教室に着くと自分の席を確認。席に座って頬杖を付き時間が過ぎるのを待つ。
先生がやって来るまでに周りを観察する。俺のように一人でいる生徒もいるが、多くは既に席の近い者だったりグループを作って話に花を咲かせていた。なんだ、このクラスはコミュニケーションお化けの集まりか?
え?俺がコミュ障なだけ?そうですか······。
その後、担任となる星之宮先生から学校生活に関する怪しさ満点の話を聞いた後、入学式が恙無く執り行われた。
教室に戻ると学内施設などの説明を受けて本日は解散となる。今日は今後の生活の必需品を揃えたり、明日から始まる授業の準備などに充てろという事だろう。特に日用品の用意は必須。この学校は卒業まで基本的に学校の外に出ることや連絡を取ることすら叶わず、三年間寮生活を送ることとなるからだ。
小町ぃ······。
最愛の妹に思いを馳せること程々に俺は教室を出ていった星之宮先生を追い掛けた。先生を呼び止めるとこちらを振り返り笑顔を浮かべる。
「あなたは比企谷君ね。どうしたの?」
「質問なんですが、新しい部活動を立ち上げたいんですけど、どうしたら良いですか?」
「それなら申請用紙を書いて生徒会に提出、受理されればOKよ。部員の人数に制限はないけど顧問の先生はいないと駄目だからね」
駄目だからね、と言いながら先生は肩を突ついてきた。上目遣いなのも相まって凄くあざとい。女の武器の使い方をよく分かってらっしゃる。
だが、そんなもの訓練されたボッチである俺には通用しない。
「ゎ······分かりました」
······どもってしまった。
「申請用紙あげるから職員室までいらっしゃい」
踵を返して歩き出す先生の後を着いていく。
「ところで比企谷君はどんな部活を作るの?」
道中、先生が尋ねてきた。その問に俺は答える。
「生徒らの自己改革を促し、悩みを解決する手助けを行う」
しかし、俺の答えに先生は疑問符を浮かべていた。
「要は相談所みたいなもんです。ただし、飢えた人に魚を与えるのではなく取り方を教えて自立を促すのが目的ですけどね」
「ふーん。君ってそーゆうタイプなんだ」
始めは強制的に入部させられたのだが、今わざわざ言うことでもないだろう。確かに柄じゃないが、新たに立ち上げてまでまた奉仕部に付き合おうと思うくらいにはあの空間を気に入っているのは間違いない。
先生と話ながら暫く歩くと職員室へと着いた。先生が扉を開いて中に入ったので俺も続く。
「比企谷君?」
職員室の扉を潜ると、そこには雪ノ下の姿があった。
「なんだ、お前も申請用紙をもらいに来たのか?」
「ええ。ちょうど貰ったところよ」
「そうか。なら無駄足だったか。先生、もう大丈夫みたいです」
俺は先生に向き直り申請用紙が必要なくなった旨を伝える。
「この子と一緒に部活を作るの?ねー、もしかして比企谷君の彼女?」
さっきといい星之宮先生はずいぶんとフレンドリーのようだ。
「違いますよ。あと、もう一人いるんで」
「そうなんだ。もしかしてその子も女の子?」
「······そうですが?」
「そっかそっか。罪な男めー、このこのー」
星之宮先生はまた俺の事を指でツンツンしてきた。せ、先生近いです。何だか良い香りが······。
「······比企谷君、行きましょう。ここにはもう用は無いはずよ」
雪ノ下は有無を言わさぬ雰囲気でそう言った。
「お、おう。ちょっと待ってくれ。最後に一つ質問良いですか?」
雪ノ下に断りを入れてから先生に尋ねる。
「何かしら?」
「顧問をやってくれる先生が見つからなかったとして、それもポイントで買えたりするんですか?」
この質問をした途端、先生の雰囲気が変わった。
「へえ······雪ノ下さんだっけ?先に出ててもらって良いかしら?」
「······分かりました。失礼します」
どことなく不機嫌そうに雪ノ下は職員室から出ていく。
「比企谷君はどこまで気付いてるのかな?」
「······どこまでって他にも何かあるんですか?」
変化した星之宮先生の雰囲気に気圧されながらも気丈に惚けてみせた。すると先生から放たれるプレッシャーが四散する。
「そんな怖がらなくていいわよ。さっきの質問の答えだけど800万ポイントよ。教員の値段は安くないわ」
「······分かりました。ありがとうございます。失礼します」
俺は内心冷や汗をかきながら職員室を後にした。