歩一歩、細かく歩幅を調整してキングヘイローを緩やかに自分へと迫らせる。キングヘイローは微妙に近付いてくる背中に、目を見開いた。

 まだ第一コーナー半ばのこの状況でペースを落とせば、このブロックは躱せる。いかにブロックの精度が高くとも元々の速度が遅いのならば、コーナーで速度を上げる事による遠心力で外へと逃げられる。

 

(まぁさせないんですけど)

 

 なので()()()する。少しだけ落ちて、少しだけ戻る。ピッチ走法特有の、細やかなチェンジオブペース。

 相手が抜けると判断するより早く、距離を加減する。他のウマ娘達にも注意を向けて走っているならともかく、意識(マーク)して背後に付いている相手に対し、この速度調整は極めて有効な手であるとドロップスティアーは知っている。

 脅迫マークは元々ハイリスク・ローリターンの技術だ。相手が掛からなければ、合わせる側の神経の方が無駄に消耗する。そのロス以上に相手が動揺するから有効に働く技であり、ぶっちゃけ使い手であるドロップスティアーも最初のレースで使った時はぐったり疲れた。

 キングヘイローは普通に安全マージンを取っている分、脅迫マーク程の消耗は強いられない。だが、確実に効果は出る。

 

(合わせるってのは、意外と疲れるモンでしょ?)

 

 微加速・微減速・微加速・微減速。地道にコツコツ、()()()()()()()しながら第二コーナーを回っていく。

 レースの正しいペースを完全に把握する事は、基本的に不可能だ。レースの基本であり王道の戦法は、周囲に合わせて走り最終直線まで自分を持っていき、最後に末脚を出し切る事である。

 それはつまり、どうしても他のウマ娘の動きに影響を受けるという事だ。周囲がローペース過ぎれば、自分がハイペースなのでは無いかと疑う。相手がハイペースだと誤解すれば、自分がローペースとなる。

 ドロップスティアーは、マークされているという状況を逆手に取り、距離をコントロールする事で擬似的にその現象をキングヘイロー一人だけに仕掛けていた。

 

(さて、キングさんはどうするのかなぁ)

 

  ◆  ◆  ◆

 

(――やるじゃない。そういう手も使える様になった、って訳ね)

 

 ドロップスティアーをマークして背後に張り付きながら、キングヘイローは僅かに顔を顰めていた。

 近付いたかと思えば、遠ざかる。僅か数歩・一手の違いながらも、自分のペースを乱そうと彼女が速度を調節している事に、キングヘイローは途中で気付いた。

 こちらは半バ身程の差をキープし、ドロップスティアーのブロックに対し現状維持を自ら望んだ。しかし少しでもブロックを緩めれば抜いてやる、そういう圧力と存在感をアピールしながら走っている。

 少しでも掛かって距離が開けば、横に大きく加速して強引に抜けてやる。そう思っていながらも、それが()()されている。

 

(主導権はあなた側にある、と)

 

 背後の近くでマークしながら走る事は、相手のペースに依存する。極端に言えば、眼前を走る相手がレース途中で急停止でもした場合、マークする側もまた停止するか横に大きく避けなければならない。

 故に相手に迫りすぎる事は厳禁なのだが、ドロップスティアーは微妙に減速して差を詰めさせたり、かと思えば僅かに加速して差を離したりする。しかもこの前後差の変化は、ピッチ走法の狭い歩幅の中で小さく行われており、傍から見れば殆ど差が変わっていないだろう程度の差異に留まっている。

 しかし背後に張り付いて相手の様子を見やっているキングヘイローには、この変化が()()()()()()()。目の前の相手の走りの影響を受け、判断に迷う。

 

(……よくもまぁ、こんな事が出来るわね。初対面の頃とはすっかり別人じゃない)

 

 相手のブロックの性質を利用し、マークをし返して圧力をかけた。しかしそれに対し、今度はマーク戦術の性質――相手のペースに合わせなければならないという一面を押し付けられた。

 適切な距離を保たせない。互いの差を微調整させ、こちらの走るペースが間違っているのではないか、そう思わせる。単独でブロックするという奇天烈な技を使いながら、その実やっている事は確かなレース戦術その物だ。

 レースのレの字も知らずに大敗してターフに突っ伏した、あの初対面の頃には欠片すら持ち合わせていなかっただろう、戦術的な駆け引き。ドロップスティアーは今、それを理解して実践する様になっている。

 

(いいわよ。主導権(そんなもの)、くれてあげるわ)

 

 それなら、と。向正面に入った所で、キングヘイローは()()()()()()()

 

  ◆  ◆  ◆

 

(――ありゃ? 抜く気、無くしたんですかね)

 

 向正面に入ったドロップスティアーは、キングヘイローの圧が一回り萎んだ様な感覚を覚えた。

 試しにちょこっとだけ加速してみても、キングヘイローから仕掛ける気配がしなくなった。加速する為の距離の幅さえあれば、キングヘイローはこの直線で前に出れるだろうに。

 当然こちらもそんな猶予(きょり)を与えるつもりは毛頭無い。再度減速し、定位置(ブロック)に戻る。

 

(うーん……もうちょっと牽制すべきかなぁ)

 

 キングヘイローの作った半バ身の距離をキープしながら、ドロップスティアーは悩む。仕掛けてくる気配が無くなった今、更にフェイントを入れてキングヘイローのペースを乱すべきかどうか。

 自分がこれ見よがしに減速すれば、間違いなく後ろを走るキングヘイローの邪魔を出来る。しかしこちらが減速して後ろに迫られ過ぎれば、キングヘイローは斜めに避けるだろう。そうなった瞬間、()()()()()する。

 ヤマ勘ブロックは、相手を完全な真後ろに張り付かせ続ける技だ。一度斜め後ろに位置取られた相手の進路に対しブロックしようと動けば、こちらのライン移動は斜行として取られる可能性がある。

 こちらが加速し過ぎれば距離を置いた相手に横を抜かれ、減速し過ぎれば相手がブロックから自然と外れる。前を走って主導権を握っているとはいえ、適切な距離をキープするべく気を使わなければならないのはドロップスティアーの方なのだ。

 

(……やめときましょうか。これ以上は余計な感じしますし)

 

 ドロップスティアーは余計な牽制を止め、ブロックする事のみに集中する事にした。

 キングヘイローが後ろに張り付いて抜けない状態である以上、こちらの思惑の内である事は間違いない。仕掛ける気が薄れてキングヘイローが安全マージンを取っている今、ピッチの僅かな加減速はこちらの足取りが無駄に乱れるだけだ。

 このまま後方に居てくれるならそれで良い。向正面から第三コーナーまで、約500メートル弱。こちらから動く事はせず、キングヘイローを抑えながら脚を温存する事に専念すべきだろう。

 

(うーん……)

 

 キングヘイローへの対処は勘に任せ、前方を見やる。現在位置は、十番手。キングヘイローを抑えながら最内を走り、前方九人の中団は第二コーナー終わりでのポジション取りにより、少し横に膨らみ固まった状態になっている。

 一度ポジションが固まってしまえば、内側を取り直す事は難しい。クラシック期後半ともなれば、誰もが内側を取らせないという意識を強く持っている。故に先行でポジションを取れなかったウマ娘は、ずっと外側を走らされ続ける羽目になる。

 

(全体的にペースが遅いのかなぁ……? やっぱ長いコーナーと直線に備えてるんですかね)

 

 逃げウマを除く前方の先行集団は、多少横に広がったまま走り続けている。加速も減速もせず、ポジションの競り合いはしない。

 先行策の利点は、最初に取った位置取りのまま中盤の直線で内側をキープし、上手く最内を取れればそのまま第三コーナー・最終コーナーに突入出来る点にある。最初に内側を取れれば、追従する別のウマ娘達はその横か背後に立つ。それが第三コーナーまでの盾や壁となり、終盤の優位に繋がる。

 その外に回される事を疎んで最初に脚を使えば、スタミナが保たない。しかし上手く内を取れなければ、外に回されて中盤のポジションの競り合いや終盤のコーナーの不利に繋がる。

 一方で追込という後方策は、最初から序盤のポジション争いを捨て、中盤を楽に走り競り合いを防ぐ。追込という極度の後方策が先行策に劣らない所は、最初から発生する中盤戦終わりまでの消耗から逃れられる所である。

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

 キングヘイローへ八割、前方の把握に一割、そして()()()()()()()()に一割。ドロップスティアーは、自分の意識がそう配分されている事に疑問に思った。

 別にレースに集中出来ていない訳では無い。ヤマ勘はキングヘイローの気配を常に察知しているし、常時働いているそのセンサーによって脳内は常に緊張状態にある。だが、どうも作戦とは無関係な思考が浮かんできている。

 中盤までブロックする、第三コーナーで強制的にキングヘイローを躱させる、そこから仕掛ける。それ以外に考える作戦(こと)など無い筈なのに。

 

(……まぁ、どうでもいっか)

 

 余計な思考を切り捨て、平坦な向正面を走り続ける。キングヘイローは最早先行集団に追いつこうとしていない、この時点で作戦の大半は成功しているのだから。

 詮無き思考を打ち切ると同時に、第三コーナーが近付いてくる。東京レース場や練習場とは比にならない程、大きく弧を描く緩やかで長いコーナー。

 ホントに長いコーナーだなー。そう思いながら第三コーナーに入りながら、ドロップスティアーは減速を始めた。

 

「ッ!」

 

 瞬間、キングヘイローが横に出る。真ん前から落ちてくる相手に対し、張り付き続ける事は出来ない。第三コーナーの始まりの時点で、キングヘイローは外を大きく回る様にドロップスティアーを躱した。

 ドロップスティアーはそれを見送り――()()()()()()()()がした。

 

(――反応が早い)

 

 自分の減速の始まり、その早期の段階でキングヘイローは追い抜いてきた。

 ()()()()。ドロップスティアーの減速は別に急激なブレーキをかけている訳でも無く、ピッチを緩めて徐々に下がるモノだ。減速に合わせ、あわよくば逸走を当てて大外へ回させる。そのつもりだった。

 ()()()()()()。ここで減速してくる、ここしかないというタイミング。キングヘイローはこちらの作戦と、仕掛け所を事前に想定していた。そうとしか思えない追い抜きだった。

 自分から追い抜きにかかる、そういうキングヘイローの早仕掛けによって、ドロップスティアーは逸走を上手くさせられないまま背を見送った。

 

(とはいえ、外側を回ったのは事実でしょ)

 

 こちらの逸走策によるロスを最初から避けるべく、キングヘイローは早めに外へ飛び出た。ちょっと予想外ではあったが、展開その物は想定通りである。

 長い第三コーナー、先行集団へとゆっくり迫っていくキングヘイローに付いていく様にドロップスティアーも速度を上げていく。第三から第四コーナー終わりまで、およそ600メートル。最初に回った第一・第二コーナーとは倍近い距離のコーナーで、誰もが脚を抑えて溜めている。

 向正面で固まっていた中団もそのままの形を保っている。この状況であれば、作戦通りキングヘイローは先頭集団の外側に付く形となる。ならざるを得ない。

 作戦通り――の、筈だ。

 

(……()()

 

 ドロップスティアーの勘が、()()()()()()を鳴らしている。まだ第四コーナーにも入っていない、そんな状況なのにも関わらず。

 自分の勘は、驚異が迫る時に特に強く働く。つまり今この状況は、()()()()()()のだ。

 何か、何か見逃している。作戦に見落としがある。ドロップスティアーはそんな不確実な仮定を確信として、思考を巡らせる。

 そのまま、第四コーナーに入って――ドロップスティアーは、()()に気付いた。

 

  ◇  ◇  ◇

 

「ああ? 大外捲りの警戒ぃ?」

「そーなんですよ。フリースタイル・レースでそういう事されまして」

「お前俺の謹慎(やすみ)ん時にンな事やってたんかよ。手、痛めてねーだろうな?」

「やだなぁトレーナーさん、レースで手なんて使う事無いでしょ?」

「ちょっと鏡見てこいや、だあほ」

 

 少し前、名入の謹慎期間が解けた頃。ドロップスティアーはフリースタイル・レースで遭遇した事例に対し、名入に質問してみた。

 最初にフリースタイル・レースを走った時、ドロップスティアーは一度自分の大外捲りを警戒された事がある。正確に言えばイン側がぐちゃぐちゃの重バ場だったので、最初から外に回らざるを得なかっただけなのだが、形としては同じ事だった。

 つまり、こちらが大外から仕掛ける事前に膨らんでおく事。これはペースを上げればインを走れないウマ娘であるドロップスティアーにとって、極めて外からの追い抜きが難しい状況だった。

 

「つーか、警戒も何もねーだろ。ンなモン、ただの無駄じゃねーか」

「無駄ぁ?」

「そもそもお前の大外捲りは何の為にやってる? ちっと考え直せよ」

「そりゃ、最終直線前で妨害する為でしょ」

 

 ドロップスティアーの大外捲り・つまり鋭角コーナリング。これは逸走癖をカバーすると同時に、マーク相手が最終直線へ向けてバ群から飛び出すのを抑制する技である。

 あの手この手で毎回使い回してきたこの技だが、何だかんだ未だに効果を発揮出来ているのは、レースの常識(セオリー)の弱点を突くからである。

 

「最終コーナーでバ群から出ようとする時に被せるから、鋭角コーナリングは機能する。確かに最初から大外回ってりゃそれは防げるが……そもそもコーナーで外走るのは、走る実質的な距離が変わりすぎんだよ」

 

 最終直線で真っ直ぐ走る、その為に最終コーナー終わりでは外へ飛び出す様にポジションを取る。この時鋭角コーナリングが機能するのは、コーナーで外を回る事その物がロスだからだ。

 ドロップスティアーがわざわざ事前にコースを逆算しなければ走り切れない程、コーナーにおける外の不利は大きい。コーナーを走る時にラチから一メートル離れれば、走る距離が十メートルは伸びるとすら言われている。

 そんな中、多くのウマ娘がひしめき合う最終コーナーでわざわざ大外に行くのはロスが大きすぎる。だからレースでは基本的に、コーナーでは抑えて少しでも内側を回る。基本的に最終直線の末脚勝負こそが、レースの真の勝負なのだから。

 

「最終コーナーじゃ外を回らず、控えて内を守るのがベストだ。格下一人に付き合ってわざわざ自分から外回って、最後に脚残らず垂れるとか俺なら億が一にもゴメンだぜ」

「あの、自分の担当の事をトンデモなくディスってるの気付いてます? その格下、自分の育ててるウマ娘の事じゃないんです?」

「事実を言ってるだけだ。……ともかく、コーナーで外側を事前に回るなんざ、()()()()()()()んだよ」

 

 話の最後に、名入はそう結論付けた。大外捲りを警戒し、最初からコーナーの外側を回る。それは誰もが敬遠する、大きく損するだけの行為だと。

 ――しかし。()()()()()とは、言わなかった。

 

  ◇  ◇  ◇

 

(……ウソでしょ、キングさんッ……!?)

 

 第四コーナーの始まり。ドロップスティアーは前方を見て、その光景に目を疑う。

 キングヘイローは、()()()()()()()()()を並行する様に走っていた。

 




モブブロックはもう懲り懲りだ

作者は必殺技と呼ばれる代物の攻略法を考えるのが好きです。
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