暦は7月へと移り、季節は夏の様相を見せ始めていた。
今月の下旬から夏休みが始まるが、その前に俺達には期末試験が控えている。こちらも中間試験同様に赤点は即退学。緊張感は中学の頃の比ではない。日数的にはまだ先の話ではあるが、人によっては少しずつ準備を始める頃合いであろう。
さて、本日は
俺は“99+”の数字が添えられたチャットアプリをタッチしてクラスチャットを覗く。どうやら、ざっと見た感じだと誰にもppが支給されていないらしい。
とりあえず、学校からの説明を待つとしよう。
学校へ行くと、やはり朝のホームルームで星之宮先生から説明があった。曰く、今回はトラブルとやらでポイントの付与が遅れているとの事であったが、そのトラブルの内容については、質問をしても答えてくれない。ただのシステムトラブルなら良いのだが、この学校の事を考えればきな臭さを感じてしまうのは邪推だろうか••••••。
翌日、また朝のホームルームで追加の説明がなされた。
DクラスとCクラスの生徒間で暴力事件があり、片方が学校に訴え出たのだ。
問題はここからで、双方の主張に食い違いがあるらしく、そのどちらにも決定的な証拠が無い為、学校側は結論を保留とした。
当事者生徒からその場に居合わせたものが居たとの証言があったことから、現場を目撃した者は名乗り出るようにとのお達しがなされた。
「今回の騒動、Cクラスが関わってるらしいが••••••比企谷はどう見る?」
一限の授業が始まる前に、俺の机の近くでクラスの中心人物達が集まっている中から神崎が俺に話を振る。
てか、何でここに集まってるんですかね?
「さぁな。ま、この前のCクラスのやり口から考えれば、あの王様が関わってるって事もあるんじゃないか?知らんけど」
相手に手を出させ被害者として振る舞う。5月の時もこちらの誰かが王様の挑発に乗ってしまっていたならば、同様の結果が待っていたのかもしれない。
この社会は暴力を振るった者の立場は極めて弱くなる。たとえ、そこに至るまでの過程に情状酌量の余地があったとしても、それを証明できなければ事実は真実となり得ないのだ。
「やはり比企谷もそう思うか。Cクラスは積極的に他クラスへ攻勢に出る方針かもしれないな」
「だとすると今度はまた踏み込んだね。今回は学校の出方を伺うためかな?」
「だろうな。今のDクラスにリスクを犯してまで仕掛けるメリットはない」
神崎と一之瀬が主導して話を進めていた。この二人はBクラスの中でも良く頭が回る。既にCクラスの狙いについて予測を立てていた。
「••••••ねえ、Dクラスに協力出来ないかな?」
一之瀬の提案に神崎が思案する。
「良いんじゃないか?Dクラスがまず越えるべきはCクラス。加えて今回の件で人員も欲しいだろう。うちとしても下からの突き上げには備えたい。幸い
神崎を始め、他の者も一之瀬の意見に賛同した。
「比企谷君もそれで良いかな?」
「いや、なんで俺に聞くんだよ」
神崎といい一之瀬といい、何でクラスカーストトップの輪に俺が入ってると思ってるわけ?
「だって私、手伝ってって言ったよ?」
一之瀬は何で不思議そうな顔をしやがる。手伝ってって、もしや王様の時のやつか?俺手伝うなんて言ってないよね?
「別に俺じゃなくても仲間にゃ事欠かんだろ」
「私は比企谷君の話も聞きたいな」
わざわさ俺を頼らなくても、大抵の奴は喜んでこいつらに手を貸してくれるだろうに。どうやら一之瀬さんは
「••••••俺から言えるのは期待も信用も肩入れもしすぎるなって事だ」
Cクラスに限らず、Dクラスにとって他のクラスは全て越えるべき存在なのだから、うちだっていつ寝首を掻かれても不思議じゃない。それに、いずれBクラスとDクラスのポイントが僅差になった時、協力関係を維持するのは難しいだろう。そうなった時、こいつらは正しい判断が下せるのだろうか。
七月に入って四日目、放課後の奉仕部。
「うぅーーー••••••」
由比ヶ浜が落ち込みながら机に突っ伏していた。
一昨日も0ポイントに逆戻りする危機に嘆いていた由比ヶ浜であったが、一時は元気を取り戻していた。クラスメイトの身の潔白を証明する為にDクラスが動き出したからだ。
--相手に怪我をさせてしまったのならお咎め無しって事はないんじゃないかしら?
そんな雪ノ下の指摘を受けて再びこの様な姿に••••••。上げて落とされ、また上げて落とされた由比ヶ浜の心境は計り知れない。
由比ヶ浜が落ち込む最中、扉をノックする音が三回、規則正しく教室に響いた。雪ノ下が入室を促すと扉が開く。
「失礼しまーす」
扉の向こうに居たのは我がクラスの委員長、一之瀬だった。
「あれ?由比ヶ浜さんどうしたの?」
「こいつはまたポイントが無くなるって分かったんで傷心中だ。で、一之瀬は何の用だ?」
俺に用事があるならクラスで声を掛けてくるはずだ。ここに来たという事は奉仕部への依頼か?
「相談者を連れてきたんだ。入ってもいいかな?」
「ええ、入ってきて」
雪ノ下に促され、一之瀬はそとで待っていた男女二人と一緒に中まで入ってきた。
「あれ?堀北さんに綾小路君?」
いつの間にか体を起こしていた由比ヶ浜が意外そうな顔をして二人を見る。
「あなたは、由比ヶ浜さん?」
女子の方が怪訝な顔をした。彼女の反応から察するに、あまり詳しいことは聞かされていないのだろう。
「由比ヶ浜さんは同じクラスだよね。比企谷君と雪ノ下さんに紹介すると、こちら女の子が堀北さんで、男の子の方が綾小路君。二人ともDクラスだよ」
一之瀬の紹介の中にあった“Dクラス”という言葉に俺は面倒事の予感を感じた。