高度育成高等学校奉仕部   作:碧河 蒼空

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 ご報告。

 2話前の『Don't Remember Yukinon Boot Camp.』にルビを振りました。


報告

 5月になって一週間ほどが経った。

 

 あれからCクラスによるBクラス生徒への付きまとい行為が続いているが、今の所それ以上手を出してこない。Bクラスとしてはこちらからアクションを起こさず無視を決め込む方針だ。

 俺も椎名とかいった女子生徒に図書館で会う度に挨拶をされるが、彼女もそれ以外何かしてくる事は無かった。かといって他のCクラス生徒からの嫌がらせもなく、王様からの報復を覚悟していた俺としては肩透かしを食らっている。

 

 Bクラスの勉強会は強制ではないが、その日部活など用事のある者以外の生徒は全員集まっていた。基本的には各々で勉強するが、分からない所を成績の良い者に教わるというスタイルだ。

 俺も文系科目なら教えることができるし、あの日、王様に食って掛かった柴田は毎回俺の隣を確保して、しょっちゅう分からない所を聞いてくる。

 勉強会は出入り自由なのだが、Bクラスは真面目な生徒が揃っているので、途中で抜ける者はほとんどいなかった。クラスの様子を見るに、余程の事がない限り中間試験で脱落する者は居ないだろう。

 

「っせえな。お前には関係ないだろ」

 

 今日も図書館で勉強会に参加していると、そんな声と共に机を打ち付ける音が辺りに響いた。

 視線を向けるとここから離れたテーブルで男子生徒と女子生徒が口論になっているようだ。

 普段から静かな図書館ではあるが、今ので更に静まり返ったせいで、耳を澄ませば二人の会話を聞き取ることができる。

 あちらも勉強会をしていたのだろうが、男子生徒が勉強を投げ出そうとした為に女子生徒が男子生徒を嗜めているのだ。ただ、その言葉の棘はあまりにも鋭く、あれではもはや罵倒だ。

 男子生徒は女子生徒の胸倉を掴み、事態は一触即発。一緒に勉強していたであろう別の女子生徒が男子生徒を宥め、なんとか最悪の事態は回避している様子。

 しばらく口論が続いたが、男子生徒は遂に荷物を纏めてここを去った。それに続くように一緒に勉強していたであろう他のメンバーも次々と勉強会を抜け、男子生徒を罵倒していた女子生徒一人だけがその場に残った。

 

「あいつらDクラスだな。さっき止めに入った女の子が知ってるやつだ」

 

 今日も隣に座る柴田が俺にそう話す。

 

 あれがDクラスか。由比ヶ浜からクラスの様子を聞くことがあった。曰く、気の短い者や悪い意味で自由奔放な者、勉強はできるが協調性の無い者。実際に目の当たりにすると、ここは本当に未来を支える人材を育成する全国屈指の国立名門校なのかと疑問を抱いてしまう。

 

 まだ何か裏があるのだろうか••••••。

 

「それはそうと、ここはどうすれば良いんだ?」

 

 柴田の問いかけを期に俺は考えるのをやめた。

 別に俺が他のクラスに首を突っ込む必要はないんだ。

 

 

 

 

 

 

 ~Other side~

 

 放課後の1-Cの教室に紫掛かったロン毛で中肉中背の男と、黒人の大男、その二人の前に腰まで伸ばされた銀髪の少女が残っていた。三人以外は既に教室には残っておらず、彼等の会話を邪魔する存在は一つもない。

 

「お前から見て、あの目が腐った野郎はどうだった?」

 

 目の前に立つ女子生徒、椎名 ひよりに問うロン毛の男、龍園 翔は学習用の椅子に横向きで座っていた。

 

「はっきりとした事はまだ言えません。警戒心がとても強いようで、挨拶程度しかできていませんから」

「現時点での情報で良い。言ってみろ」

「そうですね••••••性格は内向的。向上心も決して高くはなく、ご自身で意義を見出だせないことには極めて消極的なタイプでしょう。ただ、龍園くんの話を聞くに必要に駆られれば重い腰を上げるみたいですね。そこは今後の見極めかと」

 

 はっきりとした事は言えないと言う割に、椎名の口からは八幡の情報が淡々と語られる。

 

「あ、それと読書がお好きなようです。私も本をお勧めしたので試験が終わったら一緒にお話しするお約束をしているんですよ」

 

 椎名は両手の指を合わせて言葉を弾ませた。

 決して約束したわけではないのだが、椎名の中ではその様になっているらしい。

 

「••••••あ?」

 

 思いもしなかった彼女の言葉に龍園は眉を顰める。

 

「ひより。お前の交遊関係に口出しするつもりは無いが、分かってるよな?」

「はい。クラスの不利益になる事は致しませんのでご安心ください」

 

 椎名にとって八幡は同好の士となりうる人物であり、同時にAクラスを巡って争う他クラスの生徒でもある。Cクラスの一員として龍園に八幡の情報を偽りなく報告しつつも、椎名個人としては八幡と良好な関係を築きたいと考えている。

 そんなどちらに転ぶか危うい椎名の天秤を龍園は一旦は容認した。彼にとって椎名ひよりという人物はそれほどの価値があるのだ。

 ただ今後、双方それぞれの立場を決定するのは、どちらも八幡次第であるのは間違いない。

 

 そんな二人のやり取りを龍園の傍らに立つ大男は一言も発せずにただ聞いていた。

 

~Other side end~




中間テストでBクラスが躓く展開が想像できないので、次の話は原作2巻の内容です。
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