高度育成高等学校奉仕部   作:碧河 蒼空

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椎名ひよりは語りたい

 中間試験が5月の下旬に行われ、その結果は6月を迎えてすぐに発表された。

 

 予想通り、Bクラスから赤点をとり退学するものは現れなかった。勉強会が功を奏し、皆テストの出来が良かったようなので、問題を起こさなければクラスポイントも増えるだろう。

 今後の勉強会については、クラスメイトの学力や勝手が分かってきたので、また試験が近付いてきた頃に再開される事となった。

 

 Yukinon(ゆきのん) Boot(ブート) Camp(キャンプ)?アー••• スゴク タメニ ナリマシタヨ。

 今回も受験の時と同様に熾烈を極めたが、Bクラスの勉強会で予習をすることが出来たおかげで、以前ほどの苦難では無かった。

 

 心配された由比ヶ浜も赤点を回避し、雪ノ下に抱きついて喜んでいた。そして雪ノ下はといえば赤点回避は当然として、総合成績学年2位に着ける流石の結果。

 しかし、あのユキペディアさんの上を行くものが居るとはな。流石は名門国立校である。ちなみに、学年一位もAクラスの生徒らしい。やはり優秀な生徒が集まっているAクラスを定期試験で出し抜くのは難しそうだ。

 

「その言い方から察するに、比企谷くんは定期試験の他にクラスポイントの動くイベントがあるとお考えなのですね」

 

 学園内のコーヒーショップで練乳をたっぷり入れたコーヒーを飲む俺の目の前に座る椎名は、俺の何気ない一言からそう推察する。

 

「そりゃクラス対抗の図式において一クラスに戦力を集中させる意味がない。もしこれが個人戦なら話は別だがな。競争意識を誘発させるならクラスの力関係は拮抗させた方が良いに決まってる。そうでなきゃ上のクラスは慢心するし、下のクラスは勝負する気すら起きなくなる。そんな環境で未来を支える人材なんて育つ訳がない」

 

 目の前にぶら下げられた餌が上等であればある程、その餌にありつく為に人は必死になって手を伸ばす。この学校では希望進路の保証がその餌に当たる。

 だが、その様な特大な餌を用意しても、その餌に辿り着く過程が極端に困難であれば食らうのを諦めてしまうし、逆に餌に手の届くポジションが安泰であればこちらも努力するのをやめてしまう。

 

「なるほど。でも、そのような事を私に話しても良かったのですか?」

 

 他のクラスに情報を与えるというのは敵に塩を贈るようなもの。椎名はそう言いたいのだ。

 

「おたくの王様は同じように考えてるから色々と手を回してんだろうよ」

「なるほど。比企谷くんはCクラスにとって手強いお相手になりそうですね」

「冗談。そんなのは特典に興味のある奴らでやってくれ」

「つまり、比企谷くんはその特典がいらないと」

「ああ。俺の目標は専業主夫だからな」

 

 俺の言葉を聞いた椎名は顔を横へ向けて吹き出した。

 

「すみませんっ••••••でもっ、何だかんだ言いながらしっかり働いてる比企谷くんを想像できちゃうのは何故でしょう?」

「ほんと止めてね。最近、少しだけ想像できちゃうんだから」

 

 口許に手を寄せ、笑いを堪えようとしながら話す椎名。

 奉仕部に入ってからの自分を省みると本当に否定できない自分がいる。ほんと勘弁願いたい。

 

 さて、なぜ俺の前に椎名が居るかといえば、椎名を無視する事で他のCクラスの粗暴な生徒が駆り出されるよりも、彼女の相手をした方が良いだろうと双方を天秤に掛けた結果である。監視カメラと人目のある所を条件に椎名と会うことにした。••••••彼女の勧めたカササギ殺人事件が想像以上に面白かったという理由も無くはない。

 

 そんな俺の感想を聞いた椎名はとても嬉しそうに、自らもカササギ殺人事件について雄弁に語っていた。

 

 本の話も一息吐いた所で話題は先日の試験に移り、今に至る。

 

「そうです。またお勧めの本を持ってきたのですが、いかがでしょう?」

 

 そう言って椎名は自身の鞄に手を入れ、一冊の本を取り出した。

 

「椎名のお勧めなら期待できるか••••••ん?」

 

 俺は図書館の本であれば裏表紙に貼られているであろうラベルが無いことに気付く。

 

「これ椎名の本か?」

「はい。家から持ち込んだものの一つです」

「良いのか?そんなもの借りても」

「勿論です。その本は比企谷くんの為に持ってきたんですから。それに、普段からいつ似た趣味の人が現れても良いように本を持ち歩いてるんですよ」

 

 更に椎名の鞄から二冊の本が出てきた。

 

「これをいつも持ち歩いてるのか?重いだろうに」

「いえ。これも本について語り合う為ですから」

 

 椎名は両手を自分の前で握って話す。

 

「そうか。にしても、どっちも名作じゃんか」

 

 俺の言葉に椎名は再び目を輝かせた。

 

「分かりますかっ?」

 

 まだまだ暫く彼女の本語りは続きそうだ。

 俺は既に冷めていた練乳入りコーヒーに口を着けた。




2巻に入ると言ったな。あれは嘘だ。

新年一発目の投稿!
今年もよろしくお願いします。

さて、ひよりさんを書いてて思ったのですが、彼女を推しの子の黒川あかねに置き換えたら八幡の分析すぐに終わっちゃうなと。






「特徴はやっぱりあの瞳••••••劣等感からくるもの?だとしたら承認欲求は満たされていない」

「友人関係は薄そう」

「家庭環境は良い?この人格形成はシスコンかな?」

「愛情の抱き方に何かしらのバイアス有り」  「自身への無頓着さと過度な執着」

         「排他的な言動に反し利他的な行動」

    「ファッションは無頓着」

      「思春期の段階でいじめにあった子特有の他者への不信感」

  「14歳あたりから破滅的行動に改善が見られる。良い出会いがあったのかな?」

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