[ 羽鳥 純 ]
某市内 商店街 / 59:12…59:11…59:10…
岡田「おいおい!今度はどこに出てきた!」
部屋から転送されてきた純たちが出てきたのはシャッターで閉じられた店が目立つシャッター商店街だった。これからが書き入れ時の時間帯だと言うのに夜の店であろう看板が目立つこの通りではひとつとして空いているところはなかった。
「なんでぇ。外に出られるんじゃねぇか」
部屋で散々騒いでいた爺さんたちが拍子抜けしたように商店街出口へと歩いていく。ここの通りは一直線。西側は商店街の奥に繋がっているみたいだが、東側はすぐそこに出口が見える。皆がゾロゾロと出口に向かい歩き始めた。
ぼーっと歩くスーツを着た男。
気を荒立てて歩く若い男。
終始不貞腐れた様子の女子高生。
そして呑気に話に花を咲かせて前を歩く爺さんと婆さんたち。
純「あーそうだ。部屋から持ってきた銃とアタッシュケース…どうしよう。あれそういえば…」
スーツを着た人たちはどこ行ったんだ?
ピンポロパンパン。ピンポロパンパン。
「なんだあ?この変な音は」
「やかましい!誰の携帯電話だ!」
商店街を出たところで突然頭に奇妙なメロディが流れ始めた。この中の誰が発信源なのか言い争いが始まったところに闇夜に轟くスポーツカーのエンジン音が聞こえてきた。それはいきなり純達の前に現れるとこちらに気づくことなく颯爽と通り過ぎた。
有原「あぶない!」
歩行者スレスレのところをスピードを落とすことなく通り過ぎたスポーツカー。倉今と純は有原の咄嗟の判断で商店街の中へ押しやられ避難できるも他の人たちはすぐには動けずその場に転げてしまった。
有原「痛った…」
純「ありがとうございます…あれ?」
倉今「…?」
純「音止まった…」
倉今「あっ…」
商店街に入ったらピタっと音楽が止まった。でも音が止まっていたように思えたのはどうやら純と倉今の2人だけらしい。
「あの若造危ねえ運転しやがって!」
「ちょっと熊井さん!何も追いかけなくても!」
岡田「くそ!早く止めろ!どんどん音が…⁉︎」
バンッ。
一瞬の出来事だったはずなのにその絵はスローモーションのように鮮明だった。車を追いかけようと走り出した爺さんの頭が突然弾けたのだ。首から上を失った屍は少しゆらゆらと走った末、ドタっと音を立てて崩れ落ちた。
倉今「ぎゃー‼︎‼︎‼︎」
有原「うわぁぁぁぁ‼︎‼︎‼︎」
あたりは一気に騒然となった。有原や岡田そして老人たちが四方八方に逃げてゆくが、1人また1人と次々に頭が弾けてゆく。そして最後まで生き残ったのは商店街出口にへたり込む純と倉今、そして肩を弾ませ息を荒らげる有原と岡田だけとなった。
岡田「な!なんなんだよほんとに!」
倉今「おぇぇぇ…!」
純「いったい僕らはどうしたら…」
有原「取り敢えず戻ろう。これ以上ここにいたらいつ頭が吹っ飛ぶかわからない」
岡田「冗談じゃねぇ…!こんなところにいるのはゴメンだ!」
1人先を行ってしまった岡田を尻目に有原は嘔吐する倉今に近づくと介抱しようと背中に手を伸ばそうとした。しかし有原の行為を倉今は大きく拒絶すると、自力で立ち上がり奥の方へと進んでいった。
有原「はぁ…。年頃の女の子は扱いが難しいな…」
ーーーーーーーーーー
純「あの…体調大丈夫?」
倉今「平気だから。話しかけないで」
明らかに憔悴して前を歩く倉今を見て純は心配な声をかける。そしてしばらく奥へ進むと十字路へ行き着く。するとそこには純が部屋で最初にあった黒いスーツを着た女が待ち構えていた。その隣にはメガネをかけた初老の男もいる。
切れ長の目の女「あれー福田さん。予想したより多く帰ってきたよ。賭けはウチの勝ちだね」
メガネの男「和田さんが賭けたのは『全員が帰ってくる』でしょ。ちゃんと見てください。居ないじゃないですか。よって今回の賭けは不成立です」
切れ長の目の女「えー。いいじゃん。福田さんのケチ」
岡田「おいおまえら!はやくこっちの質問に答えろ!」
有原「ちょっと…何があったんですか」
先に居っていた岡田がなにやら揉めている。スーツを着た2人に突っかかているようだが、そんな様子を特に意に介することなく話に花を咲かせていた。
岡田「聞いたんだよ!こいつら俺らが死ぬか死なないかで賭けしてやがった!」
純「なっ!」
有原「ちょっとどういうことですか。もしかして…あなたたちはあそこに行くと死ぬこと知ってたんですか?」
福田「……。」
和田「えっ。ウチ?」
福田「……。」
4つもの追求の眼差しに嫌々ながら反応を示す2人。あからさまにめんどくさそうな感じを出す福田が顎だけで和田に対応するようにとそっぽを向くと、和田は福田に対し嘔吐するようなリアクションを示した。
和田「いやー?ウチら何も知りませーんよ?」
有原「はっ?」
岡田「ちょっと待て!全部知ってんだろ!いい加減何が起こってるか……」
ドガーン。
全員「⁉︎」
何かが建物にぶつかり崩壊した。コンクリートが飛び散り、上がる土煙の中に現れたのは。
純「なんだよあれ…」
倉今「だ、だるま…?」
だるま星人【おいおいおい】
岡田「うそだろこれって…」
有原「あの黒い球に出てた…」
純達の前に現れたのはあの部屋にあった黒い球が表示していただるま星人だった。全長おおよそ3mほど。重さ推定500kg。
だるま星人【おいおいおい】
ギロギロとした巨大な目を動かし純達に狙いを定める。そして家屋の上で振動すると勢いよく飛び上がり上空から落ちてきた。
倉今「ぎゃあ!」
岡田「マジかよ!」
和田「ちょっとちょっと…!だるまは全部松永さんと前田くんが行ったところに居るんじゃなかった⁉︎」
福田「……!」
現れただるま星人が最初に目をつけたのは岡田。腰が抜けた岡田の方を半回転して向き直るとまた一度飛び上がり…岡田の真上へ落ちてきた。
岡田「ギャ…………!」
だるまが現れてほんの数分で、またひとりの命が失われた。
和田「こりゃまずいんじゃない⁉︎殺っても良いよね⁉︎」
福田「それはダメだ!あの人の許可なく勝手なことしたら…!」
和田「ちっ…!前田くんはまだなの⁉︎」
有原「うわぁぁ!」
飛び跳ねる攻撃以外にもだるま星人は和田と福田目掛けて転がって突進していく。躍動感溢れて仕掛けてくる攻撃だったが、2人は会話する余裕を見せながら常人のスピードとパワーを超えた動きで躱してゆく。
純「なんなんだあの人たちは」
純もおぼつかない様子ながら回避はするが、だるま星人の突進による地面の振動でバランスを上手く保てず自由に動けない。倉今も苦しんでいるようで奇しくもバランサを崩し転んでしまった。
倉今「ひゃあ…!」
純「危ない!」
倉今「…!」
純「この状況だから文句言わないでよ!」
純はアタッシュケースと銃を片手に持ちながら倉今の腕を肩に通して立ち上がらせると、だるま星人の視覚となる場所まで逃げて身を隠した。パラパラとアーケードから降ってくる石の破片や砂を浴びながら、充分とは言えないが距離をとって様子を窺う。和田と福田が応戦している。だるま星人は幾度と2人に向かって攻撃を仕掛けるがひとつも当たる気配はない。そして和田と福田は所持していた銃(トリガーを弾いて展開した形がXの字に似ているため、便宜上Xガンと呼称する)を用いて迎撃しているが、狙ってなのか態となのか、まるでどこかへおびき寄せるように相手をしてはどんどんここから離れてゆく。緊張感が漂った時間が流れていたが辺りは静寂に包まれた。見渡す限り誰もいない様子。一応は事なきを得たようだ。
純「はぁ…とりあえずはなんとかなったのかな」
倉今「ちょっと」
純「あっ…」
純は掴んでいた倉今の手を慌てて離す。無意識であったが運んできてから今までの間ずっと握っていたようだ。
純「ご、ごめん」
倉今「……。」
純「あ。そうだ」
ここで純はずっと持っていたアタッシュケースを開いた。『かほちゃん』と名前が当てられたそのアタッシュケースの中身には黒い服が入っていた。それは先ほどの和田や清水が身に纏っていたあの特殊なデザインの黒いスーツだった。
純「これって…」
倉今「あの人たちが来ていたのと同じ黒いスーツ?」
純「……。」
倉今「…なに?」
純「いや!別に…」
倉今からリアクションが来ると思っていなかったのか、純が驚いた様子で顔を見た。慌てて視線をスーツに移し実物を確認する。間近で見るスーツはやはり奇抜で至る所にレンズ状のメーターなるものがある。そんなスーツを見ていた2人の元にあの振動が地面を伝ってやってきた。一難去ってまた一難。灯の少ない商店街のアーケードが軋み、大きな影が2人を襲った。
だるま星人【おいおいおい】
純「またかよ!」
先程とは別の個体と思われるだるま星人が純と倉今を襲う。慌てて倉今の腕を掴むとフラフラとした足取りで逃げ惑う。とてつもない巨体だと言うのに俊敏な動きで追い詰められる。万事休す。だるま純に狙いを定めると身体を振動させる。これは飛び跳ねる予兆。その動きを見せた時、突然だるま星人の後頭部の一部がバンと弾けた。
純「⁉︎」
動きの止まっただるま星人の背後。暗い通りの奥からXガンを構えた2つのシルエットがこちらにやってくる。
清水「はぁ…はぁ…!おや。君たちは…」
石村「怪我はないですか!」
純「あ…あなたたちは」
純と倉今の窮地を救ったのは黒いスーツを身に纏った清水と石村だった。
石村「清水さんまた…」
清水「よし。いいかい2人とも。ここは危ないから離れていて。石村くん。もう一度いこう。さっきの容量でしっかりと狙うんだ」
倒れ込むだるま星人に清水と石村は突っ込んでゆく。Xガンで狙いを定め、2つあるトリガーを同時に弾く。
ギョーン。
弦楽器を強く弾いたような独特な機械音がこだまする。大きな的と確かな距離から確実に射留めたはず。けれど被弾したであろうだるま星人はびくともせず起き上がり石村に突っ込もうとする構えを見せた。
純 (外したか)
そう思った次の瞬間、だるま星人の背後が断続的にバンバンと弾け出した。不意打ちをくらったようにだるま星人の動きが再び鈍った。
石村「当たった!」
清水「よし!そのまま続けて!」
清水と石村は一定の距離まで近づくとただひたすらトリガーを弾き続けた。だるま星人の身体は体勢を直しながら次々と弾けてゆく。それでも先ほどの不意打ちほどの効果は現れなかったのか、徐々に適応した動きを見せて身体を縮めるとだるま星人は清水目掛けて転がり出した。
石村「清水さん!」
清水「石村くん!構わず打ち続けて!私が惹きつけるから!」
清水は狙いを定めていたXガンを降ろすと踵を返し走り出した。その速さはとても老齢とは思えないほどのスピードだった。高校生である純を超える脚力でだるま星人を振り切る。それに留まらず瞬く間に加速していき、現役スポーツ選手に匹敵するスピードまでになっていた。商店街の中の1本の通り道。清水を追いかけるだるま星人をさらに追いかける石村という構図。石村は走りながらXガンを構えて撃つが、いかんせん標準が定まらず、上手く標的に被弾しない。
石村「くそ…!」
広い運動公園ならまだしもここはしがない商店街。そこから想像できる規模は高が知れている。そんな所を車並みのスピードで走ればあっという間に商店街の出口にぶち当たってしまう。
清水「ああ。そんな…」
そう。商店街の出口。純達が出ようとした所とは違うところとなるものの出口は出口の為かシャカリキに動かしていた清水の足の回転がドンドン減速しく。
ピンポロパンパン。ピンポロパンパン。
商店街のアーチ看板を潜ってしまった清水の頭の中では純達が聞いたあの奇妙な音が喧しく鳴り響いていた。清水は知っていた。その音が鳴る意味を。それはここから先は出てはいけないという警告音。定められた範囲で戦うことを許されたエリアの外に出てしまっているということに。
石村「清水さん!戻って!」
手首から繋がるコントローラーのような機械を見て、石村はそのことにすぐ気がつくと咄嗟に叫んでいた。清水は振り返る。その視界には自分を追って転がってきていただるま星人がちょうどたどり着いたところだった。今度こそ清水を仕留めようとしているかのように身体を振動させている。ここまでずっと1本待ちだった。戻ろうにも他に道はない。だるま星人の攻撃を避けるためにはここから先に進むしか無い。しかし。その先は。
石村「清水さん!清水さん!」
純「…!」
石村の叫ぶ声が気になり、息を切らしてやってきた純と倉今。その2人が見たのは今正に清水を踏みつけんとだるま星人が飛び跳ねた瞬間だった。真っ暗な空に消えてゆく赤い身体の巨体。4人の視線が惹きつけられるように上へ向く。これから何が起こるのか。そこにいる全員が否が応でも想像させられた。
○ARRIVE
森永太一
福田卓郎
和田彩
前田剛
清水恒彦
石村和樹
羽鳥純
倉今佳歩
有原泰輔
TOTAL 9人
●DEAD
岡田久志
熊井幸三
村上幹二郎
菅谷トシ子
梅田トヨ
TOTAL 5人
38:33……38:32……38:31……