「••••••なるほど」
そう呟いたのは切れ長三白眼のイケメン。名前を神崎というらしい。
あの後、俺は神崎に学校についてどこまで気付いていたのか聞かれ、答えたところだ。
「ppで買えるあらゆるモノ、か。ここにきて新しい情報だな••••••。比企谷、他にはどんな用途に使えるとお前は考える?」
「さあな。ここでああだこうだ考えるよりも先生に聞いた方が早いんじゃないか?“何に使えるか”って聞いても答えてくれないだろうけど、“これはいくらだ”って聞けば答えてくれるはずだ。問答無用で誰かを退学にする、逆に退学を取り消す、無条件でAクラスに上がる権利とかな」
教室のあちこちで俺の言葉を聞いたクラスメイトが息を飲む。
教壇の前では一之瀬が顎に手を当てて考える仕草をしていた。
「ポイントの使い道は先生に質問する内容を纏めておいた方が良いね」
一之瀬はそう言って、俺が例に上げた三つを黒板に書き連ねる。
「みんなから質問を募る前に私から提案なんだけど」
みんなが一之瀬に注目したのを確認してから彼女は続けた。
「有事に備えてppをクラスで貯金するのどうかな?」
一之瀬の提案は、毎月一人につき3万pp、計120万ppをクラスで貯金していくというのだ。
確かに、ppで退学の取り消しが可能だとしても、その金額は莫大なものとなるであろう事は想像に容易い。何せ、顧問を用意してもらうだけでも800万pp掛かるのだ。個人で有事に備えるのは困難極まりない。
合理的な提案だと俺も思う。誰からも反対意見が上がること無く、この話題は先生への質問を纏めて提出する運びとなった。
「ねーねー、比企谷くんってもしかして凄い人?」
隣にいる小橋がそんな事を言ってきた。
「凄い人だったら俺はAクラスに居ただろうな。てか、後輩にも同じ様なこと言われた事あるけど、そんな駄目人間に見える?」
思い出されるのはあざとさ満点な小悪魔系後輩。あいつは一年から三年まで生徒会長を勤めたわけで、その実績を引っ提げて、あいつも来年はこの学校にやってきたりするのだろうか。
また生徒会に入った日にはここでも良い様に使われるんだろうな••••••。
「うーん••••••駄目人間とは言わないけど、ぜんぜん目に活力が無いからデキる男って感じはしないな~」
目が死んでると言わない辺り気遣いを感じるが、結局言われてることは同じなんだよなぁ。
「さいですか••••••」
俺はそうとだけ答えて小橋から視線を外した。
「あれ?怒った?」
「いや、精一杯の気遣いに涙が溢れそうだよ」
「??」
俺のヒネた言葉が小橋に通じた様子はなく、彼女は首をかしげるだけである。
「あっ、そうだ。比企谷君は小テストどうだったの?中間試験に備えて勉強会をするんだけど、得意科目をみんなで教え合おうって事になってるんだけど」
教卓に立つ一之瀬からの質問だ。
テスト勉強だが、恐らくは受験の時と同様に雪ノ下から理系科目を徹底的に叩き込まれる事となるだろう。
「残念ながら58点だ。力になれそうになくて悪いな。雪ノ下に勉強を教わる事になるだろうから、俺の事は気にしないでくれ」
たたでさえ容赦のない雪ノ下の指導が待っているのだ。
ああ、今でも脳裏を過る受験勉強の悪夢••••••
これ以上タスクを増やしたくない俺はそう言って誤魔化した。相手を欺くコツは真実を語りつつ、余計な事は喋らないのだ。
「58点かぁ。もしかして比企谷君、理系科目はかなりピンチ?」
「••••••何でそうなるんだよ」
「だって雪ノ下さんが比企谷君は文系科目すごく優秀って言ってたもん。理系が苦手とも聞いてたけど、これは骨が折れるかも」
一之瀬はにゃはは••••••と微苦笑する。
「いやだから俺は雪ノ下から教わるって」
「その雪ノ下さんからの伝言なんだけど、雪ノ下さんが由比ヶ浜さんの勉強を見ている間Bクラスで勉強してなさい、だって。あっ、ちゃんと比企谷君の勉強も由比ヶ浜さんの後に見てくれるってから安心して」
俺は目が死んでいくのを感じる••••••あ、目が死んでるのは元からか。テヘペロ。